報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「不死身の敷島」

2017-02-27 12:54:01 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月4日20:15.天候:雪 北海道日高地方・廃ペンション]

 敷島は雪原を走っていた。

 敷島:「くそっ!やっぱりテロ・ロボットいやがった!まさか、エミリー達がいないのをいいことに来るとは……!」

 背後からは黒塗りの等身大ロボットが歩いて襲ってくる。
 覆面パトカーは爆発、炎上している。
 恐らく、逃げ遅れた星警部補と矢ヶ崎巡査部長は死んだことだろう。
 『不死身の敷島』はその名を汚すことなく、上手く脱出できていた。

 パパパパパパパン!(ロボットが敷島に向かってマシンガンを発砲)

 敷島:「くそっ!いちいち撃ちまくるな!」

 高身長の人間と同じくらいの高さの2足歩行ロボット。
 バージョン・シリーズではなく、敷島も初めて見るタイプだ。
 見た目は、カッコ良さなど微塵も無い。
 また、バージョン・シリーズの場合はどことなくコミカルな動きをしたりもするのだが、あのロボット達にはそんな愛嬌も無い。
 幸いなのは、走ることはできないらしく、敷島に対しては歩いて襲ってくること。
 それでも旧型のバージョンと比べれば、動きは速い。
 多分、耐久力もあるだろう。
 ただ、表面が鋼鉄で覆われているわけではないようなので、こちらから発砲すれば壊れるのかもしれない。
 敷島はエミリー達が入った別館に飛び込んだ。
 内側からはエミリーの力を持ってしても開かなかったドアが、外側からは開いた。
 外からは、追い掛けてきたロボット達の言葉になっていない怒号とドアをこじ開けようとするのが分かった。

 敷島:「しつこい奴らだ!」

 敷島は暗い館内に入るに当たり、懐中電灯を灯した。
 パトカーから持ち出すことができた唯一の道具である。

 敷島:「ん?」

 その時、敷島は途中に何かが落ちているのに気づいた。
 それはチェーンカッター。

 敷島:「こんなもん、武器にならんだろう」

 だが敷島は、一応持って行くことにした。
 そして、それはすぐに役に立った。
 キッチンに入る手前の場所にある戸棚。
 そこがチェーンで封印されているのが目に入った。

 敷島:「よし」

 敷島はそれを今しがた拾ったカッターで切り落とした。
 中に入っていたのはヒューズ。

 敷島:「これがエミリーが探していた階段のヒューズか。よし」

 敷島はこのヒューズを持って、分電盤のある応接室に向かった。
 応接室に分電盤があるのも不思議な話だが。
 分電盤にヒューズをセットすると、通電ランプが点灯した。
 これでエミリーが断念した階段のスイッチを押すことができるはずだ。
 敷島は2階に上がった。
 すると、確かにエミリーが来た時には消灯していた緑のランプが今度は点灯していた。

 敷島:「よっ」

 赤いボタンを押すと、天井から更に上に上がる階段が下りて来た。
 この別館は3階建てだったのだ。
 敷島はその階段を登った。

 敷島:「エミリー達は地下に行ったみたいだが、俺は上に向かってる。果たして、どっちが地獄なのか……」

 3階は客室らしき部屋がいくつかある。
 やはり、ペンションとして機能していたのか。
 その割には、だいぶ老朽化が進んでいる。
 別館の方は、もっと早くに廃業していたのだろうか。
 敷島は手近な部屋に入ってみた。
 すえた臭いのするベッドが2つあり、机の上のスタンドは点灯している。
 そしてその机の上には、ハンドガンが置いてあった。
 銃弾も置いてある。

 敷島:「あのロボット達に、このハンドガンが効くとは思えんが……。まあ、人間のテロリストには効くだろう」

 敷島はハンドガンを持ち出すことにした。
 しかし、こうしてハンドガンが置いてあるということは、ますますここがテロリスト達のアジトとして使われていることが濃厚となったわけだ。
 敷島が部屋の外に出ようとした時だった。

 敷島:「!!!」

 びっくりしたのは、部屋の電話が鳴ったからだ。
 敷島は恐る恐る電話を取った。

 敷島:「も、もしもし……?」
 アリス:「その声はタカオ?」
 敷島:「アリスか!今どこにいる!?」
 アリス:「分からない。何かの廃屋だと思うけど……。でも廃屋のように見えて、人は住んでるのよ」
 敷島:「それは黄色いジャンパーを着た男じゃないか?」
 アリス:「何で知ってるの!?」
 敷島:「やっぱりそうか。実は俺達も、キミのいる廃屋の中にいるみたいだ。助けに来たんだよ。その廃屋のどの辺にいるか分からないのか?」
 アリス:「……窓は無いわ。そして階段をずっと下りて来たから、多分地下だと思う」
 敷島:「地下か。よし。実はエミリー達が地下に向かった。エミリーと萌だ。俺も今から向かう」
 アリス:「ちょっと待って!パパとは会ったの!?」
 敷島:「パパ!?どういうことだ!?」
 アリス:「パパに見つからないように気をつけて」

 電話が切れた。

 敷島:「お、おい!何だ、パパってのは!?お前のパパか!?」

 だが、電話が切れているので、敷島の問い掛けにアリスは答えなかった。

 敷島:「あの黄色いジャンパーの男が?アリスの親は確か……行方不明……」

[同日20:45.天候:雪 廃ペンション地下階]

 エミリーと萌は水浸しの区画を抜けた。
 ドアの向こうに行くと、個室らしき部屋がいくつも並んでいる。
 だが、どうも収容所のような感じで、ペンションの客室のようには見えなかった。
 廊下には夜間工事などで使うカバー付きのランプが点灯している(いわゆる、スズラン)。
 エミリーはスキャンしながら廊下を進んだ。

 エミリー:「金属反応が……!」

 どの部屋ももぬけの殻らしく、何の反応も無かった。
 だがそのうちの1つだけ、金属反応があった。
 つまり、ロボットかロイドの反応だ。
 エミリーが詳しくスキャンすると、中にいるのは……。

 エミリー:「シンディ!?」

 シンディの反応だった。
 エミリーはドアをドンドン叩いた。

 エミリー:「シンディ、私だ!ここを開けてくれ!」

 だが、中からは応答が無い。
 ドアの上には小窓がある。
 萌が飛んで、その小窓から中を覗いてみた。

 萌:「ベッドがあるね。その上に、シンディが横になってる」
 エミリー:「シンディ、寝るな!起きろーっ!」

 ガンガンとドアを叩いたり蹴ったりしているのだが、マルチタイプを閉じ込めているだけに、ビクともしない。

 萌:「ちょっと待って」

 萌は小窓から体をよじらせて中に入った。
 そして、ドアノブを何やらカチャカチャとやっている。
 カチッという音がして、ドアが開いた。
 萌の手にはキーピックが握られていた。
 武器として使う折り畳み式の薙刀(を模した手術用のメスに近い)とは別に、もう一本持っている棒。
 これがキーピックとして使える代物らしい。

 エミリー:「さすがだな」

 エミリーは中に入って、横たわっている妹機に近づいた。
 スキャンしている限りでは、完全に電源が落ちているわけではないようだ。

 エミリー:「シンディ、大丈夫か?」

 シンディの肩に手を置いて、仰向けにする。
 シンディが目を覚ました。

 シンディ:「姉さん……?姉さん、どうしてここに?」
 エミリー:「お前とアリス博士を助けに来た。お前こそ、どうしてここにいる?アリス博士はどこだ?」
 シンディ:「アリス博士は……分からない。どうして私がここにいるのかも……」
 エミリー:「そうか。取りあえず私が知っているのは、ここは北海道の日高地方。廃業したペンションの地下だが、どうもテロリストのアジトになっているみたいだ。もちろん、それはアリス博士達やお前をさらった連中のことだ。他のDCJの皆さんは、無事に救助されている」
 シンディ:「そうなの。……それより、誰もここに来ることは見られてない!?」
 エミリー:「いや、黄色いジャンパーを着た男とは会っている。会話はしていない。人間かどうかも分からない」
 シンディ:「会ってるの!?あいつは化け物よ!早くここから逃げないと!」
 萌:「お化けなの!?」
 シンディ:「私がここにいるのも、そいつに一発でやられたから」
 萌:「マルチタイプを一撃で倒すんだもんね。確かに化け物だね」
 エミリー:「分かった。実は敷島社長も危ない。確かに、のんびりはしていられない」
 シンディ:「社長が?」
 エミリー:「このペンションから少し離れた所で私達の動きを監視しておられたのだが、そこをテロリスト達に見つかったらしい」
 シンディ:「社長のことだから多分無事だと思うけど……」

 それについてはエミリーも萌も異議なしだった。
 何故か敷島だけは無事であるような気がして仕方が無かった。

 シンディ:「確か、こっちよ」

 シンディが指さしたのは、エミリー達が来た方向とは反対だった。

 エミリー:「そうか」
 シンディ:「! 姉さん、そういえば……!」

 シンディは何か重要な事に気づいたかのような顔をした。

 エミリー:「!?」

 シンディの口から語られるものとは一体?

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