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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画「美しい人」 ~ 深い9つの人生

2006年10月10日 | 映画(ア行)
 9つのエピソードからなるオムニバス映画。

 各パートは10分余りで、すべてワンシーン・ワンショットのリアルタイムで撮影されている。

 「10ミニッツテイク」は長まわしを表す映画用語だ。10分間、役者もスタッフも一切の失敗を許されない。作品中1箇所でというなら分かるが、全編がそれで構成されているとは恐れ入る。

 限定された時間の中なので物語に明快な起承転結はなく、したがって登場人物の誰かに感情移入することはないが、それぞれの人生のある場面をすくい上げて見せてくれる。
 さらにあるパートの人物が別のパートにもさりげなく登場し、10分では描けなかった人物の背景が広がってくる凝った構成を見せる。

 原題の「9 lives」はこの構成を良く表現しているが、さらにラストエピソードでその意味が深まる。

 猫は9つの命を持っていると言われているが実際は1回しか生きることが出来ない。人生は1回限りなのだ。ここに描かれた9つのエピソードすべてを生きることは出来ない。この中のどれか一つ、どの人生を選択するか、観客は問われている。

 それにしても最後のエピソードは胸に染みる。グレン・クローズとダコタ・ファニングの二人芝居だ。「その謎」はわずか十数秒のラストシーンを見ないと分からない。

 深い文学作品の読後感に似ている。

映画「イルマーレ」 ~ シーフード・レストラン?

2006年10月06日 | 映画(ア行)
 海という意味のタイトル。2年の時を隔てた、逢うことの出来ない男女の愛の物語である。

 予告編を見ていれば大体どんな話なのかは理解できるし、リメイク作品なのでオリジナルの韓国映画を見た人も多いだろう。逆に予告もオリジナル版も知らないでいきなり本編を見たら最初は戸惑うかもしれない。

 韓国版ではその名を持つ海辺の家が舞台となったが、ハリウッド版では湖畔の家に変更されており原題も「The Lake House」になっている。

 男女を結ぶのがその湖畔の家の郵便受けである。男が住んでいた湖畔の家に2年後に住むことになる女が、家の郵便受けに入れる「手紙」を通して2年前の男と愛を育んでいく。何故か郵便受け中の空間が2年間タイムスリップしているわけだ。

 当然2年前には2年前の女がいるわけだが当時はお互いの存在を知らない。配役は二人ながら、サンドラ・ブロックの方は二つの時制に存在する二人の女のように描かれるので
よく見ていないと混乱する。

 キアヌ・リーブス演じる2年後の男は出てこないのか?というあたりが物語りの核心につながる。

 ハリウッド版では「イルマーレ」は予約が取れない人気レストランの名前という設定。そこで2年後の予約をキープし、逢おうとするのだが・・・・。

 ポスター、チラシのデザインはキアヌ・リーブスだけがモノクロになっている。なるほど・・・・。

企業名当てクイズ

2006年10月04日 | 日常生活・事件

 会社の受付もいつ頃からか「おもてなし」より「セキュリティ」の色彩が強くなった。

 昨日ある大企業の本社を訪問した。出入り口にオートドアが2ヶ所あるが右が職員専用、左が来客用となっている。外来者をチェックしようという魂胆のようだ。

 その外来者用のオートドアを入ると左にカウンターがあるが別に呼び止められるでもなくほとんどノーチェックだ。ところがエレベータホールに入ろうするとガードがいて、外来者はカウンターで受付表を記入しゲストの胸札をもらってくれと言う。なぜ入口で言わずに10mほども後戻りさせるのだろう。

 戻るとカウンターでは受付票を出してきたが、こちらから言わないとボールペンまでは出さない。で、催促したから出てきたそのボールペンには長い髪の毛が絡まっていた。取ってカウンターの上に置いたら誤るでもなく髪の毛は持ち去られた。

 次に受付票を持って上階の会社受付に提出すると、そこから呼び出してくれる。ところが待合椅子にいても受付嬢は「しばらくお待ち下さい」でもなく、一向に相手が現れる気配もない。

 そのうち受付は当番時間がアップしたのか人が交代したりしている。痺れを切らし自分の携帯から本人を呼び出した。親しい知人なのでそのまま外に昼食に出たが、食後戻らずに分かれたので胸札は返さないままだ。

 素晴らしいチェックシステムのようなので私は来館したまま外に出ていないことになる。向こうもおかしいと思うだろう。彼らに「おもてなしの心」を欠いたセキュリティシステムの欠陥が理解できるだろうか?

 さて、この会社の主力商品は「コミュニケーション」そのものなのだが、この大企業とはどこ?というのが問題。
(ヒント:K○○I・・・・○には同じアルファベットが入る)

映画 「戦場のアリア」 ~ 「武士道」の精神

2006年10月02日 | 映画(サ行)
 敵も同じ人間であるという当り前の事が見えなくなっている、あるいはそれを無視しているのが戦争であることが分かる。

 敵の姿が見える肉弾戦なればこそで、近代戦だとこうは行かないだろう。

 当事者たちは、敵を人間としてたたえ合ったことを罪として問われてしまう。戦争は常に「聖戦」であって、こちら側から見れば敵は常に極悪非道の存在でなければならないのだ。
 ここに来て観客の記憶は一気にイラク戦へと飛び、明快なブッシュ批判を意識した反戦映画としての骨格を認めることになる。

 新渡戸稲造の「武士道」に次の一節がある。

 「勇気と名誉はともに 価値ある人物のみを平時に友とし、戦時においてはそのような人物のみを敵とすべきことを要求している」

 また同書には「おのれの敵を誇れ。されば汝の敵の成功は汝自身の成功となる」というニーチェの言葉が引用されている。

 本文中の引用は「三笠書房・知的生き方文庫『武士道』新渡戸稲造著、奈良本辰也訳」による。