報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「アルエットの再起動」

2016-02-29 15:10:40 | アンドロイドマスターシリーズ
[3月1日10:00.天候:曇 埼玉県さいたま市西区・デイライトコーポレーション・ジャパン 3号機のシンディ&敷島孝夫]

 大宮駅西口からバスに乗り、さいたま市の郊外へ向かう人間1人とマルチタイプ1機。

 敷島:「駅からのアクセスがあまり良くないみたいだって思っていたら……」

 敷島、バス車内に掲げられたお知らせを見る。

 敷島:「科学館がオープンしたら、駅からそこまでの新路線がオープンするとは……。デイライトさんの力の入れようが分かるなぁ……」

 といっても、既存の路線を本線とし、科学館までの路線はそこから分岐した支線という扱いらしいが。
 そこを終点とするからには、バスも構内ロータリーまで乗り入れて行くという感じにするらしい。
 レイチェル戦を繰り広げた、荒れ地の中を通る1本の道路。
 さすがに今は、あの時のバージョン・シリーズの残骸はほとんど撤去されている。
 一括制御を行っていたレイチェルがシンディとの戦いで大破し、それでも動いて敷島を殺そうしたところ、やはり満身創痍のアルエットからレーザービームによるトドメを刺されたことで、レイチェルが動かしていたバージョン・シリーズの全てが機能を停止した。

 バスを降りて研究所まで歩く。
 デイライト・コーポレーション前というバス停名にはなっているが、実際はデイライト・コーポレーション入口ではないかと思う距離だ。
 それでやっと着いて、受付でセキュリティカードを受け取る。

 敷島:「仮設の建物とはいえ、あの時の戦いで無事だったロボットは稼働してるんだ」
 シンディ:「そうみたいね」

 というのは、敷島が受付で記入していると、背後からクワを担いだ芋掘りロボット、ゴンスケが通過していったからである。
 尚、ゴンスケとイモ畑はレイチェル達にとってはアウト・オブ眼中であったため、無事であったもよう。

 敷島:「マリオとルイージのキノコ作りといい、農業ロボットとしての研究が進んでるのか、ここは……」
 アリス:「そのうちゴンスケのサツマイモは、科学館のお土産で売れるかもね。キノコと一緒に」
 敷島:「直売所作るってかぁ……。面白い科学館になりそうだ」

 アリスがやってきたので、シンディは深々とお辞儀をした。

 敷島:「それより、アルエットは?」
 アリス:「もちろん、これから起動させるわよ」
 敷島:「そうか」

 敷島、シンディ、アリスと研究所の奥へ向かっていく。

 アルエットが修理を受けているスペースはレイチェル戦でも無事だった部分にあり、そこは従来からのセキュリティが生きている所だ。
 科学館としては新設し、一般公開するが、既存の部分は関係者以外立ち入り禁止にするという。
 途中にバージョン4.0を再利用したセキュリティロボットがいて、当然関係者のアリス、正規の入館受付を行った敷島には4.0は何もしてこない。
 上位機種のシンディには、右腕を曲げて敬礼のポーズを取った。
 腕にペイントされた数字は122だから、122号機か。

 シンディ:「ご苦労様。122号」
 ゴンスケ:「ゴ苦労様。122号」
 122号:ピー!(警報音)「不正侵入者発見!直チニ排除スル!」

 122号機の両目がギラリと光り、右手をシンディのようにマシンガンに変形させる。
 と、同時に付近を巡回中の56号機と72号機もダダダッとやってきて、

 ゴンスケ:「ギョエエエエッ!ヘルプ・ミー!」

 ズルズルと両脇を抱えられて引きずられ、セキュリティエリア外へ連れ出されるゴンスケだった。

 敷島:「ここの4.0は、ちゃんと仕事してるんだな?」

 敷島は意外そうな顔をした。

 アリス:「アタシがちゃんと整備してるからね。財団にいたセキュリティロボットよりも優秀よ」
 敷島:「なのに、何で街中にいるヤツらはおバカなんだ?」
 アリス:「使う人間がバカだと、ロボットもバカになるわよ」
 敷島:「身も蓋も無いこと言うなぁ……。KR団だったら、絶対に逆のこと言いそうだ。てか、ゴンスケのヤツ、イモ畑に行くのに、何でここ通るんだ?」
 シンディ:「ああ。前は、あっちにイモ畑があったからね」

 シンディは科学館建設現場の方を指さした。

 シンディ:「旧データとごっちゃになってるんでしょう」
 敷島:「性能がいいんだか悪いんだか分からんなー」

 そんなこんなで3人(2人プラス1機)は、アルエットが修理されている部屋に着いた。
 アルエットは椅子に座っており、目を閉じている。
 室内にはデイライト・コーポレーションの関係者が所狭しと並んでいた

 シンディ:「アル……」
 敷島:「だいぶ、きれいに元通りじゃないか」
 アリス:「当然よ。それじゃ皆さん、お集まりになったようなので、早速、ガイノイド・マルチイプ8号機のアルエットを再起動したいと思います」
 アリスはノート型PCのキーボードを叩いた。
 背後のスクリーンには、そのPCの画面が映し出されている。

『アルエット の起動 承認待機中です。起動を行いますか?』

 そのような表示が出たので、アリスはエンターキーを押した。

 アルエット:「……?」
 シンディ:「アル……分かる?」
 アルエット:「シンディ……お姉ちゃん……」
 アリス:「◯◯の起動値クリア、××の起動値は上昇中……」
 研究員:「ウィルス検知を始めています」

 アリスを含む研究員達がPCの方の表示を気にしている中、シンディはアルエットを抱きしめた。

 シンディ:「アル……ごめんね……」
 アルエット:「何が?」
 敷島:「シンディ、お前の力で抱きしめると、せっかく直したアルエットがまた壊れるぞ」
 シンディ:「あっ!」

 シンディは慌てて放した。
 だが、それだけで壊れるほどマルチタイプはヤワではない。

 アルエット:「覚えてるよ。お姉ちゃんが、わたしに取り付けたられた変な装置を取り外してくれたこと……。ありがとう。お姉ちゃん……」
 研究員:「全ての数値、クリアしました。ウィルスも検知されてません」
 アリス:「OK.それじゃ皆さん、明日から本格的にこのアルエットのテストを行って参りますので、よろしくお願いします。アルエットは……って!」
 敷島:「……というわけで、是非とも敷島エージェンシーをよろしくお願いします。……あ、せめて名刺だけでも」

 アルエットの再起動そっちのけで、デイライト・コーポレーションの役員に営業する敷島がいた。

 アリス:「シンディ。あのバカに電流お願い」
 シンディ:「かしこまりました」
 敷島:「うちには優秀なボーカロイドが……アッー!」

 シンディ、左手で敷島を掴むと電気を流した。

 アリスはコメカミに怒筋を浮かべながら、しかし顔は笑顔で、

 アリス:「シンディは左手から高圧電流が流せますが、その強さは自由に変えることができます。静電気程度の強さから、黒焦げになるほどの強さまでね!」

 但し、最大電圧まで行うと、バッテリー1つをオシャカにするどころか、電気が逆流して自分も感電する恐れがあるというメガンテぶりである。

 アリス:「それじゃ皆さん、よろしくお願いします」
 アルエット:「社長さん、どうしたのー?」
 シンディ:「いいのよ。マスターの命令だから」
 アルエット:「?」
 敷島:「…………」(既に意識が無い。周辺には焦げた名刺が散乱している)
 研究員:「あの、せめて医務室に運んで差し上げた方が……」(見かねたアリスの部下が進言する)
 アリス:「いいのよ。放っときなさい。アルエットとシンディは私についてきて。場所移動するから」
 シンディ:「はーい」
 アルエット:「は、はい」

 無人になった研究室、意識の無い敷島だけが取り残されて電気も消されてしまったという。合掌。

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2 コメント

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国道? (いおなずん)
2016-03-01 23:31:11
夜中のコメントお許しください。

違っていたらごめんなさい。

腕のペイントの数字って国道の番号ですか?

さいたま市西区を走る国道の番号とたまたま一致するのですが・・・

まさかね・・・
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いおなずんさんへ (作者)
2016-03-02 06:52:01
おはようございます。コメントありがとうございます。
書き込みは24時間受け付けてますから、いつでもいいですよ。

バレましたか。
実は国道122号線です。
つい、「さいたま市西区を走るバスは西武だろ?」というツッコミは来るかと思ったのですが、さすがにそれは無かったようで……。
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