[5月11日09:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル3F・303号室]
稲生:「ん……ん、はっ!?」
稲生が目を覚ました時、部屋の時計は9時を指していた。
稲生:「寝過ごしたーっ!」
慌ててベッドから飛び起きて、室内の電話機に手を伸ばす。
そして、内線電話を掛けた。
マリアが泊まっている部屋にだ。
客室の電話はフロントや外線はもちろん、部屋同士の内線も掛けられる。
だが、コールはしているが出ない。
稲生:「うわ、先に行っちゃったか……」
元々その予定だったので、特に慌てる必要は無いはずなのだが……。
稲生:「と、取りあえず、勤行しないと……」
稲生は急いでバスルームに入ると、洗面台に向かった。
顔を洗ったり、歯磨きをしたり……。
で、着替えてからようやく……。
稲生:「南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜」
朝の勤行に取り掛かるのである。
[同日10:00.天候:晴 ワンスターホテル1Fフロント]
サイドオープン式のエレベーターから飛び降りる稲生。
エレーナ:「……それでは従業員一同、またのご利用を心よりお待ち申し上げます。本日は真にありがとうございました」
フロントには普通の人間の先客がいて、チェックアウトの精算をしていた。
エレーナが丁寧な接客態度でその先客を送り出す。
で、その先客が退館すると……。
エレーナ:「おっ、稲生氏。おはざーっす」
稲生:「コロッと態度が変わるなぁ……」
エレーナ:「マリアンナ達なら先に出て行ったぜ?」
稲生:「やっぱりそうだよなぁ……。僕もチェックアウトする」
エレーナ:「まーいど」
稲生:「あれでしょ?マリアさんもチェックアウトだけど、ルーシー達は連泊でしょ?」
エレーナ:「あの3人も一旦、チェックアウトだな」
稲生:「そうなの?」
エレーナ:「部屋が変わるから、そうなるんだ」
稲生:「部屋が変わる?」
エレーナ:「そう。稲生氏が泊まった部屋はセミダブルベッドに、温度調整も自由なエアコンの付いたデラックスシングルだ。だけど、あの4人が泊まった部屋はシングルのベッドが2つに、集中式のエアコンでON/OFFや風の強さしか調整できないタイプなんだ」
稲生:「それで?」
エレーナ:「このホテルには稲生氏が泊まった部屋をツインにした、デラックスツインがある。あそこは少し部屋が広いもんで、エキストラベッドを置いてトリプルにすることができる。1人だけシングルにするのも寂しいだろ?」
稲生:「なるほど。それもそうか。あれ?和室とか無かったっけ?」
エレーナ:「あるけど6畳間に3人は狭いだろ」
稲生:「ああ、あれ、6畳間だったんだ。それじゃ2人がせいぜいかな。ま、詰め込めば3人泊まれるけど……」
エレーナ:「スタンダードシングルもそれくらいなんだけど、デラックスは8畳分くらいあるから」
稲生:「了解」
エレーナ:「マリアンナは今日から稲生氏の家に?」
稲生:「そういうことになるね」
エレーナ:「飯くらい付き合えばいいのに……」
稲生:「いやあ、やっぱり男性恐怖症の2人がいるからねぇ……」
エレーナ:「それならこの薬がお勧め」
稲生:「男性恐怖症に効く薬でもあるの?」
エレーナ:「いやいや。気軽に性転換できる薬。これを稲生氏が飲んで、女になれば……」
稲生:「だから何でそういう発想になるかなぁ!」
[同日10:36.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅・大江戸線ホーム]
稲生:「……あ、もしもし、母さん?……うん、今日は家に帰るよ。……そう。今から家に向かう所。多分、お昼ぐらいに着くと思うから。マリアさんは今日から泊まりたいって言ってるんだけど、まあ、いつ家に来るか……。いや、マリアさんの友達が来てるんだよ。……そう。うん、取りあえず僕だけ先に帰るから。……それじゃ」
〔まもなく3番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
電話を切ると同時に接近放送が響き渡った。
そして、トンネルの向こうから昨日乗った電車とはやや違う塗装をした車両が入線してくる。
〔森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕
稲生が電車に乗り込むと、車両からホームに向かって発車メロディが流れた。
響き方が駅のスピーカーとは違うので、改札口まで聞こえるかどうかは微妙だ。
しかし、駆け込み乗車を防ぐ為には、むしろコンコースまで聞こえない方がいいのかもれない。
ホームの乗客に聞こえる程度の音量で十分なのかも。
ドアが閉まって電車が走り出す。
〔次は両国(江戸東京博物館前)、両国(江戸東京博物館前)。JR総武線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Ryogoku(Edo-Tokyo hakubutukan-mae)(E-12).Please change here for the JR Sobu line.〕
稲生:(結局マリアさん達、どこへ行ったんだろう?エレーナに言わせると、『魔女は高い所へ行きたがる。何しろ、ずっと暗い所に閉じこもってたり、閉じ込められていたりしたからなぁ。高い所なら明るいし』ってことだけど……。東京タワーとかスカイツリーにでも行ったかな。東京タワーなら、乗り換え無しで行けるし……)
都営大江戸線なら赤羽橋駅で降りると良い。
稲生:(スカイツリーだと、蔵前で乗り換えて都営浅草線だな。それで押上駅まで行けばいい。……けど、そんな話、昨日してたかなぁ?何だか昨日、皆して酔っ払ってたからなぁ……)
稲生は何度も首を傾げていた。
今のところ、稲生のスマホにも水晶球にもマリアからの連絡は無い。
[同日同時刻 天候:雨 長野県北部山中 マリアの屋敷]
イリーナ:「 へへ……さすがにそれは食べれないよ……」
弟子達が出払っているのをいいことに惰眠の限りを貪る大魔道師は、今日も通常運転!
稲生:「ん……ん、はっ!?」
稲生が目を覚ました時、部屋の時計は9時を指していた。
稲生:「寝過ごしたーっ!」
慌ててベッドから飛び起きて、室内の電話機に手を伸ばす。
そして、内線電話を掛けた。
マリアが泊まっている部屋にだ。
客室の電話はフロントや外線はもちろん、部屋同士の内線も掛けられる。
だが、コールはしているが出ない。
稲生:「うわ、先に行っちゃったか……」
元々その予定だったので、特に慌てる必要は無いはずなのだが……。
稲生:「と、取りあえず、勤行しないと……」
稲生は急いでバスルームに入ると、洗面台に向かった。
顔を洗ったり、歯磨きをしたり……。
で、着替えてからようやく……。
稲生:「南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜」
朝の勤行に取り掛かるのである。
[同日10:00.天候:晴 ワンスターホテル1Fフロント]
サイドオープン式のエレベーターから飛び降りる稲生。
エレーナ:「……それでは従業員一同、またのご利用を心よりお待ち申し上げます。本日は真にありがとうございました」
フロントには普通の人間の先客がいて、チェックアウトの精算をしていた。
エレーナが丁寧な接客態度でその先客を送り出す。
で、その先客が退館すると……。
エレーナ:「おっ、稲生氏。おはざーっす」
稲生:「コロッと態度が変わるなぁ……」
エレーナ:「マリアンナ達なら先に出て行ったぜ?」
稲生:「やっぱりそうだよなぁ……。僕もチェックアウトする」
エレーナ:「まーいど」
稲生:「あれでしょ?マリアさんもチェックアウトだけど、ルーシー達は連泊でしょ?」
エレーナ:「あの3人も一旦、チェックアウトだな」
稲生:「そうなの?」
エレーナ:「部屋が変わるから、そうなるんだ」
稲生:「部屋が変わる?」
エレーナ:「そう。稲生氏が泊まった部屋はセミダブルベッドに、温度調整も自由なエアコンの付いたデラックスシングルだ。だけど、あの4人が泊まった部屋はシングルのベッドが2つに、集中式のエアコンでON/OFFや風の強さしか調整できないタイプなんだ」
稲生:「それで?」
エレーナ:「このホテルには稲生氏が泊まった部屋をツインにした、デラックスツインがある。あそこは少し部屋が広いもんで、エキストラベッドを置いてトリプルにすることができる。1人だけシングルにするのも寂しいだろ?」
稲生:「なるほど。それもそうか。あれ?和室とか無かったっけ?」
エレーナ:「あるけど6畳間に3人は狭いだろ」
稲生:「ああ、あれ、6畳間だったんだ。それじゃ2人がせいぜいかな。ま、詰め込めば3人泊まれるけど……」
エレーナ:「スタンダードシングルもそれくらいなんだけど、デラックスは8畳分くらいあるから」
稲生:「了解」
エレーナ:「マリアンナは今日から稲生氏の家に?」
稲生:「そういうことになるね」
エレーナ:「飯くらい付き合えばいいのに……」
稲生:「いやあ、やっぱり男性恐怖症の2人がいるからねぇ……」
エレーナ:「それならこの薬がお勧め」
稲生:「男性恐怖症に効く薬でもあるの?」
エレーナ:「いやいや。気軽に性転換できる薬。これを稲生氏が飲んで、女になれば……」
稲生:「だから何でそういう発想になるかなぁ!」
[同日10:36.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅・大江戸線ホーム]
稲生:「……あ、もしもし、母さん?……うん、今日は家に帰るよ。……そう。今から家に向かう所。多分、お昼ぐらいに着くと思うから。マリアさんは今日から泊まりたいって言ってるんだけど、まあ、いつ家に来るか……。いや、マリアさんの友達が来てるんだよ。……そう。うん、取りあえず僕だけ先に帰るから。……それじゃ」
〔まもなく3番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
電話を切ると同時に接近放送が響き渡った。
そして、トンネルの向こうから昨日乗った電車とはやや違う塗装をした車両が入線してくる。
〔森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕
稲生が電車に乗り込むと、車両からホームに向かって発車メロディが流れた。
響き方が駅のスピーカーとは違うので、改札口まで聞こえるかどうかは微妙だ。
しかし、駆け込み乗車を防ぐ為には、むしろコンコースまで聞こえない方がいいのかもれない。
ホームの乗客に聞こえる程度の音量で十分なのかも。
ドアが閉まって電車が走り出す。
〔次は両国(江戸東京博物館前)、両国(江戸東京博物館前)。JR総武線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Ryogoku(Edo-Tokyo hakubutukan-mae)(E-12).Please change here for the JR Sobu line.〕
稲生:(結局マリアさん達、どこへ行ったんだろう?エレーナに言わせると、『魔女は高い所へ行きたがる。何しろ、ずっと暗い所に閉じこもってたり、閉じ込められていたりしたからなぁ。高い所なら明るいし』ってことだけど……。東京タワーとかスカイツリーにでも行ったかな。東京タワーなら、乗り換え無しで行けるし……)
都営大江戸線なら赤羽橋駅で降りると良い。
稲生:(スカイツリーだと、蔵前で乗り換えて都営浅草線だな。それで押上駅まで行けばいい。……けど、そんな話、昨日してたかなぁ?何だか昨日、皆して酔っ払ってたからなぁ……)
稲生は何度も首を傾げていた。
今のところ、稲生のスマホにも水晶球にもマリアからの連絡は無い。
[同日同時刻 天候:雨 長野県北部山中 マリアの屋敷]
イリーナ:「 へへ……さすがにそれは食べれないよ……」
弟子達が出払っているのをいいことに惰眠の限りを貪る大魔道師は、今日も通常運転!