報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「怨霊達の最期」

2015-04-23 21:55:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月20日00:05.ヤノフ城・大ホール 藤谷春人、稲生ユウタ、アカネ萩原、バーズ渡辺]

「ビビリデブのくせに、いい気になってんじゃないよ!」
 ハンドガンを出すアカネ。
 どうやら少し武器が強化されているようだ。
「俺の出る幕は無いか?」
 同じくハンドガンを出すバーズ。
 しかし、こちらは大型のパイソンだ。
「む!?」
 すると吹き抜けから、あの白いマネキンが何体も落ちて来た。
「うわっ、出たっ!」
「なるほど……。ヤノフ様はもちろんのこと、私も手を下す必要は無いらしい。お前達の相手はそこのアカネと、ドール達に任せるとしよう」
 バーズはニヤッと笑った。
「稲生君!ここは俺に任せて、上に行け!」
「えっ!?……でも!」
「大時計の制御室の中に、文字盤まで上がる点検用のリフトがある。それで一気に上がれるはずだ」
「わ、分かりました!班長、1つ注意が……」
「何だ!?」
 ユタはヨタヨタ歩いてくるマネキンの1つを指さして、何やら耳打ちした。
「……そうなのか。分かった」
 と、その時、2人の足元に銃弾が着弾する。
「何をコソコソ話してんだい!?」
 ダッとユタは制御室の中に飛び込む。
「む!?」
 バーズが気づいて、ユタの後を追おうとする。
 が、藤谷の持つライフルに足元を撃たれて立ち止まる。
「おっと!アンタはそこで高見の見物だろ?男が二言言っちゃいけねーぜ!」
「貴様……!」

[同日同時刻 ヤノフ城・時計台前 マリアンナ・スカーレット&グルジ・ヤノフ]

「ミカエラ!急いで!」
 マリアはなけなしの状態となった魔力を振り絞り、何とかミカエラだけを動かすことに成功した。
 しかし人形形態のままだ。
 それでもヤノフが捨てていったナイフを拾わせると、それで両手足を縛っている縄を切らせる。
 両足と右手の縄を切り、残るは左手となった時だった。
「何をしている?」
「!!!」
 そこへヤノフが戻ってきた。
 そして、害虫を振り払うような仕草で、ミク人形を叩き落した。
「ひどいわ!何て事するの!!」
「黙れ!この不良娘が!私がどんな気持ちで、ヨーロッパ中を歩き回ったか知ってるのか!?」
「そっちこそ!私が辛い目に遭ってる時に、放浪の旅に出てたくせに!!」
「ふふ……。どうやら、もうムリのようだな……」
 ヤノフは腰に下げていた剣を抜き取ると、それを心臓に向けた。
「既に時間は過ぎ去ってしまったが、しかしまだお前の誕生日であることに変わりは無い。今からでも、遅くは無いかもしれない。お前の心臓を頂くことにする」
「くそっ……!杖さえあれば……!」
「さらば、とは言わん。お前は愛すべき祖父の体の中で、未来永劫一緒に生きられるのだ」
「……お断わりだよ」
「お前に選択権は無……」

 パンッ!パンパンッ!

「ぐわっ!?」
 背後から銃声がして、そのうちの1発がヤノフの背中に命中する。
「ま、マリアさんから離れろ!ヤノフ侯爵!」
「こ、小僧ッ!」
 ユタが手持ちのハンドガンを発砲したのだった。
「マリアさん!杖です!」
 ユタは取り返したマリアの杖を投げた。
「ユウタ!」
 マリアは杖を受け取った。
 一瞬、どちらを攻撃したら良いか迷うヤノフ。
「……やはり、マリアンナ!お前からだ!」
 ヤノフは選択を誤った。
「ユウタ!瓶を投げて!」
「は、はい!」
 ユタが咄嗟に投げたのは、聖水の入った瓶。
 中の水はただの水だが、魔力が施された瓶の中に入ることにより、
「えいっ!」
 ヤノフのすぐ横で、マリアの杖から発せられた衝撃により、瓶は爆発するように破裂した。
「ぐわあああっ!!」
 聖水をまともに浴びたヤノフはもがき苦しむ。
「マリアさん!」
 今のうちにとユタはマリアに駆け寄り、残った左手の縄を切り取った。
「ナメるなぁぁぁっ!!」 
「うわっ!?」
 ヤノフが剣を振るって、攻撃してきた。

[同日00:15.ヤノフ城・大ホール 藤谷、アカネ、バーズ]

「ま、マジかよ……稲生君?」
 藤谷は唖然とした。
 マネキン達の中には、あの寸胴型が3体ほど含まれており、ユタからあれの特徴を聞いたので、早速攻撃オブジェクトとして発砲した。
 案の定、寸胴型は濃硫酸のような液体を吹き散らして破裂した。
 それは周囲のマネキン達も道連れにしたのだが、
「ひ、ひひ……ひきょ………」
 アカネも巻き込んだ。
 アカネは肉体を溶かしていった。
「勝てば官軍だぜ。ここまで来りゃあよ」
 藤谷はたちこめる異臭に顔をしかめながら言った。
「あとは……あんただけだな?」
「そうのようだ。だがしかし、私はあのアカネとは違う」
「そうかい。じゃあ、試してみるか?」
「試す?」
「ほら、よく西部劇にあるだろ?1、2、3で早撃ちするヤツ」
「ああ。そうだな。やってみるか」

[同日同時刻 ヤノフ城・時計台前 ユタ、マリア、ヤノフ]

「逃がすか!……でやあーっ!」
 ヤノフが剣を振るうと、そこから青白い光が飛んで来る。
「ユウタ!あれに当たってはダメだ!」
「分かってます!」
 ユタはマリアが寝かされていた台を盾にしながら、ヤノフに撃ち込んだ。
「くっ……!」
 マリアに貧血に似た症状が現れて、立ちくらみを起こす。
(魔力を使い過ぎた……。あと一回……あいつに攻撃できれば……)
「マリアさん、さっきの魔法、もう1度使えますか?」
「えっ?」
「多分、次の攻撃で最後になると思います」
「……わ、分かった」
 ユタに何か作戦があるのだろうか?

[同日00:20.ヤノフ城・大ホール 藤谷&バーズ]

「いや、だからさ、パイソンって早撃ちに向かない銃なんだって。リロードもリボルバー式で遅いし。そんなことも知らなかったのかよ」
「ん、んなバカな……」
 自分が発砲する前に藤谷からショットガンを撃ち込まれたバーズ。
「威力はこのM3より強いけどさ」
「くそっ……!」
「まあ、いいや。さーて、バーズさんよ。死ぬ前に聞きてぇことがある。答えてくれよ。イリーナ先生とやらはどこにいる?上で戦ってるヤツら、その先生を捜しに来たんだよ」
「……答えると思うか?」
「あのオバハンじゃねーけど、無間地獄に行くか?」
「バカたれが。この私が無間地獄など……」
「じゃあ、いいや。ちょっと聞いてみるわ」
「?」
 藤谷は自分のスマートフォンを出した。
「この人に聞いてみていいか?」
 電話帳から出したのは、妙観講の大草講頭の携帯番号。
「き、キサマっ!?何故、その電話番号を知ってる!?お前、一末寺の一班長だろう?!」
「俺はただの信徒じゃないんだよ」
 ピッと発信ボタンを押す藤谷。
「……あ、もしもし。大草講頭ですか?どうも、夜分遅くに恐れ入ります。……いえ、実はですね、おたくの講員さんとちょっとトラブルがあったんですけどもね、私としてはどのような対応をしたらよろしいんですかねぇ?」
 サーッと青ざめるバーズ。
「や、やめてっ!本当のこと言うからっ!」
「んー?どうして慌ててるのかなぁ?」
「な、何でも話す!だっ、だから、電話を切ってくれ!頼むっ!」
「……てことはやっぱり、バーズさんは妙観講員だったか」
 電話を切る藤谷。
「で、イリーナ先生はどこだ?ん?」
「…………」
「……もう1回電話するか?あ?」
「ち、地下牢だ。地下牢に石像にして置いてある」
「つまり、魔法か何かでそのようにしているということか?」
「そうだ!そしてその魔法はヤノフ様にしか解けん!」
「なるほど……。それなら、上で稲生君がそのヤノフさんを倒せば解けるってわけだ」
「フン!ヤノフ様を倒すなどと……!」
「その前に俺がお前を倒すけどな」
「なにっ!?」
「もう1度、今の番号に掛けてみるから、自分で確認してみな」
 藤谷はもう1度、『大草講頭』の番号に掛けた。
{「もしもし?」}
「も、もしもし!私です!李哲雄です!さ、先ほどは、も、もも、申し訳ありませんでした!ぜ、全部、正証寺の連中が……!」
「お前、渡辺って……通名だったのかよ!」
{「あの、うちラーメン屋なんですけど?」}
「は……?え?」
「たーっはははははははははっ!実は行き着けのラーメン屋の店長の番号でしたぁ!」
「……!!」
「正体もバレたことだし、後は本当に妙観講にチクるだけだな!」

 ……バタッ!(←泡吹いて失神したバーズ渡辺こと、李哲雄)

「さて、後のことは稲生君達に任せて、俺はセンセを助けに行こう」
 藤谷はスタコラサッサとばかりに、地下牢へ向かう階段に走ったのだった。
コメント (2)
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