[12月10日10:00.東京都新宿区西新宿 JARA本部 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ]
「だいぶ、警察のガサ入れで資料がごっそり持って行かれたみたいだな……。これでまだ明かされていない謎が明らかになるのか?」
するとアリスはニヤッと笑った。
「ノー・プロブレム。ドクター十条の資料は既にコピー済み。ポリスは原本だけ持って行けば満足でしょう?」
「だから!いつそれをやったんだ!」
極秘資料の無断コピーは規則違反である。
本来なら懲罰モノだが……。
「本部がゴタついて、それどころじゃない。今ならやりたい放題だ」
セキュリティロボットが2機、特別資料室の前に立っていて、何人も通さない空気を出していたが……。
「そこどきなさい。バラバラにするわよ」
「そこどきなさい。バラバラにするわよ」
アリスから電動ドライバー、シンディからショットガンを向けられたセキュリティロボット達はフリーズしてしまった。
(こえー、こえー)
敷島は苦笑しながら、1番最後に特別資料室の中に入った。
「つったって、ここにも警察のガサ入れはあったんだろ?コピーなんて……」
「HAHAHAHA.ダーイジョーブ!バックドアは既に構築済み。どの端末からでも侵入可能なわけ」
「だったら、わざわざここに来る必要あったのか!?」
敷島はズッコケそうになった。
アリスは持っていたセキュリティ・トークンを手近なPCに差し込み、キーボードを叩き始めた。
「なるほど。そういうことだったのね」
「分かったのか?ウィリーの動き」
「ええ。じー様はシンディに殺されていなかった」
「はあ!?訳の分からんこと言ってる場合か!俺は間違いなくこの目で前期型のシンディが狂って、ウィリーを何度もナイフで刺して殺したのを見たんだぞ?」
前にも述べたと思うが、前期型と後期型(つまり現行型)の見た目はそんなに変わらない。
後期型の方が若干、真ん中分けされた髪のボリュームがある……くらいか。
「最後まで見た?」
「見た……よ。その後でエミリーがやってきて、シンディを倒してくれたんだ。もうその時にはグロ死体になってて、とても見られたもんじゃなかったけどな。しばらく肉類が食えなかったよ」
「それよ」
「は?」
「タカオは見ていたようで見てなかった。そりゃあ、死体なんて好き好んで見るものじゃないからね」
「当然だろう」
「タカオの前にいたのは、じー様のコピーロボットだったの」
「はあ!?だって、シンディが殺した時、あんなに血を噴き出したんだぞ!俺も返り血を浴びてしまったくらいだ。鉄の錆びたような匂い、赤黒い液体は血液に間違いない!」
「鉄の錆びたような匂いを発する赤い液体って、人工的に作るのは簡単だからね」
「機械が剥き出しにならなかったぞ!?」
「そう。もし仮にあの時、シンディが銃を使ったなら、モロにネタバレしたでしょうね。だけど、そうではなかった。前期型のシンディは、銃もそうだけど、よくナイフも使っていたからね。ドクター十条に、見事に裏をかかれたわけよ」
「マジかよ。で、モノホンのウィリーはどこにいたんだ?」
「“クイーン・ラケル”よ」
「ええっ!?だってもう5〜6年は前の話だぞ!?」
「そう。じー様はそこで自らサイボーグに体を改造して、ずっと機会を伺っていたのよ。だけど、話が違ったのね。あのビルにタカオ達を入れたら、そこで一気に爆破する作戦という風に十条はじー様に説明していたんだけど、本当はじー様もろとも証拠隠滅するつもりだったみたい。あの後タカオに近づいて、人生相談に乗ったりしていたのも、別にタカオの面倒を見てあげるのではなく、どこまで真相を知っているか探るつもりだったみたいね」
「くっそ〜……!」
“クイーン・ラケル”に暫く潜んでいたウィリーだったが、岩手県で比較的強い地震が多発。
廃ホテルだった建物は崩落の一途を辿り、ついに東日本大震災でウィリーは完全に閉じ込められることになった。
十条的には東日本大震災で、完全にウィリーが死んだと思っていたらしい。
だから、そのウィリーから電話が掛かって来た時には驚いたようだ。
だが、置かれている彼の状況からして、そんなに脅威とは思わなかったようだ。
「アタシがまさか現地に行くとは思わなかっただろうから、相当慌てたみたいね」
「まさか、“クイーン・ラケル”の場所がばれるとは思わなかったか。世間の狭さに感謝だ、マジで」
「それを利用したタカオもタカオだけどね」
「まあな」
“クイーン・ラケル”は完全に崩壊。
そこがウィリーの墓場となった。
[同日12:00.JR新宿駅南口付近 上記メンバー]
「シンディの腕、簡単に直るものなんだな?」
「普通に直そうとすると、もっと掛かるよ。アタシって天才でしょ?」
「はいはい。あとは、キールをどのタイミングで復活させるかだぞ?まあ、平賀先生が色々とやってくれるみたいだ。良かったな」
「完成は来年になりそうだけどね。それより大丈夫なの?せっかく復活させても、借り手や買い手がいないとダメだよ?」
「心配するな。ちゃんと販路は鋭意開拓中だ。財団から金だけ早くもらおう」
「それって、もしかすると財団が解散するかもしれないってこと?」
「ハハハ……。そうなる前に、補助金だけ先にもらおうなんて甘い考えだ」
「タカオも悪いヤツだね」
「まあまあ。この辺で飯にして、あとは仙台に帰ろう。ボカロ達の仕事も忙しくなるしな」
「そうだね」
「だいぶ、警察のガサ入れで資料がごっそり持って行かれたみたいだな……。これでまだ明かされていない謎が明らかになるのか?」
するとアリスはニヤッと笑った。
「ノー・プロブレム。ドクター十条の資料は既にコピー済み。ポリスは原本だけ持って行けば満足でしょう?」
「だから!いつそれをやったんだ!」
極秘資料の無断コピーは規則違反である。
本来なら懲罰モノだが……。
「本部がゴタついて、それどころじゃない。今ならやりたい放題だ」
セキュリティロボットが2機、特別資料室の前に立っていて、何人も通さない空気を出していたが……。
「そこどきなさい。バラバラにするわよ」
「そこどきなさい。バラバラにするわよ」
アリスから電動ドライバー、シンディからショットガンを向けられたセキュリティロボット達はフリーズしてしまった。
(こえー、こえー)
敷島は苦笑しながら、1番最後に特別資料室の中に入った。
「つったって、ここにも警察のガサ入れはあったんだろ?コピーなんて……」
「HAHAHAHA.ダーイジョーブ!バックドアは既に構築済み。どの端末からでも侵入可能なわけ」
「だったら、わざわざここに来る必要あったのか!?」
敷島はズッコケそうになった。
アリスは持っていたセキュリティ・トークンを手近なPCに差し込み、キーボードを叩き始めた。
「なるほど。そういうことだったのね」
「分かったのか?ウィリーの動き」
「ええ。じー様はシンディに殺されていなかった」
「はあ!?訳の分からんこと言ってる場合か!俺は間違いなくこの目で前期型のシンディが狂って、ウィリーを何度もナイフで刺して殺したのを見たんだぞ?」
前にも述べたと思うが、前期型と後期型(つまり現行型)の見た目はそんなに変わらない。
後期型の方が若干、真ん中分けされた髪のボリュームがある……くらいか。
「最後まで見た?」
「見た……よ。その後でエミリーがやってきて、シンディを倒してくれたんだ。もうその時にはグロ死体になってて、とても見られたもんじゃなかったけどな。しばらく肉類が食えなかったよ」
「それよ」
「は?」
「タカオは見ていたようで見てなかった。そりゃあ、死体なんて好き好んで見るものじゃないからね」
「当然だろう」
「タカオの前にいたのは、じー様のコピーロボットだったの」
「はあ!?だって、シンディが殺した時、あんなに血を噴き出したんだぞ!俺も返り血を浴びてしまったくらいだ。鉄の錆びたような匂い、赤黒い液体は血液に間違いない!」
「鉄の錆びたような匂いを発する赤い液体って、人工的に作るのは簡単だからね」
「機械が剥き出しにならなかったぞ!?」
「そう。もし仮にあの時、シンディが銃を使ったなら、モロにネタバレしたでしょうね。だけど、そうではなかった。前期型のシンディは、銃もそうだけど、よくナイフも使っていたからね。ドクター十条に、見事に裏をかかれたわけよ」
「マジかよ。で、モノホンのウィリーはどこにいたんだ?」
「“クイーン・ラケル”よ」
「ええっ!?だってもう5〜6年は前の話だぞ!?」
「そう。じー様はそこで自らサイボーグに体を改造して、ずっと機会を伺っていたのよ。だけど、話が違ったのね。あのビルにタカオ達を入れたら、そこで一気に爆破する作戦という風に十条はじー様に説明していたんだけど、本当はじー様もろとも証拠隠滅するつもりだったみたい。あの後タカオに近づいて、人生相談に乗ったりしていたのも、別にタカオの面倒を見てあげるのではなく、どこまで真相を知っているか探るつもりだったみたいね」
「くっそ〜……!」
“クイーン・ラケル”に暫く潜んでいたウィリーだったが、岩手県で比較的強い地震が多発。
廃ホテルだった建物は崩落の一途を辿り、ついに東日本大震災でウィリーは完全に閉じ込められることになった。
十条的には東日本大震災で、完全にウィリーが死んだと思っていたらしい。
だから、そのウィリーから電話が掛かって来た時には驚いたようだ。
だが、置かれている彼の状況からして、そんなに脅威とは思わなかったようだ。
「アタシがまさか現地に行くとは思わなかっただろうから、相当慌てたみたいね」
「まさか、“クイーン・ラケル”の場所がばれるとは思わなかったか。世間の狭さに感謝だ、マジで」
「それを利用したタカオもタカオだけどね」
「まあな」
“クイーン・ラケル”は完全に崩壊。
そこがウィリーの墓場となった。
[同日12:00.JR新宿駅南口付近 上記メンバー]
「シンディの腕、簡単に直るものなんだな?」
「普通に直そうとすると、もっと掛かるよ。アタシって天才でしょ?」
「はいはい。あとは、キールをどのタイミングで復活させるかだぞ?まあ、平賀先生が色々とやってくれるみたいだ。良かったな」
「完成は来年になりそうだけどね。それより大丈夫なの?せっかく復活させても、借り手や買い手がいないとダメだよ?」
「心配するな。ちゃんと販路は鋭意開拓中だ。財団から金だけ早くもらおう」
「それって、もしかすると財団が解散するかもしれないってこと?」
「ハハハ……。そうなる前に、補助金だけ先にもらおうなんて甘い考えだ」
「タカオも悪いヤツだね」
「まあまあ。この辺で飯にして、あとは仙台に帰ろう。ボカロ達の仕事も忙しくなるしな」
「そうだね」