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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画「ユナイテッド93」~ 9.11体験

2006年07月20日 | 映画(ヤ行)
 6ヶ月の余命宣告というわけではない。健康で、夢も希望もごく普通に持っていた人たちが突然、数時間後の「消滅」を宣告された運命共同体の一員となる。

 映画では、無名の俳優群がまったく当時の乗客そのものになって、それぞれの置かれた立場で行動しているかのようである。登場人物は多いが群像劇ではなく、主役はそこで起こりつつある「事象」そのもの。

 観客は予定調和的な結末がないことは最初から分かった上で、搭乗機ならぬ劇場の座席に着くことになる。したがって最初から最後まで息苦しいような緊張感が張り詰める。手持ちのカメラはたえず揺れ、左右に振り回される。

 当時、管制の現場では何機がハイジャックされ、WTCに激突したのがどの便なのかさえ正しく把握されていなかったっことも明らかとなる。その中で搭乗機の乗客は「行動」を選択したのだ。

 9.11で世界の流れが180度向きを変わったと言われるが、その捻れを四分の一だけ巻き戻せたとしたら、それはユナイテッド93便の乗客が示した「勇気」によるものだ。

 犠牲者数の「搭乗者数44名」は乗組員と実行犯グループを含む数字である。犯人グループも家族を持っていたし、恐れもあった。
 「戦争」はあらゆることを正当化してしまう。特攻と自爆テロは違うのか。彼らにとっては、これも「戦争」だったのだ。

 劇映画の枠を越えた作品。単なる再現映画ではなく、現実の持つ重みを観客は共有することになる。

映画「雪に願うこと」 ~ サッポロビールのコクがあれば。

2006年06月13日 | 映画(ヤ行)
 2005年の東京国際映画祭で4冠獲得した作品だそうだ。

 「ばんえい競馬」という北海道ならではの「そりを引く馬の障害物競走」が描かれる。ゴールを鼻先で争うのではなく「荷物を運びきるまで」を競うところに主人公の生き方が重なってくる。

 ハリウッドやディズニー映画なら馬の演技が見所だろう。その意味ではこの映画の馬は演技らしい演技は皆無だ。登場人物はすべてこの馬の周りを回っているわけだがその誰かに特別近寄って感情を移入するのも難しい。

 主演の伊勢谷友介は「CASSHERN」の時は無口で良かったが、今回のように台詞が多いと声のトーンと台詞回しが気になる。

 うまい役者がそろって端正な作品になっているのだが、やや遠くからクールに眺めているような感じで、コクが無いというか味わいが薄い。良質な日本映画には違いないのだが映画祭で賞獲得となると、他の出品作がよほど・・・。(失礼) m(_ _)m

 佐藤浩市はうまい。殴られる伊勢谷は本当に痛そうだ。施設に母を訪ねるシーンは泣けます。

映画「歓びを歌にのせて」

2006年05月24日 | 映画(ヤ行)
 「ダ・ヴィンチ・コード」 がキリスト教の根本に関わる問題を提起して物議をかもしているが、教会の偽善を日常的リアルさで直接的に批判しているこの作品には、教会もあまり神経質になっていないようだ。
 神の沈黙=ベルイマンを生んだスウェーデンの映画。

 退屈な日常に一つの異物が混入し皆が変わっていくという構図は「カッコーの巣の上で」や「バグダッド・カフェ」に通じる。とても心地よい癒し系の映画といえるだろうが、けしてハッピーな映画ではない、そのバランスが絶妙である。
 アカデミー外国語映画賞ノミネートもうなづける。

 いろいろな痛みを抱える登場人物がそれぞれに折り合いをつけていく過程が丁寧に描かれている。
 問題は主人公の抱えるトラウマで、過去の自分を肯定するラストシーンは悲しいが、やはりハッピーエンドの一つなのだろう。

映画 「ヨコハマメリー」

2006年05月22日 | 映画(ヤ行)
 メリーさんはその後どうなったのか?冒頭でインタヴューに応えるさまざまな人の声が画面にかぶさる。

 ドキュメンタリー作品だが、メリーさんの生涯を追って掘り起こしていくというよりも、戦後のある時代、人々の目に焼きついた「ヨコハマメリーという現象」は何だったのか、そして彼女に接した人達はどういう行動をとったかが綴られていく。

 冒頭のインタヴューで「メリーさんのその後」は観客の頭にそれとなく刷り込まれるので、ラストはある意味でどんでん返しとなる。
 「時代の記憶」とも言える現象を引き起こした張本人の、まことにさわやかで穏やかなその後に、直接はメリーさんを知らない観客もほっと安堵を味わうことが出来る。

世にも不幸せな物語

2005年06月01日 | 映画(ヤ行)
 「次々と襲いかかる不幸」と聞いてハラハラ、ドキドキのジェットコースター・ムービーを想像していたら、意外と穏やかな語り口でノスタルジックなおとぎ話の味わい。昔々・・・から始まって、幸せに暮らしましたとさ、で終わるハリウッド版「日本むかし話」とでも言えばよいか。ティム・バートン系のダークなビジュアルだが映画全体として「毒」がないのは、ジム・キャリーの憎めないキャラクターによっている。
 ストーリー的には両親の死の理由が、多分所属していたあるグループに関わっているらしいのだが、映画はミステリーとしてそちらの方へは行かず、まったく触れられることがないので、大いに不満が残る。続編が製作されるということなのか?
 エンド・クレジットのアニメーションが見事でとても手が込んでいる。「王様と私」のようなアジアン・テイストの傑作。この部分だけでもかなり制作費がかかっているように思う。
 幼い末娘役がホフマン姓だが、カメオ出演のダスティン・ホフマンと関係あるのだろうか?