[5月14日22:00.天候:晴 東京都台東区上野 とある飲食店]
稲生とマリアとルーシーはJR御徒町駅で鈴木と合流し、駅近くの飲食店に入った。
酒でも入れれば悲しみも薄れるだろうと思ってのことだった。
確かにルーシーは結構行ける口だったが、同時に泣き上戸というか……。
ルーシー:「私がもう少ししっかりしていれば、2人を死なせずに済んだのに……。リバプールの時だって、私が注意力を散漫にしていなければあんなことには……ヒック……!こんな遠い外国まで来て、私は一体何をやってるのか……」
稲生:( ゚д゚)
鈴木:Σ(゚д゚lll)カ
マリア:(-_-;)
要は飲むと所構わず、相手構わず愚痴るタイプなのだった。
ルーシー:「おえ……気持ち悪い……」
マリア:「あー、もう!飲み過ぎだって!ちょっとトイレ行って来る」
稲生:「あ、はい」
鈴木:「トイレ、あっち……」
ここまでなら、アルコール提供の店であればよくある光景だ。
ところが、事件はまたしても起きる。
マリア達はしばらく戻って来なかった。
まあ女性だし、本当に吐いていたらそう簡単には戻って来れないだろう。
ここまででも、まだ飲み屋あるある話だ。
だが、マリアが青ざめた様子で戻って来た。
稲生:「マリアさん、お帰りなさい。あれ?ルーシーさんは?」
マリア:「勇太……どうしよう……?ルーシー……死んじゃった。血を吐いて……息しなくなっちゃった……」
稲生:「はあ!?」
[同日同時刻 天候:曇 長野県北部山中 マリアの屋敷2F西側・イリーナの部屋]
魔の者:「覚えているかね?『極東の島国に逃げれば安全だと思ったのかい?』と、私が言ったことを……」
イリーナ:「ええ、覚えているわ。まるで昨日のことみたいにね!」
バレーボールほどの大きさの水晶球で、イリーナは“魔の者”と交渉していた。
イリーナはいつものように目を細めておらず、大きく開いて水晶球を見据えていた。
魔の者:「今のところは眷属を遣わせるだけに留まっているが、いずれは直々に私が乗り込んでやろう。島国の小国など、私の力を持ってすればあっという間に沈没だ。分かるかね?2011年3月11日を……。私の揺さぶりで、あのザマだ」
イリーナ:「今度は南海トラフを起こす気かしら?あいにくとこちらの人間もバカじゃないから、想定はしているわよ?」
魔の者:「その想定でも多数の死者が出ているのはどういうわけだ?私が本気を出せば、想定外の魂を我が元に召すこともできるのだぞ?」
イリーナ:「さあ、どうだか……」
魔の者:「現に我が眷属は2人の弟子を地獄に堕とすことができた。そして、また1人……」
イリーナ:「また1人!?」
水晶球の画面が変わった。
そこには救急車に乗せられるルーシーの姿があった。
魔の者:「愚かな者ども。人間の医療程度で治る呪いなど、最初から掛けぬわ」
イリーナ:「見てなさい。あんたは絶対に冥府に送って2度と出してやらないから……!」
魔の者:「は、は、は。楽しみだ……」
そこで水晶球の交信は切れる。
イリーナは今度はマリアの水晶球に繫げた。
イリーナ:「マリア!マリア!聞こえる!?」
マリア:「師匠……どうしよう……?ルーシーが……ルーシーが……」
イリーナ:「気をしっかり持ちなさい!これは“魔の者”の攻撃よ!」
マリア:「“魔の者”の?」
イリーナ:「あの銃弾には“魔の者”の呪いが込められていたの!最初から即死同然だったゼルダとロザリーはそんな呪い関係無かったけど、ケガで済んだルーシーには呪いが掛かったの!“魔の者”の言い分では、病院に行って治るものじゃない!けど、救急車に乗せたんなら、取りあえず病院には行かせなさい!」
マリア:「それで、その後私達はどうすれば?」
イリーナ:「病院には私が後で行くから、ルーシーの搬送先が分かったら教えて!あとは……」
[同日22:29.天候:晴 東京都台東区上野 JR御徒町駅]
〔まもなく2番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕
ルーシーの搬送先が分かり、それをイリーナに送信したマリア。
イリーナの指示で、稲生達は再び大石寺へ向かうこととなった。
それも、なるべく早くというもの。
今、ルーシーの命は“魔の者”の手中にある。
いつ“魔の者”がルーシーへの呪いの力を強めるか分からないからだ。
〔「2番線、ご注意ください。山手線外回り、東京、品川、目黒方面行きが参ります」〕
再びやってきた電車は新型のE235系。
しかし今はそれを気にしている場合ではない。
〔おかちまち〜、御徒町〜。ご乗車、ありがとうございます〕
上野方面行きは夜でも混んでいたが、稲生達の乗る逆方向は空いていた。
空いている座席に腰掛ける。
〔2番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください〕
すぐに電車が発車する。
〔次は秋葉原、秋葉原。お出口は、左側です。中央・総武線各駅停車、地下鉄日比谷線とつくばエクスプレス線はお乗り換えです〕
〔The next station is Akihabara(JY03).The doors on the left side will open.Please change here for the Cyuo-Sobu line local service,the Hibiya subway line and the Tsukuba Express line.〕
稲生:「取りあえず、この電車で行けば東海道新幹線の最終列車には間に合うはずだ」
鈴木:「でも先輩、確かそれって三島止まりですよね?新富士駅まであと一駅……」
稲生:「いや、在来線と接続しているはずだ」
鈴木:「今日は沼津止まりですよ?沼津から先、どうやって行くんです!?」
稲生:「……そうだ。藤谷班長」
鈴木:「えっ?」
稲生:「藤谷班長が富士宮のホテルに泊まってるはずだ!藤谷班長に頼んで、沼津まで迎えに来てもらおう!」
鈴木:「そんな無謀な……!」
稲生:「やってみなきゃ分からないさ。とにかく、新幹線に乗ったら藤谷班長に連絡してみる!」
魔道士2人と普通の人間1人の緊迫を乗せて、山手線電車は巨大ターミナル駅へと向かう。
稲生とマリアとルーシーはJR御徒町駅で鈴木と合流し、駅近くの飲食店に入った。
酒でも入れれば悲しみも薄れるだろうと思ってのことだった。
確かにルーシーは結構行ける口だったが、同時に泣き上戸というか……。
ルーシー:「私がもう少ししっかりしていれば、2人を死なせずに済んだのに……。リバプールの時だって、私が注意力を散漫にしていなければあんなことには……ヒック……!こんな遠い外国まで来て、私は一体何をやってるのか……」
稲生:( ゚д゚)
鈴木:Σ(゚д゚lll)カ
マリア:(-_-;)
要は飲むと所構わず、相手構わず愚痴るタイプなのだった。
ルーシー:「おえ……気持ち悪い……」
マリア:「あー、もう!飲み過ぎだって!ちょっとトイレ行って来る」
稲生:「あ、はい」
鈴木:「トイレ、あっち……」
ここまでなら、アルコール提供の店であればよくある光景だ。
ところが、事件はまたしても起きる。
マリア達はしばらく戻って来なかった。
まあ女性だし、本当に吐いていたらそう簡単には戻って来れないだろう。
ここまででも、まだ飲み屋あるある話だ。
だが、マリアが青ざめた様子で戻って来た。
稲生:「マリアさん、お帰りなさい。あれ?ルーシーさんは?」
マリア:「勇太……どうしよう……?ルーシー……死んじゃった。血を吐いて……息しなくなっちゃった……」
稲生:「はあ!?」
[同日同時刻 天候:曇 長野県北部山中 マリアの屋敷2F西側・イリーナの部屋]
魔の者:「覚えているかね?『極東の島国に逃げれば安全だと思ったのかい?』と、私が言ったことを……」
イリーナ:「ええ、覚えているわ。まるで昨日のことみたいにね!」
バレーボールほどの大きさの水晶球で、イリーナは“魔の者”と交渉していた。
イリーナはいつものように目を細めておらず、大きく開いて水晶球を見据えていた。
魔の者:「今のところは眷属を遣わせるだけに留まっているが、いずれは直々に私が乗り込んでやろう。島国の小国など、私の力を持ってすればあっという間に沈没だ。分かるかね?2011年3月11日を……。私の揺さぶりで、あのザマだ」
イリーナ:「今度は南海トラフを起こす気かしら?あいにくとこちらの人間もバカじゃないから、想定はしているわよ?」
魔の者:「その想定でも多数の死者が出ているのはどういうわけだ?私が本気を出せば、想定外の魂を我が元に召すこともできるのだぞ?」
イリーナ:「さあ、どうだか……」
魔の者:「現に我が眷属は2人の弟子を地獄に堕とすことができた。そして、また1人……」
イリーナ:「また1人!?」
水晶球の画面が変わった。
そこには救急車に乗せられるルーシーの姿があった。
魔の者:「愚かな者ども。人間の医療程度で治る呪いなど、最初から掛けぬわ」
イリーナ:「見てなさい。あんたは絶対に冥府に送って2度と出してやらないから……!」
魔の者:「は、は、は。楽しみだ……」
そこで水晶球の交信は切れる。
イリーナは今度はマリアの水晶球に繫げた。
イリーナ:「マリア!マリア!聞こえる!?」
マリア:「師匠……どうしよう……?ルーシーが……ルーシーが……」
イリーナ:「気をしっかり持ちなさい!これは“魔の者”の攻撃よ!」
マリア:「“魔の者”の?」
イリーナ:「あの銃弾には“魔の者”の呪いが込められていたの!最初から即死同然だったゼルダとロザリーはそんな呪い関係無かったけど、ケガで済んだルーシーには呪いが掛かったの!“魔の者”の言い分では、病院に行って治るものじゃない!けど、救急車に乗せたんなら、取りあえず病院には行かせなさい!」
マリア:「それで、その後私達はどうすれば?」
イリーナ:「病院には私が後で行くから、ルーシーの搬送先が分かったら教えて!あとは……」
[同日22:29.天候:晴 東京都台東区上野 JR御徒町駅]
〔まもなく2番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕
ルーシーの搬送先が分かり、それをイリーナに送信したマリア。
イリーナの指示で、稲生達は再び大石寺へ向かうこととなった。
それも、なるべく早くというもの。
今、ルーシーの命は“魔の者”の手中にある。
いつ“魔の者”がルーシーへの呪いの力を強めるか分からないからだ。
〔「2番線、ご注意ください。山手線外回り、東京、品川、目黒方面行きが参ります」〕
再びやってきた電車は新型のE235系。
しかし今はそれを気にしている場合ではない。
〔おかちまち〜、御徒町〜。ご乗車、ありがとうございます〕
上野方面行きは夜でも混んでいたが、稲生達の乗る逆方向は空いていた。
空いている座席に腰掛ける。
〔2番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください〕
すぐに電車が発車する。
〔次は秋葉原、秋葉原。お出口は、左側です。中央・総武線各駅停車、地下鉄日比谷線とつくばエクスプレス線はお乗り換えです〕
〔The next station is Akihabara(JY03).The doors on the left side will open.Please change here for the Cyuo-Sobu line local service,the Hibiya subway line and the Tsukuba Express line.〕
稲生:「取りあえず、この電車で行けば東海道新幹線の最終列車には間に合うはずだ」
鈴木:「でも先輩、確かそれって三島止まりですよね?新富士駅まであと一駅……」
稲生:「いや、在来線と接続しているはずだ」
鈴木:「今日は沼津止まりですよ?沼津から先、どうやって行くんです!?」
稲生:「……そうだ。藤谷班長」
鈴木:「えっ?」
稲生:「藤谷班長が富士宮のホテルに泊まってるはずだ!藤谷班長に頼んで、沼津まで迎えに来てもらおう!」
鈴木:「そんな無謀な……!」
稲生:「やってみなきゃ分からないさ。とにかく、新幹線に乗ったら藤谷班長に連絡してみる!」
魔道士2人と普通の人間1人の緊迫を乗せて、山手線電車は巨大ターミナル駅へと向かう。