報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「鏡音リン・レン復活」

2015-04-03 18:22:14 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月1日10:00.埼玉県さいたま市西区 デイライト・コーポレーション埼玉研究所 井辺翔太、鏡音リン・レン、シンディ]

「お迎えに上がりました」
「!」
 鏡音リンと鏡音レンの修理が終わり、引き取りに来た井辺。
 本当は敷島が行くはずだったが、急用で来れなくなり、代わりに井辺が車で迎えに来た。
 リンとレンは威圧感のある男(この姉弟にはそう見える)に警戒し、スキャンした。
「なにスキャンしてるの。プロデューサーはちゃんとした人間よ」
 シンディが護衛役として付き添っているが、右手を腰にやりながら姉弟の反応に呆れた。
「リンに乱暴したヤツ!」
「えっ?」
 レンが睨みつけたので、井辺は意外な顔をした。
「ちょっと。あれはリンが暴走したから、プロデューサーが捕まえただけのことでしょう。人聞きの悪いこと言わないの」
「でも……」
「すみません。もうすぐ出発の時間ですので……」
 井辺は腕時計を見ながら言った。
「時間が圧してるんだから、早くついてきな」
 2人の姉弟は井辺と距離を取りながら、しかし後ろからシンディの無言の圧力を受けながら、研究所の地下駐車場に向かった。

 車は濃いスモークの貼られたミニバン。
 リアシートに姉弟が座り、助手席にシンディが座る形だ。
 研究所を出ると、待ち構えていた報道陣が一斉にフラッシュを焚いた。
 恐らく週刊誌には、『鏡音リン・レン復活へ』とか書かれるだろう。
 惜しむらくは、未だこの姉弟達を傷つけた犯人が捕まっていないことだ。
「まずは一旦、事務所に戻ります。その後、都内のホテルで復帰の記者会見を行いますので」
 ハンドルを握りながら井辺がルームミラー越しに行った。
 だが、まだ警戒心を解いていない姉弟は無言のまま。
「分かったら、『はい』は?」
 シンディが後ろを振り向いて促した。
「……はい」
「……はい」
「この人は確かにメインじゃないけど、忙しい社長に代わって、あなた達のプロデューサー業務を行うこともあるんだからね。ちゃんと立場を弁えな」
 シンディが言うが、どうも反応が悪い。
「返事!」
「……はい」
「……はい」
「プロデューサー、まだ電源自体再起動したばかりで、ソフトが上手く起動していないみたい。気を悪くしないでね」
「いえ、大丈夫です」

[同日12:00.東京都墨田区菊川 敷島エージェンシー 井辺他もろもろ]

「ただいまぁ!」
 車の中では陰鬱で全く喋らない鏡音姉弟だったが、車を降りると、一転してコロッと明るい調子になった。
 事務所の前でもマスコミが待ち構えていたが、笑顔で手を振るなど余裕である。
「リン、良かったね!」
「レン、もう大丈夫なのか?」
 事務所の中では、他のボーカロイド達が歓喜で出迎えた。
「お疲れ様です。プロデューサーさん」
「お疲れ様です」
 奥の部屋に行くと、結月ゆかりが笑顔で出迎えた。
 氷の入った袋で、頭や体を冷やしている。
「レッスンは順調ですか?」
 井辺が聞くと、
「はい!ミク先輩がダンスを教えてくれてますから!」
「そうですか。来週、ライブが始まります。それまで、ダンスを仕上げてください」
「はい!頑張ります!」
「あの、プロデューサー」
 そこへLilyがやってきた。
「何ですか?」
「ミクさんのバックダンスを務めるのはいいんだけど……」
「ええ」
「これって私達、歌は歌えないよね?」
「コーラスの部分もありますから、そこは初音さんと合わせてください」
「そうじゃなくて、私達、ボーカロイドなんだから、本来は歌を歌うのが使命だから。その仕事はまだ無いの?」
「……企画検討中です」
「どこかで聞いたセリフだね」
 Lilyは眉を潜めた。
「ライブのポスターに、私達は写ってないし……」
「まあ、バックダンサーは基本的に写らないでしょうね」
 井辺は、さも当然であるかのように答えた。
「一応、ここに名前は載せてもらっています。社長とライブ主催者側に頼んで、何か了承を得ました」
「ははは(笑)!小さいですねぇ!」
 未夢が笑いながら言った。
「でも、名前が載るだけでも嬉しいですよ」
「はい」
 ボーカロイドとしての活動が初めての結月ゆかりと未夢は、そう思った。
 だが、元々活動していたLilyは納得の行かない所があるようだ。
「ボーカロイドのトップアイドルである初音さんのライブに、バックダンサーとして出られるのです。これは滅多に無いチャンスですよ」
「そうですよね!」
「ライブではMCも入りますから、そこで初音さんにはあなた達の紹介をして頂こうと思っています」
「えっ?」
「初音さんの紹介ですから、大きく注目されると思います」
「おおー!」
「未夢さん、Lilyさん、頑張りましょうね!」
「はい!」
「……はい」
 結月ゆかりと未夢はテンションが高かったが、Lilyは低かった。
「どうしました?」
「いえ、何でも……。ちょっと、充電してきます」
「あ、はい」
 そこへ一海がやってきた。
「プロデューサーさん、お昼ご飯食べちゃってください。午後からリンちゃんとレン君の記者会見に立ち会うんですよね?」
 一海が手作りのお握りを作り、お茶を入れて来た。
「あ、はい、そうです。ありがとうございます」
「社長はお仕事の他に、奥様の出産にも備えないと行けないですから大変ですよね」
「ええ。私が頑張らなければなりません。とても、世界一周旅行は先の話になりそうです」
「ルカさんが海外レコーディングに行ってたりしますから、ついていけば可能だと思いますよ」
「いえ。バックパッカー的な旅行がしたいのです」
 井辺はそう言いながら、自分の机の上にお握りとお茶を置くと、ささやかな昼食を取り始めた。
「こら!バッテリーの無駄になるから、出発までおとなしくしときな!」
 MEIKOに注意される鏡音リン・レン。
 ボールを持って事務所の外に出ようとしていたらしい。
「MEIKO。あのコ達、アタシが見てるから、早く仕事に行きな」
 と、シンディ。
「悪いね。じゃあ、グラビアの撮影に行ってくるから」
「行ってらっしゃい」
「グラビア撮影の仕事でしたら、シンディさんも勤まるでしょうに、実に残念です」
 井辺が言うと、
「何度も言ってるけど、それは用途外だからムリなのよー」

 用途外の事は一切やらない、できないところが、やはり人間ではないことを物語っていた。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 作者による幕間劇?

2015-04-03 15:25:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
 前回の記事のコメント欄における、私とANPさんのやり取りの意味が分からない方は、ANPさんのアルファベットを除いた書き込み全てをコピペして検索してみてください。
 ニコニコ大百科かピクシブ百科事典にアクセスして頂ければ、分かるはずです。
 ……てか、私も検索するまで分からなかったというorz
 もしかして、『そんなことよりプロテインだ』も、そうなのかな?

 エイプリルフールも過ぎて、今年は少し冗談を言う余裕ができて何よりであります。
 ユーモアのある人達が増えて良かったと思います。
 ……でなかったら、多分ここで小説書くことも許されなかったと思う。
 
 さて、今後の展開の予定ですが……。

 中ボスが登場。但し、人数は不明。でも、1人はP嬢をモデルにしようかとぉ……w
 武闘派も噛ませ犬役で登場して頂きましょうかね?おっと……。
 ANPさんとポテンヒットさんが友情出演?……御本人様方からのクレームにより頓挫。
 でも序章に登場した藤谷春人が、最終ステージに登場。重要な役割を果たす。
 中ボスに関連して、爆サイで小林よしのり先生にP嬢を書かせたら凄いことになるという書き込みを見て、よし、ならば私がやってやろうと思った。
 中ボスと言っても、そのステージの序盤か中盤に登場するだけで、終盤にも登場する大ボスを兼ねていることが殆ど。

 上記の予定は、半分以上が実現不可と思われます。
 是非やってみたいなぁという願望なだけでね。
 私の拙い文才では、とても全部は無理かと。

 でも、マリアの人間時代の家族構成や家庭の状況、どうして狙われているのかが明らかになると思います。

 信心の話はほとんど出ないけど許してね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「マリアの因縁」

2015-04-03 02:27:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[現地時間4月5日12:30.アルカディアシティ郊外・某宿屋 稲生ユウタ&マリアンナ・スカーレット]

 駅から馬車で揺られること20分。
 周辺は長閑な風景が広がり、とても首都の一部には見えない。
 雲なんだか霧なんだか、とにかくもやの中から突如として現れた建物の前で馬車は止まった。
「ここですか」
「そうだ」
 2人の見習魔道師達は馬車を降りて、宿屋の中に入っていった。

 まるで富裕層の家屋敷のような造りの宿屋。
 しかし、入ってみるとそこはもぬけの殻だった。
 エントランスやフロントに誰もいないどころか、そもそも人の気配がしない。
「すいませーん!誰かいますかー!?」
 ユタは大声を上げたが、それに応える者はいなかった。
「これは一体、どういうことでしょうか?」
「分からない。前に師匠に連れて来てもらった時は、宿屋の主人がいたけど……」
「僕、マスターを捜してみます」
「お願い。私は師匠の部屋に行って来るから。この鍵は部屋の鍵だからね」
「あ、そうなんですか。じゃあ、また後で」
「ああ」
 マリアは2階への階段を上って行った。
 ユタは……

 A:食堂へ行ってみる。
 B:フロントの奥の部屋に行ってみる。
 C:マリアの後ろについて、2階へ行ってみる。
 D:1階客室を捜す。

「うーん……ここはお約束のCでw」
 マリアの後ろをついて、階段を上ろうとする。
 視線を上に向けると、意外と短いマリアのスカートがヒラヒラと……。
「こら!私のスカートの中覗くヒマがあったら、手掛かりを探せ!」
 ……怒られてしまった。

「じゃあ……Bだ」
 カウンターの横にある『STAFF ONLY』のドアを開けようとしたが、
「鍵が掛かっている」
 開かなかった。
 木製のドアなので、ぶち破ろうと思えばできなくもないが……。
「そこまですることもないか。他を探してみよう」
 今度はDの1階客室を探してみることにしたが、これまた全ての部屋に鍵が掛かっていた。
「どこかに鍵が無いだろうか。やっぱり、マスターが持っているんだろう……」
 最後の望みを掛け、エントランスホールからアクセスできる食堂に行くことにした。
 観音開きのドアは閉っていたが、こちらは幸い鍵が掛かっていることはなかった。
 ドアを開けると、目の前に現れたのは大きなテーブル。
 テーブルクロスが引かれ、上には燭台がいくつか置かれている。
「!?」
 ふと厨房の方に人の気配を感じて、そちらの方を向くと、配膳台の前に人がいた。
 ユタの方に背中を向けている。
 帽子にコート、ステッキを持っていることから、男性らしい。
「あの、すいません。ここのマスターですか?それとも、宿泊客……?」
 ユタに声を掛けられた男性は、後ろを振り向いた。
 一瞬だけでは具体的な歳は分からなかったが、若い感じはしなかった。
 少なくとも、還暦は過ぎているだろう。
「……マスターは死んだよ!」
「は?!」
 男性は不気味な笑みを浮かべて、ユタに答えた。
「それより、やっとあの娘が帰ってきたなぁ!もうすぐだ!もうすぐで私の願いが叶う!」
「な、何のことですか?あなたは一体……!?」
「あの娘……マリアンナに伝えてくれ。『どこに逃げても無駄だ』と……」
「マリアさんを知ってるんですか!?あなたは一体誰なんですか!?」
 しかし壮年男性はユタの質問には答えず、高笑いにも似た笑いをしながら、足早に食堂を出て言った。
「ま、待ってください!話はまだ終わ……いない!?」
 ドアを閉められ、すぐに開けたのだが、男性は煙のように消えてしまっていた。
「一体、何だって言うんだ……?」
 その時、ユタのスマホが鳴った。
「うわっ……と!マリアさんか。電波があるのか?それとも魔法?……まあいいや。もしもし?」
{「ユウタ、今どこ?」}
「1階の食堂です。……あの!そこで、変な人と遭遇して……!」}
「変な人?」
 ユタはさっきの出来事を話した。
{「そう……」}
「マリアさんの知っている人ですか?」
{「分からない。……けど、多分知らないと思う」}
「?」
{「それより2階の廊下で、別の鍵を見つけたわ。どこかで使えるかも」}
「ええ。何か、1階は殆どの部屋の鍵が掛かってるんです。その鍵だといいんですが……」
{「2階に来てくれる?階段上がってすぐだから」}
「分かりました。すぐ行きます」
 ユタは電話を切った。

 吹き抜けの階段を上がると、マリアが待ち構えていた。
「この鍵だね」

 

「ありがとうございます。そっちに、さっきのオジさんが行きませんでしたか?」
「いや、来ていない。ここではどうやら警告をしに来ただけみたいだ」
「警告?」
「いや……。予告、と言った方がいいか……」
「マリアさんは、何か心当りがあるんですか?」
「具体的には無い。ただ、やっぱり私の命を狙う者達がいるのは事実みたいだね」
「それは一体……?」
「悪いけど、ユウタは先に私の屋敷に帰った方がいいかもしれない。狙われてるのは私だけみたいだから、しばらく私から離れていれば、ユウタは巻き込まれずに済む」
「……そうとは限りませんよ」
「えっ?」
「前に威吹と一緒にいた時、こんな話を聞いたんです。『ボクから離れないでくれ』と。つまり、逆ですね。『敵が卑怯な手を使うことも辞さないヤツなら、例え直接関係無くても、人質にするなりして、僕の動きを封じようとするだろう』って」
「妖狐は攻撃力があるから……」
「でも、マリアさんが危険に晒されているのに、僕だけのこのこ帰るわけには行きませんよ」
「……分かった。確かにここから1人で帰るにしても、少し危険かもしれないな」
「また、13番街で戦闘になるでしょうからね。この鍵で開く場所があったら、探索してみますよ」
「じゃあ、これを持って行って」
 マリアはユタに瓶を渡した。
 それは500mlのペットボトルくらいの大きさで、蓋の上に丸いレンズがついていた。
「これは?」
「師匠の部屋にあった。何でも、この瓶に水を入れると、魔力で『聖水』に変わるらしい。魔法の結界を解いたり、妖怪などの魔の者に振り掛ければ追い払うこともできる」
「いいんですか?」
「2つあったから」
「おっ……。このレンズは何でしょう?」
「暗い所では光ったから、ライトの代わりになるかもだね」
「そんなもんですか。ま、とにかくこの鍵で開く所を探してきますから、マリアさんは休んでてください」
「ありがとう。そこの……師匠の部屋にいる。もし危険だと思ったら、すぐに戻って来て」
「分かりました」

 ユタはマリアからもらった魔法の瓶と鍵を手に、再び1階へと下りて行った。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする