[5月13日11:25.天候:晴 JR秋葉原駅中央口]
広い中央改札口を出ると、そこにイリーナとマリアが待っていた。
イリーナ:「やあやあ、ちゃんと来てくれたねぇ」
威吹:「おう。ユタと一緒なら完璧だ」
マリア:「その通りだな」
マリアが大きく頷いた。
イリーナ:「いやね、ここで新しい電化製品を買っていたら、勇太君達が来る時間になっちゃったんだよぉ」
稲生:「そうだったんですか」
イリーナ:「どうだい?最後にここでランチしてから、威吹君は帰らないかい?」
稲生:「そうですねぇ……。威吹はどう?」
威吹:「ふむ……」
イリーナ:「いい買い物ができたから、今日のアタシは機嫌がいいんだ。ランチはアタシの奢りだよ」
威吹:「そういうことなら、お言葉に甘えよう」
威吹は大きく頷いた。
イリーナ:「というわけで稲生君、オススメの店はある?」
稲生:「ええっ!?いきなりですか!?……えーと……」
稲生は駅前にあるヨドバシAkibaの建物を見上げた。
稲生:「取りあえず中へ」
と、その建物を指さしたのだった。
[同日11:40.天候:晴 ヨドバシAkiba8F たん之助]
威吹:「これは……!?」
稲生:「威吹、牛タン好きでしょ?ちょうどここに、こういう店があったのを思い出した」
威吹:「そうだったのか!」
マリア:「確かに。帰りの新幹線でも、駅弁買ってたな」
イリーナ:「さすが勇太君ね。……さ、遠慮しないで好きなもの食べて」
稲生:「ありがとうございます」
威吹:「かたじけない」
威吹は1番量の多いものを希望した。
やはり、というべきであるが……。
稲生:「じゃあ、注文しますよ。すいませーん」
稲生は店員を呼ぶと早速注文する。
稲生:「牛タン定食の塩を1つと、牛タンシチュー定食……」
マリアはシチュー系が好きらしい。
松島に行った時も、牛タンシチューを頼んでいた。
稲生:「それと、3種盛り定食を……」
イリーナ:「アタシもお願いね」
稲生:「……2つお願いします。はい」
注文した後で、威吹が目を丸くした。
威吹:「いいのか?」
イリーナ:「ええ。私が御馳走するから、何も心配しなくて……」
威吹:「そうじゃない。オマエもそんなに食べて大丈夫なのか?」
イリーナ:「威吹君」
威吹:「何だ?」
イリーナ:「取りあえず、私の方が年上だからね?」
威吹:「……それは失敬。そなたも某と同じ大量の肉を食べても、大丈夫なのか?」
それでも敬語は使いたくないようだが、取りあえず少しは丁寧な口調にはなった。
イリーナ:「ええ。心配御無用よ」
威吹:「それなら良いが……」
稲生:「威吹。魔道師の世界も、上下関係が厳しいんだ。僕もよくマリアさんに注意されたものさ」
白人にしては発育の悪いマリア。
人形作りが趣味であり、当初の出で立ちもまるでお人形さんみたいな感じだった。
今はそれよりも少しは身長が伸び、体付きも良くなってはいるのだが、どうしてもまだ10代後半にしか見えない。
何年か前、北海道で実年齢25歳を迎えたのがウソみたいだ。
契約悪魔が、なるべく契約者を長生きさせる為に体の成長や老化を止めるからだとされている。
さすがに稲生と釣り合いが取れないと困る、という他の悪魔からの声に応えてか、少しマリアの体を成長させたようだが……。
どうしても稲生からは年下に見えてしまう為、ついついタメ口を聞いてしまったことがあった。
威吹:「なるほどな」
しばらくして、料理が運ばれて来る。
稲生:「それではいただきます」
イリーナ:「美味しそうだねぇ」
威吹:「うむ……」
稲生が向かいに座るマリアの左手を見て気づいた。
稲生:「マリアさん、父のプレゼント着けてるんですね?」
稲生の父親の宗一郎から送られた腕時計を着けていた。
マリア:「ええ。せっかく頂いたものだし……」
稲生と威吹には金時計(銀時計に金メッキをした懐中時計)をくれたのだが、どうやらマリアもお揃いで欲しかったそうである。
しかし宗一郎的には、女性に懐中時計というイメージは合わなかったらしく、女性用の腕時計にしたというもの。
イリーナ:「似合ってるじゃない。ね?勇太君」
稲生:「そうですね。そう思います」
イリーナ:「うちの組はクロックワーカー系なんだから、時計はやはりシンボルになるわね」
時を駆ける魔道師ということだが、未だに稲生はその謎について教えてもらっていない。
過去にタイムスリップでもして、そのシナリオを変えるのかと思ったが、そういうことではないらしい。
むしろ、未来を変える為に今何かをするのだそうだ。
威吹:「未だにオレは、そなた達が何をやる魔法使いなのかが分からぬのだが……」
イリーナ:「一言では説明できないな。強いて言うなら、未来を変える為に良いフラグを立てたり、逆に悪いフラグを折ったりすることかな」
稲生:「フラグですか。分かりやすい表現ではありますが、しかしそのフラグとやらが分かりませんね」
威吹:「オレには『ふらぐ』という言葉の意味すら分からん」
イリーナ:「ま、けして表舞台には立たないけど、歴史の立役者になる系統かな。あとは、代わりに立役者となる人間の後援をしたりとかね」
威吹:「それ魔法か?」
イリーナ:「魔法……だね」
イリーナはニヤッと笑った。
[同日12:30.天候:晴 ヨドバシAkiba→JR秋葉原駅前]
ポンピーン♪
稲生:「お昼時だから、混んできましたね」
稲生達を乗せたエレベーターが1階に着いてドアが開くと、店内BGMが聞こえて来た。
ヨドバシカメラのテーマソングには原曲があって、“リパブリック賛歌”という。
アメリカの南北戦争の際に歌われた軍歌だったのだとか。
尚、曲調は似ているが、ビックカメラのテーマソングは原曲が全く違うので念の為。
ビックカメラのテーマソングの原曲はキリスト教の聖歌である。
それをジャズアレンジして、オリジナルの歌詞を付けたものだ。
イリーナ:「混む前に食事ができて良かったよ。それじゃ、買い物も食事も終わったから、ボチボチ行こうかね」
稲生:「はい」
イリーナ:「タクシーはどこから乗れるのかね?」
稲生:「タクシーで行くんですか?」
イリーナ:「うん。カードならあるよ」
稲生:「でしたら、駅前のロータリーからですね。こっちです」
稲生は駅の方に出るエントランスの方へ向かった。
今日は日曜日である為、店内も多くの買い物客で賑わっていた。
広い中央改札口を出ると、そこにイリーナとマリアが待っていた。
イリーナ:「やあやあ、ちゃんと来てくれたねぇ」
威吹:「おう。ユタと一緒なら完璧だ」
マリア:「その通りだな」
マリアが大きく頷いた。
イリーナ:「いやね、ここで新しい電化製品を買っていたら、勇太君達が来る時間になっちゃったんだよぉ」
稲生:「そうだったんですか」
イリーナ:「どうだい?最後にここでランチしてから、威吹君は帰らないかい?」
稲生:「そうですねぇ……。威吹はどう?」
威吹:「ふむ……」
イリーナ:「いい買い物ができたから、今日のアタシは機嫌がいいんだ。ランチはアタシの奢りだよ」
威吹:「そういうことなら、お言葉に甘えよう」
威吹は大きく頷いた。
イリーナ:「というわけで稲生君、オススメの店はある?」
稲生:「ええっ!?いきなりですか!?……えーと……」
稲生は駅前にあるヨドバシAkibaの建物を見上げた。
稲生:「取りあえず中へ」
と、その建物を指さしたのだった。
[同日11:40.天候:晴 ヨドバシAkiba8F たん之助]
威吹:「これは……!?」
稲生:「威吹、牛タン好きでしょ?ちょうどここに、こういう店があったのを思い出した」
威吹:「そうだったのか!」
マリア:「確かに。帰りの新幹線でも、駅弁買ってたな」
イリーナ:「さすが勇太君ね。……さ、遠慮しないで好きなもの食べて」
稲生:「ありがとうございます」
威吹:「かたじけない」
威吹は1番量の多いものを希望した。
やはり、というべきであるが……。
稲生:「じゃあ、注文しますよ。すいませーん」
稲生は店員を呼ぶと早速注文する。
稲生:「牛タン定食の塩を1つと、牛タンシチュー定食……」
マリアはシチュー系が好きらしい。
松島に行った時も、牛タンシチューを頼んでいた。
稲生:「それと、3種盛り定食を……」
イリーナ:「アタシもお願いね」
稲生:「……2つお願いします。はい」
注文した後で、威吹が目を丸くした。
威吹:「いいのか?」
イリーナ:「ええ。私が御馳走するから、何も心配しなくて……」
威吹:「そうじゃない。オマエもそんなに食べて大丈夫なのか?」
イリーナ:「威吹君」
威吹:「何だ?」
イリーナ:「取りあえず、私の方が年上だからね?」
威吹:「……それは失敬。そなたも某と同じ大量の肉を食べても、大丈夫なのか?」
それでも敬語は使いたくないようだが、取りあえず少しは丁寧な口調にはなった。
イリーナ:「ええ。心配御無用よ」
威吹:「それなら良いが……」
稲生:「威吹。魔道師の世界も、上下関係が厳しいんだ。僕もよくマリアさんに注意されたものさ」
白人にしては発育の悪いマリア。
人形作りが趣味であり、当初の出で立ちもまるでお人形さんみたいな感じだった。
今はそれよりも少しは身長が伸び、体付きも良くなってはいるのだが、どうしてもまだ10代後半にしか見えない。
何年か前、北海道で実年齢25歳を迎えたのがウソみたいだ。
契約悪魔が、なるべく契約者を長生きさせる為に体の成長や老化を止めるからだとされている。
さすがに稲生と釣り合いが取れないと困る、という他の悪魔からの声に応えてか、少しマリアの体を成長させたようだが……。
どうしても稲生からは年下に見えてしまう為、ついついタメ口を聞いてしまったことがあった。
威吹:「なるほどな」
しばらくして、料理が運ばれて来る。
稲生:「それではいただきます」
イリーナ:「美味しそうだねぇ」
威吹:「うむ……」
稲生が向かいに座るマリアの左手を見て気づいた。
稲生:「マリアさん、父のプレゼント着けてるんですね?」
稲生の父親の宗一郎から送られた腕時計を着けていた。
マリア:「ええ。せっかく頂いたものだし……」
稲生と威吹には金時計(銀時計に金メッキをした懐中時計)をくれたのだが、どうやらマリアもお揃いで欲しかったそうである。
しかし宗一郎的には、女性に懐中時計というイメージは合わなかったらしく、女性用の腕時計にしたというもの。
イリーナ:「似合ってるじゃない。ね?勇太君」
稲生:「そうですね。そう思います」
イリーナ:「うちの組はクロックワーカー系なんだから、時計はやはりシンボルになるわね」
時を駆ける魔道師ということだが、未だに稲生はその謎について教えてもらっていない。
過去にタイムスリップでもして、そのシナリオを変えるのかと思ったが、そういうことではないらしい。
むしろ、未来を変える為に今何かをするのだそうだ。
威吹:「未だにオレは、そなた達が何をやる魔法使いなのかが分からぬのだが……」
イリーナ:「一言では説明できないな。強いて言うなら、未来を変える為に良いフラグを立てたり、逆に悪いフラグを折ったりすることかな」
稲生:「フラグですか。分かりやすい表現ではありますが、しかしそのフラグとやらが分かりませんね」
威吹:「オレには『ふらぐ』という言葉の意味すら分からん」
イリーナ:「ま、けして表舞台には立たないけど、歴史の立役者になる系統かな。あとは、代わりに立役者となる人間の後援をしたりとかね」
威吹:「それ魔法か?」
イリーナ:「魔法……だね」
イリーナはニヤッと笑った。
[同日12:30.天候:晴 ヨドバシAkiba→JR秋葉原駅前]
ポンピーン♪
稲生:「お昼時だから、混んできましたね」
稲生達を乗せたエレベーターが1階に着いてドアが開くと、店内BGMが聞こえて来た。
ヨドバシカメラのテーマソングには原曲があって、“リパブリック賛歌”という。
アメリカの南北戦争の際に歌われた軍歌だったのだとか。
尚、曲調は似ているが、ビックカメラのテーマソングは原曲が全く違うので念の為。
ビックカメラのテーマソングの原曲はキリスト教の聖歌である。
それをジャズアレンジして、オリジナルの歌詞を付けたものだ。
イリーナ:「混む前に食事ができて良かったよ。それじゃ、買い物も食事も終わったから、ボチボチ行こうかね」
稲生:「はい」
イリーナ:「タクシーはどこから乗れるのかね?」
稲生:「タクシーで行くんですか?」
イリーナ:「うん。カードならあるよ」
稲生:「でしたら、駅前のロータリーからですね。こっちです」
稲生は駅の方に出るエントランスの方へ向かった。
今日は日曜日である為、店内も多くの買い物客で賑わっていた。