報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「5月11日」

2019-05-19 21:48:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月11日09:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル3F・303号室]

 稲生:「ん……ん、はっ!?」

 稲生が目を覚ました時、部屋の時計は9時を指していた。

 稲生:「寝過ごしたーっ!」

 慌ててベッドから飛び起きて、室内の電話機に手を伸ばす。
 そして、内線電話を掛けた。
 マリアが泊まっている部屋にだ。
 客室の電話はフロントや外線はもちろん、部屋同士の内線も掛けられる。
 だが、コールはしているが出ない。

 稲生:「うわ、先に行っちゃったか……」

 元々その予定だったので、特に慌てる必要は無いはずなのだが……。

 稲生:「と、取りあえず、勤行しないと……」

 稲生は急いでバスルームに入ると、洗面台に向かった。
 顔を洗ったり、歯磨きをしたり……。
 で、着替えてからようやく……。

 稲生:「南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜」

 朝の勤行に取り掛かるのである。

[同日10:00.天候:晴 ワンスターホテル1Fフロント]

 サイドオープン式のエレベーターから飛び降りる稲生。

 エレーナ:「……それでは従業員一同、またのご利用を心よりお待ち申し上げます。本日は真にありがとうございました」

 フロントには普通の人間の先客がいて、チェックアウトの精算をしていた。
 エレーナが丁寧な接客態度でその先客を送り出す。
 で、その先客が退館すると……。

 エレーナ:「おっ、稲生氏。おはざーっす」
 稲生:「コロッと態度が変わるなぁ……」
 エレーナ:「マリアンナ達なら先に出て行ったぜ?」
 稲生:「やっぱりそうだよなぁ……。僕もチェックアウトする」
 エレーナ:「まーいど」
 稲生:「あれでしょ?マリアさんもチェックアウトだけど、ルーシー達は連泊でしょ?」
 エレーナ:「あの3人も一旦、チェックアウトだな」
 稲生:「そうなの?」
 エレーナ:「部屋が変わるから、そうなるんだ」
 稲生:「部屋が変わる?」
 エレーナ:「そう。稲生氏が泊まった部屋はセミダブルベッドに、温度調整も自由なエアコンの付いたデラックスシングルだ。だけど、あの4人が泊まった部屋はシングルのベッドが2つに、集中式のエアコンでON/OFFや風の強さしか調整できないタイプなんだ」
 稲生:「それで?」
 エレーナ:「このホテルには稲生氏が泊まった部屋をツインにした、デラックスツインがある。あそこは少し部屋が広いもんで、エキストラベッドを置いてトリプルにすることができる。1人だけシングルにするのも寂しいだろ?」
 稲生:「なるほど。それもそうか。あれ?和室とか無かったっけ?」
 エレーナ:「あるけど6畳間に3人は狭いだろ」
 稲生:「ああ、あれ、6畳間だったんだ。それじゃ2人がせいぜいかな。ま、詰め込めば3人泊まれるけど……」
 エレーナ:「スタンダードシングルもそれくらいなんだけど、デラックスは8畳分くらいあるから」
 稲生:「了解」
 エレーナ:「マリアンナは今日から稲生氏の家に?」
 稲生:「そういうことになるね」
 エレーナ:「飯くらい付き合えばいいのに……」
 稲生:「いやあ、やっぱり男性恐怖症の2人がいるからねぇ……」
 エレーナ:「それならこの薬がお勧め」
 稲生:「男性恐怖症に効く薬でもあるの?」
 エレーナ:「いやいや。気軽に性転換できる薬。これを稲生氏が飲んで、女になれば……」
 稲生:「だから何でそういう発想になるかなぁ!」

[同日10:36.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅・大江戸線ホーム]

 稲生:「……あ、もしもし、母さん?……うん、今日は家に帰るよ。……そう。今から家に向かう所。多分、お昼ぐらいに着くと思うから。マリアさんは今日から泊まりたいって言ってるんだけど、まあ、いつ家に来るか……。いや、マリアさんの友達が来てるんだよ。……そう。うん、取りあえず僕だけ先に帰るから。……それじゃ」

〔まもなく3番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 電話を切ると同時に接近放送が響き渡った。
 そして、トンネルの向こうから昨日乗った電車とはやや違う塗装をした車両が入線してくる。

〔森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕

 稲生が電車に乗り込むと、車両からホームに向かって発車メロディが流れた。
 響き方が駅のスピーカーとは違うので、改札口まで聞こえるかどうかは微妙だ。
 しかし、駆け込み乗車を防ぐ為には、むしろコンコースまで聞こえない方がいいのかもれない。
 ホームの乗客に聞こえる程度の音量で十分なのかも。
 ドアが閉まって電車が走り出す。

〔次は両国(江戸東京博物館前)、両国(江戸東京博物館前)。JR総武線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Ryogoku(Edo-Tokyo hakubutukan-mae)(E-12).Please change here for the JR Sobu line.〕

 稲生:(結局マリアさん達、どこへ行ったんだろう?エレーナに言わせると、『魔女は高い所へ行きたがる。何しろ、ずっと暗い所に閉じこもってたり、閉じ込められていたりしたからなぁ。高い所なら明るいし』ってことだけど……。東京タワーとかスカイツリーにでも行ったかな。東京タワーなら、乗り換え無しで行けるし……)

 都営大江戸線なら赤羽橋駅で降りると良い。

 稲生:(スカイツリーだと、蔵前で乗り換えて都営浅草線だな。それで押上駅まで行けばいい。……けど、そんな話、昨日してたかなぁ?何だか昨日、皆して酔っ払ってたからなぁ……)

 稲生は何度も首を傾げていた。
 今のところ、稲生のスマホにも水晶球にもマリアからの連絡は無い。

[同日同時刻 天候:雨 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 イリーナ:「 へへ……さすがにそれは食べれないよ……

 弟子達が出払っているのをいいことに惰眠の限りを貪る大魔道師は、今日も通常運転!
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「魔女達とは別行動の稲生」

2019-05-19 16:31:55 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月10日18:40.天候:曇 東京都豊島区池袋 日蓮正宗・正証寺]

 御住職:「南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜」

 夕方の勤行に参加した稲生。
 最後の御題目三唱を本堂にいる全員で唱える所は顕正会と同じ

 御住職:「こんばんは」
 信徒一同:「こんばんは!」

 仏法に縁したのは顕正会が初めてだという人は、どうして勤行が終わった後に挨拶をするのか不思議に思う者もいるだろう。
 そのルーツが宗門にあるのである。
 何もこの正証寺に限らず、どこの末寺でもやっているはずだし、大石寺でもやっている。

 藤谷:「よお、稲生君。久しぶりだな」
 稲生:「班長、しばらくです」
 藤谷:「今日来たのかい?」
 稲生:「そうです。昼頃、高速バスで……」
 藤谷:「そうかい。今日はマリアさんやイリーナ先生は一緒じゃないのか」
 稲生:「今日はマリアさんの用事と、僕の御講がメインで上京したので……」
 藤谷:「そうかい。そりゃ感心だな」
 稲生:「ただ、その後……」
 鈴木:「あっ、稲生先輩!お疲れ様です!」

 そこへ鈴木がやって来る。
 手にはプラスチック製のブリーフケースを持っているので、専門学校帰りだろうか。

 鈴木:「先輩!早く添書登山の申し込みを!」
 稲生:「マジで言ってるのかい?」
 鈴木:「あっ、班長も行きます!?」
 藤谷:「月曜日だろ?俺は仕事だっつの」
 稲生:「だいたい鈴木君、学校はどうするの?」
 鈴木:「その日は創立記念日で休みなんです」
 稲生:「何その都合のいい設定?」
 鈴木:「僕が代表で申し込みますからね。ささっ、早くこちらへ」

 鈴木に引っ張られるように受付へ向かう稲生。

 副住職:「それでは、これが添書です。どうぞお気をつけて」
 鈴木:「ありがとうございます!」
 稲生:「行く気満々だけど、車出してくれるの?」
 鈴木:「そうしたいのは山々なんですけど、後で新幹線のキップ買っといてください」
 稲生:「車出せないの?」
 鈴木:「『オカンがぶつけた』」
 稲生:「作者の顕正会時代の上長みたいな言い方やめてくれ!」

 ※実話です。夏合宿は皆で車で行くという話があったのですが、車を出してくれるはずの支隊長の車が前日にオシャカになりました。おかげで初めて、東武スペーシアに乗る機会を得ました。功徳〜〜〜〜〜〜〜???

 稲生:「うちのお寺、“となりの沖田くん”とは明らかに違いますね」
 藤谷:「俺みたいに競馬で儲けた金を御供養に充てるヤツもいるくらいだからな。妙観講には見せられねぇ……」
 稲生:「そういえば、前はキリスト教系新興宗教が嫌がらせに来ていましたが、ここ最近来てます?」
 藤谷:「最近は来ないな。前にそこでブレーキとアクセル踏み間違えて、電柱なぎ倒してケーサツと救急車騒ぎになったことがあってよ、それ以来来てねーよ」
 稲生:「へえ……」
 藤谷:「だからプリウスを街宣車に改造すんなって言っといたよ」
 稲生:「何でプリウスだけブレーキとアクセル踏み間違えるんでしょうねぇ……」
 藤谷:「いっそのこと、うちのお寺もプリウス禁止にするか」
 鈴木:「元々誰も乗ってないですけどね」
 藤谷:「えっ、そうなの!?」
 鈴木:「そうなんですよ。偶然ですかね」
 藤谷:「御守護だな」
 鈴木:「ダンプカーで乗り付けて顰蹙買ってた班長がいたそうですけど……」
 藤谷:「あっ、コラ!シッ!」
 稲生:「またやってたんですか……。まあ、とにかく僕は帰りますよ。マリアさんを待たせてますので」
 藤谷:「おう。御講には来るんだろ?」
 稲生:「9時半から唱題開始。からの10時御講開始でしたね」
 藤谷:「そうだ。ついでにマリアさんの御受誡を……」
 稲生:「後で殺されるんで勘弁してください」

[同日20:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 稲生:「戻りましたー」
 エレーナ:「おっ、稲生氏。おつおつ〜。寺帰りか?線香の臭いがプンプンするぜ」
 稲生:「そんなに?」
 エレーナ:「今ならファブリーズを無料でレンタルだぜ」
 稲生:「そりゃ助かる。って、部屋に元々あったヤツだろ」
 エレーナ:「まあまあ」
 稲生:「マリアさん達は帰ってきた?」
 エレーナ:「いや、まだだ。せっかく日本に来たのに、奴らと来たら、ビビッて洋食レストランに行っちまったぜ」
 稲生:「そりゃいきなり桜鍋の店に行けないもんねぇ……」
 エレーナ:「ルーシーは別に男嫌いってわけでもないんだから、稲生氏連れて行ってもいいだろうにな」
 稲生:「あとの2人はダメなんだ?」
 エレーナ:「あー、ダメだな。ロザリーなんか性被害のストレスから過食症と拒食症の繰り返しになってたんだけど、魔道師になって悪魔と契約することで無理やり押さえつけてる感じだし」
 稲生:「へえ……」
 エレーナ:「ゼルダなんか壮絶イジメの被害者だぜ?」
 稲生:「そこはマリアさんと似てる。ルーシーは?」
 エレーナ:「ルーシーは……」

 ガーッとエントランスの自動ドアが開く。

 ルーシー:「なに仲間内の個人情報垂れ流しにしてんの?」
 エレーナ:「外部に流してるわけじゃない。仲間内の情報を仲間内で共有してるだけだぜ?」
 ルーシー:「チッ、エレーナも所詮は他人の気持ちの分からないヤツだね」
 エレーナ:「変に隠し立てするから理解されないし、誤解されるだけだと私は思うけどな」
 マリア:「ルーシー、こんなアホ、相手になるな。話すだけ無駄……ヒック」
 稲生:「ていうか皆、酔っ払っちゃって、もう……」
 エレーナ:「アッハハハハ!魔女も酔い潰れたらただの女だぜ、あぁ?」
 マリア:「いいからさっさと鍵寄越せ」
 エレーナ:「稲生氏の部屋の?」
 ルーシー:「これ以上フザけると、オーナーに言い付けるよ?」
 エレーナ:「……分かったよ。どうぞごゆっくり」

 エレーナは肩を竦ませると、すぐに鍵を持って来た。

 稲生:「もし良かったら、ソルマックでも買って来ましょうか?」
 ルーシー:「余計なことは……」
 マリア:「いいから、そこは勇太に任せておきなって。二日酔いになったら、エレーナから高い薬売り付けられるから」

 フロントではエレーナがニコニコ顔して、薬の入ったバスケットをスッと出していた。
 御丁寧に『只今、大特価!!』というポップまで付けて。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「大田区から江東区へ」

2019-05-19 10:10:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月10日15:53.天候:雨 東京都港区浜松町 モノレール浜松町駅→世界貿易センタービル]

 雨に霞む運河の上を走るモノレール。
 高速で走っているように見えるのは、水上を走る区間があり、スピード感があるからだろう。
 実際の最高速度は80キロである。
 これは京急空港線の110キロよりも遅い。

 ゼルダ:「ホウキで飛んでいるみたい……」
 稲生:「ホウキに乗られるんですか?」
 ゼルダ:「ひぅ……!」

 稲生の問い掛けにローブのフードを深く被って、ルーシーの後ろに隠れるゼルダ。

 ルーシー:「この2人には話し掛けないで」
 稲生:「す、すいません」

 ルーシーは眉をひそめて稲生に抗議した。
 そのモノレールは定刻通り、モノレール浜松町駅に到着した。

 稲生:「あとは地下鉄に乗り換えます」
 マリア:「あそこは地下鉄しか通ってないからね」
 稲生:「都営バスも通ってはいるんですけど、羽田空港からの乗り換えが不便でしてね……」

 稲生は肩を竦めた。

 稲生:「丸ノ内線みたいに地上区間でもあれば、そこの景色が楽しめるんですが、大江戸線は本線はもちろん、車両基地まで地下にあるくらいですからね」
 マリア:「そこまで深く沈めたら、魔界にも繋がりそうだ」
 稲生:「魔界高速電鉄?アルカディアメトロという名前より、僕的には正式名称の方がいいですけどね」

 この辺りで大体稲生は気付いている。
 魔界高速電鉄という社名からして、創業者は日本人ではないかということを。

 浜松町の貿易センタービルを介して、都営地下鉄には雨に濡れずに乗り換えできる。
 だが、その前に……。

 稲生:「あれが東京タワーです」

 浜松町駅から東京タワーが見えるが、浜松町駅から歩いて行こうとすると結構遠い。
 駅前から都営バスが出ているので、それで東京タワー行きに乗ると良い(作者はそうした)。

 マリア:「エレーナが近くを飛んで大騒ぎになった」
 ロザリー:「バカだ、あいつwww」
 ルーシー:「高層建築物の近くは飛ぶなと、あれほど言われてたと思うけど……」

[同日16:05.天候:雨 同地区内 都営地下鉄大門駅・大江戸線乗り場]

 地下深くを進む魔道師達。
 因みに大門駅の名前の由来は、付近にある浄土宗・増上寺の総門から。
 どこの宗派でも本山格の総門は総じて大きいが、正しく『大きな門』だからである。

 ルーシー:「チッ、昔を思い出すわ……」
 マリア:「これはただの地下鉄だよ」
 ルーシー:「分かってる!」
 稲生:「何かマズかったですか?」
 ルーシー:「いいから気にしないで!」
 マリア:「勇太、後で説明するから」
 ルーシー:「マリアンナも余計なこと言わなくていいから!」

〔まもなく3番線に、門前仲町、両国経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 ホームに到着すると、ちょうど電車がやってくる所だった。
 マゼンタというかワインレッドというか、そういう色を組み合わせた特徴的な塗装をした電車が入線してくる。
 新宿方面は混んでいたが、両国方面は空いていた。

〔大門(浜松町)、大門(浜松町)。都営浅草線、JR線、東京モノレール線はお乗り換えです〕

 電車に乗り込むと、魔女達は空いているマゼンタ色の座席に座った。
 車両からの発車メロディが鳴って、すぐに車両のドアとホームドアが閉まる。
 都営大江戸線はワンマン運転なのだが、ホームドアが設置されてから、何故か発車メロディは車両から流すようになった。

〔都営大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は門前仲町、両国経由、都庁前行きです。次は汐留(シオサイト)、汐留(シオサイト)。“ゆりかもめ”は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔Thank you for using the Toei-Oedo line.This train is bound for Tochomae(E-28),via Monzennakacho and Ryogoku.The next station is Shiodome(Siosite)(E-19).Please change here for the Yurikamome line.〕

 基本的にダンテ一門に入門してくる魔道師は魔女であることが多い。
 マリアように壮絶な性暴力を受けた過去の持ち主や、他にも迫害に遭った者などだ。
 来日したこの3人も、漏れなくそういう過去があったようである。
 その過去から上手く脱却できているマリアは良いモデルケースとされ、俄かに注目されているのである。

[同日16:20.天候:曇 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅→ワンスターホテル]

 大門駅から15分ほどで森下駅に到着する。

〔森下、森下。……〕

 駅に進入する際、桜鍋の店の宣伝放送が流れる。

 マリア:「サクラナベって何?」
 稲生:「馬肉を使ったすき焼きのようなものです」
 マリア:「馬肉……」

〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです〕

 ドアが開いてホームに流れる放送はさすがに普通。
 電車を降りて、改札口に向かう。

 稲生:「外の天気が気になるところですが……」
 マリア:「あー……何か止んでるっぽい」
 稲生:「本当ですか!」
 マリア:「また降ってくるかもしれないけどね」

 果たして駅の外に出てみると、その通りであった。
 どんよりとした曇り空ではあったが、傘は要らないほど。
 そこから5分ほど歩いた所に、ワンスターホテルがある。

 エレーナ:「いらっしゃーい」

 フロントにはエレーナがいた。

 ロザリー:「うわ、本当にいる……」
 エレーナ:「今日は部屋3つ取ってあるから、どうぞごゆっくりー」
 マリア:「3つ!?ルーシー達、1人ずつ取ったのか?」
 エレーナ:「違う違う。まずはゼルダとロザリーの部屋、ルーシーの部屋、それとマリアンナと稲生氏の部屋だ」

 エレーナ、どや顔で答える。

 稲生:「えっ、僕も泊まる前提なの!?しかもマリアさんと同室……
 マリア:「この場合、私がルーシーと一緒の部屋でないとダメだ」
 ルーシー:「他の場合だと一緒になる気か……」
 エレーナ:「こういう機会を利用して、稲生氏と同室になってだなぁ……」
 マリア:「3人の視線が冷たいからやめろ!」
 稲生:「僕も泊まりで決定なの……」

 結局、稲生はデラックスシングルに一泊することに決定した。
 宿泊代はマリアンナがカードで払っていたが……。

 エレーナ:「それじゃ稲生氏は3階の303号室、あとの魔女4名様は4階の414号室と415号室でーっす。どうぞごゆっくりー」
 マリア:「ね?しっかり勇太の分、ボッタくり」
 ルーシー:「噂は本当だったわけね」
 稲生:「ハハハ……」

 乾いた笑いを浮かべる稲生だった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする