報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサ達の卒業旅行前日」

2021-03-24 15:15:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月19日11:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はリサと高橋が散髪に行った。
 私は理容室派なのだが、この2人は美容室派だ。

 愛原:「はい、愛原学探偵事務所です。……あ、斉藤社長お疲れ様です」

 私が1人で事務所にいると、斉藤社長から電話が掛かって来た。

 斉藤:「明日はよろしくお願いします。それにしても、いいんですか?もっと設備の整ったリゾートホテルなんかの優待券もありましたのに……」
 愛原:「いいんですよ。やはり卒業旅行というからには、ただ単に温泉に入って宴会をやるような慰安旅行ではないと思うんです。観光もしてナンボだと思うんですね」
 斉藤:「そうですか」
 愛原:「文字通り慰安目的の慰安旅行と違い、卒業旅行は旅行気分が大事ですから」
 斉藤:「そういうことでしたら、愛原さんにお任せします。コロナ禍のせいで修学旅行が中止になった娘達の為、せめて卒業旅行はさせてやりたいと思いますので」
 愛原:「でしょうね」

 私の勝手な思い込みだが、修学旅行と言えば新幹線、飛行機、観光バスである。
 まずその1つ、新幹線はクリアしたい。
 それで高橋の車案を却下したのである。
 もっとも、現地での観光は車の方がいいだろうから、それは既に考えている。
 飛行機はそもそもまだ遠出をするのが憚れる時期であるし、観光バスなんかも、団体旅行ではないのだから現実的ではない。

 斉藤:「明日は朝から出発ですか」
 愛原:「ええ。やっぱり旅行気分はですね、朝から出発ですよ」
 斉藤:「一家言おありのようですね。期待していますよ」
 愛原:「お任せください」

 そんなやり取りがあってから電話を切ると……。

 リサ:「ただいまー」
 高橋:「戻りましたー」

 美容室に行っていた2人が戻って来る。
 リサは少し髪が伸びていたのだが、それをまた肩の所で切った。

 愛原:「お帰り。リサはまた綺麗にしてもらったな」
 リサ:「ありがとう。先生はロング嫌い?」
 愛原:「そういうわけじゃないんだが、日本版リサ・トレヴァーのロングヘアーって『1番』を思い出すからさぁ……」
 リサ:「ああ、あいつね。だから前にも言ったじゃん?私が『1番』が先生にしたことと同じことをして、そいつの記憶を上書きしてあげるよって。……いたっ」

 リサの発言の直後、高橋がリサにゲンコツをかます。

 高橋:「アホか!先生はあんな変態プレイは御望みじゃねぇ!」
 リサ:「そうかなぁ……?」

 リサは目を細めて私を見た。

 愛原:「高橋も髪形キマったな」
 高橋:「あざっス」

 まあ、イケメンはどんな髪形でも似合うんだがな。

 高橋:「留守の間、何かありましたか?」
 愛原:「さっき斉藤社長から電話があった。明日、よろしくって」
 高橋:「ああ。そうですか」
 愛原:「それと警察から。高野君の行方について」
 高橋:「またですか。何度聞いてきても、俺達はアネゴの居場所なんて知らねぇってのに」
 愛原:「あれだろ?霧生市で“青いアンブレラ”のヘリに乗ってたんだろ?で、『1番』にロケランぶっ放したって」
 高橋:「らしいっスね」
 リサ:「うん。高野さんが一番美味しい所持ってっちゃった」

 それで『1番』が大ダメージ食らったところを、栗原さんが首を刎ねてとどめを刺したとのこと。

 愛原:「今や“青いアンブレラ”の活動拠点は海外だから、高野君もそっちにいるだろ」
 高橋:「でしょうね」
 愛原:「次に会うとすれば、またどこかでバイオハザードが発生した時だろうなぁ……」
 高橋:「ですね。先生が行方不明になっておられる間、この事務所やマンションの場所を決めたのはアネゴなんですよ」
 愛原:「え?そうなの?」
 高橋:「世界探偵協会と交渉していたのは俺じゃなくてアネゴだったもんで、王子の事務所兼マンションが爆破された後はアネゴが主導で動いていたんですよ」
 愛原:「そうだったのか」
 高橋:「ちょうど新築のビルとマンションが見つかったからってんで、紹介されたのがここだったわけです」
 愛原:「高野君スゴいな。でもそれって……」
 高橋:「“青いアンブレラ”がバックにいたんでしょうね」
 愛原:「ここにしたのも、何か理由があるのかな?」
 高橋:「さあ……?たまたま新築で、その割には家賃も安いからって話でしたけど……」
 愛原:「確かにな。まあ、墨田区だから、そりゃ港区とか世田谷区とか、あっち方面よりは安いだろうよ。それでも新築だと、高めに設定されそうなものなんだけどな。王子のボロビルとだいたい同じ値段って凄いなって思った」
 高橋:「ええ。そうっスね」

 別にこのビルもあのマンションも、特に変わった所は無い。
 墨田区や隣の江東区によくある小規模のテナントビルだ。
 1フロア毎に1テナントが入るようなビル。
 エレベーターは辛うじて存在するが、定員10人前後の小さい物が1基だけ。
 そしてそれは、マンションも同じ。
 3LDKなのでそこそこ大きなマンションではあるが、それでも港区や世田谷区にあるようなタワマンと比べれば、何十分の一ほどにも小さい。
 そんなことを話しているうちに、そろそろお昼の時間になりつつあった。

 愛原:「どれ、そろそろお昼にしよう。12時台になると店が混むからな、今のうちに買ってこよう」

 何だかんだ言ってこの辺、小さな事業所がいくつもあるから、昼休みになれば飲食店は混雑するのである。

 高橋:「俺、行ってきますよ」
 愛原:「いや、いいよ。今度は俺が行こう。ずっと午前中は事務所に居っ放しだったし」
 高橋:「先生は何になさいますか?」
 愛原:「今日は“ほっともっと”にしよう。リサ、一緒に来てくれ。高橋は留守番頼む」
 リサ:「分かったー」
 高橋:「分かりました」

 私とリサは事務所を出た。
 さすがのリサも今は私服を着ている。
 年頃ながら、あまり私服には無頓着のようだ。
 斉藤さんがいかにも御嬢様といった感じの服装なのに対し、リサはパーカーやデニムのショートパンツといったところである。
 事務所の入口のドアの斜め向かいにあるエレベーターのボタンを押す。
 5階建てのビルの最上階なので、外側のボタンは下しか無い。
 当たり前だ。

〔下に参ります〕

 エレベーターがやってきて、ドアが開く。
 1階のボタンを押すが、ここでふと気づく。

〔ドアが閉まります〕

 このエレベーター、B1のボタンもあるのだ。
 確かに1階から乗ろうとすると、下のボタンもある。
 但し、普段は行けないように設定されているのか、ボタンを押してもランプは点かない。

〔ランプの点かない階には、止まりません〕

 このようなアナウンスも流れる。
 このビルには地下駐車場は無く、代わりに裏手に数台止まれる駐車場がある。
 私は恐らく機械室とか、管理人室でもあるのかと思っていたが……。
 今度、管理会社の人から来たら聞いてみるか。

〔ピンポーン♪ ドアが開きます。1階です〕

 エレベーターが1階に着いて、ドアが開く。
 そしてエレベーターを降りた時に、ふとまた気づいた。
 マンションも5階建てだが、やはりそこのエレベーターも地下1階のボタンがあったような気がする。
 そのマンションの地下にも、やはり住人が利用できる施設は無く、機械室か倉庫があるだけかと思っていたのだが……。

 リサ:「どうしたの?」
 愛原:「いや、何でも無い」

 私は首を振って、ビルの外に出た。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの卒業式の後」

2021-03-22 21:00:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月15日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 リサの卒業式は多少のハプニングはあったものの、何とか無事に終わった。

 愛原:「高橋、今日はリサの卒業祝いだ。一番デッカいステーキ焼いてやれよ?」
 高橋:「分かってますよ。ちょうどライフで、いい肉買えたんで」
 愛原:「当のリサはどうした?」
 高橋:「部屋ん中にいますよ。まだ、制服着てます」
 愛原:「卒業式は今日だったが、正式には今月一杯まで中学生なんだがな」
 高橋:「そうなんスか?」
 愛原:「そうだよ。だから、公共交通の運賃。子供運賃が大人運賃に切り替わるのは、3月31日を過ぎてからだ。小学6年生は例え今日が卒業式であったとしても、今月一杯は子供運賃でOKなんだ」
 高橋:「それは知らなかったっス」
 愛原:「高橋、小学6年生と中学1年生の間は何してた?」
 高橋:「多分、鑑別所に出入りしてたような気がします」
 愛原:「……あ、そう。筋金入りだねぇ……」
 高橋:「あざっス」
 愛原:「いや、褒めてねーよ」
 高橋:「中学生の殆どはネンショーだったもんで」

 少年院のこと。

 高橋:「あ、でも、ちゃんとケーキは3等分できましたからね?」
 愛原:「お前が10代の頃から、そういう心理テストはあったのか」
 高橋:「車が好きだったんで、『ベンツマークがそれじゃん!』ってすぐに気づきましたから」
 愛原:「ベンツマークを覚えていて、それをパッと思い出せたんだから、特に頭や心に異常は無かったということだな」
 高橋:「あざっス!」

 まあ、今の高橋を見ていれば、頭や心を病んで事件を起こしたというわけではないということはすぐに分かる。
 問題なのは……。

 愛原:「パール氏は違うだろうなぁ……」
 高橋:「違いますね。因みに、女子少年院でも同じ問題は出されるらしいんですよ」
 愛原:「ほお、そうなのか。で、パール氏は何て答えたって?」
 高橋:「『1人殺せば簡単に2等分、2人殺せばそもそも分割する必要無いですよね?』だそうです……」
 愛原:「……怖いねぇ」
 高橋:「ええ。さすがに教官から、『真面目に答えろ!薄笑いするな!』って怒られたらしいですけど……」
 愛原:「某有名鬼退治マンガに登場してたら、パール氏は鬼側かもな」
 高橋:「……ですね」

 それでも証拠不十分で連続殺人犯としては立件できず、しかも1人の殺人の時も情状酌量を認められて減刑されたらしいが……。

 リサ:「何を話しているの?」

 その時、リサが部屋から出て来た。
 まだ、中学校の制服を着ている。
 もうこれからは、この制服を着て学校に行くことはない。
 が、高校に関してもブレザーがシングルからダブルになるだけで、特に全体的なイメージが変わるわけではないのだが。
 もう1つ、中学校の制服と違う所がある。
 それは中学校では名札があった。
 但し、校外で犯罪に巻き込まれないよう、着用はあくまで校内に限るという条件付きだが。
 高校ではそれが無くなり、代わりに階級章が付く。
 具体的にはブレザーの左側の二の腕の外側に、1年生なら星が1つ、2年生なら星が2つ、3年生なら星が3つの小さなワッペンを着ける。
 あとは左胸ポケットの上にも同じ物を着ける。
 こうして、学年がすぐに分かるようにしているらしい。
 ワッペンはマジックテープ式である。

 愛原:「ああ、いや、ちょっと少年院の話を……」
 リサ:「? お腹空いた」
 愛原:「もうちょっとでできるみたいだ。リサ、皿を並べるの、手伝ってくれ」
 リサ:「分かった。それとサイトーが、卒業旅行どこがいいかだって」
 愛原:「ああ、そうだな。斉藤社長と話してみたんだ。この前、仕事以外での泊まり旅行と行ったら八丈島に行っただろ?」
 リサ:「そうだね」
 愛原:「つまり、海だ。コロナ禍のせいで海水浴はできなかったが、でも海に行ったということにはなる」
 リサ:「まあね」
 愛原:「だから今度は山に行こうと思う。どうかな?」
 リサ:「いいと思う。山と言えば温泉だね。先生の趣味?」
 愛原:「いや、まあ、それはどうでもいいんだ。お前と斉藤さんの卒業旅行なんだからな」
 リサ:「それで、場所はどこ?」
 愛原:「静岡だ。この前も行ったけど、バイオハザードに巻き込まれて大変なことになっただろ?それをもう一度やり直そうって話だ」
 リサ:「あそこの焼きそばは美味しかった」
 愛原:「富士宮焼きそばか。そうだろう」
 リサ:「あとは富士ミルクランドのジェラートとか、まかいの牧場の牛と羊がすごく美味しそう……」
 愛原:「食う以外の思い出無いんかい」
 リサ:「確かにもう一度食べてみたい物は多い。全部回り切れるかな……」
 愛原:「取りあえず、現地までは電車で行くが、そこから先は高橋がレンタカーを運転してくれるだろう。なあ?高橋」
 高橋:「あ、はい。お任せください」

 こうして、夕食ができた。
 因みに私のスマホには、栗原蓮華さんからのメールがあった。
 そこには、『3月20日はお彼岸で静岡まで行くんです。良かったら、途中まで行きませんか?』と。
 JKからの誘いを断るのは、罰が当たるな、うん。
 これが、私が行き先を決めた、まあ決め手である。

 愛原:「それじゃ、早速食べよう」
 リサ:「うわぁ、大きい!」
 高橋:「先生の大慈大悲で、300gだ。レアが好みだったな」
 リサ:「血が滴るくらいが美味しいの」

 リサは思わず第0形態ながら、口にだけは牙を生やして言った。

 愛原:「野菜や果物もしっかり食えよ」
 高橋:「行き先は静岡ですか」
 愛原:「緊急事態宣言が21日まで延長になったことだし、そんな遠くへは行けないだろうと思ってさ。それに、『1番』を倒して危険なリサ・トレヴァーがいなくなった今、もうバイオハザードに巻き込まれる心配は無いだろうと思ってさ」
 高橋:「だといいっスね。泊まりはまたあの……温泉施設っスか?」
 愛原:「いや、斉藤社長の紹介で、ちゃんとした旅館だよ。和室で大浴場付きの。何でも駅近にありながら、富士山がよく見えるんだって」
 高橋:「ガチの観光って感じですね」
 愛原:「そうだろうそうだろう」
 高橋:「でもだったら、もうここから車で行った方が良くないっスか?俺、首都高や中央高速だけじゃなく、東名なんかも随分と走り込みましたんで……」
 愛原:「俺は新幹線と電車に乗りたいんだ……!」( ;∀;)
 リサ:「お兄ちゃん、空気読んで!」(# ゚Д゚)
 高橋:「さ、サーセンっした!」Σ(゚Д゚)

 私の泣きにリサが怒りの第1形態(鬼娘)への変化。
 額の上に1本角が生え、両耳が長く尖り、口には牙が覗き、瞳の色は赤くなる。
 両手の爪も長く鋭く伸びた。
 そして、高橋がびっくりして謝罪したのだった。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの卒業式」

2021-03-21 19:56:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月15日09:00.天候:晴 東京都墨田区某所 東京中央学園墨田中学校]

 アデランス:「これより第○○回、東京中央学園墨田中学校卒業式を開催致します。司会は私、アデランスこと、矢島であります。どうぞ、よろしくお願い致します」

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はリサが、いよいよ卒業式を迎える。
 なので、こうして私は保護者として参加しているわけだ。
 PTA会長席には斉藤社長が座っている。

 アデランス:「今年にありましては昨年に引き続き、新型コロナウィルスの脅威に晒された年でもあります。当校におきましては、何としてでも人生の節目である中学校の卒業式を開催したいとの思いから、三密対策を心掛け、分散卒業式を開催するという結論に至ったものであります。当校の卒業生は1組から6組までございます。本日の卒業式は1組から3組、そして4組から6組におきましては翌日開催されます。また、保護者の参加も生徒1人につき1名までとさせて頂き、席をソーシャルディスタンスすることで密とならぬよう、配慮させて頂きました。どうか皆々様の御理解、ご協力を賜りたいと存じます」

 それにしても司会者のネタ、東日本大震災前から日蓮正宗の信仰をしていた一部の読者しか知らないだろうなぁ……。
 この学園では司会者なんかも外注委託なんだな。
 普通は教職員がやるだろうに……。

 アデランス:「それではまず初めに、卒業生の入場です。皆様、拍手でお迎えください」

 うむ、これぞ卒業式って感じだな。
 リサと斉藤さんは3組だから、1番後かな。
 で、その際に流れるBGMだが、学校毎に個性がある。
 吹奏楽部による生演奏の所もあるし、校歌をインストゥルメンタルで流す所もあるし、勇ましいマーチを流す所もある。
 因みに“蛍の光”は退場曲だ。
 この中学校は何なんだろう?
 見た感じ、吹奏楽部ではないようだが……。

〔ダン!ドン!ダン!パッパラ~♪パパ~パパ~ン♪パッパラ~♪パパパパ~ン♪……〕

 おや?どうやらここは勇ましいマーチのようだ。
 しかし、何だ?軍歌かこれ?
 いいのかな?東京中央学園は、思想的には右寄りの学園だとは聞いたが……。
 しかし、どうやらやっぱり違うようだ。
 PTA会長席に座っていた斉藤社長が慌てて立ち上がり、体育館内の音響室に駆け込んだ。

 斉藤:「何を流してるんだ!?止めろ!」
 サトー:「あぁッ?何だよ、会長さんよォ!顕正会じゃ、“広宣流布の大行進”を流すのが鉄板だぜっ、あぁっ!?」
 斉藤:「バカモン!クビだ!私は“威風堂々”を流せと言ったんだ!つまみ出せ!」
 サトー:「あ~れ~……!」

 サトー様、斉藤社長の黒服SPに連れ出される。

 修羅河童:「全く。これだから顕彰会はダメですね~。この私にお任せあれ」
 斉藤:「頼んだぞ」

 斉藤社長、急いで音響室から出て会長席に戻る。

〔パン♪パパパパパ~ラッ♪パッパ~♪「濁悪の~♪此の世往く~♪学会の~♪往く手を阻むは♪何奴なるぞ~♪」〕

 ズコーッ!

 来賓:「うわっ!東京中央学園が創価学園になった!?」

 またもや音響室に駆け込む斉藤社長。

 斉藤:「消せーっ!」
 修羅河童:「怨嫉謗法はダメですよ」
 斉藤:「つまみ出せ!」

 斉藤社長の黒服SPが70過ぎの老人にも容赦無く連れ出す。

 修羅河童:「怨嫉謗法はやめなさい!それより功徳を語りましょう!」
 斉藤:「誰が“威風堂々の歌”を流せっつったよ!……あーあーあ。楽曲データ、メチャクチャにしちゃって……」
 愛原:「社長、代わりにこのCDを!」
 斉藤:「愛原さん、申し訳ありません」
 愛原:「さすがに音響係まで外注化するのは如何なものかと……」
 斉藤:「すいません。うちの会社では、それが当たり前なもんで」

 きっと社長の会社、正社員より派遣社員の方の数が多いんだろうなぁ……。

 斉藤:「あっ、いい曲だ。これなら……でも、何の曲ですか?」
 愛原:「“東方Project”で有名な上海アリス幻樂団より、“未知の花 魅知の旅”です」
 斉藤:「絶対それ、作者の趣味でしょ」
 愛原:「でしょうなぁ……」

 それから……。

 アデランス:「(えー、コロナ禍の影響と字数制限の都合で色々と省略致しまして)最後に、卒業生が退場致します。場内の皆様、拍手でお送りください」

 あ、ここで“蛍の光”が流れるのか。
 因みにこの歌、本当は4番まである。
 しかし、NHK紅白歌合戦を始め、殆ど1番しか歌われないのは、3番と4番が愛国主義的な歌詞である為、日教組やら共産党やら色々うるさいのでカットされている。
 が、ここではしっかり流れていた。

 3番『筑紫の極み、陸の奥、海山遠く、隔つとも、その真心は、隔て無く、一つに盡くせ、國の為』
 4番『千島の奧も、沖繩も、八洲の内の、護りなり、至らん國に、勳しく、努めよ我が兄、恙無く』

 特に4番にあっては、ロシアとアメリカに聞かせてやりたい。

 そして、卒業式は無事に終わった。

 斉藤:「愛原さん、私の依頼した仕事、行き先は考えて下さってますか?」
 愛原:「あ、はい。もう色々と……」
 斉藤:「コロナ禍で海外へは行けない状態なので、また国内になりますが、よろしくお願いします」
 愛原:「はい。そりゃもう……」
 斉藤:「どこか候補は決めてますか?」
 愛原:「そうですねぇ……。やっぱり緊急事態宣言がまだ出ていますし、そんなに遠くへは行けないと思うんですよ。でも、何か思い出になるような所へは行きたいと考えております」
 斉藤:「それはいいですね。具体的にはどんな?」
 愛原:「リサと絵恋さんは体力自慢ですから、何かこう体を動かすような所がいいんじゃないかと……。この時季なら、まだ雪国ではスキーができますし、あえて温水プールで泳ぐっていう意表を突くという手もあるでしょうし……」
 斉藤:「そして愛原さんは温泉に入りたいというわけですね?」
 愛原:「いや、まあ、その……ハハハ……」
 斉藤:「しかし、いいアイディアだと思います。娘はどうせリサさんと一緒ならどこでもいいと言うに決まってますし、結局のところは彼女の希望が優先になるんじゃないですかね?」
 愛原:「……ですね」

 そしてリサはリサで、私の行く所ならどこでも行くと言う。
 私と社長は、また後で打ち合わせすることになった。
 
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤社長からの依頼」

2021-03-21 11:38:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月12日15:35.天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所→都営バス新橋停留所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 NPO法人デイライト東京事務所で書類手続きと、善場主任との打ち合わせが終わり、私と高橋は事務所を出た。
 さっきまで降っていた雨だが、ようやく上がったようだ。
 まだ空はどんよりと雲っていたが。

 リサ:「お疲れさま、先生」
 愛原:「ああ、待たせたな。じゃあ帰ろう」
 高橋:「どこ行ってたんだ、お前ら?」
 リサ:「色々。この辺、色んなお店がある」
 斉藤:「1時間だけじゃ回り切れないですわ」
 高橋:「よし。じゃあ、俺達は先に帰るから、お前らは後で来い」
 リサ:「いや、私も帰るって」
 斉藤:「リサさんが言うならぁ、私も帰るぅ!」
 愛原:「別の意味で面白いコントをしてくれるなぁ……」

 菊川方面へ行く都営バスは、ただ単に『新橋』というバス停から出る。
 『新橋駅前』ではないのは、他の新橋駅前バス停と違って、新橋駅から少し離れているからだろう。
 しかし、新橋地区にはある。
 他のバス会社なら、それでも強引に『新橋駅前』にするか、『新橋駅入口』とかいう名前になりそうだ。
 本数は東20系統と違ってとても多く、私達が乗ろうとする便は、前の便が出てから4分後に発車するという高頻度ぶりだ。
 雨が降っていたら、もっと混んでいたかもしれない。
 バスがやってきて、私達は前から乗り込んだ。
 私と居候を始めたばかりの頃は、リサは電車やバスの乗り方を知らず、私が教えたものだ。
 今は随分と慣れた様子である。
 バスに乗り込むと、1番後ろの座席に座った。

 リサ:「あ……」

 そこでリサが思い出したかのように言った。

 リサ:「先生。今日ね、栗原……先輩も来ることになってたんだけど、『体調不良』で来れないって」
 愛原:「そうなのか。それはしょうがないな」

 栗原さんも来るつもりだったのかい。

 リサ:「そろそろ『来そう』だなぁと思っている時に天気が悪くなると、それがきっかけで『来る』こともあるからね」
 愛原:「そういうものか」

 私は頷いた。
 そんなことを話しているうちに、バスにエンジンが掛かる。
 この時点で座席の半分以上が埋まっていた。
 さすが都営バスはドル箱路線を多く抱えている。
 さぞかし一般路線バスとしては日本一の輸送量かと思いきや、都営バスは2位に甘んじているのだという。
 では1位はどこかというと、神奈川県の神奈川中央交通(略称、神奈中)とのこと。

〔発車致します。お掴まりください〕

 乗車口の前扉が閉まって、バスが走り出した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝どき橋南詰、豊洲駅前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋がご便利です。次は、銀座西六丁目でございます〕

 斉藤:「あ、そうだ。私も事務所に行っていいですか?」
 高橋:「おい。子供の遊ぶ所じゃねーぞ」
 愛原:「まあまあ。どうかしたのかい?」
 斉藤:「お父さんが先生に送った依頼書がどんなものか見てみたいんです。フザけたものでしたら、私から言っておきますから」
 愛原:「フザけたというか……。まあ、面白い依頼書をいつも送ってくれるよね。それでいて報酬は高いんだから、俺としては文句は言えないな」
 斉藤:「でも、モノには限度ってものがありますから」

 私の中では斉藤社長の依頼内容は限度内だし、そもそも娘のお守りを依頼してくる時点で、探偵業とはおよそかけ離れた限度外だと思う。
 要は斉藤さんは、何か口実を作って、少しでも長くリサと一緒にいたいのだ。
 私はそう思い、了承した。
 斉藤さんは嬉しそうにしていたが、高橋が不満顔であった。

[同日16:45.天候:曇 墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 事務所に到着すると、まずはファックスとメールを確認した。
 斉藤社長の依頼書はファックスで送られており、やはり内容は娘である斉藤絵恋さんをリサの卒業旅行に同行させて欲しいというものだった。
 その代わり、宿泊先のホテルまたは旅館の優待券を融通するとのことだった。
 全く、予想通りの展開であった。
 まずは私は依頼を受ける旨の返事をする為、ボスの所に電話した。

 ボス:「退院おめでとう。私も嬉しいよ」
 愛原:「ありがとうございます。ボス」
 高橋:「ていうか今頃ボスが登場しても、今の読者は忘れてるんじゃねーか?」
 ボス:「聞こえてるぞ、高橋君。今度の仕事は、高橋君抜きで頑張ってくれ」
 高橋:「いや、冗談っスよ、ボス!ガヂバナじゃないッス!」
 ボス:「まあいいだろう。斉藤社長には私から言っておく。候補地を後でメールするから、粗方の目星を付けておいてくれ」
 愛原:「分かりました」
 ボス:「尚、このテープは自動的に消滅する」
 愛原:「は?」
 ボス:「スマン。1度言ってみたかったのだ」
 愛原:「そんな昔のスパイ映画みたいなこと、今では全然無理ですよ」
 ボス:「そうだな。今時、カセットテープなんて有り得ん。夢の無い話だ」
 愛原:「そうですね。……それじゃ」

 私は電話を切った。

 愛原:「特にフザけた内容じゃなかったな、斉藤さん」
 斉藤:「そのようですね」
 愛原:「むしろ今回はボスの方がお茶目だった」
 高橋:「読者に忘れられないように、わざとボケてるんスかね」
 愛原:「まあ、カンベンしてやってくれ」
 高橋:「はあ……」
 斉藤:「じゃあ、私はこれで。パールが心配しているといけないので」
 愛原:「ああ。気を付けて帰れな」
 斉藤:「じゃあね、リサさん」
 リサ:「ああ。また」
 高橋:「やれやれ。やっと帰ったか」
 愛原:「それより、候補地ってどこなんだろうな?」
 高橋:「意表をついて、地球の裏側とかかもしれないっスよ?」
 愛原:「ブラジルとかか?それは遠いな。うん、遠すぎるよ。確か飛行機でも丸一日掛かるような距離だぞ」

 国内だと思う。
 ただ、中には離島とかも入っているだろうな。
 まあ、私は温泉に入れればそれで良いのだが。
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物語の途中ですが、ここでボッチ登山の模様をお伝えします。

2021-03-20 20:30:21 | 日記
 

 スタート地点は東京駅から。
 オレンジ色のラインがJR東海であることをアピールしている。

 

 私が乗車したのは“こだま”705号、名古屋行き。
 先頭車の1号車に乗ったからかもしれないが、とても空いていた。
 タイプはN700A。
 やはりN700Sは“こだま”にはまだ使われていないようだ。
 尚、写真からでは分からないが、JR西日本の車両である。
 見分け方は車両の下部にペイントされたJRマークの色と、車内チャイムの曲。
 即ちJR西日本だと“いい日旅立ち・西へ”が流れる。

 

 今朝の朝食はJRCPの“深川めし”
 精進潔斎の為に肉食は禁止である( ー`дー´)キリッ
 ……はい、んっ?さん、何でしょう?
 ……え?そんなこと御書のどこに書いてあるのかって?
 それは【お察しください】。
 ……はい、そこの曹洞宗の信徒さん。
 ……え?禅寺では魚食も禁止だって?魚食をしている以上、精進潔斎とは言えないって?
 それは【お察しください】。

 

 中身はこれ。
 アナゴの蒲焼と小エビ少々とアサリの煮しめと……思いっ切り魚食なのでした。

 

 えー、無事に新富士駅に着きました。

 

 新富士駅富士山口のバスプールから、富士駅南口のバスに乗り換える。
 コロナ禍でもバスの本数は変わらないようだ。
 因みに車種は中型バス、或いはコミュニティバスでお馴染みの小型バスで運転される。

 

 富士駅に到着。
 在来線でもJR東海なので、駅名看板の意匠は変わらない。
 ここから乗り換えたのは313系。
 画像は以前に乗車したのと全く同じなので、そちらを参照して頂きたい。
 ボックスシートの付いた、身延線では標準タイプ。
 但し、シートピッチはそんなに広くない上、背もたれの角度も直角に近い。
 せいぜいJR東日本のE233系並みの柔らかさにプラスして、頭の部分にカバーが付いているくらいである。
 ワンマン運転に対応している車両ではあるものの、どうも運転席にドア開閉スイッチが無いらしく、運転士は駅に到着する度にいちいち運転席を立って、車掌スイッチを扱わなければならない。
 富士宮駅や西富士宮駅みたいな島式ホームだと、左ハンドルのJR車両では特に大変だ。
 というか、乗客側からしてもなかなかドアが開かないからじれったい。
 これがホームドアがあるからとか、安全面の為なら致し方無いのが、さすがにこれは効率が悪い。
 他のJRみたいに、運転台にドアスイッチを付けてやれないものか。

 

 下車駅の西富士宮駅に到着。
 運転士がまだ車掌スイッチを扱っていないのにJR東日本の感覚ですぐにドアボタンを押してしまい、あれ?おかしいなと思って連打していると、運転士が申し訳無さそうな顔で私を見ていた。
 あっと!ここはJR東海だった!運転士さん、焦らせてスマン!

 いつもなら駅前でタクシーが数台ヒマそうに並んでいるのだが、既に春季彼岸会で需要が多かったのか、今回はいなかった。
 次の電車を待つくらいの時間、タクシー乗り場で待っていたが、なかなか来ないので、地元のタクシー会社に電話。
 それからだいたい6分くらいで来た。
 御山で大きな行事がある時は、このローカル駅のタクシーも忙しいようだ。

 

 工事の終わった三門。
 あえて交差点から斜め向きに撮ってみました。
 やっぱり総本山の建物が立派なのは良いことだと思うよ。
 特別御供養に対して、批判的な意見もあるみたいだけど。
 やっぱり新願者を連れて来る時に、みすぼらしいお寺だと何かねぇ……。
 顕正会の会館は地味だけど、まあ口では、「顕正会はカネが掛からない」と言ってるだけのことはあると思うよ。
 ああ、分かってる。会員からの御供養は殆どが浅井家の金庫に入っているのであり、会館に対してもあまりカネを掛けないケチ構造であるということは。
 そういった意味では、いくら自分の為とはいえ、会館に金を掛けた池田会長の方が偉いと思う。

 

 境内の桜。
 一分咲きってところかな。
 ちゃんと桜は咲いているからね?

 

 報恩坊の入口です。
 私が折伏した新願者の方も、必ずここを通って頂きます。
 それがいつになるのかは、【お察しください】。

 さて、春季彼岸会なのだが、恐らく私が一時期所属させて頂いた法道院さんでは信じられないだろう。
 参加者は私1人である。
 もう一度言おう。
 参加者は私1人である。
 この時点で嫌な予感が立ち込めている。
 確か昔、報恩坊に最初に所属した頃も、1人でボッチ登山させて頂く機会が何回かあったのだが、その度に事故に巻き込まれたりしたものだ。
 帰りの電車が人身事故を起こしたとか(おかげで人が電車に轢かれる時、どういう音がするか分かったよ)、近所の交差点で車同士の衝突事故があり、その部品が私の所に飛んで来たとか……(歩道の向こう側で起きた事故だから大丈夫……なんてことはない!)。
 いずれにせよ、ボッチ登山の帰りのことである。
 それを思い出した。
 彼岸会については……特に問題無く終了した。
 御住職からは彼岸とはそもそも何なのか?春季彼岸会にお供えする牡丹餅と御萩の違いは何か?ということについて講話を頂戴した。
 どちらも雑学としては知っていて、特に前者は彼岸と此岸を隔てる三途の川を渡る鉄道会社、冥界鉄道公社(略称、冥鉄)の元ネタにもなった。
 しかし、深い意味を知ったのは今日が初めてだ。
 此岸に入ると、こちら側の鉄道に第二種鉄道事業者として乗り入れ、それはごく一部の鉄道関係者しか知らないのだが、霊感の強い者はたまたま見えてしまう……という設定だったかな。
 で、帰宅した時に、私はとんでもない失態をしていたことに気づく。
 御塔婆御供養をしたことのある方は分かっていると思うが、それを所属寺院で行う場合、御塔婆御供養とは別に寺院に対しての御供養を出すだろう?
 私はそれを一緒にして出したつもりでいた。
 御住職もそれで良いと仰ったからだ。
 ところが当初、私はそれを別々にしていた。
 余計なこと考えず、それをそのまま出せば良かったのに、私ときたら、

 雲羽:「やっぱり別々にすると効率が悪いのではないだろうか?同じ坊に出すものだし、一緒にした方が良いだろう」

 と考えてしまったのだ。
 そして、それをすぐに実行すれば良いのに、ブログの更新を先にしてしまったものだから、そのまま忘れた。
 結果、坊に出したのは御塔婆2つ分の御供養だけであり、しかも口では、「それとは別に坊への御供養も入ってます」と言ったものだから、御本尊の前で堂々と詐欺行為をしてしまったのである。
 帰宅してから、何故か机の上にポツンと封筒。

 雲羽:「え……?何で御供養もう1つあんの?」

 次の瞬間、室内に絶叫がこだましたことは言うまでもありません。
 ボッチ登山という警告、そして地震という最終警告、それすらも何のことだかさっぱり分からん状態で帰宅してようやく気付いた阿呆が1人ここにいたのでした。
 現在、御住職にメールを送信し、謝罪とこの御供養どうしたら良いか指示待ち中……。

 全国に法華講員が何人いるのか、正確な数は分からんが、御供養忘れて登山するヤツなんてそうそういないだろうなぁ……。
 しかも本人は御供養したつもりでいるのだから。
コメント (2)
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