報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「再び魔界へ」

2020-06-29 10:59:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日09:00.長野県北部山中 マリアの屋敷1Fエントランスホール→地下室 視点:稲生勇太]

 すっかり体も回復し、鎧を着込んだアリス。
 剣も差して、しっかり準備万端である。

 アリス:「今まで世話になった。この御礼はきっとさせて頂く」
 マリア:「私は師匠の指示に従っただけだから、気にしないで」
 稲生:「どうだい?エレーナよりも誠実・実直な魔道士もいるってこと、分かってくれたかな?」
 アリス:「ああ。よく分かった」

 イリーナは先に地下に向かった。
 この屋敷にも魔界へ移動できる魔法陣はあり、それで魔界へ向かおうということだった。

 マリア:「昨夜のアルカディアタイムスによると、ミッドガードはついにアルカディアシティにも攻撃を仕掛けて来たらしい。戦況は悪化してるみたいだ」
 稲生:「そんなにミッドガードは強いのかい」
 マリア:「中古とはいえ、中国やロシアの兵器を手に入れてるわけだからね。……もしかしたら、核兵器なんかも持ってたりして?」
 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「……それは無いか」

 と、その時、玄関のドアが開いた。

 エレーナ:「おう、見つけたぜ、アリス!100万ゴッズ払え」
 稲生:「そんな闇金みたいな……」
 マリア:「ぶち壊し!」

 アリスは一瞬、剣に手を掛けたが、すぐに溜め息を吐いて手を放した。

 アリス:「分かった。ちょうどこれから魔界に戻るところだ」
 エレーナ:「戻る場所、間違えないようにしないとな」
 稲生:「うん。戦闘の真っ只中に飛び込んで、巻き込まれても困るもんね」
 エレーナ:「それもあるけど、奴ら別の新型兵器使ったらしいぜ」
 稲生:「えっ?」

 エレーナはアルカディアタイムスを開いた。
 それは今朝配られたばかりの号外。
 そこには……。

 稲生:「『ミッドガード、アルカディアシティに新型兵器使用か!?』『突然、空が落ちてきた!?』『空に潰された7番街!!』」
 マリア:「何だ、これ!?」
 エレーナ:「私も知らん。恐らく、うちの流派じゃ分かんないと思うぜ」
 稲生:「魔法兵器か……」
 アリス:「とにかく、心配だ。行ってみよう」

 4人は地下室に下りた。
 プールに向かうのとは反対方向に向かう。
 その突き当りのドアを開けると、イリーナがいた。

 イリーナ:「おや、エレーナ。来たの」
 エレーナ:「ちぃーっス!ポーリン先生が心配なので、ちょっと様子見に行って来ます」
 イリーナ:「ポーリン姉さんは大丈夫だと思うけどね。それじゃ、行くよ。魔法陣の中に入って」

 4人は魔法陣の中に入る。
 そして、最後にイリーナが入って呪文を唱えた。

 イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」

 魔法陣から光が現れ、5人はその光に包まれた。

[同日10:00.魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ1番街 アルカディアメトロ1番街駅 視点:稲生勇太]

 イリーナ:「やっぱり魔王城に直には行かせてもらえないか」
 エレーナ:「先生、さっき言うの忘れてたんスけど、7番街は崩壊しました」
 イリーナ:「ええっ!?」
 エレーナ:「ミッドガードの奴ら、『空を落とす』魔法兵器を造りやがって、それをこっちで使ったんです」
 イリーナ:「7番街って言ったら、すぐ近くじゃない!1番街は大丈夫なのかしら?」
 稲生:「行って見ましょう」

 稲生達が到着したのは1番街駅の倉庫。
 そこを出ると、コンコースは騒然としていた。

〔「お客様にお知らせ致します。今朝7時頃、ミッドガード軍の新型兵器使用により、7番街壊滅の為、現在、アルカディアメトロは全線で運転を見合わせております。環状線につきましては、12時頃に運転再開見込みです」〕

 どうやら1番街駅に被害は無かったようだ。
 駅の外に出ると、見た目に1番街には被害は無かった。
 さすが魔王城の御膝元であり、アルカディア王国の政治の中枢が集まる街である。

 稲生:「先生。取りあえずアリスを魔界に送ることはできましたけど、僕達はどうしましょう?」
 イリーナ:「そうね。多分、『帰れ』って言われるだろうけど、一応ポーリン姉さんに御挨拶してから帰りましょうか」
 マリア:「アリスはどうする?」
 アリス:「魔王城へ行くなら同行しよう。私も騎士団本部に戻らなくては」

 騎士団本部もまた魔王城にあるからだ。
 そして、その道すがらだった。
 馬に乗った騎士隊が稲生達の横を通り過ぎようとした。
 だが、その先頭にいた隊長らしき者が突然止まった。

 騎士隊長:「アリス!?アリスじゃないか!無事だったのか!」
 アリス:「ジル隊長!」

 先頭にいたのは女騎士であったが、アリスよりもずっと年上の凛とした感じだった。
 さすが隊長を任されるだけのことはある。

 ジル:「大丈夫。こいつはアリス・リンクス。あのレオナルド・リンクス大隊長の妹だ」

 ジルは稲生達を怪しむ部下達に説明した。

 ジル:「心配したぞ。お前の隊が全滅したって聞いてたからな」
 アリス:「はい。どうやら生き残ったのは私だけのようです」

 アリスの説明によると、ジルは士官学校の教官も務めており、アリスがそこの生徒だった時の教科担任であったという。

 ジル:「そうか。お前だけでも生き残ってくれて良かった。すぐ、本部に戻るよな?至急、本部に状況を報告してくれ」
 アリス:「はっ、了解しました!」

 そしてジルの部隊は走り去って行った。

 イリーナ:「何かジル隊長の部下達、私達を怪しんでいたわね」
 アリス:「当たり前だ。この戦争を焚き付けたのは、他ならぬ魔道士の一派だっていうぞ。ダンテ一門だって、物凄く怪しまれてる」
 イリーナ:「焚き付けるとしたら、このアルカディア王国だと思うわよ。ミッドガード共和国を焚き付けても、何のメリットも無いもの」
 稲生:「それでも、ミッドガードを焚き付ければ得をする一派があるということですよね?それは一体……」
 イリーナ:「まあ、私の見立てでは、やっぱり東アジア魔道団だと思うけどね」
 稲生:「やっぱり……」
 エレーナ:「とにかく、早く魔王城へ行きましょうや」
 マリア:「エレーナはカネさえもらえれば、ミッドガードの味方もしそうだな」
 エレーナ:「汚いカネはさすがに受け取らねーし。しかもその出所がダンテ一門の敵対組織とありゃ、もっと受け取れねーよ」

 エレーナは肩を竦めてマリアに反論した。

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