報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「御開扉」

2019-05-28 19:04:12 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月13日13:30.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺・奉安堂]

 ターコイズブルーの座席に並んで座る信徒達。
 その中に稲生や鈴木も含まれている。

 稲生:「この座席のシートピッチは約90……」
 鈴木:「先輩、メジャーで測らないでくださいよ。恥ずかしいな」
 稲生:「ゴメンゴメン。前々から気になっててさぁ……」
 鈴木:「新幹線の自由席並みにはありますね」
 稲生:「そうだね。どちらかというと、E2系並みの980ミリくらい?」
 鈴木:「そのくらいだと思います」

 進行係:「御開扉に先立ちまして、注意事項を申し上げます。……」

 進行係の御僧侶がマイクで信徒達に注意事項を読み上げる。
 それまでワイワイガヤガヤやっていた信徒達も、これでだいぶ静かになるわけだ。

 鈴木:「今日は平日だから、たまに騒ぐガキがいなくていいですよ」
 稲生:「顕正会じゃ、隔離されてるもんねぇ……。高校生にならないと入信できないってことは、高校生になる前までは救われないってことになるからね」
 鈴木:「全くですな」

 しばらくして、ぞろぞろと僧侶席の左右の扉から御僧侶達がやってくる。
 あれにも席次が決まっているらしいが、あまり詳しく話すと【お察しください】。
 猊下の御着席される場所が固定されているのは当たり前だが。
 で、御僧侶のマイクによる先導で唱題が始まる。
 最後に猊下が来られ、猊下席に着かれると、鉄扉と呼ぶに相応しい鎧戸が重々しく開く。
 外側のは左右に、内側のは上下に開閉するタイプだ。

 稲生:(顕正会の青年会館にも、左右に開閉する鉄扉タイプのものがあったな……。あれを見て、逆に『宗教団体らしくなったなぁ』と思ったっけ)

 かくいう作者がそう。
 おかしな話だが、今から思えば、『新興宗教から伝統宗教っぽくなった』という意味合いでそう思ったのだろう。
 もちろん、ただの勘違いであるが。
 実際の伝統宗教は、もっと壮大なものである。
 二重の鉄扉が開くと、大きな仏壇が現れる。
 恐らく、高さは2メートル以上あるだろう。
 仏壇の前まで行って実際に観音扉を開く係の御僧侶と対比をしてみても、とても大きいものだと分かる。
 しかもこの仏壇には閂が掛けられており、係の御僧侶が恭しくその閂を外して、観音扉を開ける。
 すると、更に中には御厨子があって、その扉も開けて、ようやく大御本尊が信徒達の前に現れるのだ。
 その最後の御厨子の扉が開いた瞬間、唱題は終わる。
 それから猊下の先導で、読経が始まる。
 この流れは普段の勤行の五座三座とは違うものであり、どういうものなのかは実際に御受誡・御勧誡の上、体験されたし。

 それから15分から20分経ち、稲生に異変が起き始めた。

 稲生:(な、何だ……?魔か……?)

 それは妙法蓮華経如来寿量品第十六の自我偈を3回読み終わり、唱題に入ってからのことだった。
 それまで何ともなかった稲生に酷い睡魔が襲い掛かり、また鈍い頭痛が起き始めた。
 しかも、ただの睡魔や鈍痛ではない。
 脳裏にフラッシュバックのように、エレーナが映し出された。
 それは恐らくエレーナが昔、“魔の者”に憑依されたマフィアとボスと戦っている時の描写。
 背中にマシンガンの銃撃を受け、危うく死にかけたとのことだ。
 その時の被弾の痕は、今も背中に残っている。
 魔道士のローブが防弾スーツ代わりになったおかげで死にはしなかったが、さすがに重傷は負って血だらけになったということだった。

 稲生:(何でこんな場面が……?)

 稲生が混乱していると、猊下の鈴が力強く鳴った。
 それで稲生、ハッと正気に戻る。

 猊下:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
 稲生:(一体、何が起きるというんです?エレーナに何かが起こるんですか?)

 いくら“魔の者”に憑依されたとはいえ、一大組織のマフィアのボスを殺したのだ。
 その後で組織は警察機関の介入を受けてズタズタになったわけだが、全員が逮捕されたわけではあるまい。
 中には未だに逃亡中で、エレーナの所業に大きな恨みを持った残党が報復に行くかもしれない。
 何しろ、北朝鮮の工作員の侵入を許していた国だ。
 マフィアの侵入も簡単に許すかもしれない。
 マフィアの構成員そのものはブロックできても、その息の掛かっているだけの者は可能だろう。

 猊下:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
 稲生:(答えてください!エレーナに何が起こるというんですか!?マフィアの報復ですか!?)

 だが、稲生がいくら呼び掛けても、(当たり前だが)大御本尊からの回答は無かった。

[同日14:15.天候:晴 大石寺・奉安堂外]

 鈴木:「いやあ、顕正会の日曜勤行より達成感のある自行ですねぇ!」
 稲生:「うん……」
 鈴木:「先輩、大丈夫ですか?さっき唱題の時、ウツラウツラしてましたよ?」
 稲生:「ああ、うん……大丈夫……」

 建物の外に出て、石畳の上を歩く。

 鈴木:「今日は天気がいいから、富士山がよく見えますよ!」

 鈴木は手持ちのスマホで富士山の写真を撮った。

 鈴木:「エレーナに後で見せてあげよう!」
 稲生:「エレーナ……」
 鈴木:「さすがに富士山をじっくり眺めたことは無いみたいですからね!」
 稲生:「鈴木君、そのエレーナのことなんだけど……」

 奉安堂入口の門も出てから、稲生は鈴木に御開扉の際、自分の身に起きたことを話した。

 鈴木:「えっ、エレーナが!?」
 稲生:「そうなんだ。何だか、嫌な予感がする」
 鈴木:「分かりました!すぐにエレーナに連絡を取ります!」

 鈴木は自分のスマホを出した。

 稲生:「キミはエレーナと個人的な連絡先も交わしたのかい?」
 鈴木:「もちろん!」
 稲生:(もしかしたらエレーナのヤツ、鈴木君のことは満更でもないのかも……)
 マリア:「勇太」
 稲生:「えっ!?」

 突然背後から声を掛けられ、振り向くとそこにいたのはマリアだった。
 マリアだけではない。
 ルーシーにゼルダ、ロザリーも一緒だった。

 稲生:「マリアさん!?えっ、どうして?朝霧高原とかで観光するはずじゃ?」
 マリア:「それなんだけど、ちょっと困ったことになって……」
 稲生:「困ったこと?」
 鈴木:「先輩!エレーナが電話を代われと言ってます!」
 稲生:「ああ、分かった。……もしもし」
 マリア:「エレーナがどうかしたのか?」
 鈴木:「実はさっき先輩が……」

 必死にエレーナに危険予知を訴える稲生。
 鈴木の説明に驚いて稲生を見るマリア。
 日本語が分からず、この3人がどうして驚いているのか分からない魔女3人。
 魔の手は確実に高速で迫って来ていた……。
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“大魔道師の弟子” 「添書登山」

2019-05-28 16:48:49 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月13日10:40.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺・登山事務所]

 BGM:“ZUN’s Music Collection”より、“蓬莱伝説”。
 https://www.youtube.com/watch?v=sm4bd7d9N9c

 

 稲生と鈴木を乗せた登山バスが大石寺に到着する。

 

 鈴木:「いやあ、総本山から眺める富士山は格別ですなぁ」
 稲生:「いや、全く」
 鈴木:「顕正会じゃ、富士山すら見えない」
 稲生:「ま、そりゃそうだろうね」

 バスから降りて、他の登山者と同様、添書を手に登山事務所へ向かう2人。

 御僧侶:「……それでは2000円の御開扉御供養をお願いします」
 稲生:「はい」

 創価学会破門前は券売機で行っていた御供養と内拝券のやり取り。
 破門直前は大人1600円、子供800円だった。
 効率的だが、何だか味気ないように思える。
 現在は登山事務所において、カウンター越しに係の御僧侶から直接御供養と内拝券をやり取りする。
 末寺で発行された添書を係の御僧侶に渡し、御供養も渡す。
 すると内拝券が発行されるので、それを手に背後の記帳台に移り、鉛筆で教区番号と所属寺院名を記入する。
 券の上にはパンチで開けた穴があって、そこに紐を通して結び、首から下げられるようになっているのだが、稲生と鈴木は既に内拝券入れを持って来ていた。
 これはその名の通り、内拝券用のパスケースである。
 これも首から掛けられる。

 御僧侶:「本日は報恩坊にて布教講演がございますので、ご参加ください」
 稲生:「報恩坊さん?ですか?」
 御僧侶:「はい」
 稲生:「分かりました」

 ※現実には5月13日、報恩坊では布教講演は行われていない。あくまで、フィクションです。

 鈴木:「先輩、行きましょう」
 稲生:「ああ、うん。(登山事務所から遠くない?)」

 2人は登山事務所を出ると、北の方にある塔中坊に向かった。

[同日11:20.天候:晴 大石寺・報恩坊]

 

 稲生:「えーと……。ここだな」
 鈴木:「奉安堂から近いですね」
 稲生:「うん、まあね。それにしても、広い境内だ」
 鈴木:「これでも広宣流布が来たら、手狭になるんですよね」
 稲生:「らしいね。広宣流布後の大石寺がどんなものなのか、それは想像つかないけど……」
 鈴木:「夏と冬のコミケ会場に行けば、だいたい分かりますよ。きっと、あんな感じなんだなって」
 稲生:「コミケか!さすがにコスプレして、大御本尊様の前には出れないよ?」
 鈴木:「先輩、あくまでもコスプレはサブであって、メインではないですからね?」

 とはいえ、今の鈴木の発言はコスプレイヤーの半分を敵に回す発言でもある。
 が、それに反論すると、今度は薄い本メインの参加者の反感を買うという……。

 鈴木:「塔中坊では漏れなく正座形式なんですね。末寺だと椅子席が半分くらいありますけど……」
 稲生:「そうみたいだね」

 元顕の2人は正座には慣れているが、鈴木だけ何だか煌びやかな正座椅子を使っている。
 これも顕正会時代から使っているものだという。

 進行係:「それでは御題目三唱を致します」

 布教講演が始まる前、奉安堂に向かって御題目三唱をする。
 大広間で行われると、実質的に報恩坊の本堂にも向かって三唱することにもなる。

[同日12:00.天候:晴 大石寺・売店(仲見世商店街)]

 布教講演が終わると、鈴木は報恩坊にも御供養を置いて行った。

 稲生:「さすがは鈴木君だね」
 鈴木:「顕正会でもだいぶ金を使っていたんですよ。恥ずかしい話です」
 稲生:「結局は浅井ファミリーの生活費に消えるもんね。ここは違う」
 鈴木:「そうそう。昼飯、何食べます?」
 稲生:「まあ、やっぱり“なかみせ”だろう」

 平日なので登山者数は少なかったが、日本人よりも外国人の方が多い感じだ。
 それも、アジア系が。

 

 稲生:「やっぱこれだな」
 鈴木:「先輩、カレー好きなんですか?」
 稲生:「まあね。芙蓉茶寮のカレーも美味かったけど、これに匹敵するものがここにあった」
 鈴木:「芙蓉茶寮、確かに味は悪くなかったんですけどねぇ……。特盛なんか、『御飯が止まらなーい!』なんて言って、なかなか芙蓉茶寮から出なかったものです」
 稲生:「徳森茂雄さんですか。愛称、『特盛さん』。あの人も塔中坊所属なんですって?」
 鈴木:「そうなんですよ。彼女と一緒に御受誡したらしいんですが、一体どこの所属なんだか……」
 稲生:「妙観講?それともさっきの報恩坊?」
 鈴木:「いや、妙観講では無かったと思いますねぇ。あいつ、妙観講員にボコボコにされてましたから」
 稲生:「は!?」
 鈴木:「あ、いや何でも……。エリもエリで、『オメーラ、フザけんじゃねぇ!何が妙観講だ!ヒック!』なんて」
 稲生:「酔っぱらってたんかい!」

[同日12:45.天候:晴 大石寺・大日蓮出版販売所]

 昼食が終わった後で、同じ並びにある大日蓮出版の販売所に向かう。

 鈴木:「んー、これこれ。“妙教”と“大日蓮”。こういう機関誌もよく読んでおかないとですね」
 稲生:「僕は“大白法”と“慧妙”がせいぜいだなぁ……」
 鈴木:「先輩、“慧妙”読んでるんですか?」
 稲生:「一応ね。最近は顕正会に対する破折記事が多いから、そういった意味では“大白法”より使えるかもね」

 但し、顕正会の中では“慧妙”は日蓮正宗の機関紙というより、妙観講単体の機関紙というイメージが強い為(間違ってはいない)、受け取りを拒否られる場合もある。
 顕正新聞は押し付けて来るくせに……。

 鈴木:「六巻抄も買って行こう」
 稲生:「結構、勉強熱心なんだね?」
 鈴木:「顕正会には御書が無いでしょう?でも何故か六巻抄はありました」
 稲生:「あったね!」
 鈴木:「しょうがないので、それで教学の勉強をしていたつもりなんですが、日蓮正宗で出しているものも読んでみたかったんですよ。そして、顕正会との違いをここでも見出してみようかと思いまして」
 稲生:「なるほどね。破折に使えるってわけか」

 因みに頒価も同じであるが、それの意味するところは【お察しください】。
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