[4月22日07:00.天候:雨 旭川市内のビジネスホテル マリアンナ・スカーレット]
25年間の人生が走馬灯のように駆け巡る夢。
10代後半は地獄のような内容だったが。
しかし最後に現れたのは、ユタの笑顔だった。
「……!」
そこで目が覚めた。
「……?……?」
マリアは今一瞬、自分がどこにいるかが分からなかった。
頭と体が重い。
やっとこさ重い頭を動かして右を見ると、そこには師匠のイリーナが寝ていた。
「……へへ……さすがにそれは食べれないよ……」
何か、ご馳走をたらふく食べている夢を見ているようだ。
「くっ……は……!」
マリアは重い体をよじらせて、何とか起き上がった。
まるで地球の引力がメチャクチャになったかのような感覚が襲う。
部屋が薄暗いのはカーテンが閉まっているからなのと、外の天気が悪いからだろう。
時計を見ると、もう朝の7時を過ぎていた。
「師匠……朝ですよ……。起きてください……」
マリアがボーッとする頭を抱えながら、イリーナを揺り動かした。
「……ご馳走いっぱい……お金もいっぱい……こんなに沢山……困っちゃう……」
しかし、相変わらずヘラヘラした顔で寝言を言うイリーナにイラッと来たマリア。
「師匠!」
イリーナの赤いセミロングの髪を引っ張った。
「いい加減起きろ!」
「いででででっ!?……てことは、夢じゃ……なひ……」
「…………」
マリアは目を開けているのに、まるで閉じているかのような闇に襲われ、再び自分が寝ていたベッドに倒れ込んだ。
[同日同時刻 ホテル最上階・大浴場 稲生ユウタ]
最近のビジネスホテルには、温泉を引いて大浴場を設けている所が散見される。
人工温泉でもってそういった施設を設けているホテルがある昨今、天然温泉を引いて、それを公式サイトなどでPRするホテルも見受けられるようになった。
ユタは大浴場の湯船に浸かりながら、
(たまにはこういう朝風呂に浸るのもいいだろう。うちの魔道師さん達、意外と温泉好きだから、後で教えてあげよう)
昨夜、イリーナにも教えてあげたかったのだが、ほろ酔い加減でホテルに戻ったこともあり、そんなヒマは無かった。
それどころか、
『マリア、いい感じに寝てるよー?今のうちにヤッちゃえ、ヤッちゃえ(≧▽≦)! 夜這いプレイだお♪』
などと焚き付ける始末。
何故か一緒に盛り上がっていた“色欲の悪魔”アスモデウスがいたような気がするが、気のせいだったということにしておく。
『あなたは本当に師匠ですか!』
と、ツッコんでおいたが。
「しっかし……」
湯舟から窓越しに外が見えるのだが、今日も天気は悪いようだ。
(今日、マリアさんが目を覚ましたら、色々歩きたかったのになぁ……。残念だ)
ユタは湯舟から出ると、軽くシャワーで流して、それから脱衣所に出た。
昨日の夜だが藤谷からメールがあって、例の航空チケットをこのホテルに送ってくれたらしい。
昨夜の今日だから、今日の午後にでも着くか。それとも、明日だろうか。
朝風呂を楽しんだ後は、そのまま朝食会場に向かう。
どうせイリーナもマリアも、まだ起きていないだろうからと……。
[同日09:00.ホテル12F ユタ&イリーナ・レヴィア・ブリジッド]
自分の部屋に戻ろうとすると、そこでイリーナと会った。
「あっ、先生。おはようございます」
「うん、おはよ。……あのね、マリア起きたよ」
「えっ、本当ですか!?」
ユタはパッと顔を明るくした。
「でもまだ具合が悪いみたい」
「やっぱり、魔力が回復していないと?」
「それもあるんだけど、普通に風邪とかそんな所かもね」
「ええっ?」
「熱もあるから、ちょっと薬を調達して来るわ。あの商店街に行けば、ドラッグストアくらいあるでしょ」
「それこそ、病院の方がいいんじゃないですか?」
「魔力が回復すれば、あのくらいの体調不良すぐに治るんだけどね。今からポーリンに頼んだんじゃ時間掛かるし、ふんだくられる結構高いから、ドラッグストアで売ってるヤツでいいと思うよ」
「魔力が回復する見込みはあるんですか?」
「うん。それこそ、あの聖水よ」
「聖水……?ああ!」
「もう目は覚めてるんだから、飲むこともできるでしょ」
「た、確かに……。だったら、僕が買ってきますよ」
「そう?じゃあ、お願いね」
「食事は……できそうに無いですか?」
「そうねぇ……。ユウタ君だったら、風邪引いて熱が出た時、何が食べたいかを考えて、それを買ってきてくれればいいと思う」
「なるほど!」
ユタはイリーナからEdyを借りると、それを持ってエレベーターに乗り込んだ。
しかしアメックスといい、Edyといい、一体イリーナは何枚のカードを持っているのだろうと思う。
1つ言えることは、それのおかげで現金をあまり持ち歩いていないということだ。
昨夜のジンギスカン鍋も、イリーナがカードで支払っていた。
「ん?先生?」
イリーナも一緒にエレベーターに乗り込んだ。
「ああ。今日と明日は多分、私宛てに来訪者が何人か来ると思うの。マリアはあの調子だから部屋には入れないし、ロビーで待つことにするわ」
「そうなんですか」
「マリアは人形達が見てくれてるから大丈夫よ」
魔力はイリーナがカンパした。
それで人間形態になったミク人形とハク人形が、付きっ切りで看病することになった。
(……てことは、僕はまた部屋にすら入れてもらえない、か……)
ユタは苦笑した。
ロビーに下りてフロントに向かい、そこで近隣のドラッグストアーとスーパーの場所を聞いた。
コンビニの場所は把握していたが、そこよりもスーパーの方がいいと思ったのだ。
ついでに傘を借りて、ユタは何度目かの市街地に繰り出した。
雨がざんざか降っているわけだから、さすがの北海道にも春が訪れたと見るべきだろう。
気候だけなら、まるでアルカディアシティにいるかのような雰囲気だった。
そういえばアルカディアシティも札幌や旭川のように、碁盤の目に街が作られている。
そこを縦横無尽に路面電車が走り、地下鉄も走行している。
まっすぐ走っていると思ったら、急なカーブを曲がったりしているのは碁盤の目を走る地下鉄ならではだった。
昔はここも路面電車が走っていただろうに、今はその名前を冠しただけのバスが通りを走っている。
この町を離れるまで、あと2日。
25年間の人生が走馬灯のように駆け巡る夢。
10代後半は地獄のような内容だったが。
しかし最後に現れたのは、ユタの笑顔だった。
「……!」
そこで目が覚めた。
「……?……?」
マリアは今一瞬、自分がどこにいるかが分からなかった。
頭と体が重い。
やっとこさ重い頭を動かして右を見ると、そこには師匠のイリーナが寝ていた。
「……へへ……さすがにそれは食べれないよ……」
何か、ご馳走をたらふく食べている夢を見ているようだ。
「くっ……は……!」
マリアは重い体をよじらせて、何とか起き上がった。
まるで地球の引力がメチャクチャになったかのような感覚が襲う。
部屋が薄暗いのはカーテンが閉まっているからなのと、外の天気が悪いからだろう。
時計を見ると、もう朝の7時を過ぎていた。
「師匠……朝ですよ……。起きてください……」
マリアがボーッとする頭を抱えながら、イリーナを揺り動かした。
「……ご馳走いっぱい……お金もいっぱい……こんなに沢山……困っちゃう……」
しかし、相変わらずヘラヘラした顔で寝言を言うイリーナにイラッと来たマリア。
「師匠!」
イリーナの赤いセミロングの髪を引っ張った。
「いい加減起きろ!」
「いででででっ!?……てことは、夢じゃ……なひ……」
「…………」
マリアは目を開けているのに、まるで閉じているかのような闇に襲われ、再び自分が寝ていたベッドに倒れ込んだ。
[同日同時刻 ホテル最上階・大浴場 稲生ユウタ]
最近のビジネスホテルには、温泉を引いて大浴場を設けている所が散見される。
人工温泉でもってそういった施設を設けているホテルがある昨今、天然温泉を引いて、それを公式サイトなどでPRするホテルも見受けられるようになった。
ユタは大浴場の湯船に浸かりながら、
(たまにはこういう朝風呂に浸るのもいいだろう。うちの魔道師さん達、意外と温泉好きだから、後で教えてあげよう)
昨夜、イリーナにも教えてあげたかったのだが、ほろ酔い加減でホテルに戻ったこともあり、そんなヒマは無かった。
それどころか、
『マリア、いい感じに寝てるよー?今のうちにヤッちゃえ、ヤッちゃえ(≧▽≦)! 夜這いプレイだお♪』
などと焚き付ける始末。
何故か一緒に盛り上がっていた“色欲の悪魔”アスモデウスがいたような気がするが、気のせいだったということにしておく。
『あなたは本当に師匠ですか!』
と、ツッコんでおいたが。
「しっかし……」
湯舟から窓越しに外が見えるのだが、今日も天気は悪いようだ。
(今日、マリアさんが目を覚ましたら、色々歩きたかったのになぁ……。残念だ)
ユタは湯舟から出ると、軽くシャワーで流して、それから脱衣所に出た。
昨日の夜だが藤谷からメールがあって、例の航空チケットをこのホテルに送ってくれたらしい。
昨夜の今日だから、今日の午後にでも着くか。それとも、明日だろうか。
朝風呂を楽しんだ後は、そのまま朝食会場に向かう。
どうせイリーナもマリアも、まだ起きていないだろうからと……。
[同日09:00.ホテル12F ユタ&イリーナ・レヴィア・ブリジッド]
自分の部屋に戻ろうとすると、そこでイリーナと会った。
「あっ、先生。おはようございます」
「うん、おはよ。……あのね、マリア起きたよ」
「えっ、本当ですか!?」
ユタはパッと顔を明るくした。
「でもまだ具合が悪いみたい」
「やっぱり、魔力が回復していないと?」
「それもあるんだけど、普通に風邪とかそんな所かもね」
「ええっ?」
「熱もあるから、ちょっと薬を調達して来るわ。あの商店街に行けば、ドラッグストアくらいあるでしょ」
「それこそ、病院の方がいいんじゃないですか?」
「魔力が回復すれば、あのくらいの体調不良すぐに治るんだけどね。今からポーリンに頼んだんじゃ時間掛かるし、
「魔力が回復する見込みはあるんですか?」
「うん。それこそ、あの聖水よ」
「聖水……?ああ!」
「もう目は覚めてるんだから、飲むこともできるでしょ」
「た、確かに……。だったら、僕が買ってきますよ」
「そう?じゃあ、お願いね」
「食事は……できそうに無いですか?」
「そうねぇ……。ユウタ君だったら、風邪引いて熱が出た時、何が食べたいかを考えて、それを買ってきてくれればいいと思う」
「なるほど!」
ユタはイリーナからEdyを借りると、それを持ってエレベーターに乗り込んだ。
しかしアメックスといい、Edyといい、一体イリーナは何枚のカードを持っているのだろうと思う。
1つ言えることは、それのおかげで現金をあまり持ち歩いていないということだ。
昨夜のジンギスカン鍋も、イリーナがカードで支払っていた。
「ん?先生?」
イリーナも一緒にエレベーターに乗り込んだ。
「ああ。今日と明日は多分、私宛てに来訪者が何人か来ると思うの。マリアはあの調子だから部屋には入れないし、ロビーで待つことにするわ」
「そうなんですか」
「マリアは人形達が見てくれてるから大丈夫よ」
魔力はイリーナがカンパした。
それで人間形態になったミク人形とハク人形が、付きっ切りで看病することになった。
(……てことは、僕はまた部屋にすら入れてもらえない、か……)
ユタは苦笑した。
ロビーに下りてフロントに向かい、そこで近隣のドラッグストアーとスーパーの場所を聞いた。
コンビニの場所は把握していたが、そこよりもスーパーの方がいいと思ったのだ。
ついでに傘を借りて、ユタは何度目かの市街地に繰り出した。
雨がざんざか降っているわけだから、さすがの北海道にも春が訪れたと見るべきだろう。
気候だけなら、まるでアルカディアシティにいるかのような雰囲気だった。
そういえばアルカディアシティも札幌や旭川のように、碁盤の目に街が作られている。
そこを縦横無尽に路面電車が走り、地下鉄も走行している。
まっすぐ走っていると思ったら、急なカーブを曲がったりしているのは碁盤の目を走る地下鉄ならではだった。
昔はここも路面電車が走っていただろうに、今はその名前を冠しただけのバスが通りを走っている。
この町を離れるまで、あと2日。