[1月25日10:00.天候:曇 北海道小樽市・朝里川温泉(湯の花 朝里殿) 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]
旅館で少し休ませてもらった稲生達は、藤谷達がチェックアウトするのに合わせて、そこを後にした。
どうせ日本国内だからとタカを括っていたのだが、まさかここまで遠い所に来るとは思いも寄らなかった。
その為、急いで屋敷に戻る必要があったのだが、
「まあまあ。せっかくここに来たのも、何かの縁。一泊くらいゆっくりしていきましょうよ」
というイリーナの提案に、2人の弟子は呆れてしまった。
「じゃ、このホテル(旅館)に泊まりますか?」
と、マリアが言ったのだが、
「この前みたいに札幌まで移動したいねぇ……」
ということだった。
稲生が鉄道の知識を駆使して、札幌までの良いルートを検索していたところ、藤谷が余計なことを口走った。
「ここの温泉なんスけど、温泉街の入口辺りに日帰り浴場があるんスよ。少し温まって行ったらどうっスか?」
なんて……。
で、イリーナも、
「あー、それはいいねぇ!」
と、乗り気になってしまった。
で、そこに移動することになったのである。
「悪いねぇ。アタシ、今アメリカンエクスプレスしか持ってなくてさぁ……」
「後で返して頂ければいいです」
稲生が券売機で、全員分の入浴券を買っている。
「ホテル代は師匠が持ってくださいよ?師匠の言い出しっぺなんだし、ホテルならアメックスが使えるでしょう?」
と、マリアが辛辣に言った。
屋敷の管理人(表向きは主人なのだが)として、早いとこ戻りたいのが正直らしい。
とはいうものの、藤谷達が宿泊していた旅館から雪道を歩いて来たこともあってか、体がだいぶ冷えてしまったのも事実。
「あー、もちろんさ。ま、とにかくこの場はユウタ君に甘えよう」
中に入って、受付でタオルや館内着のセットを借りる。
「帰りのバスは……。あ、札幌方面行きがある」
受付には無料送迎バスの時刻表が掲げられていた。
稲生がその時刻表を見ていると、
「札幌から来られるお客様方が優先になります」
と、スタッフが言った。
「えっ?」
「札幌市内行きのバスは、往路で乗って来たお客様が先に乗られますので、その後で空席があればご利用になれます」
「えー、そうなんだ。先生、上手い事それに乗れれば札幌市内までタダで……って、あれ?先生?」
「ユウタくーん、アタシら先に入ってるよー」
「早っ!?」
既に女湯入り口の暖簾を潜り掛けていた女魔道師2人だった。
[同日11:00.天候:雪 同施設内1Fロビー 稲生勇太]
稲生はもちろん稲生で、ゆっくり温泉に入ったつもりだった。
だが、1時間経って大浴場から出て来た稲生を待ち受ける者はいなかった。
イリーナの契約悪魔レヴィアタンの姿が見えたので、聞いてみたら、まだ入っているという。
稲生はサウナに入らないのだが、ロシア人はサウナが好きなのかと思うくらいだった。
で、その稲生、スマホ片手に、今日泊まれる札幌市内のホテルの予約を取ろうとしていた。
「あ、もしもし。ホテル◯△ですか?今日、大人3名分泊まれる部屋は……え?満室!?……そうですか。分かりました」
切った後で、次のホテルを検索して、
「◯×ホテルですか?今日、大人3名分……え、空いてない?ツイン1つとシングル1つ、もしくはシングル3つでも……ダメ?……分かりました」
なかなか当日空いているホテルが見つからないでいた。
(閑散期なのに、おかしいなぁ……)
他にも稲生は色々と選択したのだが、幸いできたのは、新千歳空港から信州まつもと空港への飛行機は予約できたことだ。
スキーシーズンなので、こちらの方が予約が取れないと思っていたのだが、雪国から雪国への需要は【お察しください】だったか。
ようやく何とか札幌市内のビジネスホテルが予約できた時、
「うぃー……!汗かき過ぎちゃったよー。マリア、ビール買ってきてー」
「師匠!だからあれほど入り過ぎないでって言ったじゃないですか!」
のぼせ気味のイリーナと、それを支えるマリアが女湯から出て来た。
「ユウタ、私は師匠を上に連れて行くから」
「は、はあ……」
「ほら、師匠!2階が休憩所になってるみたいですからっ!」
「うう……すまないねぇ……」
マリアはズールズールとイリーナを引きずるように、階段を登っていった。
(全く。あの外国人達は……)
稲生は溜め息をつきながら、予約が取れたホテルのアクセスルートを確認していた。
(あとは札幌から新千歳空港までの電車のキップか。せっかくだから、指定席でも取ろう。航空チケットは……うーん……当日、空港受け取りでいいか。……イリーナ先生が寝坊しなければ!)
[同日12:00.同施設内2F 稲生、マリア、イリーナ]
何とかイリーナの具合も良くなり、3人は食事処で昼食を取っていた。
「さすがはユウタ君だね!全部やってくれたんだ!?スゴイスゴーイ!」
イリーナは稲生の快挙に歓喜した。
「いやあ、ホテルに10件くらいは電話しましたよ。当日予約はネットじゃなくて、電話するのがベタな法則なもんで……」
「でも、飛行機が簡単に取れたのは意外だったね」
と、マリアも同じように考えたらしい。
「何とかトラベルに頼む必要は、これで無くなったわけです」
稲生は同調するように頷きながら答えた。
「あと、これが札幌方面行きのバスのチケット……というか、札ですね」
「ん?」
黄色いプラスチックの楕円形の札。
それには13:30というシールが貼ってあった。
「このバスで札幌に向かいます」
「じゃあ、まだゆっくりできるんだね」
「僕、もう1回入ってこようかなぁ……」
「もしかして、ホテルの予約とか飛行機の予約とかで、ゆっくり入っていなかったのか?」
「僕の性格のせいなのか、先にそういうのを決めないと落ち着かないんですよ」
「そうか。ま、おかげで助かったよ。これで、今日のことは安心だな」
マリアは静かに笑った。
で、稲生はそんなマリアを素直に、
(かわいい……)
と、思ったのだった。
旅館で少し休ませてもらった稲生達は、藤谷達がチェックアウトするのに合わせて、そこを後にした。
どうせ日本国内だからとタカを括っていたのだが、まさかここまで遠い所に来るとは思いも寄らなかった。
その為、急いで屋敷に戻る必要があったのだが、
「まあまあ。せっかくここに来たのも、何かの縁。一泊くらいゆっくりしていきましょうよ」
というイリーナの提案に、2人の弟子は呆れてしまった。
「じゃ、このホテル(旅館)に泊まりますか?」
と、マリアが言ったのだが、
「この前みたいに札幌まで移動したいねぇ……」
ということだった。
稲生が鉄道の知識を駆使して、札幌までの良いルートを検索していたところ、藤谷が余計なことを口走った。
「ここの温泉なんスけど、温泉街の入口辺りに日帰り浴場があるんスよ。少し温まって行ったらどうっスか?」
なんて……。
で、イリーナも、
「あー、それはいいねぇ!」
と、乗り気になってしまった。
で、そこに移動することになったのである。
「悪いねぇ。アタシ、今アメリカンエクスプレスしか持ってなくてさぁ……」
「後で返して頂ければいいです」
稲生が券売機で、全員分の入浴券を買っている。
「ホテル代は師匠が持ってくださいよ?師匠の言い出しっぺなんだし、ホテルならアメックスが使えるでしょう?」
と、マリアが辛辣に言った。
屋敷の管理人(表向きは主人なのだが)として、早いとこ戻りたいのが正直らしい。
とはいうものの、藤谷達が宿泊していた旅館から雪道を歩いて来たこともあってか、体がだいぶ冷えてしまったのも事実。
「あー、もちろんさ。ま、とにかくこの場はユウタ君に甘えよう」
中に入って、受付でタオルや館内着のセットを借りる。
「帰りのバスは……。あ、札幌方面行きがある」
受付には無料送迎バスの時刻表が掲げられていた。
稲生がその時刻表を見ていると、
「札幌から来られるお客様方が優先になります」
と、スタッフが言った。
「えっ?」
「札幌市内行きのバスは、往路で乗って来たお客様が先に乗られますので、その後で空席があればご利用になれます」
「えー、そうなんだ。先生、上手い事それに乗れれば札幌市内までタダで……って、あれ?先生?」
「ユウタくーん、アタシら先に入ってるよー」
「早っ!?」
既に女湯入り口の暖簾を潜り掛けていた女魔道師2人だった。
[同日11:00.天候:雪 同施設内1Fロビー 稲生勇太]
稲生はもちろん稲生で、ゆっくり温泉に入ったつもりだった。
だが、1時間経って大浴場から出て来た稲生を待ち受ける者はいなかった。
イリーナの契約悪魔レヴィアタンの姿が見えたので、聞いてみたら、まだ入っているという。
稲生はサウナに入らないのだが、ロシア人はサウナが好きなのかと思うくらいだった。
で、その稲生、スマホ片手に、今日泊まれる札幌市内のホテルの予約を取ろうとしていた。
「あ、もしもし。ホテル◯△ですか?今日、大人3名分泊まれる部屋は……え?満室!?……そうですか。分かりました」
切った後で、次のホテルを検索して、
「◯×ホテルですか?今日、大人3名分……え、空いてない?ツイン1つとシングル1つ、もしくはシングル3つでも……ダメ?……分かりました」
なかなか当日空いているホテルが見つからないでいた。
(閑散期なのに、おかしいなぁ……)
他にも稲生は色々と選択したのだが、幸いできたのは、新千歳空港から信州まつもと空港への飛行機は予約できたことだ。
スキーシーズンなので、こちらの方が予約が取れないと思っていたのだが、雪国から雪国への需要は【お察しください】だったか。
ようやく何とか札幌市内のビジネスホテルが予約できた時、
「うぃー……!汗かき過ぎちゃったよー。マリア、ビール買ってきてー」
「師匠!だからあれほど入り過ぎないでって言ったじゃないですか!」
のぼせ気味のイリーナと、それを支えるマリアが女湯から出て来た。
「ユウタ、私は師匠を上に連れて行くから」
「は、はあ……」
「ほら、師匠!2階が休憩所になってるみたいですからっ!」
「うう……すまないねぇ……」
マリアはズールズールとイリーナを引きずるように、階段を登っていった。
(全く。あの外国人達は……)
稲生は溜め息をつきながら、予約が取れたホテルのアクセスルートを確認していた。
(あとは札幌から新千歳空港までの電車のキップか。せっかくだから、指定席でも取ろう。航空チケットは……うーん……当日、空港受け取りでいいか。……イリーナ先生が寝坊しなければ!)
[同日12:00.同施設内2F 稲生、マリア、イリーナ]
何とかイリーナの具合も良くなり、3人は食事処で昼食を取っていた。
「さすがはユウタ君だね!全部やってくれたんだ!?スゴイスゴーイ!」
イリーナは稲生の快挙に歓喜した。
「いやあ、ホテルに10件くらいは電話しましたよ。当日予約はネットじゃなくて、電話するのがベタな法則なもんで……」
「でも、飛行機が簡単に取れたのは意外だったね」
と、マリアも同じように考えたらしい。
「何とかトラベルに頼む必要は、これで無くなったわけです」
稲生は同調するように頷きながら答えた。
「あと、これが札幌方面行きのバスのチケット……というか、札ですね」
「ん?」
黄色いプラスチックの楕円形の札。
それには13:30というシールが貼ってあった。
「このバスで札幌に向かいます」
「じゃあ、まだゆっくりできるんだね」
「僕、もう1回入ってこようかなぁ……」
「もしかして、ホテルの予約とか飛行機の予約とかで、ゆっくり入っていなかったのか?」
「僕の性格のせいなのか、先にそういうのを決めないと落ち着かないんですよ」
「そうか。ま、おかげで助かったよ。これで、今日のことは安心だな」
マリアは静かに笑った。
で、稲生はそんなマリアを素直に、
(かわいい……)
と、思ったのだった。