報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「都内観光」

2019-05-20 09:32:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月11日10:52.天候:晴 東京都台東区上野 JR御徒町駅→JR上野駅]

〔まもなく3番線に、上野、池袋方面行きが参ります。危ないですから、黄色いブロックの内側までお下がりください〕

 都営地下鉄大江戸線を上野御徒町駅で降りた稲生は、その足でJR御徒町駅へ移動した。
 隣接しているのに、何故か地下鉄は駅名がブレているのが御徒町だ。
 ここからして既に、観光客を惑わす駅名になっている(上野なのか?御徒町なのか?)。
 しかし、稲生は全く物怖じしない。

〔おかちまち〜、御徒町〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 稲生:(たった一駅乗る時だけに限って、E235系が来るんだよなぁ……)

 山手線で走行している新型車両のこと。

〔3番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 発車メロディもそこそこに、電車のドアもホームドアもすぐに閉まる。
 並走する京浜東北線が何故か御徒町駅に停車しているが、土休日ダイヤだけは京浜東北線の快速も停車することになっている。
 つまり、平日は通過ということだ。
 これもまた初心者を惑わすダイヤになっている。

〔次は上野、上野。お出口は、左側です。新幹線、高崎線、宇都宮線、常磐線、地下鉄銀座線、地下鉄日比谷線と京成線はお乗り換えです〕
〔The next station is Ueno(JY05).Please change here for the Shinkansen,the Takasaki line,the Utsunomiya line,the Joban line,the Ginza subway line,the Hibiya subway line and the Keisei line.〕

 御徒町〜上野間は駅間距離が短いので、放送が終わる頃には電車はホームに差し掛かっている。
 これに車掌の肉声放送があったら、これを再現するだけで到着してしまう。

〔うえの〜、上野〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 稲生は電車を降りて、低いホームへ向かうことにした。
 即ち、13番線から15番線のことである。
 16番線と17番線もそうなのだが、こちらは特急ホーム。
 稲生が狙うのは上野始発の中距離電車。
 それで大宮まで向かうつもりである。
 幸い、11時8分発の宇都宮線がある。
 稲生がそこに足を向けた時だった。

 外国人旅行客A:「Excuse me.」
 稲生:「!」
 外国人旅行客A:「上野動物園にはどう行ったらいいですか?
 稲生:「あそこの公園口から出るといいです

 英語で聞いて来た外国人旅行客に対し、稲生は英語で答えた。

 稲生:(言い回し的にアメリカ人じゃなさそうだな……。マリアさんが話すイギリス英語に近い……)

 稲生はそう思ったが、所詮日本人が話す英語はアメリカ英語。
 それでもその旅行客には通じたらしく、『Thank you.』と言いながら去って行った。

 稲生:(すぐそこのアクセスも分からないとは……。どちらかというと都内観光初心者向きの上野でもこれだから、やっぱりマリアさん達が心配だ)

 稲生はスマホを取り出した。

 稲生:「あ、もしもし。マリアさんですか?今、どちらに?」
 マリア:「隅田川の水上バスってヤツに乗ってる」
 稲生:「は!?」
 マリア:「いや、さっき森下駅から地下鉄に乗ったら、両国駅から?そういう乗り物が出てるって広告があったんで、乗ってみた」
 稲生:「(観光向けでも比較的上級者用の水上バスに、いきなり乗ってる!?)そ、それで、感想はどうですか?」
 マリア:「『日本にも川の上を走る船があったなんて』って、ルーシーが言ってた」
 稲生:「いや、まあ、一応ありますけどね。特に迷ったりはしていないんですね?」
 マリア:「それは大丈夫」
 稲生:「そ、そうですか。それならいいんですけど……。じゃあ、僕は実家に先に行ってますから」
 マリア:「ああ、分かった」

 稲生は電話を切った。

 稲生:「何だ。心配しなくても大丈夫だったか……」

 稲生はホッとした。

 外国人旅行客B:「すいません、六本木ヒルズへはどう行ったら……
 稲生:「あー、ハイハイ。六本木ヒルズですね。それなら、地下鉄日比谷線に乗り換えて……

[5月11日11:33.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔まもなく大宮、大宮。お出口は、右側です。新幹線、高崎線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。電車とホームの間が広く空いている所がありますので、足元にご注意ください〕
〔The next station is Omiya(JU7).The doors on the right side will open.Please change here for the Shinkansen,the Takasaki line,the Saikyo line,the Kawagoe line,The Tobu Urban Park line and the New Shuttle.Please watch your step...〕

 英語放送の『Watch your step』(段差に注意)はアメリカ英語で、イギリス英語だと『Mind the gap』(隙間に注意)となるらしい。
 日本語では『足元に注意』で統一されているが。
 もちろん、マリア達が前者を聞いても意味は通じる。

〔「ご乗車ありがとうございました。おおみや〜、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。9番線の電車は宇都宮線、普通列車の宇都宮行きです。……」〕

 稲生が電車を降りて、コンコースに進む。
 改札口を出ると、意外な人物と出会った。

 藤谷:「おや?稲生君じゃないか」
 稲生:「藤谷班長。どうしたんですか?」
 藤谷:「俺は折伏の手伝いで来たんだよ。結局流れたけどな」
 稲生:「誰ですか?」
 藤谷:「大宮で折伏っつったら、顕正会員に決まってるだろーが。稲生君がいない間に、正証寺にも突撃して来やがったんで返り討ちにしてやったんだが、『本部で法論しろ!』の一点張りだったもんで、本部にお邪魔したら、『そんなヤツ、知らない』だってさ」
 稲生:「お決まりのパターンですね」
 藤谷:「しょうがないから、駅前で新聞配ってる婦人部員のオバちゃんから新聞だけ頂戴してきたというわけだ」
 稲生:「今度はその婦人部員の折伏を?」
 藤谷:「いや、婦人部員のことはうちの婦人部員に任せるさ」
 稲生:「なるほど」
 藤谷:「それより稲生君はどこへ行くところだい?」
 稲生:「実家に帰る所ですよ。バスに乗り継ぎができるといいんですが……」
 藤谷:「だったら車で送って行くよ」
 稲生:「いいんですか?」
 藤谷:「ああ。車、西口の方に止めたもんだから、そっちへ行くところだったんだ。週末の本部周辺、止めれる駐車場無いしな」
 稲生:「ひs【バキューン】さんと軋轢が無かったらねぇ……」

 2人の法華講員は西口へと向かった。
コメント
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