報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「季節外れのマッチ売りの少女」 2

2019-05-09 19:15:24 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月4日11:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 台原森林公園]

 ※当作品で仙台市は青葉区しか登場していませんが、これは青葉区がはっきり言って広過ぎるだけです。さいたま市で1番広い岩槻区よりも更に広い。

 笠売りの爺さん(鏡音レン):「これからどうしたらいいんじゃ?」
 マッチ売りの少女(鏡音リン):「魔女っ娘の使命は末法濁悪の世の中を正すこと。私に任せて」
 ナレーター(初音ミク):「そう言うと、少女は徐に地面落ちていた魔法のステッキを拾い上げました。そして、それを振り回しながら呪文を唱えたのです」
 少女:「謗法罪障どーこだ?」
 ナレーター:「何ということでしょう。少女の放った光の矢が近くの御屋敷に痛烈ヒットしたではありませんか」
 少女:「あそこ!行ってみよう!」
 爺さん:「よ、よし!」
 ナレーター:「少女は軽い足取りで、お爺さんは老体に鞭打って、光の矢が直撃した御屋敷に向かいました。いかにも風格漂う武家屋敷に光の矢が当たり、そこから発火したせいで、御屋敷は燃え上がっていました。そこへ現れたのは……」
 大石内蔵助(エミリー):「もしや、この屋敷に火を放ったのはお前達か?」
 爺さん:「だ、誰がこんなことを!?」

 敷島孝夫&敷島峰雄:「キミ達だよ」

 少女:「ごめんなさい。こんなことになるとは思わなかったの」
 大石内蔵助:「いや。おかげでこの火事に乗じ、吉良邸に討ち入ることができた。御協力、感謝する」
 少女:「何をしているの?」
 大石内蔵助:「我が主君の仇、吉良上野介の首を討ち取りに来たのだ!」

 孝夫:「今度は忠臣蔵?MEIKO辺りの入れ知恵か?」
 峰雄:「む!日本でクリスマスといったら、やはり忠臣蔵だな」
 孝夫:「吉良邸討ち入りはまだ旧暦だから、今の暦と合ってませんよ」

 吉良上野介(シンディ):「はーっはっはっはっはーっ!」
 大石内蔵助:「む!出たな、吉良!!」
 吉良上野介:「主君の仇討ちとは面白い!返り討ちにしてくれるわ!」

 ジャキッ!ガチャガチャ!(シンディの右手がマシンガンに変形する)

 吉良上野介:「食らえっ!」

 タタタタタタタタタタ!(機銃掃射の音)

 大石内蔵助:「危ない!」

 大石内蔵助役のエミリー、ボカロ姉弟を守るように弾幕を受け止める。

 峰雄:「まさかこの為に野外ステージを選択したのかね?!」
 孝夫:「屋内ステージだと、建物に銃弾が当たっちゃうんで……」
 峰雄:「実弾か!」

 少女:「あれが末法濁悪の根源、第六天魔王の手先にして魔女っ娘の敵!」
 爺さん:「ひ、ひええ!」
 大石内蔵助:「飛び道具とは卑怯なり!されば我も飛び道具を使わん!」
 吉良上野介:「何ぃ!?」

 大石内蔵助役のエミリー、右手をショットガンに変形させる。

 峰雄:「ちょっとやり過ぎじゃないかね!?流れ弾が観客にでも当たったりしたら……」

 だが、観客席は大盛り上がり。
 スタンディングオベーションが起こるほどだ。

 孝夫:「いや!バカ受けです!」
 峰雄:「何っ?!」
 孝夫:「世の中、何がウケるか分かりませんね!」

 最後には吉良上野介が倒されて、ストーリーは大団円。
 尚、鋼鉄姉妹の銃火器装備はイベント時においてのみ再装備可能という取り決めをちゃっかり決めていた。
 但し、実弾まで良かったかどうかは【お察しください】。
 カーテンコールまで行って、舞台は無事に終了した。

 平賀:「皆、お疲れ様。今日は敷島峰雄会長が御覧下さったらしい。会長がこちらにお見えなんで、皆はご挨拶を……」

 控え室に敷島家の2人が入って来た。

 孝夫:「よお、皆。お疲れさま」
 リン:「社長!あのねあのね!リン、頑張ったYo!観ててくれた!?」
 孝夫:「もちろんだとも。よく頑張ったな」
 リン:「えへへ……」(∀`*ゞ)
 シンディ:「会長がお見えになってるんだから、騒がないの」
 リン:「はーい」
 孝夫:「会長、何か一言」
 峰雄:「あー、うむ……。えー、キミ達の演劇については、前回のシンデレラに続いて第2段目なわけだが……。正直、途中まではとても心配で、いつ孝夫に中止命令を出させるか冷や冷やさせられた。だが、終盤で大いに巻き返した。これは評価に値するものだと思う。公演は今日一日だけであるが、午後の部もこの調子で頑張ってもらいたい。以上」

[同日16:00.天候:晴 同場所]

 初音ミク:「大胆不敵に♪ハイカラ革命♪磊々落々♪反戦国家♪」

 午後の部の公演で時間が余り、せっかくボカロ全員集まっている為、サービスで“千本桜”を披露するボカロ達。
 本来、初音ミクの持ち歌であるが、現在は全ボカロがカバーしている為、全員合唱も可能。

 敷島:「よーし、皆、車に乗ってくれ」
 平賀:「うちの研究室まで来てください。ボカロ達の整備やりますんで」
 敷島:「すいませんね」
 平賀:「いえいえ。ついでにうちの学生達の見学もさせてもらいますから」
 敷島:「なるほど。そういうことですか」

 明日はいよいよ最終日。
 アリーナでのライブが控えている。
 レンタカーで借りたワンボックスを大学に向けて走らせている時、平賀が言った。

 平賀:「もうゴールデンウィークも終盤に差し掛かっているのに、何のテロも起きませんね」
 敷島:「もちろんその方がいいんですけどね。でも、確かに何も起こらなさすぎるのも、それはそれで気味悪いなぁ……」
 平賀:「やはり敷島さんではなくて、吉塚博士の関係者を狙っただけなんでしょうか?」
 敷島:「ここまで来ると、そんな気がしてきますなぁ……。しかしそうなると、仙台駅でのテロは、あの近くに吉塚博士の関係者がいたということになります」
 リン:「社長、そのことなんだけど……」
 敷島:「ん?」

 助手席の後ろに座っているリンが、運転席にいる敷島の横に顔を出した。

 リン:「あのメイドロイドが新幹線から降りて来た時、一緒に降りて来た人間がいたの」
 敷島:「だけどその人間は無関係だったって、鷲田警視が言ってたぞ」
 シンディ:「社長。私達と違って、メイドロイドは基本的に与えられた命令でしか動きません」
 敷島:「知ってるよ、それくらい」

 先に気づいたのは平賀だった。

 平賀:「敷島さん、シンディが言いたいのはこういうことですよ。メイドロイドというのは、基本的に留守番です。外に出る場合は、家事の一環として買い物などに限られます。それ以外は、基本的にユーザーの目の届かない所に勝手には行けません」
 敷島:「と、いうことは……?」
 平賀:「あの場には、メイドロイドに爆弾を仕掛けて敷島さんの所へ向かわせた犯人がいたってことですよ。メイドロイドの特性を知った人間がね」

 たまたま一緒に降りた乗客を偽ユーザーに仕立て上げるということは、メイドロイドは勝手に単独行動ができないプログラムであることを知っているということだ。

 リン:「赤い新幹線から降りて来たYO」
 敷島:「俺達の乗った車両の前方に連結されていた“こまち”の車両か……。やっぱり私が狙われたんじゃないですか?」
 平賀:「エミリーやシンディがいる中で、上手く行くとは思えませんけどね。後でエミリーやシンディのメモリーを解析させてもらえませんか?彼女達の視界の中に、本当のテロ対象者がいたのかもしれない」
 敷島:「いいですよ」
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“アンドロイドマスターⅡ” 「季節外れのマッチ売りの少女」 1

2019-05-09 10:14:42 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月4日10:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 台原森林公園イベント特設会場]

 敷島峰雄:「よお。遊びに来たぞー」
 敷島孝夫:「何ゴルフ行くような恰好で来てんスか」
 峰雄:「ゴルフ行くついでなんだからしょうがない」
 孝夫:「本社の役員さんは羨ましいですなぁ」
 峰雄:「何言ってる。お前も本社の役員に名前があるだろうが」
 孝夫:「名ばかりですよ。それより、今回は観ない方がよろしいかと」
 峰雄:「“初音ミクのシンデレラ”は大好評だった。期待を持つのは当然じゃないか」
 孝夫:「前回はちゃんとした脚本家さんに脚本をお願いして、準備も万端だったから良かったようなものの、今度はボカロ達の自演乙ですよ?」
 峰雄:「刷り上がったパンフレットを見る限り、面白い流れになるように感じたがね?」
 孝夫:「まあ、それは『パッケージ詐欺』と言いますかぁ……」
 峰雄:「は?……コホン。因みに午後の部には、俊介も来るからよろしく」
 孝夫:「マジっスか!」
 峰雄:「この演劇が期待通りのものだったら、四季劇場での公演を前向きに考えよう」
 孝夫:「じゃあ、期待しない方がいいな」
 峰雄:「孝夫は随分と今回は自信が無いようだが、リハーサルを観たのかね?」
 孝夫:「いや、今回はぶっつけ本番です。何かメチャクチャになるような感じだったんで、途中で公演中止命令を出すかもしれません」

 客席最後列に座る敷島家の2人。
 孝夫の手元にはロイド達の動きを制御する端末(子機。親機は敷島エージェンシーの社長室内にある)がしっかり握られていた。
 と、そこへ最古参ボーカロイドのMEIKOがステージに現れた。

 MEIKO:「会場の皆さん、おはようございます。本日は敷島エージェンシー特別公演、“季節外れのマッチ売りの少女”にお越し頂き、真にありがとうございます。私、本イベントの進行を務めさせて頂きますMEIKOと申します。どうかよろしくお願い致します」

 峰雄:「遠くから見る限り、人間と変わらんな」
 孝夫:「それがロイドの最大の特徴です」

 暗い所で見れば体のあちこちで電源ランプなどの小さな光が漏れているので、それで人間と見分けがつく。

 峰雄:「それにしても“マッチ売りの少女”は、夜だろう?こんな明るい所の、それも野外会場で行うというのは如何なものかね?」
 孝夫:「その理由、終盤になれば分かりますよ」
 峰雄:「ええっ?」

 こうして、物語が始まった。

 ナレーター(初音ミク):「それはそれはとても寒い夜のこと、1人の少女が街角でマッチを売っていました」

 峰雄:「おい、トップアイドルにナレーターさせてるのか?」
 孝夫:「配役上、ミクに適役のキャラが無かったんですよー」

 マッチ売りの少女(鏡音リン):「マッチ。マッチ。マッチは要りませんかー?」
 ナレーター:「しかし、家路を急ぐ人達は誰もマッチを買ってくれません」
 少女:「ダメ……。誰も買ってくれない……。どうしよう……」
 ナレーター:「と、そこへ笠売りのお爺さんが現れました」
 笠売りの爺さん(鏡音レン):「お嬢ちゃん、笠は要らんかえ?」

 孝夫:「えっ!?」
 峰雄:「おい、何か『まんが日本昔話』みたいなのが混ざって来たぞ?どうなってる?」
 孝夫:「え、ええと……」

 爺さん:「これは病気の婆さんが夜なべして作った丈夫な笠じゃ。要らんかえ?」
 少女:「お金が無いの……」
 爺さん:「大丈夫かい?」
 少女:「寒い……」
 爺さん:「あい分かった。それでは、これを燃やして温まろう」

 峰雄:「燃やすんだ!?」
 孝夫:「お婆さんがせっかく作ったのに!?」

 人間の苦労、ロイド知らず。
 で、少女(リン)はバスケットに入ったマッチを取り出し、本当に着火した。

 孝夫:「本当に火ィ着けてるし!?」
 峰雄:「防火は大丈夫なのかね!?」
 孝夫:「ぼ、ボーカ(防火)ロイドですから」
 峰雄:「こらっ!」

 ナレーター:「何ということでしょう。笠が小爆発を起こすと、煙の中から怪しい男が現れたではありませんか。それはまるで、悪魔のような姿でした」
 悪魔(KAITO):「この私を呼んだのは貴様らか?」
 少女:「だ、誰!?」
 悪魔:「お前達は選ばれた。末法の世に蔓延る濁悪を祓いし魔女っ娘に!」

 孝夫:「な、何だこの流れ?」
 峰雄:( ゚д゚)ポカーン

 悪魔:「受け入れよ!我が悪しき力を!」
 少女:「うん、分かったっ!」

 孝夫:「即答かよ!?」

 悪魔:「良い覚悟だ。それでは……」
 爺さん:「お、お待ちくだせぇ!ワシも一緒に、魔女っ娘にしてくだせぇ!」
 悪魔:「ほお?何ゆえ貴様も魔女っ娘に?」
 爺さん:「魔法の力を手に入れ、悪どいことをしてお金を稼ぐんじゃ!」

 孝夫&峰雄:「魔法で治そうとは思わないんだ!?」

 ロイドと人間の感覚はまだズレているようだ。

 悪魔:「自らの三毒ぶりを臆面も無く曝け出すとは……。いいだろう、それこそ人間だ。それでは……パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!」
 ナレーター:「何ということでしょう。悪魔の前に大きな光の玉が現れ、それが見る見る魔法のステッキに変わったではありませんか」
 悪魔:「しかし残念だ。魔力を行使する杖は一本しか無い。戦って勝った方が杖を手にしろ。さあ、戦え!流血の惨を見る事、必至であれ!!」
 ???:「ちょおおおおおっと待ったぁぁぁぁぁっ!!」
 悪魔:「ぬ!?」

 舞台袖から突如として現れたのは、妖精の恰好をした巡音ルカ。

 妖精(巡音ルカ):「私は魔法の妖精!皆!こんな怪しい男の言う事に従ってはダメだよ!」

 着地した際、ルカの巨乳(90cm)がボインと揺れる。
 観客の男性衆、うんうんと頷く。

 悪魔:「貴様は何者だ!?」
 妖精:「人々の心を弄ぶなんて許せない!たぁーっ!!」

 妖精、手持ちの杖を悪魔に振り上げる。
 それを迎え打つ悪魔。
 杖が交差して、激しい火花を散らせる。

 妖精:「ここは私に任せて、キミ達は先に行って!」
 少女:「あなたを置いてなんて行けない」
 爺さん:「んだんだ!」
 妖精:「ありがとう……。キミ達と一緒にいた時間……忘れないよ……」

 孝夫:「1分も経ってねーぞ、おい!」

 悪魔と妖精の下からボンッと煙幕が上がる。
 その煙幕に乗じて、悪魔と妖精は舞台袖に急いで引き上げる。

 爺さん:「い、一体、何だったと言うんじゃ……?」
 少女:「2人とも消えちゃった……」

 途方に暮れる少女と爺さん。
 足元には悪魔が遺して行った魔女っ娘用のステッキだけが落ちている。

 ナレーター:「この2人は一体どうしたら良いのでしょうか。次回に続きます!」

 峰雄:「前後半分けかね!?」
 孝夫:「字数の都合らしいですね」
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