[5月13日08:55.天候:晴 東京都豊島区南池袋 日蓮正宗・正証寺]
威吹は三門前の階段に腰掛けて、煙管に火を点けていた。
本来は禁煙なのだが、今時煙管など見たことがある者は無く、誰も威吹を注意する者はいなかった。
威吹:「む!?」
その時、威吹の長くて尖った耳がピクッと動いた。
そして、石段から立ち上がる。
明治通りからバタバタと走って来る2人連れがいた。
威吹はその2人に見覚えがあった。
威吹:「キノ!栗原氏!」
キノ:「妖狐の威吹!?何で、オメェが!?」
威吹:「それはこっちのセリフだ!」
栗原江蓮:「間に合った!それじゃキノ、行って来る!」
キノ:「おうっ、行って来い!」
栗原:「威吹さん、おはざーっす!」
威吹:「あ、ああ」
日本人離れした顔立ちはしているものの、一応は日本人である栗原江蓮。
彼女もまたこの正証寺の信徒である。
キノ:「オメェがここにいるということは、ユタが一緒か」
威吹:「そういうことだ」
キノ。
本名は蓬莱山鬼之助。
八大地獄の1つ、叫喚地獄を総べる獄長家の長男である。
赤鬼の一種で、全身赤銅色の肌をしている。
これは地獄界の炎によって、獄卒も肌が焼けるからである。
下級獄卒だと一張羅に金棒というイメージだが、キノは威吹と同じく着物に袴を穿いている。
獄卒でも、幹部級でないと許されない帯刀も許されている身分である。
が、ここでは威吹と同様に帯刀していない。
剣の腕前は妖狐族でも剣豪とされる威吹と、互角に戦えるほど。
指導者としての腕も一流で、栗原江蓮を高校女子剣道部埼玉県大会で優勝させるほどである。
もっとも、最初は剣道着で汗だくになって練習している江蓮に萌えたのが始まりらしいが。
キノに不純な動機で鍛え上げられた江蓮は当作品初登場時、大石寺の奉安堂に突入しようとしたケンショーレンジャーを手持ちの木刀でボコボコに返り討ちにしたという武勇伝を持つ。
ていうかこれも、礼拝所不敬罪の未遂罪……。
威吹:「ていうか今の読者は、上記の説明だけでも思い出せないくらいに忘れてると思うぞ?」
キノ:「あぁっ!?」
本来、キノと栗原は他作者の作品からのゲスト出演であった。
キノ:「ていうか魔界で隠居同然のオメェが、どうして今更ここにいるんだ?」
威吹:「まあ、色々あってな……」
キノ:「てか、あの魔女達はどこ行った?」
威吹:「別行動してるよ。理由は……あ、ちょうど来た」
そこへあの聖ジャンジョン教会の街宣車が通りがかった。
〔「こちらは敬虔なるキリスト教団、聖ジャンジョン教会である。我らが崇高なる神、イエス・キリストに抗う魔女共に告ぐ。直ちに神への抵抗を止め、我らと共に神の御前に……」〕
キノ:「何だ、うっせーな!」
街宣車はゆっくりと三門の前を通過して行った。
〔「日蓮正宗の皆様、悪いことは申しません。どうか、隠匿している魔女達を差し出してください。魔女達を隠匿することは、仏道修行の妨げにもなるはずです」〕
威吹:「それは言えてるかもしれん」
キノ:「おい!w」
〔「御町内の皆様、こちらは聖ジャンジョン教会です。本日、日曜礼拝を早めに切り上げ、魔女達の征伐に馳せ参じました。お騒がせしてしまっていることを、心よりお詫び申し上げます」〕
キノ:「いいのかよ?ミサを早めに切り上げて!?www」
威吹:「一応、徳川家康は切支丹共には無関心だったんだがな」
キノ:「向こうにとっちゃ、俺達ゃ悪魔の一種扱いだぜ?」
威吹:「そうなのか。一応、オレは稲荷大明神の使い狐の資格は持ってるぞ?」
キノ:「国家資格みてェに言うな。オレだって、地獄界の獄卒だ。今や、閻魔庁勤務だぜ?」
威吹:「オマエも官吏みたいなこと言うなァ」
キノ:「いや、オレの場合、マジで官吏職だって」
しばらくすると、街宣車はそのまま走り去って行った。
さすがに警察沙汰などは避けたいらしい。
威吹:「要するに、魔女達は既にあの切支丹共に正体を知られているので、ここには来れないわけだ」
キノ:「世知辛いことしてくれる連中だぜ」
[同日10:30.天候:晴 正証寺三門前]
本堂からぞろぞろと信徒達が出て来る。
稲生:「威吹、お待たせ。……あっ、キノ!」
キノ:「よお。湘南江ノ島で、危うくキモヲタ痴漢覗き野郎の疑いを掛けられたユタ!」
稲生:「やめてくれっ!」
威吹:「キノ!」
キノ:「ひゃはははっ!」
稲生:「この鬼!」
キノ:「鬼だ。文句あっか」
もちろん、人間界においては角を隠している。
威吹も稲生より高身長だが、キノはその上を行っている。
威吹でやっと身長170cm超えだという。
もっとも、江戸時代ではそれでも高身長者扱いだっただろうが。
キノは更にその上を行く。
よく、御伽噺でも鬼はかなり良い体格の表現をされるが、キノとて例外ではなく、どことなく華奢な感じをさせる威吹とは違い、完全に着物の下は筋骨隆々の鬼に相応しい雰囲気を出している。
藤谷も体格の良い人間ではあるが、こちらはどちらかというと脂肪をイメージさせる部分もある(実際はそれなりに筋肉質ではある)。
キノ:「オメェのもっと恥ずかしい所、読者に暴露してやる。まず……」
稲生:「わーっ!」
栗原:「おい、キノ。いい加減にしろ」
キノ:「おおっ、江蓮!待ってたぞ!」
愛しの栗原江蓮が出て来ると、途端にキノはデレッとなる。
栗原:「稲生先輩、サーセン。相変わらずキノは、ドSで……」
稲生:「まあ、しょうがないよ」
威吹:(逆に嗜虐性が旺盛でないと、獄卒は務まらんだろうがな)
キノは江蓮の肩と腰を抱いた。
キノ:「そんじゃーよ、オレはこれから江蓮とデートがあっからよ、あばよ」
稲生:「さ、さよなら……」
威吹:「あれで獄卒が務まるんだぞ?信じられるか?」
稲生:「栗原さんが段々人間じゃなくなってくるような気がしてしょうがない……」
威吹:「いずれは女の鬼と化すんだろうな、きっと。いや、ボクはまだ見たことないけど」
もっとも、稲生だって今は老化がほぼ止まっている状態。
これを人外化と言わずして何であろうか。
稲生:「とにかく、早いとこ先生に連絡してワンスターホテルに行こう」
威吹:「おっ、そうだね。そろそろ、ボクもさくらや威織が心配だ。早く帰ってあげないと……」
稲生:「さすが威吹、父親だねぇ……」
稲生と威吹は正証寺を出ると、池袋駅の方向へ歩いた。
威吹は三門前の階段に腰掛けて、煙管に火を点けていた。
本来は禁煙なのだが、今時煙管など見たことがある者は無く、誰も威吹を注意する者はいなかった。
威吹:「む!?」
その時、威吹の長くて尖った耳がピクッと動いた。
そして、石段から立ち上がる。
明治通りからバタバタと走って来る2人連れがいた。
威吹はその2人に見覚えがあった。
威吹:「キノ!栗原氏!」
キノ:「妖狐の威吹!?何で、オメェが!?」
威吹:「それはこっちのセリフだ!」
栗原江蓮:「間に合った!それじゃキノ、行って来る!」
キノ:「おうっ、行って来い!」
栗原:「威吹さん、おはざーっす!」
威吹:「あ、ああ」
日本人離れした顔立ちはしているものの、一応は日本人である栗原江蓮。
彼女もまたこの正証寺の信徒である。
キノ:「オメェがここにいるということは、ユタが一緒か」
威吹:「そういうことだ」
キノ。
本名は蓬莱山鬼之助。
八大地獄の1つ、叫喚地獄を総べる獄長家の長男である。
赤鬼の一種で、全身赤銅色の肌をしている。
これは地獄界の炎によって、獄卒も肌が焼けるからである。
下級獄卒だと一張羅に金棒というイメージだが、キノは威吹と同じく着物に袴を穿いている。
獄卒でも、幹部級でないと許されない帯刀も許されている身分である。
が、ここでは威吹と同様に帯刀していない。
剣の腕前は妖狐族でも剣豪とされる威吹と、互角に戦えるほど。
指導者としての腕も一流で、栗原江蓮を高校女子剣道部埼玉県大会で優勝させるほどである。
もっとも、最初は剣道着で汗だくになって練習している江蓮に萌えたのが始まりらしいが。
キノに
ていうかこれも、礼拝所不敬罪の未遂罪……。
威吹:「ていうか今の読者は、上記の説明だけでも思い出せないくらいに忘れてると思うぞ?」
キノ:「あぁっ!?」
本来、キノと栗原は他作者の作品からのゲスト出演であった。
キノ:「ていうか魔界で隠居同然のオメェが、どうして今更ここにいるんだ?」
威吹:「まあ、色々あってな……」
キノ:「てか、あの魔女達はどこ行った?」
威吹:「別行動してるよ。理由は……あ、ちょうど来た」
そこへあの聖ジャンジョン教会の街宣車が通りがかった。
〔「こちらは敬虔なるキリスト教団、聖ジャンジョン教会である。我らが崇高なる神、イエス・キリストに抗う魔女共に告ぐ。直ちに神への抵抗を止め、我らと共に神の御前に……」〕
キノ:「何だ、うっせーな!」
街宣車はゆっくりと三門の前を通過して行った。
〔「日蓮正宗の皆様、悪いことは申しません。どうか、隠匿している魔女達を差し出してください。魔女達を隠匿することは、仏道修行の妨げにもなるはずです」〕
威吹:「それは言えてるかもしれん」
キノ:「おい!w」
〔「御町内の皆様、こちらは聖ジャンジョン教会です。本日、日曜礼拝を早めに切り上げ、魔女達の征伐に馳せ参じました。お騒がせしてしまっていることを、心よりお詫び申し上げます」〕
キノ:「いいのかよ?ミサを早めに切り上げて!?www」
威吹:「一応、徳川家康は切支丹共には無関心だったんだがな」
キノ:「向こうにとっちゃ、俺達ゃ悪魔の一種扱いだぜ?」
威吹:「そうなのか。一応、オレは稲荷大明神の使い狐の資格は持ってるぞ?」
キノ:「国家資格みてェに言うな。オレだって、地獄界の獄卒だ。今や、閻魔庁勤務だぜ?」
威吹:「オマエも官吏みたいなこと言うなァ」
キノ:「いや、オレの場合、マジで官吏職だって」
しばらくすると、街宣車はそのまま走り去って行った。
さすがに警察沙汰などは避けたいらしい。
威吹:「要するに、魔女達は既にあの切支丹共に正体を知られているので、ここには来れないわけだ」
キノ:「世知辛いことしてくれる連中だぜ」
[同日10:30.天候:晴 正証寺三門前]
本堂からぞろぞろと信徒達が出て来る。
稲生:「威吹、お待たせ。……あっ、キノ!」
キノ:「よお。湘南江ノ島で、危うくキモヲタ痴漢覗き野郎の疑いを掛けられたユタ!」
稲生:「やめてくれっ!」
威吹:「キノ!」
キノ:「ひゃはははっ!」
稲生:「この鬼!」
キノ:「鬼だ。文句あっか」
もちろん、人間界においては角を隠している。
威吹も稲生より高身長だが、キノはその上を行っている。
威吹でやっと身長170cm超えだという。
もっとも、江戸時代ではそれでも高身長者扱いだっただろうが。
キノは更にその上を行く。
よく、御伽噺でも鬼はかなり良い体格の表現をされるが、キノとて例外ではなく、どことなく華奢な感じをさせる威吹とは違い、完全に着物の下は筋骨隆々の鬼に相応しい雰囲気を出している。
藤谷も体格の良い人間ではあるが、こちらはどちらかというと脂肪をイメージさせる部分もある(実際はそれなりに筋肉質ではある)。
キノ:「オメェのもっと恥ずかしい所、読者に暴露してやる。まず……」
稲生:「わーっ!」
栗原:「おい、キノ。いい加減にしろ」
キノ:「おおっ、江蓮!待ってたぞ!」
愛しの栗原江蓮が出て来ると、途端にキノはデレッとなる。
栗原:「稲生先輩、サーセン。相変わらずキノは、ドSで……」
稲生:「まあ、しょうがないよ」
威吹:(逆に嗜虐性が旺盛でないと、獄卒は務まらんだろうがな)
キノは江蓮の肩と腰を抱いた。
キノ:「そんじゃーよ、オレはこれから江蓮とデートがあっからよ、あばよ」
稲生:「さ、さよなら……」
威吹:「あれで獄卒が務まるんだぞ?信じられるか?」
稲生:「栗原さんが段々人間じゃなくなってくるような気がしてしょうがない……」
威吹:「いずれは女の鬼と化すんだろうな、きっと。いや、ボクはまだ見たことないけど」
もっとも、稲生だって今は老化がほぼ止まっている状態。
これを人外化と言わずして何であろうか。
稲生:「とにかく、早いとこ先生に連絡してワンスターホテルに行こう」
威吹:「おっ、そうだね。そろそろ、ボクもさくらや威織が心配だ。早く帰ってあげないと……」
稲生:「さすが威吹、父親だねぇ……」
稲生と威吹は正証寺を出ると、池袋駅の方向へ歩いた。