[4月27日16:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・大講堂]
平賀:「敷島さん自らお見えになるとは、相変わらずですね」
第一の会場となる東北工科大学に行くと、設営会場に平賀がいた。
敷島:「先生だって自らいらっしゃるじゃないですか。しかし、この大講堂をお借りできるとは恐縮ですね」
平賀:「今まで借りることができなかったことが不思議なくらいです」
敷島:「ここでは明日、リンとレンが使わせて頂きます」
平賀:「では早速マイクテストを……」
〔「もうやってるYoー!」〕
キーンと響くリンの声。
敷島:「こら!勝手にマイクいじるんじゃない!」
平賀:「ははは、相変わらずだ」
敷島:「全く……」
平賀:「彼らの動きは予定通りでいいですか?」
敷島:「よろしくお願いします。サプライズでミクも出演させますから」
平賀:「ミクだけ全会場出ずっぱりですか。さすがはトップアイドルですなぁ」
敷島:「整備状態が良いからですよ。ただ、やっぱりミクが1番ボディの消耗が激しいようです」
平賀:「機械というのは使えば使うほど消耗するものです。大丈夫ですよ。代わりのボディは用意しますから」
敷島:「よろしくお願いします」
〔「オーッホッホッホッホ!さあ、跪きなさい!」〕
エミリー:「おい」
たまたま屈んでいたエミリーに向かって、“悪ノ娘”の決め台詞をかましたリンに対し、マジレスするエミリー。
敷島:「ここでは歌うだけですからね。ここでは」
平賀:「さすがにもう、“悪ノ娘”のミュージカルはキツいですねぇ……」
歌って踊れるアンドロイドという触れ込みのボーカロイドが、初めてミュージカルにチャレンジしたものだ。
だが、そこでもウィリアム・フォレスト博士の妨害が入り、暴走させられたレンに敷島が刺されるなどの事件も起きている。
敷島:「先生、御夕食はどうなさいますか?」
平賀:「今夜はアリスやトニー君と水入らずでしょう?自分は遠慮しておきますよ」
アリスはウィリアムの養孫である為、今では和解しつつも、距離を取る平賀だった。
敷島:「最終日の打ち上げは?」
平賀:「それは前向きに考えます」
敷島:「了解しました。場所は国分町で?」
平賀:「いいですねぇ」
と、そこへ……。
村上:「よお!商売ご苦労さん!」
敷島:「村上博士。明日からよろしくお願いしますよ?」
村上:「任せとけ。老体に鞭打ってケアしたるわい」
ロイ:「えっと……シンディさんは?」
エミリー:「妹はアリス博士に付いて市街地におられる。残念だったな?」
明らかにシンディに渡しに来たであろう花束を手にしたロイに対し、エミリーは馬鹿にしたような笑いを浮かべた。
ロボットだった頃は絶対に浮かべることのない表情であった。
それがまた微笑に変わる。
エミリー:「私のことを『尻軽女』と呼んだ愚妹だ。お前がシンディを『尻軽』にしてやれ」
ロイ:「えっ?それってお姉さま公認で!?」
エミリー:(ウザ……)
村上:「まあ、ワシも夕食の予定は無かったし、もし良かったらワシが夕食の面倒を看るぞ?」
敷島:「えっ、本当ですか?」
村上:「おーう。何がいい?」
敷島:「アリスのヤツが、デッカいステーキ食いたいとか抜かしてまして……」
村上:「アメリカ人は特別な時にステーキを食べる傾向があるからの」
敷島:「そうなんですか?何か、毎日食ってるイメージですけどね」
村上:「日本人が毎日魚食べてるわけじゃなかろう。そういうことじゃよ」
敷島:「それもそうか。キースとクエント(※)もハンバーガーばっかり食ってたし」
※アメリカ編に登場したDCIの社員のこと。
村上:「明日からボーカロイド達のお祭りじゃ。アリスにとっても、特別な期間の前夜ということじゃろう」
敷島:「なるほど……。でも、トニーも一緒なんです。できれば、お子様メニューもある所で……」
村上:「ロイ。直ちに市街地限定で検索し、すぐに予約せい」
ロイ:「かしこまりました」
村上大二郎製作の執事ロイド、ロイは恭しく御辞儀した。
イケメン執事というよりは武闘派のように体が大きく、プロレスラーのような体型。
執事というよりSPに近い。
それがシンディの前ではデレるのだから、姉のエミリーにもウザがられているわけである。
で、当のシンディからも避けられている。
敷島:「酒が入るから車はダメですね。エミリーはタクシー2台呼んでくれ」
エミリー:「かしこまりました」
エミリーも恭しく御辞儀をした。
そして、店を検索中のロイに対し、含み笑いを浮かべてその場を去った。
敷島:「ロイド同士でも色々あるようですよ?」
村上:「それが私の今の研究テーマじゃ。我々、人類がしっかりせねばならん」
敷島:「エミリーからは『アンドロイドマスター』と呼ばれ、人間型兵器のエミリーが唯一何でも命令を受ける人間が私だけということですが……。私1人だけというのも荷が重いですなぁ」
村上:「『不死身の敷島』が、何を弱気になっておる?歳でも取ったかね?」
敷島:「……かもしれません」
平賀:「すいません。自分が不甲斐無いばっかりに……」
村上:「全く。南里博士もウィリー博士も、とんでもない化け物を造ってしまったの。お陰様で、使いこなせる人間が1人しかおらん」
敷島:「何とかトニーを教育するしか……」
村上:「あいつらのことじゃから、『息子じゃありがたみがない』とか言いそうじゃぞ?」
敷島:「う……」
平賀:「井辺プロデューサーはどうですか?少なくとも萌のマスターにはなれてるわけでしょ?ボカロ達からの信頼も勝ち取ったようですし……」
敷島:「妖精型ロイドやボーカロイドのマスターにはなれても、マルチタイプからは下に見られているようです」
村上:「難しいところじゃの。日本の人口1億2千万人、これだけおればもう1人くらいいても良さそうなものじゃが……」
敷島:「そうですね」
ロイ:「博士。レストランの予約が完了しました。博士のお名前で予約しております」
村上:「うむ。御苦労」
エミリー:「社長。タクシーの予約が完了しました。10分後に参ります」
敷島:「了解。ありがとう」
メイドと執事としての性能は同等ではないかと敷島は思った。
敷島:「アリスに電話しておこう」
敷島はスマホを取り出し、アリスに電話した。
村上が参加することに当初は難色を示したものの、完全に村上の奢りだと聞いたら喜んでいた。
敷島:「すいません。タダ飯とタダ酒には目が無いアリスでして……」
村上:「知っておる。子供が生まれる前までは、『朝までコース』必至じゃったんじゃろ?とにかく、タクシーが到着次第、出発しよう」
敷島:「おーい!リン、レン!そろそろ行くぞ!」
リン&レン:「はーい!」
平賀:「敷島さん自らお見えになるとは、相変わらずですね」
第一の会場となる東北工科大学に行くと、設営会場に平賀がいた。
敷島:「先生だって自らいらっしゃるじゃないですか。しかし、この大講堂をお借りできるとは恐縮ですね」
平賀:「今まで借りることができなかったことが不思議なくらいです」
敷島:「ここでは明日、リンとレンが使わせて頂きます」
平賀:「では早速マイクテストを……」
〔「もうやってるYoー!」〕
キーンと響くリンの声。
敷島:「こら!勝手にマイクいじるんじゃない!」
平賀:「ははは、相変わらずだ」
敷島:「全く……」
平賀:「彼らの動きは予定通りでいいですか?」
敷島:「よろしくお願いします。サプライズでミクも出演させますから」
平賀:「ミクだけ全会場出ずっぱりですか。さすがはトップアイドルですなぁ」
敷島:「整備状態が良いからですよ。ただ、やっぱりミクが1番ボディの消耗が激しいようです」
平賀:「機械というのは使えば使うほど消耗するものです。大丈夫ですよ。代わりのボディは用意しますから」
敷島:「よろしくお願いします」
〔「オーッホッホッホッホ!さあ、跪きなさい!」〕
エミリー:「おい」
たまたま屈んでいたエミリーに向かって、“悪ノ娘”の決め台詞をかましたリンに対し、マジレスするエミリー。
敷島:「ここでは歌うだけですからね。ここでは」
平賀:「さすがにもう、“悪ノ娘”のミュージカルはキツいですねぇ……」
歌って踊れるアンドロイドという触れ込みのボーカロイドが、初めてミュージカルにチャレンジしたものだ。
だが、そこでもウィリアム・フォレスト博士の妨害が入り、暴走させられたレンに敷島が刺されるなどの事件も起きている。
敷島:「先生、御夕食はどうなさいますか?」
平賀:「今夜はアリスやトニー君と水入らずでしょう?自分は遠慮しておきますよ」
アリスはウィリアムの養孫である為、今では和解しつつも、距離を取る平賀だった。
敷島:「最終日の打ち上げは?」
平賀:「それは前向きに考えます」
敷島:「了解しました。場所は国分町で?」
平賀:「いいですねぇ」
と、そこへ……。
村上:「よお!商売ご苦労さん!」
敷島:「村上博士。明日からよろしくお願いしますよ?」
村上:「任せとけ。老体に鞭打ってケアしたるわい」
ロイ:「えっと……シンディさんは?」
エミリー:「妹はアリス博士に付いて市街地におられる。残念だったな?」
明らかにシンディに渡しに来たであろう花束を手にしたロイに対し、エミリーは馬鹿にしたような笑いを浮かべた。
ロボットだった頃は絶対に浮かべることのない表情であった。
それがまた微笑に変わる。
エミリー:「私のことを『尻軽女』と呼んだ愚妹だ。お前がシンディを『尻軽』にしてやれ」
ロイ:「えっ?それってお姉さま公認で!?」
エミリー:(ウザ……)
村上:「まあ、ワシも夕食の予定は無かったし、もし良かったらワシが夕食の面倒を看るぞ?」
敷島:「えっ、本当ですか?」
村上:「おーう。何がいい?」
敷島:「アリスのヤツが、デッカいステーキ食いたいとか抜かしてまして……」
村上:「アメリカ人は特別な時にステーキを食べる傾向があるからの」
敷島:「そうなんですか?何か、毎日食ってるイメージですけどね」
村上:「日本人が毎日魚食べてるわけじゃなかろう。そういうことじゃよ」
敷島:「それもそうか。キースとクエント(※)もハンバーガーばっかり食ってたし」
※アメリカ編に登場したDCIの社員のこと。
村上:「明日からボーカロイド達のお祭りじゃ。アリスにとっても、特別な期間の前夜ということじゃろう」
敷島:「なるほど……。でも、トニーも一緒なんです。できれば、お子様メニューもある所で……」
村上:「ロイ。直ちに市街地限定で検索し、すぐに予約せい」
ロイ:「かしこまりました」
村上大二郎製作の執事ロイド、ロイは恭しく御辞儀した。
イケメン執事というよりは武闘派のように体が大きく、プロレスラーのような体型。
執事というよりSPに近い。
それがシンディの前ではデレるのだから、姉のエミリーにもウザがられているわけである。
で、当のシンディからも避けられている。
敷島:「酒が入るから車はダメですね。エミリーはタクシー2台呼んでくれ」
エミリー:「かしこまりました」
エミリーも恭しく御辞儀をした。
そして、店を検索中のロイに対し、含み笑いを浮かべてその場を去った。
敷島:「ロイド同士でも色々あるようですよ?」
村上:「それが私の今の研究テーマじゃ。我々、人類がしっかりせねばならん」
敷島:「エミリーからは『アンドロイドマスター』と呼ばれ、人間型兵器のエミリーが唯一何でも命令を受ける人間が私だけということですが……。私1人だけというのも荷が重いですなぁ」
村上:「『不死身の敷島』が、何を弱気になっておる?歳でも取ったかね?」
敷島:「……かもしれません」
平賀:「すいません。自分が不甲斐無いばっかりに……」
村上:「全く。南里博士もウィリー博士も、とんでもない化け物を造ってしまったの。お陰様で、使いこなせる人間が1人しかおらん」
敷島:「何とかトニーを教育するしか……」
村上:「あいつらのことじゃから、『息子じゃありがたみがない』とか言いそうじゃぞ?」
敷島:「う……」
平賀:「井辺プロデューサーはどうですか?少なくとも萌のマスターにはなれてるわけでしょ?ボカロ達からの信頼も勝ち取ったようですし……」
敷島:「妖精型ロイドやボーカロイドのマスターにはなれても、マルチタイプからは下に見られているようです」
村上:「難しいところじゃの。日本の人口1億2千万人、これだけおればもう1人くらいいても良さそうなものじゃが……」
敷島:「そうですね」
ロイ:「博士。レストランの予約が完了しました。博士のお名前で予約しております」
村上:「うむ。御苦労」
エミリー:「社長。タクシーの予約が完了しました。10分後に参ります」
敷島:「了解。ありがとう」
メイドと執事としての性能は同等ではないかと敷島は思った。
敷島:「アリスに電話しておこう」
敷島はスマホを取り出し、アリスに電話した。
村上が参加することに当初は難色を示したものの、完全に村上の奢りだと聞いたら喜んでいた。
敷島:「すいません。タダ飯とタダ酒には目が無いアリスでして……」
村上:「知っておる。子供が生まれる前までは、『朝までコース』必至じゃったんじゃろ?とにかく、タクシーが到着次第、出発しよう」
敷島:「おーい!リン、レン!そろそろ行くぞ!」
リン&レン:「はーい!」