[4月16日11:30.天候:曇 場所:長野県某所 マリアの屋敷 稲生ユウタ&マリアンナ・スカーレット]
「何か、久しぶりに帰ってきたって感じですね」
「ああ」
屋敷に戻ると、留守番をしていた人形達が出迎えた。
「ユウタ君、少し休んでから調査しよう」
「はい。マリアさんは休んでてくださいよ。僕がやっておきますから」
「ユウタ君……凄いね」
「こういう調査みたいなのは好きなんで」
「なるほど……。多分今、留守番の人形達が昼食を作っているところだろうから、私はいつもの部屋で休んでる」
「はい。僕は1度、自分の部屋に戻ります」
ユタは階段を上って、自分の部屋に向かった。
スマホを充電しながら、ユタは藤谷春人に電話を掛けた。
「あ、もしもし。稲生ですけど……」
{「おー、稲生君か。どうした?」}
「実は藤谷班長……すいません、専務が手掛けてる北海道のテーマパークについて聞きたいことがあるんですが……」
{「ははっ(笑)、どう呼んでくれてもいいよ。答えられるものとそうでないものがあるけど?」}
「テーマパークの目玉という古城についてなんです」
{「おー、やっぱ目玉は先に作っとかないとな。その方が注目が集まる」}
「てことは、もうできたんですか?」
{「8割、9割方な。いやあ、さすが『リアル・ダンジョン』なだけあって、色んな謎解きやら仕掛けがあって大変だったよ。はっはっはー(笑)」}
「そのお城を今、見せてもらうことはできますか!?」
{「えっ?どうしたんだい、いきなり?」}
「もしかしたら、イリーナ先生がそこに行ってるかもしれないんです!」
{「そうなのか?しかし、大変なことになったなぁ……」}
「ええ。飛行機が丸ごと行方不明になるなんて……」
{「いや、というか、墜落したぞ?」}
「は!?」
{「今、テレビで大騒ぎだって。知らないの?」}
「……しばらく魔界に行ってて、今帰ってきたばかりなんで」
{「ちょっと治安の悪い国へ行く海外旅行みたいだなー。まあ、それはキミ達だからか。俺だったら、シリアかソマリアに行くみたいなもんか」}
「それより墜落したって、どういうことですか?」
{「今、情報番組でやってるよ。テレビ点けてみな」}
「!」
ユタの部屋にはテレビは無い。
スマホでワンセグを見ることはできるが、今電話中なのでそれもムリ。
そこでリビングへ向かった。
「どうしたの?」
ユタが切羽詰った顔で飛び込んできたものだから、マリアは驚いた。
ソファに横になっていたのだが、上半身を起こしたくらいだ。
「あ、あの……」
ユタは言う前にテレビを点けた。
〔「……今朝7時頃、長野県の信州まつもと空港に正体不明の航空機が突然接近・墜落した事故で、当局は墜落した事故機が行方不明になっていたグレートブリテン航空513便と見て……」〕
「!!!」
上半身だけ起こしていたマリアが、ソファから転げ落ちそうになった。
〔「この事故で信州まつもと空港は、終日閉鎖が決定しており、当日離発着の航空機は全て欠航が決定しております。尚、当局では何故1週間以上も行方不明だった航空機が突然日本国内の上空に現れたかについて調査を開始しており……」〕
{「これ、どう見ても魔法使いとかが関係してないか?」}
「……してると思います」
「…………」
〔「……事故機は長期間に渡って行方不明、また墜落時の衝撃の激しさから乗員・乗客の生存は絶望的と見られておりますが、懸命の消火活動並びに救助活動が行われております」〕
「信州まつもと空港なら、マリアさんの屋敷から1番近い空港なので、ちょっと行ってみようかと思います」
{「……元気を出すんだよ。件の城の見学は……まあ、俺が何とかしてみるから」}
「よろしくお願いします」
[同日14:00.同県・信州まつもと空港 ユタ&マリア]
昼食を取り終わったユタ達は、お抱え運転手の車で件の空港に向かった。
当然ながらターミナルは閉鎖され、対応に当たる関係者やマスコミ、利用客などでごったがえしていた。
テレビで改めて乗客名簿の記載内容が公表されたが、やはりそこにはイリーナの名前があった。
空港の外からも灰や残骸と化した飛行機が見えたが、テレビで言う通り、とても生存者がいるとは思えなかった。
「あれくらいで師匠が死ぬとは思えない。恐らく師匠は直前で脱出しているか、もしくは実際に飛行機に乗らなかったりして無事だと思う」
マリアはそう言った。
しかし眉を潜めているので、それでも一抹の不安はあるのだろう。
埒が明かないので、屋敷に戻ることにした。
その車中で、
「ただの飛行機事故なら、とっくに師匠が私達の前に現れているか何かしてると思う。……まあ、持ち前の予知能力とかで、そもそも乗らないだろうけどね。それが無いのはそういう理由があるか、そうしなければならない理由があるんだと思う」
「そうですねぇ……。“魔の者”と関係があるんでしょうか?」
「分からない」
「移築中の城については、藤谷班長が動いてくれてます。何とか、僕達が調査できるようにと」
「そうか」
[同日15:30.マリアの屋敷 ユタ、マリア、エレーナ・マーロン]
「! エレーナ!?」
「魔界から戻ってたんなら教えなさいよ。オマケにまた2人でデートに行っちゃって」
「デートじゃない!」
「す、すいません。てか、それより、大変なんです。イリーナ先生の飛行機が……」
「うちの先生は、全然気にしてないけどね」
エレーナは腕組みをしながら答えた。
「こっちの調査で分かったことがあるよ。後で謝礼はもらうからね、たっぷり」
「はいはい。とにかく、中に入ってくれ」
リビングに入る3人。
「それで、分かったこととは?」
「まず“魔の者”について。私達と関わる“7つの大罪の悪魔”も関知しない連中だね。私もだいぶ苦労したクチだけど、あいつら15歳くらいになる魔道師の才能のある少年少女に揺さぶりを掛けるみたいだよ」
「揺さぶりですか?」
ユタは目を丸くした。
「そう。最近流行りの方法は、周囲の人間を操って、対象者をイジメぬいて自殺させる方法だってさ。アンタ達も覚えがあるでしょう?」
「う……」
「な、なるほど」
「! エレーナ、お前もか?」
「私はタイミングが来る前に避難したからね。『13歳になったら独り旅に出て修行しろ』ってムチャブリ&ハードルがん上げ話、実は15歳になって“魔の者”に襲われる前に高飛びしろってのが真相らしいよ?」
「高飛びって、犯罪者じゃあるまいし……」
「オマエだけ要領良く高飛びしたわけか」
マリアは忌々しそうに言った。
「まあ、私はアンタみたいにノロマで不器用じゃないから。事前の下調べくらいお手の物よ。……ま、あまり自慢しすぎてボロが出るのもアレだから、少しだけ白状するけどね」
そう言ってエレーナは立ち上がると、突然上を脱ぎ始めた。
「こ、こら!男の前で脱ぐな!」
「ぼ、僕、今出ますから!」
「大丈夫大丈夫。……私が高飛びした先はアメリカのロサンゼルスとニューヨーク。……まあ、そこも安全な場所じゃないもんでねぇ……」
エレーナの背中には色々な傷痕ができていた。
「いやあ、マフィアにマシンガンぶっ放された時は死ぬかと思った」
「どこの誰と戦ってたんだ、オマエは!?」
「ポーリン先生と協力して、“魔の者”に取り憑かれたマフィアのボスが潜む50階建てのビルごとブッ潰してやったけど……。ま、今となっちゃいい思い出よ」
「舞台女優の亡霊の方が、まだ易しい方だったんですかね?」
「さあ……」
「とにかく、“魔の者”が今度日本で暴れようとしている。狙いはマリアンナ、あんたよ」
「くそっ……!」
「その次はユタ君になるかしら?」
「マジですか!?」
「だから、マリアンナが狙われている間にそいつを倒せば、結構いい睨みになるんじゃないの?あいつらだって、自分の命は惜しいわけだからね」
「分かった。他に分かったことは?」
いつの間にか外は雨が降り出していた。
エレーナの情報提供は、夕方にまで及んだのである。
「何か、久しぶりに帰ってきたって感じですね」
「ああ」
屋敷に戻ると、留守番をしていた人形達が出迎えた。
「ユウタ君、少し休んでから調査しよう」
「はい。マリアさんは休んでてくださいよ。僕がやっておきますから」
「ユウタ君……凄いね」
「こういう調査みたいなのは好きなんで」
「なるほど……。多分今、留守番の人形達が昼食を作っているところだろうから、私はいつもの部屋で休んでる」
「はい。僕は1度、自分の部屋に戻ります」
ユタは階段を上って、自分の部屋に向かった。
スマホを充電しながら、ユタは藤谷春人に電話を掛けた。
「あ、もしもし。稲生ですけど……」
{「おー、稲生君か。どうした?」}
「実は藤谷班長……すいません、専務が手掛けてる北海道のテーマパークについて聞きたいことがあるんですが……」
{「ははっ(笑)、どう呼んでくれてもいいよ。答えられるものとそうでないものがあるけど?」}
「テーマパークの目玉という古城についてなんです」
{「おー、やっぱ目玉は先に作っとかないとな。その方が注目が集まる」}
「てことは、もうできたんですか?」
{「8割、9割方な。いやあ、さすが『リアル・ダンジョン』なだけあって、色んな謎解きやら仕掛けがあって大変だったよ。はっはっはー(笑)」}
「そのお城を今、見せてもらうことはできますか!?」
{「えっ?どうしたんだい、いきなり?」}
「もしかしたら、イリーナ先生がそこに行ってるかもしれないんです!」
{「そうなのか?しかし、大変なことになったなぁ……」}
「ええ。飛行機が丸ごと行方不明になるなんて……」
{「いや、というか、墜落したぞ?」}
「は!?」
{「今、テレビで大騒ぎだって。知らないの?」}
「……しばらく魔界に行ってて、今帰ってきたばかりなんで」
{「ちょっと治安の悪い国へ行く海外旅行みたいだなー。まあ、それはキミ達だからか。俺だったら、シリアかソマリアに行くみたいなもんか」}
「それより墜落したって、どういうことですか?」
{「今、情報番組でやってるよ。テレビ点けてみな」}
「!」
ユタの部屋にはテレビは無い。
スマホでワンセグを見ることはできるが、今電話中なのでそれもムリ。
そこでリビングへ向かった。
「どうしたの?」
ユタが切羽詰った顔で飛び込んできたものだから、マリアは驚いた。
ソファに横になっていたのだが、上半身を起こしたくらいだ。
「あ、あの……」
ユタは言う前にテレビを点けた。
〔「……今朝7時頃、長野県の信州まつもと空港に正体不明の航空機が突然接近・墜落した事故で、当局は墜落した事故機が行方不明になっていたグレートブリテン航空513便と見て……」〕
「!!!」
上半身だけ起こしていたマリアが、ソファから転げ落ちそうになった。
〔「この事故で信州まつもと空港は、終日閉鎖が決定しており、当日離発着の航空機は全て欠航が決定しております。尚、当局では何故1週間以上も行方不明だった航空機が突然日本国内の上空に現れたかについて調査を開始しており……」〕
{「これ、どう見ても魔法使いとかが関係してないか?」}
「……してると思います」
「…………」
〔「……事故機は長期間に渡って行方不明、また墜落時の衝撃の激しさから乗員・乗客の生存は絶望的と見られておりますが、懸命の消火活動並びに救助活動が行われております」〕
「信州まつもと空港なら、マリアさんの屋敷から1番近い空港なので、ちょっと行ってみようかと思います」
{「……元気を出すんだよ。件の城の見学は……まあ、俺が何とかしてみるから」}
「よろしくお願いします」
[同日14:00.同県・信州まつもと空港 ユタ&マリア]
昼食を取り終わったユタ達は、お抱え運転手の車で件の空港に向かった。
当然ながらターミナルは閉鎖され、対応に当たる関係者やマスコミ、利用客などでごったがえしていた。
テレビで改めて乗客名簿の記載内容が公表されたが、やはりそこにはイリーナの名前があった。
空港の外からも灰や残骸と化した飛行機が見えたが、テレビで言う通り、とても生存者がいるとは思えなかった。
「あれくらいで師匠が死ぬとは思えない。恐らく師匠は直前で脱出しているか、もしくは実際に飛行機に乗らなかったりして無事だと思う」
マリアはそう言った。
しかし眉を潜めているので、それでも一抹の不安はあるのだろう。
埒が明かないので、屋敷に戻ることにした。
その車中で、
「ただの飛行機事故なら、とっくに師匠が私達の前に現れているか何かしてると思う。……まあ、持ち前の予知能力とかで、そもそも乗らないだろうけどね。それが無いのはそういう理由があるか、そうしなければならない理由があるんだと思う」
「そうですねぇ……。“魔の者”と関係があるんでしょうか?」
「分からない」
「移築中の城については、藤谷班長が動いてくれてます。何とか、僕達が調査できるようにと」
「そうか」
[同日15:30.マリアの屋敷 ユタ、マリア、エレーナ・マーロン]
「! エレーナ!?」
「魔界から戻ってたんなら教えなさいよ。オマケにまた2人でデートに行っちゃって」
「デートじゃない!」
「す、すいません。てか、それより、大変なんです。イリーナ先生の飛行機が……」
「うちの先生は、全然気にしてないけどね」
エレーナは腕組みをしながら答えた。
「こっちの調査で分かったことがあるよ。後で謝礼はもらうからね、たっぷり」
「はいはい。とにかく、中に入ってくれ」
リビングに入る3人。
「それで、分かったこととは?」
「まず“魔の者”について。私達と関わる“7つの大罪の悪魔”も関知しない連中だね。私もだいぶ苦労したクチだけど、あいつら15歳くらいになる魔道師の才能のある少年少女に揺さぶりを掛けるみたいだよ」
「揺さぶりですか?」
ユタは目を丸くした。
「そう。最近流行りの方法は、周囲の人間を操って、対象者をイジメぬいて自殺させる方法だってさ。アンタ達も覚えがあるでしょう?」
「う……」
「な、なるほど」
「! エレーナ、お前もか?」
「私はタイミングが来る前に避難したからね。『13歳になったら独り旅に出て修行しろ』ってムチャブリ&ハードルがん上げ話、実は15歳になって“魔の者”に襲われる前に高飛びしろってのが真相らしいよ?」
「高飛びって、犯罪者じゃあるまいし……」
「オマエだけ要領良く高飛びしたわけか」
マリアは忌々しそうに言った。
「まあ、私はアンタみたいにノロマで不器用じゃないから。事前の下調べくらいお手の物よ。……ま、あまり自慢しすぎてボロが出るのもアレだから、少しだけ白状するけどね」
そう言ってエレーナは立ち上がると、突然上を脱ぎ始めた。
「こ、こら!男の前で脱ぐな!」
「ぼ、僕、今出ますから!」
「大丈夫大丈夫。……私が高飛びした先はアメリカのロサンゼルスとニューヨーク。……まあ、そこも安全な場所じゃないもんでねぇ……」
エレーナの背中には色々な傷痕ができていた。
「いやあ、マフィアにマシンガンぶっ放された時は死ぬかと思った」
「どこの誰と戦ってたんだ、オマエは!?」
「ポーリン先生と協力して、“魔の者”に取り憑かれたマフィアのボスが潜む50階建てのビルごとブッ潰してやったけど……。ま、今となっちゃいい思い出よ」
「舞台女優の亡霊の方が、まだ易しい方だったんですかね?」
「さあ……」
「とにかく、“魔の者”が今度日本で暴れようとしている。狙いはマリアンナ、あんたよ」
「くそっ……!」
「その次はユタ君になるかしら?」
「マジですか!?」
「だから、マリアンナが狙われている間にそいつを倒せば、結構いい睨みになるんじゃないの?あいつらだって、自分の命は惜しいわけだからね」
「分かった。他に分かったことは?」
いつの間にか外は雨が降り出していた。
エレーナの情報提供は、夕方にまで及んだのである。