SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ベンジャミン・バトン」

2009年03月03日 | 映画(ハ行)

 ブラッド・ピット主演、デヴィッド・フィンチャー監督の最新作。

 アカデミー賞13部門でノミネートされていたが、美術賞と視覚効果賞のみに終わった。しかし、見応えのある「十分満足」の一作であった。

 フィンチャー監督の作品はいつも視覚的な豊穣さを感じさせるが、本作ではこれまでの尖がり感が消えうせ、優しさといとおしさを感じさせる。素晴らしいストーリーテラーだ。

 会話で語られるちょっとしたエピソードやたとえ話までがすべて映像になっている。ヒロインのケイト・ブランシェットが事故に遭う顛末が、「風が吹いたので桶屋が儲かった」風に語られるのだが、もし風が吹かなかったら桶屋は儲けなかったのだが、風が吹いたので儲けましたとさ、というふうに贅沢な映像になっている。(何のコッチャ?の人はぜひ見てみてね!)

 人の一生は振り子のようなものだ。死は生まれる前にいた場所に再び帰ることを意味している。
 赤子から振り出して青壮年をピークにまた老年期、振出しへと戻って一生が終わる。これをたまたま逆に振り出してしまった男の話なのだ。

 一般の老人は年をとって徐々に記憶が薄れていく。大人の体で記憶は幼児だから正常な人からは違和感がある。ベンジャミンの老後は「幼児の記憶力を持つ幼児」としてある。だから違和感はないものの、人生の記憶をなくしていく姿は切ない。

 彼の人生を彩った多くの人々も忘れがたい印象を残す。