報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「戦闘開始」

2018-06-27 19:22:02 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日10:32.天候:曇 宮城県栗原市郊外 某廃坑]

 エミリーら4機のロイドが廃坑の入口に辿り着く。

 エミリー:「エレベーターがある」

 恐らくそれは採掘現場へ作業員達を運ぶエレベーターだろう。
 しかし今は廃坑。
 当然ながら動いているわけがない。

 シンディ:「調査チームの人達はどこに行ったの!?」

 ここまで来る間に、1人の人間とも会わなかった。

 エミリー:「エレベーターを調べてみよう」

 エミリーはエレベーターの周りを調べてみた。
 坑道へ向かうエレベーターであり、オフィスビルやホテルのそれのような装飾などがされているわけがない。

 鏡音リン:「ねぇ、これ見て!」

 リンが何かを見つけたようだ。
 エミリー達が駆け寄ると、それは分電盤だった。
 ケーブルが途中から千切れている。
 そのケーブルを辿って行くと、それはエレベーターに通じているようだった。

 シンディ:「姉さん、このケーブル、まだ新しいわ。廃坑なのにおかしいよね?」
 エミリー:「確かに……」
 鏡音レン:「もしかして、バッテリーか何かと接続されていたんじゃない?」
 シンディ:「バッテリーかぁ……」
 エミリー:「そのようなもの、どこにも……」

 エミリーが怪訝な顔をしかかった時だった。

 黒いロボット:「Ho!Ho!Hooooooo!!」

 壁をブチ破って、1機の黒いロボットが飛び込んで来た。

 レン:「うわっ、出た!!」
 シンディ:「あんた達は下がってな!」
 エミリー:「でやぁーっ!」

 銃器の装備が許されていないマルチタイプ達。
 こういう時、近接戦が得意なのはエミリーである。
 エミリーは黒いロボットにエルボーをお見舞いし、そしてそのボディを石の床に叩き付けてやった。
 黒いロボットは抵抗する間も無く、体をバラバラにされた。

 シンディ:「さすが姉さん!」
 エミリー:「こんなの楽勝だ」

 その時、エミリーはあることに気づいた。
 黒いロボットは背中にバッテリーを搭載している。
 エミリーの攻撃では、黒いロボットは前から地面に叩き付けられて壊れた。
 つまり、背中のバッテリーは無事だ。

 エミリー:「これを取り外せ!」
 シンディ:「姉さん?」
 エミリー:「これをエレベーターのバッテリー代わりに使う!」
 レン:「なるほど、そうか!」

 ロイド達は黒いロボットからバッテリーを取り外すと、それをケーブルに接続した。
 等身大のロボット1機を稼働させるほどのバッテリーである。
 エレベーター1機も稼働させることができた。

 エミリー:「よし、これで行こう」

 エミリー達はエレベーターに乗り込んだ。

 その様子はエミリー達の『目』を通して、地上の敷島達の端末にも映し出されていた。

 敷島:「あの黒いロボットだ!」
 アリス:「でもこの前、富士山の地下で見た奴らとは少し違うわ」
 敷島:「どういうことだ?」
 アリス:「『ざびざび』と喋ってたのに、今は『Ho!』よ」
 敷島:「それ、大きな違いか?」
 平賀:「大きな違いかもしれませんね」
 敷島:「平賀先生」
 平賀:「これは富士の地下で撮影された黒いロボットの画像ですが、これと細部が違います。もしかしたら、マイナーチェンジかもしれません」
 敷島:「マイナーでもメジャーでも、今のエミリーの攻撃を見る限り、取るに足らない相手であることは分かりましたよ。とにかく、彼女らを信じるしか無いですね。……お、地下に着いたぞ」

 ガラガラと扉が開く。
 もちろん手動式で、開けたのはシンディだが。

 敷島:「あっ!」
 平賀:「ああっ!?」
 アリス:「What!?」
 村上:「何と!?」

 そこで人間達はある光景に驚く。

 敷島:「誰かいる!」
 平賀:「誰か倒れてる!」
 アリス:「そういえば、戻りのエレベーターのバッテリーどうすんのよ!?」
 村上:「廃坑なのに照明が点いとるぞ!?」

 敷島と平賀はともかく、残る2人の反応が……。
 もちろん、ロイド達は倒れている人間に駆け寄った。

 エミリー:「大丈夫ですか!?」

 うつ伏せに倒れている人間をエミリーは揺り起こした。
 シンディは生命反応を確認する。

 シンディ:「マスター!生命反応無し!死亡しています!」
 村上:「何じゃと!?それは誰じゃ!?至急、身元を確認せい!」
 シンディ:「了解!」

 エミリーは死亡者の遺体を仰向けにした。
 まるで鉱山の作業員みたいな感じに見えるのは、服装が作業服にヘルメットを被っているからか。

 村上:「あ、あれは……山田君!くくく……!何と痛ましい……!」
 ロイ:「博士……」
 敷島:「エミリー、シンディ。一旦、戻ってきてくれ。その遺体を取りあえず回収しよう」
 エミリー:「了解しました」
 シンディ:「かしこまりました」

 エミリーが山田という男の遺体を抱え起こした時だった。
 ピピピという電子アラーム音が聞こえた。

 エミリー:「!?」
 シンディ:「なに?」

 それは山田のヘルメットから聞こえて来るようだった。
 ヘルメットに何か仕掛けがある?
 と、その時だった。

 山田:「ウガァーッ!!」

 突然、山田の目が開くとそれがエミリーに掴みかかった。

 敷島:「なっ!?し、死体が起きた!?」
 平賀:「どうなってる!?」
 アリス:「ホラーだわ!」
 村上:「山田君!やめるんじゃ!」

 ピピピピピピというアラーム音が響く。
 これはまるでJRの防護無線のあの音だ。

 シンディ:「姉さん、爆発する!」
 エミリー:「うっ!くっ!」

 エミリーは山田を引き剥がし、蹴りを入れた。
 山田はよろよろと壁にぶつかった。
 と、同時にヘルメットが爆発した。

 アリス:「うっ……!」

 アリスは目を背けて吐き気を堪える。

 村上:「い、一体どうなっとるんじゃ!?」

 爆発の威力は意外に大きく、もしもエミリーがあのまま組みつかれたままだったとしたら、大損傷していたことだろう。

 ロイ:「博士!あのヘルメットは調査チームの所有しているものではありません!」
 博士:「なにぃ!?」
 敷島:「エミリー達、一旦戻れ!作戦の練り直しだ!」
 エミリー:「了解!」

 エミリー達はエレベーターに急いだ。
 こういう時、よく映画ではエレベーターが動かず、仕方なく奥へ進むことになる展開だったり、エレベーターが来る前に敵が集団で襲ってきて、それを殲滅しなくではならない展開になると思う。
 だが、ここではちゃんとエレベーターは来たし、敵が襲来してくることも無かった。

 エミリー:「早く乗れ!」

 エミリーは辺りを警戒しながら、先に3人を乗せ、自分は後から乗った。
 そして蛇腹式の鉄扉を閉めると、シンディが上に行く為のボタンを押した。
 ガコンという音がして、エレベーターが再び地上へと戻って行く。
 といっても坑道用のエレベーターだ。
 オフィスビルやホテルのそれと違い、速度は遅いものである。

 エミリー:「!?」

 ゆっくりと上昇するエレベーター。
 地下の坑道の奥に、エミリーは何かを見たような気がした。
 しかしそれは照明が背後から照らされ、しかも戦闘で巻き起こった砂埃により、シルエットでしか見えなかったのである。
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“戦う社長の物語” 「廃坑入口」

2018-06-27 10:36:41 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日09:58.天候:曇 宮城県栗原市郊外 某廃坑]

 くりこま高原駅から西に1時間ほど車で走った。
 駅前のレンタカーで借りたワンボックス(日産・キャラバン)に乗り込んで、現場に向かっている。

 敷島:「曇って来たなぁ……。また雨かな」

 ハンドルを握る敷島が呟いた。

 エミリー:「梅雨時ですからね」

 助手席のエミリーが答えた。

 平賀:「村上先生、調査チームはこんな山奥に?」
 村上:「うむ。レーダーを受信した時、グーグルマップで調べてみたのじゃが、どうも鉱山の中らしいな」
 平賀:「鉱山!?……確かに、この辺りは昔、鉱山がありましたが、今はもう地質調査用を除いて全て廃坑になっているはずでは?」
 村上:「うむ。その中には“細倉マインパーク”のように観光坑道として再生した所もあるが、中にはもう手つかずの廃墟のようになってしまった所もあるわけじゃな。デイジーのヤツ、そこを目ざとく見つけたようじゃ」
 平賀:「……か、或いはそこを見つけた第三者がデイジーを隠す場所にしたか」
 村上:「うむ。……あ、敷島社長、そこを左じゃ」
 敷島:「はい」

 敷島は言われた通り、ハンドルを切った。

 敷島:「うわ、舗装が無くなった。県道から一気に林道に入った気分」
 シンディ:「前期型の私を思い出すわね……」
 鏡音レン:「ボクの首を引っこ抜いた時かい?確かにあの時も宮城県北部の山の中だったね」
 シンディ:「そうね……」

 ドクター・ウィリーは表立って活躍するようになったボーカロイドをどういうわけだか忌々しく思ったようだ。
 ライバル視していた南里志郎の開発したロイドが活躍することに、何か腹が立ったのだろう。
 前期型のシンディに命じて、ボーカロイドの破壊をさせたことがある。
 その時、レンを拉致して首と胴体を引きちぎったことがあった。
 如何にボーカロイドでも、そんなことされたら壊れるのが普通だ。
 しかし、レンは壊れなかった。
 それもそのはず。
 レンだけがそういう改造をされていたからだ。
 別に、何もシンディにそんなことをされることを予想していたわけではない。
 たまたまミュージカルで中世ヨーロッパが舞台のものにメインキャラクターとして出演することが決まり、レンはギロチンで首を刎ねられるシーンがあったので、そういう改造をされただけである。
 レンも強かなもので、シンディに首と胴体を引きちぎられた後も壊れたフリをして誤魔化した。

 ※上記エピソードは未公開です。

 敷島:「ん?あれは……」

 しばらくして錆びついた鉄門が見えてきた。
 そして、その横にはミニバンが2台ほど止まっていた。

 村上:「おお、間違いない。調査チームはやはりちゃんと辿り着けていたのじゃ」

 鉄門は少し開いていて、そこから入ったのが分かった。
 敷島は車をそのミニバンの横に止めた。

 村上:「中に入ったじゃと?この中にデイジーがいるのは間違い無いのなら、ここまでのルートを把握するだけで良いと言ったのに……」
 敷島:「エミリー、シンディ、スキャンできるか?」
 エミリー:「ここからではちょっと無理です」
 シンディ:「実際に中に入らないと分からないわ」
 敷島:「分かった。今、進入の準備をしよう」
 平賀:「敷島さん、警察に連絡しなくていいんですか?」
 敷島:「鷲田警視に?おおかた、『廃坑に侵入しただと?よし、建造物侵入の容疑で逮捕だ』とか言うだけだからいいです」
 平賀:「www」
 村上:「まあ……いざとなったら、ワシの知り合いが地元の弁護士会の顧問をやっているから、そこから弁護士を頼めば良い」
 敷島:「よろしくお願いします」

 アリスやロイド達が廃坑に入る為の準備をする中、平賀は無人の車内を覗き込んでみる。

 平賀:「鍵は付いてるか……」

 止まっているミニバンのうち、1台の運転席のドアを開けてみる。

 平賀:「特に変わった所は無いか……」

 エミリーのスキャンでも、生体反応も金属反応も無いそうだ。

 平賀:「それにしても妙ですね」
 敷島:「先生もそう思いますか?」
 平賀:「ええ。調査チームは村上先生から、あれほど『中に入るな』と言われていたんです。それなのに……」
 村上:「まだ20代の若者達じゃ。つい、好奇心に駆られてしまったのじゃろう」
 平賀:「ですが、全員いなくなるなんて……。調査チームは全部で12人ですね?確かに好奇心に駆られて入りたがる者も出たでしょうが、中には頑なに進入を拒む者もいたはずです。その者達が残っていても良さそうなのに、全員いなくなるなんて不自然ですよ」
 敷島:「それもそうですね。しかも、そういったことを連絡して来なかったんですよね?進入反対派は」
 村上:「うむ……」
 敷島:「つまり、こういうことか。『進入反対派ですら、進入したくなるようなことが起きた』あるいは、『進入せざるを得ない状況に陥った』」
 平賀:「もっとありますよ。『SOSを発進する間もなく、全員が坑内に拉致された』」
 敷島:「! ケーサツ呼びますか?」
 村上:「いや、どちらかというと敷島社長の仮説のような状況じゃったのではないか?」
 平賀:「どういうことですか?」
 村上:「もしも平賀君の言うような状況が発生したのじゃとしたら、もっとこの辺が荒れていると思わんか?」
 平賀:「あ……!」
 敷島:「坑内から『黒いロボット』やデイジーそのものがやってきて、彼らを襲ったのだとしたら、確かにそうですよね。車だって壊れているだろうし、抵抗して殺された者の死体も転がっているかもしれない」
 村上:「死体に関しては後で処分すればいいじゃろう。しかし……周りに争った形跡が全く無い」
 平賀:「確かに……」

 もう1台の車も調べてみたが、こちらも特に目ぼしい物は見つからなかった。

 敷島:「進入前に鷲田警視に連絡だけしておくか」

 敷島は自分のスマホを取り出した。

 敷島:「……というわけで、調査チームは全員行方不明です」
 鷲田:「分かった。こちらも県警に連絡しておく。気をつけて調査に当たってくれ」
 敷島:「分かりました」
 鷲田:「あくまでも行方不明者の捜索と、場合によっては人命救助だ。それ以外は警察で行うから、その辺を忘れるんじゃないぞ?」
 敷島:「分かりました」

 敷島は電話を切った。

 敷島:「よし、部長の許可が出たぞ。準備はいいか?」
 エミリー:「はい、万端です」
 シンディ:「同じく」
 鏡音リン:「オッケーだYo!」
 レン:「はい、大丈夫です!」
 敷島:「よし。じゃ、気をつけて行け!」

 マルチタイプ2機とボーカロイド2機は、坑内へと進入した。
 残った人間4人と執事ロイド1機は、鉄門の外で待つ。
 もちろん、それぞれ端末を手に、マルチタイプから送られてくる映像を確認する。

 平賀:「すぐに見つかるといいですね」
 敷島:「ええ。ですが、私の見立ててでは、そうは問屋が卸さないと思いますよ」
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