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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「自行化他」

2019-05-23 10:26:06 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月12日09:06.天候:晴 東京都豊島区西池袋 東京メトロ池袋駅・有楽町線ホーム→日蓮正宗・正証寺]

〔いけぶくろ、池袋です。丸ノ内線、副都心線、JR線、西武池袋線、東武東上線はお乗り換えです。4番線の電車は、東武東上線直通、各駅停車、川越市行きです〕

 マリアを東池袋駅まで送った稲生は、再び逆方向の電車に乗り込んで池袋駅まで戻って来た。
 電車を降りると、急ぎ足で改札口まで向かう。
 幸い駅からは歩いて行ける距離なので、アクセスは楽である。

 藤谷:「はーい、御講に参加の方はこちらー!」

 境内では藤谷が任務者を買って出ていた。
 次々にやってくる信徒達を本堂に案内している。

 藤谷:「……これを機に御受誡・御勧誡を考えている方はこちら!」

 シーン……。

 藤谷:「……ま、これが現実だ」
 稲生:「好きですね、このネタ」
 藤谷:「おっ、稲生君。いい所に来なすった」
 稲生:「ん?任務者足りません?」
 藤谷:「いや、そうじゃない。早いとこ、マリアさんの御受誡を!」
 稲生:「殺されますって。ていうか、どうせ泥沼の20連敗なんだからいいじゃないですか、この際」
 藤谷:「東京第三布教区ってのは、20ヶ月連続で誓願未達成の寺院が送られる所なのかね?」
 稲生:「知りませんよ、そんなの!」

 ※あくまでフィクションです。

 鈴木:「おはようございます」
 藤谷:「おっ、鈴木君。おはよう」
 鈴木:「あそこで参加券書けばいいんですか?」
 藤谷:「ああ、そうしてくれ。稲生君も」
 稲生:「はい」
 鈴木:「顕正会のビデオ放映みたい」
 稲生:「あそこも参加券書くね」

 稲生と鈴木は参加券に記入した。

 鈴木:「御供養も受付ですか?」
 藤谷:「そう」
 稲生:「顕正会の方がお金が掛からない?」
 鈴木:「金の掛け方が違うだけですよ」
 稲生:「それな!」

 作者の場合、日蓮正宗に入ってから信仰の費用は掛かっています。
 ので、顕正会員の主張する『顕正会は金が掛からない』については否定はしません。
 多分、双方出世すると金が掛かるシステムなんだと思います。
 つまり、ヒラのうちは大丈夫。

 藤谷:「鈴木君は折伏の相手はいないのか?」
 鈴木:「いますよ」
 藤谷:「おおっ!で、やっぱり顕正会員?」
 鈴木:「そうですね。でも、俺の上長達は今のところ無理ですよ」
 藤谷:「何でだ?」
 鈴木:「当時の隊長は職を失って現在ホームレス。宗門もホームレスは入信させないんでしょう?で、支隊長は現在服役中。ムショにまで折伏行けないでしょう?班長は車で事故って現在、植物状態。植物人間に折伏できますか?同じ組長の長谷川は、東武東上線に飛び込んでバラバラの肉片と。地獄界にまで折伏行けませんからね。組員の特盛はもうどこかの宿坊さんに御受誡してるんで。エリと一緒に」
 稲生:「壮絶な組織だったんだねぇ、キミの所は……」
 藤谷:「“慧妙”が喜んで記事にしそうだ。ま、とにかく中に入って待っててくれ。唱題でもしてるといい」
 稲生:「そうします」
 鈴木:「同じく」

[同日12:00.天候:晴 正証寺→JR池袋駅]

 御講の他に各地区で集まった座談会なんかも終わった。

 藤谷:「それじゃ明日、添書登山に行くんだな?」
 稲生:「何か、そういうことになっちゃって……」
 鈴木:「1人で行くより、知ってる人と行った方がいいですから」
 藤谷:「それもそうだな。新幹線で行くのか?」
 稲生:「そのつもりです」
 鈴木:「本当は車で行きたかったんですが、魔の妨害がありましてね。オカンがぶつけて、現在修理中なんですよ」
 藤谷:「考えようによっては、『車で行くと途中で事故るフラグが立っているから、新幹線で行ってもらう』という御加護かもしれないぞ?」
 鈴木:「いつの間にかフラグが?」

 多摩準急:「こいつら東名で事故らせて、お涙頂戴ストーリーにしようぜ」
 雲羽百三:「これもネタの1つですな」

 稲生:「か、カントク……」
 鈴木:「分かりました!新幹線で行きます!」
 藤谷:「それがいい」
 鈴木:「先輩、新幹線のキップ買いに行きましょうよ!」
 稲生:「どうせ自由席なんだから、当日でいいじゃないか」
 鈴木:「そういう油断が魔の妨害を許してしまうのです。もしかしたら、券売機がブッ壊れてるかもしれませんよ?」
 稲生:「いや、券売機1つ『調整中』なんて普通なくらいで……」
 鈴木:「全部ですよ、全部!」
 稲生:「分かったよ」
 鈴木:「東海道新幹線はJR東海だから、東京駅のJR東海の券売機で……」
 稲生:「いや、あの、JR東日本の券売機でも東海道新幹線のキップは買えるからね?」

 稲生と鈴木は池袋駅に移動した。

 鈴木:「ほら、先輩見てくださいよ!東海道新幹線のキップ買えない!」
 稲生:「『黒い券売機』じゃなくて、指定席券売機のことを言ってるんだよ、僕は!」

 藤谷班、ボケ役の鈴木とツッコミ役の稲生が確立しつつある。
 で、稲生、キップを買う前にふと気づく。

 稲生:「(あれ?そう言えばマリアさん、どうするんだろう?)ちょっと待ってて」
 鈴木:「えっ?」

 稲生はスマホを取り出した。

 稲生:「もしもし、マリアさんですか?明日のことなんですけど、マリアさん達はどうしますか?」
 マリア:「私達も富士山に行くから、途中まで一緒に行こう」
 稲生:「分かりました。ただ、あの……その途中までは鈴木君も一緒なんですけど……」
 マリア:「…………」

 電話の向こうで絶句するマリアの姿がしっかり想像できた稲生だった。

 稲生:「あくまで僕達は、日蓮正宗信徒して総本山大石寺に参詣するだけですから……」
 マリア:「うん、分かった。取りあえず、ルーシー達には上手く話しておく。だから鈴木の方は、勇太が何とかして」
 稲生:「分かりました。因みに今、明日の新幹線のキップを買う所なんですけど、マリアさん達の分も買っておきますか?」
 マリア:「いや、いい。どうせなら、私のだけ買っておいて」
 稲生:「そうですか」
 マリア:「ルーシーはともかく、他の2人が『男が買ったもの』だと分かると気持ち悪がるから」
 稲生:「ああ、なるほど。分かりました」

 稲生は電話を切った。

 鈴木:「せんぱーい!」
 稲生:「ん?」
 鈴木:「マリアさんの分も買っておきましたー!」
 稲生:「早いな!」

 幸い、鈴木はマリアの仲間達が来ることまではまだ知らないようである。
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“大魔道師の弟子” 「御講とサンシャイン」

2019-05-22 19:08:44 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
 ※本日、「魔道士」と「魔道師」の違いについて指摘をされました。後者は師匠クラスに使う表現であり、見習や弟子持ちでない者にあっては前者ではないかという御指摘です。これは御尤もであると判断し、今後はそのように表現致します。弊社T班長、直接の御指摘ありがとうございました。

[5月12日07:40.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 上落合公園前バス停→けんちゃんバス車内]

 実家で朝食を取った稲生は、マリアを連れて、まずは近所のバス停に向かった。

 稲生:「昨夜はだいぶ遅くに帰って来たみたいですけど、大丈夫でしたか?」
 マリア:「うん。意外と遊び回るのが好きなコ達だった……」
 稲生:「? 水上バスとスカイツリーと東京タワーしか行ってないんですよね?」
 マリア:「あの……スカイツリーの下にショッピングモールがあるでしょ?」
 稲生:「ああ、ソラマチですか」
 マリア:「あれに皆、踊らされちゃってね……」
 稲生:「そうでしたか」

 そんなことを話しているうちにバスがやってくる。
 日野自動車製のポンチョという小型バスで、コミュニティバスとしてよく運用されている車種だ。
 ノンステップバスで、車椅子の乗降にも対応している。
 後ろのスライドドアから乗り込んだ。
 先客はおらず、2人の貸切状態だ。
 1番後ろの席に座った。

〔「発車します。ご注意ください」〕

 バスが走り出した。

〔ピンポーン♪ 次は児童センター入口、児童センター入口でございます。天理教本駿河台分教会へおいでの方は、三橋3丁目でお降りください〕

 マリア:「教会……!?」

 教会という言葉に反応する魔女。

 稲生:「ああ、天理教だから魔道士には興味が無いでしょう」
 マリア:「キリストではない?」
 稲生:「全然違います。僕達の宗派でも、ガチ勢は折伏に行くような所ですよ。一応、日本の宗教なので、西洋の魔女とかには興味が無いはずです」
 マリア:「そう。それならいい」
 稲生:「今日はマリアさん達、どこへ行くんですか?」
 マリア:「サンシャイン60と秋葉原に行きたいらしい」
 稲生:「サンシャイン60は高い所ですもんね。本当に高い所に行きたいんですね」
 マリア:「エレーナのアホは掟破りしてるけど、本来、ホウキ乗りでさえ高層建築物に近づいてはいけないんだ」

 高層建築物の近くは乱気流(ビル風)が発生しやすく、失速する恐れがあることと、衝突の恐れがある。

 マリア:「しょうがないから中から行こうって話。昔は難しかったけど、今なら観光客のフリして入れる」
 稲生:「確かに……。秋葉原は……」
 マリア:「日本製品を買い込んでおきたいらしい」
 稲生:「そんなに?」
 マリア:「日本製の頑丈さと、あと日本の方が物価が安い」
 稲生:「えっ!?」
 マリア:「うん。イギリスの方が物価高い。日本より」
 稲生:「そうなんですか!日本が世界一高いと思ってた!」

 事実らしいです。

 マリア:「都庁にも行きたかったらしいけど、何か今はダメらしい」

 都庁舎展望室は今月より来冬まで、改修工事の為に立入禁止とのこと。

 稲生:「だったら周辺の超高層ビルとかで代替できそうな気がするけど、ちょっと分かりませんねぇ……」
 マリア:「いいよいいよ。どうせこの2つで1日が終わる」
 稲生:「ハハハ……」

[同日08:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅西口バス停→JR埼京線ホーム]

 稲生:「大人2人です」
 運転手:「ありがとうございました」

 バスが終点の大宮駅西口に着き、外開きスライドドア式の前扉が開いた。
 けんちゃんバスはICカードには対応しておらず、現金か回数券が基本となる。
 稲生は回数券を2枚千切って(って、何で持ってるんだ?)、運賃箱に入れた。

 稲生:「あとは埼京線ですね」

 ロータリーの外周部に行って、西口のエスカレーターを上がる。
 その際、稲生はしっかりマリアの手を握っている。
 最初は嫌がり、その後は手袋越しなら良くなり、そして今では素手で手を握っても良くなっている。
 この変化に対し、同門の魔女達が驚いているわけだ。
 例外として男性嫌悪症でも恐怖症でもなく、普通に接することのできる者もいる(エレーナやナディアなど)が、それはあくまで例外。

 稲生:「池袋駅で待ち合わせしてるの?」
 マリア:「いや、東池袋駅」
 稲生:「あー……なるほど」
 マリア:「分かる?」
 稲生:「全然分かります。ていうか、よくそこまで調べましたね。下調べが上手くないと、普通に池袋駅から行こうとして迷うのがオチなんですよ。サンシャインシティの最寄り駅は、確かに東池袋です」

 都電荒川線の東池袋四丁目電停でもOKである。
 2人は改札口を通って、埼京線ホームに下りた。
 埼京線ホームは地下にある。

〔おはようございます。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の20番線の電車は、8時13分発、りんかい線直通、快速、新木場行きです。次は、与野本町に止まります〕

 稲生:「快速か。ちょうどいい。これに乗ろう」

〔まもなく20番線に、りんかい線直通、快速、新木場行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。次は、与野本町に止まります〕

 稲生:「東池袋駅まで送りますよ」
 マリア:「別にいいよ」
 稲生:「どうせ時間から、一緒に行かせてよ」

 電車が地下トンネル内を轟音を立てて接近してくる。

〔おおみや、大宮。ご乗車、ありがとうございます。次は、与野本町に止まります〕

 赤字に白抜きで『快速』『Rapid』と書かれた電車がやってきた。
 この駅での下車客は結構多い。
 先頭車に乗り込むと、マリアの着ているモスグリーンのブレザーと同じ色の座席に座った。
 そろそろブレザーも脱ぎたくなる暑い日が間近に迫っている。

 稲生:「ルーシーさん達は無事に来れますかね?」
 マリア:「行き方はエレーナに聞いたみたいだから大丈夫」
 稲生:「ええ?何か、高い情報料取りそう」
 マリア:「ルーシーが上手くブロックするだろうから心配無いと思う」
 稲生:「そういうものですか」

 森下駅からなら都営新宿線に乗って市ヶ谷駅で降り、そこで東京メトロ有楽町線に乗り換えると良い。
 しばらくすると発車の時間がやってきて、ホームに発車メロディが鳴り響いた。

〔20番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 電車は再開閉することなく1回でドアを閉め、そのまま発車した。
 上り本線ホームに止まっていた為、ポイントを渡ることはない。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、りんかい線直通、快速、新木場行きです。停車駅は与野本町、武蔵浦和、戸田公園、赤羽、赤羽からの各駅です。次は、与野本町です。……〕

 電車は地下ホームを発車すると、一気に坂を駆け登った。
 地上に出ると、更にそのまま高架線へと上がって行く。
 車内に晩春の日差しが差し込んた。

 マリア:「今日は勇太、寺でミサ……じゃなかった。えーと……」
 稲生:「御講です。御講」
 マリア:「ああ、それだけど、明日もどこか行くんだって?」
 稲生:「鈴木君に添書登山に誘われましてね。確かにここ最近、大石寺には行ってないので、まあせっかくだから行こうって感じで……」
 マリア:「それは富士山の麓にあるヤツか?」
 稲生:「そうです。マリアさん達も来たことありますよね?」
 マリア:「ある。そうか……」

 マリアは何か思案している様子だった。
 もしかして、稲生達と一緒に来るつもりだろうか?
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東北急行バス“ニュースター”号 記録画像

2019-05-22 15:15:46 | 日記
 
(足立230 あ 915 いすゞ自動車・ガーラ)

 
(1C席 前面展望が臨みたい人以外は、足が引っ掛かるのでオススメできない)

 
(座席脇のUSBポート。ここからスマホなどに充電できる。コンセント型は無い。最近はこういうバスが増えている)

 
(1A席からフロント部分を望む。富士急静岡バスと違い、モニタが無い為、すっきりしている。また、車内にはWi-Fiのサービスもある)

 
(“ニュースター”号、昼便の途中休憩は2ヶ所。ここは羽生PA上り側。“鬼平犯科帳”をモチーフにした造りの建物が目立つ)

 
(“ユタと愉快な仲間たち”の威吹邪甲を歩かせたら、間違い無くイベントスタッフ辺りに間違えられるだろう)

 前回、富士急静岡バスの日野自動車・セレガRについて、加速力に優れていると感想を述べたが、こちらのいすゞ・ガーラも素晴らしい加速力であった。
 乗務員氏の腕前も良かったのだろうが、東北自動車道上における低速走行のトラックを如何に軽やかに追い抜いて行くかで、ダイヤ通りの運行ができるかに掛かっていると思う。
 東北自動車道は東名高速よりも、特に東北地方内においてアップダウンの激しい所があり(登坂車線が設置されているほど)、登り坂において他車が低速に陥りがちであり、如何に自車がそうならないかである。
 というか、そろそろ東北自動車道は片側3車線区間を宇都宮以北まで伸ばした方がいいように思う。

 尚、東北急行バスは現在東武グループのバス会社であり、1960年代に初めて東京〜仙台間にバス路線を開設した事業者である。
 高速バス専門会社の中では老舗であり、今後とも贔屓にしていきたいバス会社の1つである。
 因みに弟は既存会社に見切りを付けて、ウィラーエクスプレスに逃げて行きやがったw
 何でも、既存会社に巣くう常連客の常連ぶりが気にくわないんだと。
 あ?俺のことか、それ?
 このブログのタイトルのモデルにもなったバス会社だが、当の管理者は1度も乗ったことはないwww
 気になったのだが東北急行の乗務員氏の肉声放送で、車内における禁則事項の中に『飲酒』が入っていて耳を疑ったのだが、気のせいだっただろうか?
 常連客の常連ぶりというのは、私も含めて車内飲酒で車内に酒臭さを振り撒くことであるということもそのうちの1つであることは自覚しているが、さすがに会社側も排除に乗り出したかな???
 もっとも、『私は大型免許を持っているので、乗務員氏に何かあったら私がお手伝いします』という名目で最前列席に座っている私が飲酒してどうすんねんという感じではあるがwww
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“大魔道師の弟子” 「都内観光」

2019-05-20 09:32:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月11日10:52.天候:晴 東京都台東区上野 JR御徒町駅→JR上野駅]

〔まもなく3番線に、上野、池袋方面行きが参ります。危ないですから、黄色いブロックの内側までお下がりください〕

 都営地下鉄大江戸線を上野御徒町駅で降りた稲生は、その足でJR御徒町駅へ移動した。
 隣接しているのに、何故か地下鉄は駅名がブレているのが御徒町だ。
 ここからして既に、観光客を惑わす駅名になっている(上野なのか?御徒町なのか?)。
 しかし、稲生は全く物怖じしない。

〔おかちまち〜、御徒町〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 稲生:(たった一駅乗る時だけに限って、E235系が来るんだよなぁ……)

 山手線で走行している新型車両のこと。

〔3番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 発車メロディもそこそこに、電車のドアもホームドアもすぐに閉まる。
 並走する京浜東北線が何故か御徒町駅に停車しているが、土休日ダイヤだけは京浜東北線の快速も停車することになっている。
 つまり、平日は通過ということだ。
 これもまた初心者を惑わすダイヤになっている。

〔次は上野、上野。お出口は、左側です。新幹線、高崎線、宇都宮線、常磐線、地下鉄銀座線、地下鉄日比谷線と京成線はお乗り換えです〕
〔The next station is Ueno(JY05).Please change here for the Shinkansen,the Takasaki line,the Utsunomiya line,the Joban line,the Ginza subway line,the Hibiya subway line and the Keisei line.〕

 御徒町〜上野間は駅間距離が短いので、放送が終わる頃には電車はホームに差し掛かっている。
 これに車掌の肉声放送があったら、これを再現するだけで到着してしまう。

〔うえの〜、上野〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 稲生は電車を降りて、低いホームへ向かうことにした。
 即ち、13番線から15番線のことである。
 16番線と17番線もそうなのだが、こちらは特急ホーム。
 稲生が狙うのは上野始発の中距離電車。
 それで大宮まで向かうつもりである。
 幸い、11時8分発の宇都宮線がある。
 稲生がそこに足を向けた時だった。

 外国人旅行客A:「Excuse me.」
 稲生:「!」
 外国人旅行客A:「上野動物園にはどう行ったらいいですか?
 稲生:「あそこの公園口から出るといいです

 英語で聞いて来た外国人旅行客に対し、稲生は英語で答えた。

 稲生:(言い回し的にアメリカ人じゃなさそうだな……。マリアさんが話すイギリス英語に近い……)

 稲生はそう思ったが、所詮日本人が話す英語はアメリカ英語。
 それでもその旅行客には通じたらしく、『Thank you.』と言いながら去って行った。

 稲生:(すぐそこのアクセスも分からないとは……。どちらかというと都内観光初心者向きの上野でもこれだから、やっぱりマリアさん達が心配だ)

 稲生はスマホを取り出した。

 稲生:「あ、もしもし。マリアさんですか?今、どちらに?」
 マリア:「隅田川の水上バスってヤツに乗ってる」
 稲生:「は!?」
 マリア:「いや、さっき森下駅から地下鉄に乗ったら、両国駅から?そういう乗り物が出てるって広告があったんで、乗ってみた」
 稲生:「(観光向けでも比較的上級者用の水上バスに、いきなり乗ってる!?)そ、それで、感想はどうですか?」
 マリア:「『日本にも川の上を走る船があったなんて』って、ルーシーが言ってた」
 稲生:「いや、まあ、一応ありますけどね。特に迷ったりはしていないんですね?」
 マリア:「それは大丈夫」
 稲生:「そ、そうですか。それならいいんですけど……。じゃあ、僕は実家に先に行ってますから」
 マリア:「ああ、分かった」

 稲生は電話を切った。

 稲生:「何だ。心配しなくても大丈夫だったか……」

 稲生はホッとした。

 外国人旅行客B:「すいません、六本木ヒルズへはどう行ったら……
 稲生:「あー、ハイハイ。六本木ヒルズですね。それなら、地下鉄日比谷線に乗り換えて……

[5月11日11:33.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔まもなく大宮、大宮。お出口は、右側です。新幹線、高崎線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。電車とホームの間が広く空いている所がありますので、足元にご注意ください〕
〔The next station is Omiya(JU7).The doors on the right side will open.Please change here for the Shinkansen,the Takasaki line,the Saikyo line,the Kawagoe line,The Tobu Urban Park line and the New Shuttle.Please watch your step...〕

 英語放送の『Watch your step』(段差に注意)はアメリカ英語で、イギリス英語だと『Mind the gap』(隙間に注意)となるらしい。
 日本語では『足元に注意』で統一されているが。
 もちろん、マリア達が前者を聞いても意味は通じる。

〔「ご乗車ありがとうございました。おおみや〜、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。9番線の電車は宇都宮線、普通列車の宇都宮行きです。……」〕

 稲生が電車を降りて、コンコースに進む。
 改札口を出ると、意外な人物と出会った。

 藤谷:「おや?稲生君じゃないか」
 稲生:「藤谷班長。どうしたんですか?」
 藤谷:「俺は折伏の手伝いで来たんだよ。結局流れたけどな」
 稲生:「誰ですか?」
 藤谷:「大宮で折伏っつったら、顕正会員に決まってるだろーが。稲生君がいない間に、正証寺にも突撃して来やがったんで返り討ちにしてやったんだが、『本部で法論しろ!』の一点張りだったもんで、本部にお邪魔したら、『そんなヤツ、知らない』だってさ」
 稲生:「お決まりのパターンですね」
 藤谷:「しょうがないから、駅前で新聞配ってる婦人部員のオバちゃんから新聞だけ頂戴してきたというわけだ」
 稲生:「今度はその婦人部員の折伏を?」
 藤谷:「いや、婦人部員のことはうちの婦人部員に任せるさ」
 稲生:「なるほど」
 藤谷:「それより稲生君はどこへ行くところだい?」
 稲生:「実家に帰る所ですよ。バスに乗り継ぎができるといいんですが……」
 藤谷:「だったら車で送って行くよ」
 稲生:「いいんですか?」
 藤谷:「ああ。車、西口の方に止めたもんだから、そっちへ行くところだったんだ。週末の本部周辺、止めれる駐車場無いしな」
 稲生:「ひs【バキューン】さんと軋轢が無かったらねぇ……」

 2人の法華講員は西口へと向かった。
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“大魔道師の弟子” 「5月11日」

2019-05-19 21:48:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月11日09:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル3F・303号室]

 稲生:「ん……ん、はっ!?」

 稲生が目を覚ました時、部屋の時計は9時を指していた。

 稲生:「寝過ごしたーっ!」

 慌ててベッドから飛び起きて、室内の電話機に手を伸ばす。
 そして、内線電話を掛けた。
 マリアが泊まっている部屋にだ。
 客室の電話はフロントや外線はもちろん、部屋同士の内線も掛けられる。
 だが、コールはしているが出ない。

 稲生:「うわ、先に行っちゃったか……」

 元々その予定だったので、特に慌てる必要は無いはずなのだが……。

 稲生:「と、取りあえず、勤行しないと……」

 稲生は急いでバスルームに入ると、洗面台に向かった。
 顔を洗ったり、歯磨きをしたり……。
 で、着替えてからようやく……。

 稲生:「南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜」

 朝の勤行に取り掛かるのである。

[同日10:00.天候:晴 ワンスターホテル1Fフロント]

 サイドオープン式のエレベーターから飛び降りる稲生。

 エレーナ:「……それでは従業員一同、またのご利用を心よりお待ち申し上げます。本日は真にありがとうございました」

 フロントには普通の人間の先客がいて、チェックアウトの精算をしていた。
 エレーナが丁寧な接客態度でその先客を送り出す。
 で、その先客が退館すると……。

 エレーナ:「おっ、稲生氏。おはざーっす」
 稲生:「コロッと態度が変わるなぁ……」
 エレーナ:「マリアンナ達なら先に出て行ったぜ?」
 稲生:「やっぱりそうだよなぁ……。僕もチェックアウトする」
 エレーナ:「まーいど」
 稲生:「あれでしょ?マリアさんもチェックアウトだけど、ルーシー達は連泊でしょ?」
 エレーナ:「あの3人も一旦、チェックアウトだな」
 稲生:「そうなの?」
 エレーナ:「部屋が変わるから、そうなるんだ」
 稲生:「部屋が変わる?」
 エレーナ:「そう。稲生氏が泊まった部屋はセミダブルベッドに、温度調整も自由なエアコンの付いたデラックスシングルだ。だけど、あの4人が泊まった部屋はシングルのベッドが2つに、集中式のエアコンでON/OFFや風の強さしか調整できないタイプなんだ」
 稲生:「それで?」
 エレーナ:「このホテルには稲生氏が泊まった部屋をツインにした、デラックスツインがある。あそこは少し部屋が広いもんで、エキストラベッドを置いてトリプルにすることができる。1人だけシングルにするのも寂しいだろ?」
 稲生:「なるほど。それもそうか。あれ?和室とか無かったっけ?」
 エレーナ:「あるけど6畳間に3人は狭いだろ」
 稲生:「ああ、あれ、6畳間だったんだ。それじゃ2人がせいぜいかな。ま、詰め込めば3人泊まれるけど……」
 エレーナ:「スタンダードシングルもそれくらいなんだけど、デラックスは8畳分くらいあるから」
 稲生:「了解」
 エレーナ:「マリアンナは今日から稲生氏の家に?」
 稲生:「そういうことになるね」
 エレーナ:「飯くらい付き合えばいいのに……」
 稲生:「いやあ、やっぱり男性恐怖症の2人がいるからねぇ……」
 エレーナ:「それならこの薬がお勧め」
 稲生:「男性恐怖症に効く薬でもあるの?」
 エレーナ:「いやいや。気軽に性転換できる薬。これを稲生氏が飲んで、女になれば……」
 稲生:「だから何でそういう発想になるかなぁ!」

[同日10:36.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅・大江戸線ホーム]

 稲生:「……あ、もしもし、母さん?……うん、今日は家に帰るよ。……そう。今から家に向かう所。多分、お昼ぐらいに着くと思うから。マリアさんは今日から泊まりたいって言ってるんだけど、まあ、いつ家に来るか……。いや、マリアさんの友達が来てるんだよ。……そう。うん、取りあえず僕だけ先に帰るから。……それじゃ」

〔まもなく3番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 電話を切ると同時に接近放送が響き渡った。
 そして、トンネルの向こうから昨日乗った電車とはやや違う塗装をした車両が入線してくる。

〔森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕

 稲生が電車に乗り込むと、車両からホームに向かって発車メロディが流れた。
 響き方が駅のスピーカーとは違うので、改札口まで聞こえるかどうかは微妙だ。
 しかし、駆け込み乗車を防ぐ為には、むしろコンコースまで聞こえない方がいいのかもれない。
 ホームの乗客に聞こえる程度の音量で十分なのかも。
 ドアが閉まって電車が走り出す。

〔次は両国(江戸東京博物館前)、両国(江戸東京博物館前)。JR総武線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Ryogoku(Edo-Tokyo hakubutukan-mae)(E-12).Please change here for the JR Sobu line.〕

 稲生:(結局マリアさん達、どこへ行ったんだろう?エレーナに言わせると、『魔女は高い所へ行きたがる。何しろ、ずっと暗い所に閉じこもってたり、閉じ込められていたりしたからなぁ。高い所なら明るいし』ってことだけど……。東京タワーとかスカイツリーにでも行ったかな。東京タワーなら、乗り換え無しで行けるし……)

 都営大江戸線なら赤羽橋駅で降りると良い。

 稲生:(スカイツリーだと、蔵前で乗り換えて都営浅草線だな。それで押上駅まで行けばいい。……けど、そんな話、昨日してたかなぁ?何だか昨日、皆して酔っ払ってたからなぁ……)

 稲生は何度も首を傾げていた。
 今のところ、稲生のスマホにも水晶球にもマリアからの連絡は無い。

[同日同時刻 天候:雨 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 イリーナ:「 へへ……さすがにそれは食べれないよ……

 弟子達が出払っているのをいいことに惰眠の限りを貪る大魔道師は、今日も通常運転!
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