[6月17日12:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館イベントホール]
敷島:「……てなわけでありまして、今やロボットテロの恐怖は日本国内に留まらないのであります。お時間もそろそろ迫って来たので、私のお話もこの辺までとさせて頂きますが、最後に1つだけ申し上げておきたいことがございます。聴衆の皆様方におかれましては、絶対に私のマネだけはしないように!」
敷島はロボット未来科学館で特別講演を行っていた。
敷島の、これまでのロボットテロとの戦いの数々を講演するものである。
敷島:「私は『不死身の敷島』と呼ばれたことがございますが、けして不死身ではございません。たまたま運の良かった生身の人間であります。だからけして偉いものでは無くてですね……」
午前の部は10時に開始したので、もう2時間喋っていることになる。
敷島:「……それではこれを持ちまして、私の講演を終了致します。ご清聴、感謝致します。ありがとうございました」
拍手の中、敷島は退場した。
エミリー:「社長、お疲れさまでした」
敷島:「おう、エミリー。待たせたな。じゃあ、帰るとするか」
エミリー:「お待ちください。14時より午後の部がございます」
敷島:「おい、勘弁してくれよ〜。俺はプレゼンは得意だが、自分語りは得意じゃないんだよ〜」
エミリー:「応接室にお弁当を用意してございますので」
敷島:「弁当かよ。ここのレストランで飯にしようぜ」
エミリー:「一般のお客様も来られますので……」
敷島:「……って、言われてもなぁ……」
エミリーの先導で敷島はバックヤードの応接室に戻った。
敷島:「しょうがない。午後の部はアメリカに行った時の話でもするか」
エミリー:「それは良いアイディアですね」
敷島:「ヤング・ホーク団に飛行機をハイジャックされた話だけで、1時間は話せるぞ」
エミリー:「それはロボットテロとは関係ありません」
エミリーはお茶を注いだ。
敷島:「アリスは?あいつはここの職員だろうが」
エミリー:「アリス博士のような研究職は日曜日休みですので、お坊ちゃまやシンディとさいたま新都心でショッピングをされています」
敷島:「あいつが俺に講演会の話を持って来たんだぞ、全く……」
アリスのことだから、講演料はそれなりに取ったことだろう。
尚、当の講演者たる敷島に入る額は【お察しください】。
敷島:「冬以降、デイジーも姿をくらましたままだしなぁ……」
エミリー:「確かに、私達のレーダーでも捕捉できません」
敷島:「いつの間にか、外国に逃げてたりしてなぁ……」
敷島はエミリーの手作り弁当を頬張りながら、テレビを点けた。
応接室なのでテレビもある。
というか、既にもう勝手知ったる何とやら状態だ。
〔「……それでは本日のゲストをお呼びしましょう。今や人気急上昇、ボーカロイドの初音ミクさんです!どうぞ!」〕
エミリー:「初音ミクも有名になりましたね」
敷島:「そうだな」
〔「何や、またオマエかい」「ど、どうもこんにちはー……」「ゲストに『オマエ』言うなや!初音ミクさん、ホント久しぶりの登場ですねー」「はい、御無沙汰しております」「んなこと言うて、実は他のアンドロイドとパコパコやってたんとちゃう?」「ぱ、パコパコ?」「オマ、ヤメェや、昼間の歌番組やで。ここの事務所、ホンマ怖いんやから。えー、それではですね、本日歌って頂く曲は……」〕
敷島:「……俺は未だにミクが兵器だとは思えないんだ。ああやって歌って踊っている姿を見ると、あれが本来の用途なんだって気がするよ」
エミリー:「社長はボーカロイドを平和的に使用なさっております。社長ほと理想的な使用法をなさっている人間は、他にいないと思います」
敷島:「そうかな……」
エミリー:「それは私達にあっても、なんですよ。私達も、使用法によっては大量殺戮兵器となりますから」
敷島:「分かってるさ。それにしても……」
と、そこへ……。
エミリー:「失礼します。通信が入りました」
敷島:「シンディか?」
エミリー:「いえ……。ロイです」
敷島:「ロイ!?」
日本アンドロイド研究財団の現・理事長である村上大二郎が独自に発明した執事ロイドの名前である。
シンディのことが気に入り、顔を合わせる度にモーションを掛けてくるのだが、シンディには上手く交わされている。
エミリー:「何か?」
ロイ:「エミリー様。シンディ様に通信をブロックされてしまいましたので、エミリー様に送信させて頂いております」
エミリー:「……それは御愁傷様。今度、通信くらい受け取れとだけは言っておいてやる」
ロイ:「ありがとうございます」
エミリー:「それで、用件は何か?」
ロイ:「はい。東京都心大学における村上博士主導の研究チームが特殊なレーダーを開発しまして、それの試運転の最中、特殊な反応をキャッチしたそうです」
エミリー:「特殊な反応?何だそれは?」
ロイ:「はい。その詳細はまだ不明ですが、簡易的な解析によりますと、マルチタイプのものとよく似た反応だそうです」
エミリー:「マルチタイプだと?」
ロイ:「はい。現在稼働しているマルチタイプはエミリー様も含め、さいたま市に集中してございます。それ以外に反応する理由があるとすれば……」
エミリー:「デイジーか!」
敷島:「何だって!?」
ロイ:「詳細はこれから研究チームが行います。まずは敷島社長のお耳に御一報をと……」
エミリー:「御苦労。すぐにお耳に入れる」
ロイ:「ありがとうございます。あの、シンディ様には……」
エミリー:「私からもう一度口添えはしておいてやる」
ロイ:「ありがとうございます。それでは失礼致します」
エミリーは通信を切った。
敷島:「何だって、エミリー?今、デイジーと聞こえたが……」
エミリー:「ロイからの通信で、どうやら村上博士の研究チームがデイジーらしきものを捕捉したようです」
敷島:「おおっ!今まで出て来た老博士の法則通り、ぶっ飛んだ爺さんだが、やることは凄いな!で、場所はどこだ?」
エミリー:「申し訳ありませんが、そこまでは……。ただ、ロイのことですから、詳細が入り次第、すぐに伝えてくれるかと思います」
敷島:「そりゃいい。何事も、『早期治療』が大事だからな」
エミリー:「はい」
だが、事態は思わぬ方向へ……。
敷島:「……てなわけでありまして、今やロボットテロの恐怖は日本国内に留まらないのであります。お時間もそろそろ迫って来たので、私のお話もこの辺までとさせて頂きますが、最後に1つだけ申し上げておきたいことがございます。聴衆の皆様方におかれましては、絶対に私のマネだけはしないように!」
敷島はロボット未来科学館で特別講演を行っていた。
敷島の、これまでのロボットテロとの戦いの数々を講演するものである。
敷島:「私は『不死身の敷島』と呼ばれたことがございますが、けして不死身ではございません。たまたま運の良かった生身の人間であります。だからけして偉いものでは無くてですね……」
午前の部は10時に開始したので、もう2時間喋っていることになる。
敷島:「……それではこれを持ちまして、私の講演を終了致します。ご清聴、感謝致します。ありがとうございました」
拍手の中、敷島は退場した。
エミリー:「社長、お疲れさまでした」
敷島:「おう、エミリー。待たせたな。じゃあ、帰るとするか」
エミリー:「お待ちください。14時より午後の部がございます」
敷島:「おい、勘弁してくれよ〜。俺はプレゼンは得意だが、自分語りは得意じゃないんだよ〜」
エミリー:「応接室にお弁当を用意してございますので」
敷島:「弁当かよ。ここのレストランで飯にしようぜ」
エミリー:「一般のお客様も来られますので……」
敷島:「……って、言われてもなぁ……」
エミリーの先導で敷島はバックヤードの応接室に戻った。
敷島:「しょうがない。午後の部はアメリカに行った時の話でもするか」
エミリー:「それは良いアイディアですね」
敷島:「ヤング・ホーク団に飛行機をハイジャックされた話だけで、1時間は話せるぞ」
エミリー:「それはロボットテロとは関係ありません」
エミリーはお茶を注いだ。
敷島:「アリスは?あいつはここの職員だろうが」
エミリー:「アリス博士のような研究職は日曜日休みですので、お坊ちゃまやシンディとさいたま新都心でショッピングをされています」
敷島:「あいつが俺に講演会の話を持って来たんだぞ、全く……」
アリスのことだから、講演料はそれなりに取ったことだろう。
尚、当の講演者たる敷島に入る額は【お察しください】。
敷島:「冬以降、デイジーも姿をくらましたままだしなぁ……」
エミリー:「確かに、私達のレーダーでも捕捉できません」
敷島:「いつの間にか、外国に逃げてたりしてなぁ……」
敷島はエミリーの手作り弁当を頬張りながら、テレビを点けた。
応接室なのでテレビもある。
というか、既にもう勝手知ったる何とやら状態だ。
〔「……それでは本日のゲストをお呼びしましょう。今や人気急上昇、ボーカロイドの初音ミクさんです!どうぞ!」〕
エミリー:「初音ミクも有名になりましたね」
敷島:「そうだな」
〔「何や、またオマエかい」「ど、どうもこんにちはー……」「ゲストに『オマエ』言うなや!初音ミクさん、ホント久しぶりの登場ですねー」「はい、御無沙汰しております」「んなこと言うて、実は他のアンドロイドとパコパコやってたんとちゃう?」「ぱ、パコパコ?」「オマ、ヤメェや、昼間の歌番組やで。ここの事務所、ホンマ怖いんやから。えー、それではですね、本日歌って頂く曲は……」〕
敷島:「……俺は未だにミクが兵器だとは思えないんだ。ああやって歌って踊っている姿を見ると、あれが本来の用途なんだって気がするよ」
エミリー:「社長はボーカロイドを平和的に使用なさっております。社長ほと理想的な使用法をなさっている人間は、他にいないと思います」
敷島:「そうかな……」
エミリー:「それは私達にあっても、なんですよ。私達も、使用法によっては大量殺戮兵器となりますから」
敷島:「分かってるさ。それにしても……」
と、そこへ……。
エミリー:「失礼します。通信が入りました」
敷島:「シンディか?」
エミリー:「いえ……。ロイです」
敷島:「ロイ!?」
日本アンドロイド研究財団の現・理事長である村上大二郎が独自に発明した執事ロイドの名前である。
シンディのことが気に入り、顔を合わせる度にモーションを掛けてくるのだが、シンディには上手く交わされている。
エミリー:「何か?」
ロイ:「エミリー様。シンディ様に通信をブロックされてしまいましたので、エミリー様に送信させて頂いております」
エミリー:「……それは御愁傷様。今度、通信くらい受け取れとだけは言っておいてやる」
ロイ:「ありがとうございます」
エミリー:「それで、用件は何か?」
ロイ:「はい。東京都心大学における村上博士主導の研究チームが特殊なレーダーを開発しまして、それの試運転の最中、特殊な反応をキャッチしたそうです」
エミリー:「特殊な反応?何だそれは?」
ロイ:「はい。その詳細はまだ不明ですが、簡易的な解析によりますと、マルチタイプのものとよく似た反応だそうです」
エミリー:「マルチタイプだと?」
ロイ:「はい。現在稼働しているマルチタイプはエミリー様も含め、さいたま市に集中してございます。それ以外に反応する理由があるとすれば……」
エミリー:「デイジーか!」
敷島:「何だって!?」
ロイ:「詳細はこれから研究チームが行います。まずは敷島社長のお耳に御一報をと……」
エミリー:「御苦労。すぐにお耳に入れる」
ロイ:「ありがとうございます。あの、シンディ様には……」
エミリー:「私からもう一度口添えはしておいてやる」
ロイ:「ありがとうございます。それでは失礼致します」
エミリーは通信を切った。
敷島:「何だって、エミリー?今、デイジーと聞こえたが……」
エミリー:「ロイからの通信で、どうやら村上博士の研究チームがデイジーらしきものを捕捉したようです」
敷島:「おおっ!今まで出て来た老博士の法則通り、ぶっ飛んだ爺さんだが、やることは凄いな!で、場所はどこだ?」
エミリー:「申し訳ありませんが、そこまでは……。ただ、ロイのことですから、詳細が入り次第、すぐに伝えてくれるかと思います」
敷島:「そりゃいい。何事も、『早期治療』が大事だからな」
エミリー:「はい」
だが、事態は思わぬ方向へ……。