SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ジェシー・ジェームズの暗殺」

2008年02月22日 | 映画(サ行)
 西部劇というがその要素はゼロ。文学的な香気が漂う、かつてのアメリカの物語だ。

 タイトルロールのジェシー・ジェームズはブラッド・ピットが演じているが、主人公はむしろ彼を暗殺するロバート・フォード(演ずるケイシー・アフレックはアカデミー助演候補)で、その彼の方も暗殺されてしまうまでの映画、と言った方が良いかもしれない。

 ジェシー・ジェームズがアメリカでいかにポピュラーな存在かを知らないと、少し分かりにくい。

 ロバート・フォードはなぜジェシー・ジェームズにあこがれるのか?
 ロバートはジェシー・ジェームズの本を持っているが、なぜまだ生きている悪党が本になるのか?
 悪党を退治したはずの暗殺者の方がなぜ卑怯者と呼ばれ、自身が暗殺されるにいたるのか?

 これらの疑問はすべて、ジェシー・ジェームズに対する、当時のアメリカ大衆が抱いていたイメージを理解していないと解決しない。それを知らない日本の観客はこの作品を見て、ジェシー・ジェームズが単なる列車強盗のリーダーではないらしいと言うことが、それとなく分かってくるといった按配だ。

 随所に挿入される雄大に流れる雲の画像や、逆光に浮かぶ木立など心理劇を文学的なタッチで描いた映像は美しい。ただ少し長いのと、紹介も無く新たな人物が現れるので、どこで出てきた人だったかなと考え出すと映画の流れについていけずに、途方に暮れる。

 短期の上映でヒットもせずに姿を消すが、じっくり見直してみたい作品だ。

 制作にはブラッド・ピットのほかリドリー・スコットなども名前を連ねている。ジェシーの兄役の重鎮サム・シェパード、ロバートの兄役サム・ロックウェルもなかなか良い。