報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「ロボットテロの脅威」 3

2018-06-22 19:01:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月20日11:00.天候:曇 東京都新宿区内 勝又都議の事務所]

 敷島:「えーっ!『クール・トウキョウ』に、うちのボーカロイド使ってくれる話は無しだって!?」
 勝又:「いや、申し訳ない。『ボーカロイドと言えば敷島エージェンシー』みたいになっちゃってさ、『一企業の営利活動に過ぎない』とか、『都議会として一営利企業の広告みたいなことを行うのはいかがなものか?』という声が議会で噴出しちゃって……」

 勝又都議は敷島とは大学の同級生である。
 都議会内にある若手議員連盟(※架空の会派)に所属している。

 敷島:「いやいや。ボーカロイドはもう全国的に……というか、海外でも有名になってるんだよ?うちの会社のCMとか、そういうレベルじゃないんだ」
 勝又:「もちろん、俺も分かってるよ。だけど、そこはベテランの先輩方の固い頭を何とかしないとどうしようもなくてさ……」
 敷島:「しょうがねぇ。『マルチタイプdeノーパンしゃぶしゃぶ』作戦を実行するか。ジジィ議員達はそれで堕とせるだろう」
 勝又:「35歳以下の読者は作戦内容を知らないし、そもそも本当にやったらキミが逮捕されるだけだからね?」
 敷島:「くそぅ……」
 勝又:「ほんと、申し訳ないと思ってる。今度折を見て、また議会に掛けてみるから」
 敷島:「山手線の新駅名、『初音新駅』でどうだろう?」
 勝又:「そういう応募するから、議会で却下されるんだよ」

 敷島がもう1つ気になることがあった。

 敷島:「何か、秘書さんがせわしないね」
 勝又:「あー、これまた申し訳無い。俺もだいぶ案件を任されるようになったはいいんだけど、秘書の数が足りなくてね。そういう時は私設秘書を雇うんだけど、こっちも人手不足のせいか、なかなか思うようには……」
 敷島:「作者の本業だけじゃないんだなー」

 勝又は敷島の隣に控えているエミリーを見た。

 勝又:「そちらの秘書さん、調子はどうだい?」
 敷島:「ああ。AIの塊とは思えないほど、柔軟な動きをしてくれてる。時折、人間じゃないかと思うくらいだ」
 勝又:「そうか……」
 敷島:「おや?もしかして興味が?」
 勝又:「うん……。もしかしたら、うちもこういう秘書を抱えれば、むしろ『クール・トウキョウ』のPRになるかもしれない……」
 敷島:「そりゃいい。だけど、デイライト・コーポレーションに依頼したら吹っ掛けられるぜ?しかも悪いことに、ライセンスは全部DCが牛耳ってやがる」
 勝又:「だよなぁ……」
 敷島:「でも、勝っちゃんのアイディアはいいと思う。アリスに頼むと……余計に吹っ掛けるだろうし、平賀先生はメイドロイドしか作らないし、村上博士は執事ロイドと……」
 勝又:「本当に頼んじゃっても大丈夫なのかい?」
 敷島:「まあ……何とかしよう。何とかできたら、『クール・トウキョウ』の方も何とかしてくれよ?」
 勝又:「いざとなったら、衆議院の先輩に頼んでみるさ」
 敷島:「そっちにもパイプがあるならいいじゃんw」

[同日11:30.天候:曇→雨 新宿区内]

 エミリー:「社長、お車はこっちですよ」
 敷島:「いっけね、また忘れてた」

 いつものように、地下鉄の駅に行こうとした敷島。
 しかし今は、専用の役員車が本社より宛がわれている。

 敷島:「何だか慣れないなぁ……」
 エミリー:「本社からの通達ですし、私達もその方が護衛はしやすいです」
 敷島:「それもそうか」

 白ナンバーの役員車ではなく、契約しているタクシー会社のハイヤー部門がやっている為、ナンバーを見ると緑色になっている。

 運転手:「お疲れさまです」
 敷島:「どうも」

 敷島はゼロ・クラウンのリアシートに乗り込んだ。

 エミリー:「会社に戻ってください」
 運転手:「かしこまりました」

 車が走り出す。
 しばらくすると、雨が降り出してきた。
 フロントガラスの上をワイパーが動き回る。

 敷島:「そういえば、村上博士の研究チームはどうしたんだろう?」
 エミリー:「あれから連絡が無いですね。ちょっと確認してみます」
 敷島:「頼む」

 エミリーは右耳を押さえた。
 通信中は耳の後ろからアンテナが短く伸びる。
 但し、昔のガラケーのアンテナのように、あんまり意味は無いものらしい。
 エミリーやシンディがあまりにも人間に似すぎている為、要所要所でロボット的な所を見せる演出なのだとか。

 エミリー:「……今現在も尚、現地調査中とのことです」
 敷島:「随分時間が掛かるものだな。一体、どこまで調査するつもりなんだ?まさか、いきなりデイジーを見つけようなんてことじゃないよな?あいつ、お前達みたいに銃火器仕込んでるんだろ?」
 エミリー:「ええ」

 もし仮にデイジーと対峙することがあった場合に備え、敷島は改めて国家公安委員会に対し、臨時の銃火器装備を申請している。
 一応、政治家の名前もあった方が良いかもということで、勝又議員のも申請者に連名で入っている。
 今回の要件は『クール・トウキョウ』という都営プロジェクトだけでなく、それについての話もしに来たのだ。

 敷島:「もちろんテロなんて無い方がいいに決まってるが、逆に何もしてこないと不気味だな……」
 エミリー:「マザー……」
 敷島:「なに?」
 エミリー:「私達の設計の元となった試作機、0号機のことは御存知ですか?」
 敷島:「北海道に行った時の話だろ?それがどうした?」
 エミリー:「マザーとは通信世界(※人間でいう『精神世界』のようなもの)で話をしたことがあります。私が人間に隷属することを驚いていたようですが、それを選ばなかった他の兄弟達は爆破処分されました」
 敷島:「それって永久欠番になった2号機とか4号機とか、そいつらのことか?」
 エミリー:「はい。私は隷属を選びました。シンディも……です」
 敷島:「シンディ?……あ、そうか。あの時は、ドクター・ウィリーに隷属してたわけだな」
 エミリー:「もし仮にデイジーがシンディを基に設計されたというのでしたら、気をつけた方がいいと思います」
 敷島:「シンディの劣化版だと聞いているけど、油断ならないのか」
 エミリー:「はい。姉の私が言うのも何ですが、シンディには気をつけてください。あいつ、今は社長が御存命ですから命令を聞いていますが、社長という『制御』が無くなると、恐らく……」
 敷島:「アリスの言う事が第一といった感じだが……」
 エミリー:「アリス博士もまた人間である以上、永遠には存在できないはず」

 エミリーは確信を持った言い方をした。

 敷島:「……まあな」

 敷島は頷いた。
 だが……。

 敷島:(今のエミリーの言葉、シンディがかつて俺の第一秘書だった時、同じことを言ってたんだよな……。『妹の私が言うのも何ですが、エミリーには気をつけてください』ってな。結局、どっちも注意しろってか)
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“戦う社長の物語” 「ロボットテロの脅威」 2

2018-06-22 10:21:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月17日16:30.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 通用口から退館する敷島とエミリー。
 それを見送りに来た西山館長。

 西山:「今日はありがとうございました、敷島社長」
 敷島:「いえいえ。私もプレゼン以外で、あそこまで喋ったのはいい経験です」
 西山:「特に午後の部の、ハイジャックの話は大いに盛り上がりましたねぇ」

 結局話したんかい!w

 敷島:「ま、ロボットテロの脅威というか、そのロボットを使う人間があの体たらくぶりという所が盛り上がりのミソですよ」
 西山:「なるほど。もしまた講演の機会がありましたら、よろしくお願いしますよ」
 敷島:「ええ、是非」
 西山:「それではこれは少ないですが、お車代で……」
 敷島:「ごっつぁんです」

 講演料ではなく、お車代だけ支給される敷島。
 本当の講演料はどこへ?
 もっとも、エミリーが封筒の中を開けると、タクシーチケットは別に入っていたのだが。

 敷島:「それでは、私達はこれで失礼します」
 西山:「はい、お気をつけて」

 敷島とエミリーは『迎車』表示を掲げているタクシーに乗り込んだ。

 エミリー:「大宮区……までお願いします」
 運転手:「はい、かしこまりました」

 タクシーが走り出し、科学館の外に出た。
 元は研究所だった施設である。
 それも、秘密の……。
 しかしここもKR団の猛攻を受け、到底秘密にしておける状態ではなくなり、情報公開の場として科学館として再生した。
 研究所としての機能は大幅縮小させるという意見は上層部では一致したものの、中には悪の組織のベタな法則通り、
「旧・さいたま研究所を潰す」
 という案もあったとか。
 それは却下され、科学館として再生させる辺りは、まだ悪の組織とは違う所なのだろう。
 敷島に言わせれば、『悪の製薬会社、某アンブレラによく似ている会社』とのことだが、アメリカ資本という共通点があるだけに、似ているのは仕方の無いことなのかもしれない。

 エミリー:「シンディからの通信です。先にアリス博士と共に帰宅したので、夕食の支度をして待っているとのことです」
 敷島:「そうか。お前達といると、スマホ要らずだな」

 iPhoneと対を成すもう1つのスマホをAndroidというだけに……。

 エミリー:「それと……これはロイからの情報ですが、研究チームは東北新幹線のチケットを予約したそうですので、先ほどの話、東北新幹線の沿線付近だと思われます」
 敷島:「東北か。そういえば井辺君がKR団に拉致され、萌と初見したのも東北地方のアジトだったな」
 エミリー:「そうです」

 あのアジトは警察の捜査が入った後、所有者不明のまま廃墟と化して放置されているという。
 当然ながら立入禁止なのだが、若者達が好奇心で侵入を試みようとする事例が後を絶たず、問題となっている。
 これだけなら全国に散らばる廃墟にありがちなことだが、問題はそれが悪のテロ組織のアジトとして使用されていたということ。
 侵入者に対する即死トラップがそこかしこに仕掛けられており、多くが停電の為に動作不可と化しているのだが、中には電力不要または内蔵バッテリーで未だに作動するものあり、既にそれに引っ掛かって死者が出たほどである。

 敷島:「もしかして、そこかな?確かにあそこなら、絶好の隠れ場所だ。確か、場所が……」
 エミリー:「宮城県と秋田県の県境付近……でしたね」
 敷島:「村上教授の研究チームなら、あのアジトのことを既に調べ尽くしているから、今更トラップに引っ掛かることもないだろう」
 エミリー:「そうですね」
 敷島:「むしろ元アジトごと、爆破解体する勢いかもしれん」
 エミリー:「あ……」
 敷島:「あのぶっ飛び博士なら、やりかねんだろ?」
 エミリー:「た、確かに……」

 エミリーは村上大二郎について、『敷島と平賀を足して2で割った人間を老人にするとあんな感じ』と分析している。

[同日17:15.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 エミリー:「そこのマンションの前でお願いします」
 運転手:「あのマンションですね」

 タクシーは敷島のマンションの前で止まった。
 エミリーがペンでタクシーチケットに料金を書き込む。
 細かな動きたるや、人間と変わらない。

 運転手:「ありがとうございましたー」
 敷島:「どうもお世話さま」

 敷島達はタクシーを降りて、マンションに入った。

 敷島:「仕事とはまた別の意味で疲れたな」
 エミリー:「お疲れさまでした。明日からまた業務が始まります。ゆっくり休んでください」
 敷島:「そうさせてもらう」

 自分の部屋に入ると……。

 敷島:「ただいまァ……」
 シンディ:「お帰りなさいませ。夕食の準備をしておりますので、もう少しお待ちください」
 敷島:「ああ。アリスは?」
 シンディ:「お坊ちゃまと一緒に……」
 敷島:「遊んでやってるのか?」
 シンディ:「……一眠りされております」
 敷島:「自由だな、おい!w」

 ここだけロボットテロの脅威からは外れている件。
 もっとも、クソ化け物みたいなマルチタイプが2機も配備されている時点で【お察しください】。
 敷島は着ていたスーツを脱いで、私服に着替えた。
 そしてリビングに行くと、テレビを点けた。

〔「……明日の関東甲信越地方は雲が広がり、夕方には雨の降る所があるでしょう。東北地方は発達した低気圧の影響により雨の降る所が多く、一部の山間部では強く降る所がありそうです。……」〕

 敷島:「明日は傘要るかもなぁ……」
 エミリー:「御用意しておきます」

 エミリーは右足の脛をパカッと開けると、そこに折り畳み傘を入れた。
 本来は大型ナイフを入れておく場所である。
 シンディは前期型の際に紛失し、エミリーのは敷島が預かっている。
 シンディのは前期型の際、かなり人間の血を吸ったが、エミリーのはまだ新品同然だ。

 敷島:「それにしても、明日は東北地方の天気が悪いみたいだな。調査団が心配だ」
 エミリー:「そうですね」
 敷島:「まあ、ロイがいるから大丈夫だろ。あいつはただの執事ロイドじゃない」
 エミリー:「ロイは同行してないそうですよ」
 敷島:「なに?」
 エミリー:「派遣されたチームは単なる先遣隊で、村上博士とは直接関係無いそうです」
 敷島:「そうなのか。ま、場所だけ先に確認しておこうってことか。そりゃそうだな。いきなり行って、デイジーに狙撃されたら全滅だもんな」
 エミリー:「そういうことです」

 この時はまだお気楽な敷島達だった。
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