報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「アリスのリハビリ」

2020-06-28 16:07:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日08:00.長野県北部山中 マリアの屋敷 視点:稲生勇太]

 朝食の時間になり、アリスが部屋から出て来た。
 案内するのはメイド人形のミカエラである。
 急いで洗濯、乾燥した服を着ていた。
 鎧の下に着る、いわゆる綿入れを着ている。
 ワインレッド系のノースリーブのワンピース型であった。
 騎士なので、いわゆる金を自分で稼ぐ傭兵などとは違い、ビキニアーマーなどは着ない。

 稲生:「Good morning!Sir.Links!」

 稲生は立ち上がってアリスに挨拶した。
 見た目が赤毛の白人なので、アルカディア王国第2公用語の英語で挨拶した。

 アリス:「Year.あなたが私を助けてくれた日本人?」

 アリスは英語で頷いた後、第1公用語の日本語で返して来た。

 稲生:「たまたま帰りの道すがら、あなたを発見しただけです。そして、この家にお連れしました」
 アリス:「そう。助けてくれてありがとう。私はアルカディア王国騎士団のアリス・リンクス。確かに叙勲はされているから、『Sir』と呼ばれるけど、ここでは単に『アリス』でいいから」
 稲生:「でも……」
 アリス:「あなた、名前は?」
 稲生:「あ、稲生勇太と言います」
 アリス:「よろしく。稲生」
 稲生:「よろしくお願いします」
 イリーナ:「さてさて。挨拶も済んだし、朝食と行こうかね」

 アリスの毛が本当に赤いのに対し、イリーナの赤毛はどちらかというと、赤茶色に近い。
 因みによくアメリカンドラマで、何人か出てくる白人の女の子のうち、大抵1人は『ジンジャー』と呼ばれる子が出てくるが、元々は『赤毛の子』という意味とのこと。
 黒人や黄色人種では、素の赤毛はいない為、彼女らが『ジンジャー』と呼ばれることはない。
 もっとも、ドラマを観ている限りでは、どういうわけだか、赤毛ではないのに『ジンジャー』と呼ばれる子もいるが(今はただ単に『赤毛だから』そう呼ばれるわけではないのかもしれない)。

 イリーナ:「体の具合はどうだい?」
 アリス:「昨晩よりはいい。ただ、まだ体が時々痺れる。……痺れるというのは、どういうことだろう?」
 イリーナ:「その『痺れ』というのは、本当は『痛み』なの。だけど、回復魔法ってのは『痛み』も取り去ってくれるから、それで本来、傷痕が疼く『痛み』が、代わりに『痺れ』という形で現れるのよ」
 アリス:「では、私のケガは見た目だけで、本当は治っていないと?」
 イリーナ:「そういうことよ。あくまでも回復魔法というのは、戦闘中にHPが0になって『戦闘不能』になるのを防止する為の魔法。だから、あなたのHPは今はマックスになっているはずよ」
 アリス:「なるほど。これはまた士官学校とは違うことを言われるものだ」
 イリーナ:「士官学校には魔道士はいないからね」
 マリア:「でも師匠、今のHPとかの表現、勇太の受け売りでは?」
 イリーナ:「日本のRPGは表現方法として面白いからいいわ」
 アリス:「すまん。ちょっと何言ってるか分からない……」
 稲生:「すいません。魔道士の会話で……」
 アリス:「『痺れ』が治まることが、イコール私のケガが完治するということでいいんだな?」
 イリーナ:「そんなところね」

 イリーナは大きく頷いた。

 イリーナ:「ケガが治るまで、ここで療養するといいわ。そうそう。騎士団本部には連絡が付いてね、『ケガが治ってからで良い』ということだったわ。だから、安心してゆっくり養生なさいな」
 アリス:「凄いな!どうやって騎士団本部に連絡を取ったのだ?」
 マリア:「アリス。うちの師匠は元・宮廷魔導師だ」
 アリス:「! そんなに偉い型だったとはっ!とんだ御無礼を!」

 アリスは慌てて椅子から立ち上がると、すぐにイリーナの前に片膝を付いて畏まった。

 イリーナ:「いいのよいいのよ。どうせ、バァルの爺さんの介護……じゃなかった。御守りしてただけだから」
 アリス:「宮廷魔導師の経験のある方とあらば、このような立派な屋敷に住まわれているのも十分納得が行く」
 稲生:「アリスも貴族の出でしょう?このくらいの屋敷に住んでるんじゃないの?」
 アリス:「いや、私の実家はここまで大きくはない。爵位も子爵程度で……」
 稲生:「男爵よりも上だ!凄いじゃない!」
 アリス:「いや、父が名誉の戦死を遂げたので、それで上がっただけのこと。本来、元々は男爵だったんだ」
 稲生:「なるほど。お父さんの後を継いで、騎士に……」
 アリス:「いや、兄が既に別の騎士隊の隊長をしている。子爵の爵位も兄が受け継いだ。兄妹で同じ隊にいるわけではない」
 稲生:「何だか圧倒されちゃうな。僕なんか絶対に叙勲されることがない……」
 イリーナ:「そもそもが、日本にはもう貴族制度も華族制度も無くなったから、ピンと来ないでしょ?」
 稲生:「そうですね」
 イリーナ:「貴族は『絶対的上級国民』とでも思えばいいんじゃないかしら」
 稲生:「ああ、なるほど」
 アリス:「あの、1つお願いがあります」

 アリスはイリーナに向き直った。

 イリーナ:「ああ、心配要らないわ。ケガが治ったら、王国へ帰してあげるから」
 アリス:「いえ、そうではありません。このまま寝ているだけだと体が鈍ってしまうので、リハビリをさせてはもらえませんでしょうか?」
 イリーナ:「リハビリねぇ……」

[同日10:00.同屋敷・中庭 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]

 アリス:「でやぁーっ!!」

 マリアが魔法で命を吹き込んだ失敗作の人形に斬り掛かるアリス。

 マリア:「ちっ!」

 マリアは両手に持った『見えない操り糸』で人形達を操っているが、アリスを翻弄させてやるつもりが、逆にバッタバッタと斬られていく。

 アリス:「くっ……!」

 ビリッとアリスの左腕に痺れが走る。
 見た目に傷は無いが、稲生に助け出された時、出血していた部分だ。

 マリア:「それだけ戦えれば、十分なんじゃないの?」
 アリス:「いや、まだだ!もう一回!」
 マリア:「もう代わりの人形は無いって。……あ、そうだ」

 マリアは何かを思いついた。

 マリア:「デカ物だけど、戦ってみるか?」
 アリス:「上等だ!来い!ゴーレムでも何でも、倒してみせるさ!」
 マリア:「うん。正しくそのゴーレムなんだけど」

 主人公の敵役の魔法使いがよく使役する巨大人型人形だ。
 但し、ゲーム作品によっては敵としてではなく、味方として、あるいは仕掛けを解く為のギミックとして登場することもある。
 マリアが召喚したのは顔の無いマネキンで、ボブ・サップみたいな体型をしたものである。

 アリス:「何だ、こんなものか。もっと大きいかと思った」
 マリア:「せっかく魔法で治ったケガが、また開いても知らないぞ」
 アリス:「分かってる。行くぞ!」

 アリスはゴーレムと対峙した。

 マリア:(騎士も所詮は根性論の体育会系か……)
 アリス:「何だ!?さっきの人形達よりも動きが細かいぞ!?」
 マリア:「だから、ただのゴーレムじゃないんだって」

 マリアはニヤリと笑いつつ、チラッと2階の窓を見た。
 そこには何故か、ゲームのコントローラーを握った稲生がいた。

 稲生:「せっかくPS4で遊ぼうと思ってたのに……」

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