フランス映画、「ベルサイユの子」を観ました。
これずっと観たかったのですが機会がなくてそのままだったのです。
現代のフランスの失業問題やホームレス、社会不適合を取り上げた作品です。
2008年製作で原題は「VERSAILLES」
世界遺産にもなっているあの華やかなベルサイユのイメージが強かったけれど、ベルサイユの森の中には多くのホームレスが暮らしている事に驚きました。
と言っても今はフランスだけでなくヨーロッパの多くの国が移民問題とか国の財政問題や失業問題が山積みになっているのも事実ですよね。
おもなあらすじは・・・
5歳の男の子エンゾ(マックス・ベセット・ドゥ・マルグレーヴ)を連れた若いシングルマザー、ニーナは職も家もなくさまよう毎日だった。
ベルサイユの森の中でダミアン(ギョーム・ドパルテュー)と出会い、子どもを置いてニーナは消えてしまう。
ダミアンは戸惑いながらもエンゾの世話をし、エンゾのために森を出て職を見つけようとする。
社会から離れた暮らしをしていたダミアンとエンゾはその後どうなるのか・・・というお話。
さて、あのフランスの名優ジェラール・ドパルデューの息子、ギョーム・ドパルデューが巧かった。
彼はこの年に37歳の若さで亡くなっているんですよね・・・
映画の中でも彼の存在は際立っていて忘れられないシーンが多くありました。
ホームレスでありながら道徳心を持ち、エンゾに生きる上での作法を教えたり。
実の父親と確執があったダミアンがエンゾのために実家に身を寄せる場面も痛々しかった。
そしてエンゾのために認知をし(実の子ではないのに)行政の手続きをし学校に通わせるシーン。
それらのシーンは言葉少ないのに彼の精いっぱいの愛情を感じました。
ダミアンが足を引き摺りながらエンゾを連れ歩くシーン。
(彼は実際にケガによる義足だったのですね・・・)
そして最後にやっぱり一人で出ていく時の表情は何とも言えませんでした。
ギョームの演技は表情が悲しそうで切なく見えました。
エンゾもすごく良かった・・・
あまり笑わず、しゃべらず、泣きもしないエンゾ。
子どもにとっては悲惨な生活だったはずなのに、母のそばに居たいとか、ダミアンのそばに居たいとか、ただそばに寄り添っていたい気持ちが何とも言えなかったです。
ダミアンが病院から出てくるまでずっと待つシーン。
髪や顔を洗ってもらう時のイヤそうな表情。
初めて学校に行って教室に入るのを渋る表情。
そんな場面がたくさん心に焼きつきました。
ダミアンが体調を崩した時に、ベルサイユ宮殿まで走って助けを求めた場面がまた良かった~
エンゾはダミアンから聞いた「王様の話・・・」をしっかり覚えていたのでしょうね。
それからダミアンの実家に行ってからエンゾが「森の小屋に戻りたい・・・」とささやくシーンは涙が出そうでした。
さて、ラストの展開はあっさりした描写でした。
ダミアンが消えた後にダミアンの父親とその妻に大切に育てられたと思うエンゾ。
(自分の部屋もあり、要するに生活の心配はしないで暮らせたのは彼らのおかげ)
いつの間にか反抗期独特の年齢になっていたエンゾに母親から手紙が・・・
母に会ってその後どうなったのか?
そしてダミアンはいったいどこに行ってしまったのか?
この映画、暗い画面は多いし、地味で退屈する人も多いかもしれません。
でもダミアン役のギョームが良かったし、エンゾの健気さが何とも言えず。
私にはまさにフランス映画らしく思えて、最後まで真剣に観られました。
でもなぜか悲しい・・・
ギョームの人生を想ってしまうほど悲しかったです。
今回の評価は・・・ 星4つ ☆☆☆☆ せつない映画です