報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「魔界の戦況」

2020-06-29 20:01:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日11:00.アルカディアシティ1番街 魔王城 視点:稲生勇太]

 警備兵A:「今は緊急事態ゆえ、不要不急の来城をお断りしております!」

 正門から入ろうとすると、門衛の警備兵に止められた。

 イリーナ:「私は宮廷魔導師ポーリンの妹弟子なの。ポーリン姉さんに取り次いで下さる?」
 警備兵A:「申し訳ありませんが、例え宮廷魔導師の旧知の方であってもお断りすることになっております!」

 警備兵は頑として聞かない。
 もちろん、これだけ命令に忠実な兵士は必要である。

 アリス:「では私の命令ではどうか?」
 警備兵A:「そ、その出で立ちは……!」

 警備兵はアリスの姿を見て、すぐに騎士団員だと分かった。
 何度も述べているが、騎士と兵士ではまるで身分が違う。
 例え騎士団の中ではまだ階級の低いアリスでさえ、所詮は中・下級国民から登用された兵士と比べれば、絶対的上級国民なのだ。

 アリス:「私の名前において、この方達の入城を許可するが、それでどうか?」
 警備兵A:「は、はっ!騎士団の方の御命令とあらば……」

 警備兵はアリスの前では敬礼をして、ついに稲生達を入城させてくれた。

 エレーナ:「ここではイリーナ先生よりも、アリスの方が偉いみたいですね」

 エレーナは皮肉めいた顔をして言った。

 アリス:「イリーナ師には申し訳ないが、今はダンテ一門の魔道士は多少評判が悪い。捕縛されなかっただけでも良しとして頂きたいものだ」
 イリーナ:「分かったわよ。ポーリン姉さんに会ったら、すぐに人間界に帰るわよ」

 イリーナは肩を竦めて答えた。

 女騎士A:「アリス!アリスじゃないか!生きてたのか!」
 女騎士B:「って、そこにいるのは魔道士達!?何だ、捕虜か!?」
 上級警備兵:「魔道士の入城はお断りしているはず!これは一体どういうことですかな?」
 アリス:「私は確かに生き残れたんだけど、瀕死の重傷だった。それをこの方達に助けられたんだよ」
 女騎士A:「ほ、本当か?」
 女騎士B:「何かされなかった?」
 上級警備兵:「それがもし本当なら、表彰ものですが……」
 アリス:「本部に戻って報告したいんだけど、その前にこの方達、ポーリン師に会いたいんだって」
 女騎士A:「そりゃ無理だろう。今、重役会議中だぞ?」
 イリーナ:「終わるまで待たせてもらえないかしら?」
 女騎士B:「それは無理だ。そもそもが今、魔道士が国中で暗躍しているせいで、あなた達を本来なら捕縛しなくてはいけないくらいなんだ」
 エレーナ:「私達、何もしてないぜ!?むしろ、あんた達の仲間を助けてあげたくらいだぜ!?」
 女騎士A:「あなた達に関しては仲間のアリスを助けてくれたこと、礼を言う。だが、用が済んだら、早々に退城して頂こう」
 稲生:「うーん……何か、すっかり信用されてないな」

 元々が魔道士という存在自体が得体のしれない者という扱いをされていたからだろう。
 騎士から見て下賤な身分である傭兵に付くことが多く、それもまた偏見の理由であろう。
 最初アリスも警戒していたくらいだ。

 稲生:「せめてこの前、クエストで訪ねた6番街とか、南端村が無事かどうかは確認したいですね」
 女騎士A:「あくまで攻撃を受けたのは7番街だけだ。6番街と郊外のサウスエンドは無事だ」
 稲生:「良かった」
 女騎士B:「アリスの家も、まだ戦火には見舞われていない」
 アリス:「そうか。それは良かった」

 アリスはそう言うと、稲生達に向き直った。

 アリス:「すまないが、ポーリン師への面会は無理みたいだ。私はこれから本部に報告に行く。色々と世話になったな」
 稲生:「……だ、そうです。どうしますか、先生?」
 イリーナ:「アリス。あなたの髪形、ポニーテールより、マリアと同じショートボブの方が似合うと思うわ」
 アリス:「What?」
 イリーナ:「というわけで、私は彼女の髪を切るから、理髪所に案内してくれるかしら?」
 女騎士A:「な、何を言って……」

 その時だった。

〔「城内総員に緊急連絡!ミッドガードの空機隊の接近を確認!至急、持ち場に配置されたし!繰り返す!……」〕

 城内放送が流れた。

 女騎士A:「また来たか!」
 女騎士B:「アリス!本部への報告は後だ!早くこっちへ!」
 アリス:「分かった!」
 イリーナ:「あらあら。これじゃ、私達もヘタに外には出られないわね」
 稲生:「ていうか、魔王城にミッドガード軍が接近って、制空権どうなってるんですか!?」
 エレーナ:「おおかた、あれだろ?無駄にデカくて小回りの利かない飛空艇しか、アルカディア軍は持ってないんだよ。ところが向こう、攻撃ヘリ持ってるから、飛空艇の攻撃なんかすぐ交わせるんだよ。そういうことだと思うぜ」
 稲生:「そういうもんなの?!」
 エレーナ:「私だって飛空艇の攻撃、交わせる自信あるぜ?」
 イリーナ:「しょうがない。今回は私自身のクエストと行きましょう」

 イリーナは勝手知ったる他人の家とばかりに、魔王城の奥へ進んだ。

 マリア:「どこへ行くんですか!?」
 イリーナ:「屋上よ、屋上」

 稲生達はイリーナに付いて、屋上へ向かった。

 警備兵B:「屋上は出入り禁止です!」
 イリーナ:「あー、もう!私達も戦うってのに!」
 アリス:「騎士団の私が許可する!」
 警備兵B:「は、ははっ!」
 稲生:「アリス!?」
 アリス:「まだ代わりに所属する騎士隊が決まってないので、私は城内待機となった。この際だから、あなた達の戦いに協力する!」
 イリーナ:「そう来なくっちゃ!」

 イリーナは屋上に出ると、急いで魔法陣を床に描いた。

 エレーナ:「あれは召喚魔法陣!も、もしかして、バハムートとかリヴァイアサン呼んじゃうパティーンっスか!?」
 イリーナ:「似たようなものよ!パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!さあ、私の使い魔、ここへ来なさい!」

 エレーナの使い魔が黒猫なら、イリーナほどの大魔道師ともなると、使い魔……というか、召喚獣を持っている。
 イリーナの場合……。

 稲生:「おおっ!あのドラゴン!」

 全身を緑色の鱗に覆われ、大きなコウモリの翼を持ったスタンダードタイプのドラゴンだった。
 名前をリシーツァという。
 サイズはYS11よりも若干大きい。

 イリーナ:「リシーちゃん、こっちよ!」
 アリス:「ど、ドラゴンを召喚獣としているとは……さすがだ」
 エレーナ:「でも、バハムートとかリヴァイアサンの方がもっと強いはずだぜ。あれらを召喚獣にしているのは……あっ!」

 その時、エレーナは気づいた。

 エレーナ:「皆、このドラゴンの大きさはTu-4くらいだが、攻撃力は爆撃機の比じゃないぜ。多分この戦争、こっちの勝ちだ」

 そしてニヤリと笑うと、イリーナの次にリシーツァの背中によじ登った。

 稲生:「? よく分かんない」

 稲生は首を傾げながら、エレーナの次にドラゴンの背中に乗った。
 マリアとアリスも乗ってくる。
 そして、ドラゴンは翼をはためかせ離陸した。

 稲生:「あれ!?ヘリじゃないじゃん!あれは……B-29!?テレビで観たことあるぞ!?」

 ミッドガード軍の空機隊とはヘリではなかった。
 第2次世界大戦で使われた戦略爆撃機の編隊だった。

 エレーナ:「おいおいおい!さっき冗談で言ったTu-4までいるぜ!?どうなってるんだぜ!?」
 イリーナ:「リシーちゃん。全部撃ち落として」
 リシーツァ:「……了解」

 リシーツァは口を大きく開けると、そこから……表現としては『波動砲』と言っていいのだろうか?
 それを放った。

 稲生:「大丈夫かな!?機銃掃射してくる飛行機とかいないかな!?」
 エレーナ:「あそこにP51がいやがる!」

 だが、それが機銃掃射してくる前にリシーツァが口から放った波動砲で撃墜されてしまった。

 エレーナ:「絶対これ圧勝だぜ!ざまぁみやがれだぜ!」
 稲生:「ドラゴンが人間界にいなくて良かった……」

 当然ながら、ミッドガードの編隊はドラゴン一匹により全滅させられた。

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