報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「決闘後」

2020-11-04 11:27:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月31日12:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター・本館1F食堂]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ようやく決闘が終わったところだが、その後始末は大変だった。
 決闘後に乱入してきたリサ・トレヴァー『11番』の死体は、直ちに研究施設に運ばれた。

 高橋:「いきなり殺すんじゃなく、『0番』とか『1番』の居場所吐かせてから殺した方が良かったんじゃねーのか?」

 と、高橋が突っ込みを入れていたが、それに対して首を横に振ったのは、善場主任だけでなく、うちのリサもだった。

 リサ:「あのバカ、聞く耳なんて持たないよ。私みたいに、誰かに命令されたらそれに従うだけ」

 うちのリサにとって、その『誰か』というのは私のことである。

 高橋:「お前の方が強いのにか?」
 リサ:「うん」

 愛原:「問題なのは、『11番』に命令したのは誰かってことだな」

 私達は体育館から本館の食堂に移動し、そこで昼食を食べていた。
 決闘に次ぐ決闘で疲労したリサは、1番昼食を食べていた。
 昼食に出たのはチキンカツ定食だったが、リサはそれをペロッと平らげた。

 高橋:「それを吐かせてから殺した方が良かったと思ったんですが、ダメですか」
 愛原:「ダメらしいね」
 高野:「先生は誰が考えられますか?」
 愛原:「五十嵐社長。いや、今は元・社長か」
 高野:「未だに入院してるんですね」
 愛原:「栗原蓮華さんの肩とは違い、全治3ヶ月の重傷だからな。でも、そんな状態じゃ命令できないか」

 リサによると、BOWへの命令は命令者が直接口頭で命令していたらしい。
 実験で口頭ではなく、文書での命令も行われていたという。
 リサ・トレヴァーの全員が元人間であることから、言葉や文字の意味を理解できる知能はある。

 高橋:「『0番』か『1番』とっ捕まえて吐かせるのがベストってことですか」
 愛原:「そういうことになるな。まあ、決闘では勝負が付いたし、今度は霧生市の調査に同行することになるだろうから、それで分かるだろう」

 私は食後のお茶をズズズと啜った。

 リサ:「先生、あのコ達どうなる?レンゲさんとアイリ」
 愛原:「ああ、そうだな……」

 栗原蓮華は研究施設に併設された医療施設に連れて行かれたし、愛里は別室か。
 可愛そうだが、例えまだ中学生でも逮捕歴が付いたら、学校は退学だろうな。
 刺した相手はリサだったから、殺人未遂罪は適用されまい。
 今のリサは『人』ではないから。
 あの黒服(国家公務員)も、銃刀法違反の現行犯と叫んでいた。
 もし刺したのが人間だったら、殺人未遂の現行犯とか言っていただろう。

 愛原:「リサは被害届出す?」
 リサ:「被害届?」
 愛原:「背中を刺されたことに対する被害届」
 リサ:「うーん……。別にいい」
 愛原:「そうか」
 リサ:「もう背中の傷は治ったし。私はあの程度では死なない」
 愛原:「だよな」

 あれで首を刎ねられたらマズいが、背中から刺される分には大丈夫ということ。
 特に愛里はズブの素人らしい。

 愛原:「おっ、善場主任からメールだ」

 スマホに到着したメール。

 愛原:「昼食が終わったら、別館の会議室に来てくれってさ」
 高野:「今後のことでしょうかね」
 愛原:「だろうな」

[同日13:00.天候:晴 同センター別館1F会議室]

 私達は昼食を終えると、別館へ向かった。
 借りたゲストカードはカードキーになっていて、それまでは本館の一部と体育館でしかアクセス権限が無かったが、本館受付でそれを別館でも使えるようにしてもらった。

 管理人:「その代わり、体育館へはもう入れないからね。忘れ物は大丈夫?」
 愛原:「ええ、大丈夫です」

 1度本館を出て駐車場を横切り、本館と似たような外観の別館へ移動する。
 そこの入口は本館と違い、自動ドアではなく、手動ドアになっていた。
 で、取っ手の部分にカードキーの読取機がある。
 そこにカードキーを当てると、青いランプが緑色に光った。
 青いランプは『施錠中だが、カードキー読取可』という意味、緑色のランプは『開錠』、赤いランプは『完全施錠(カードキー読取不可)』という意味らしい。
 それでドアが開く。

 愛原:「第一会議室はあっちだ」

 本館よりも薄暗い別館の廊下を進むと、照明の点いている部屋があり、そこが件の会議室だった。

 愛原:「失礼します」
 善場:「皆様、御苦労様です。どうぞ、お掛けになってください」

 私達は空いている席に座った。

 善場:「午前中はお疲れ様でした。今回の件は『2番』のリサの勝利と致します。それを踏まえた上で今後の予定ですが、近日中に霧生市の調査に入ろうと思います」
 愛原:「上から許可が出たんですね?」
 善場:「はい。恐らく『2番』のリサと同等またはそれ以上に強化された『1番』との遭遇が予想されますので、BSAAや“青いアンブレラ”の出動も要請しております」

 一般人である私達が同行を要請されるのは、『1番』の捜索に『2番』のリサが欠かせないからである。
 そのリサに命令できるのは私、そして高橋は私の助手だからだ。

 愛原:「今の霧生市の状況はどうですか?」
 善場:「さすがに今現在はBOWやゾンビなどのクリーチャーは確認できておりません。今回の調査の結果次第においては、政府は霧生市に安全宣言を出して、かつての住民達の帰還を許可する方針です」
 愛原:「さすがに原発より早いか」
 善場:「はい」
 愛原:「うちのリサ以外のリサ・トレヴァー達は、誰が統率しているのでしょう?さっきの良いタイミングでの乱入といい、誰かが命令してやらせてるような気がしてなりません」
 善場:「そうですね。それは目下のところ調査中です」
 愛原:「五十嵐元社長が怪しいが、未だに入院中でしょう?」
 善場:「はい。仙台市内の病院に親子共々入院中です」

 善場主任の組織がこの親子を監視しているみたいだから、例え入院中でも、何か不審な動きをしたらすぐに分かるはずだ。

 リサ:「あのコ達はどうなるの?レンゲとアイリ」
 善場:「栗原蓮華さんは今治療中です。軽傷ですので、治療が終わり次第、帰れますよ」
 リサ:「アイリは?私、アイリのこと、怒ってないよ」
 善場:「法律は法律ですからねぇ……」

 善場主任、何か考えるてるな。
 私は彼女が含み笑いをしたのを見逃さなかった。

 高野:「子供に司法取引を持ち掛ける気ですか」

 高野君もそう思ったらしい。

 善場:「まあ、悪いようにはしませんよ。私にお任せください」

 ここは善場主任の言う通りにするしか無いようだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「決闘... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「帰り道」 »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事