子供の自己肯定感の低さが問題にされることがある。だが、自己肯定感などを問題にする必要があるのだろうか。自分を知ろうとか自己分析しようなどというのは、現代人の病理にすぎないと私は思っている。
そもそも、「自己」など肯定したり否定したりすべきものではない。とくに子供に「自己」など見つめさせるべきではない。子供にとって必要なのは、日々の生活の中で自分の前に立ち現れる問題に対して、なんとか解決策を考えようとする力を養うことであり、「自己」そのものについてどう思うかなどは問題にすべきではない。人間の思考は、もともと他者に目を向けるようにできている。
「自己」を見つめれば見つめるほど自己に対して否定的な傾向に傾くのは、我が国の文化的特性であるかもしれず、そうなると、それを「改善」して自己肯定感を高めようとすることそのものが、自己のもつ文化的特性を否定するという、いかにも自己否定的な考え方であると言わざるを得なくなるのである。