報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサの終業式」

2021-12-24 21:07:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月24日11:30.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校→JR上野駅]

 リサの高校ではこの日、終業式が行われた。
 明日から1月10日まで、冬休みである。

 リサ:「明日から冬休み。あっという間」
 絵恋:「そうだね……」
 リサ:「サイトー、嬉しくないの?」
 絵恋:「だって!年明けまで、リサさんと会えないのよ!?寂しくて仕方無いわよ!」
 リサ:「あー……まあ、家の都合じゃしょうがない」

 リサは背伸びして、自分より身長の高い絵恋の頭を撫でてやった。

 絵恋:「しかも、クリスマスパーティーもできないなんて……」
 リサ:「……うん。まあ、しょうがないね」

 いつもは愛原家と斉藤家合同のクリスマスパーティーが行われていた(但し、緊急事態宣言中を除く)。
 今年は緊急事態宣言が出ていないのだからできそうなものだが、別にオミクロン株を警戒してのことではない。
 斉藤秀樹の不祥事(リサの体内寄生虫を勝手に採取し、新薬開発に使おうとしたことが政府機関にバレた。で、マスコミに公表されて大騒ぎ)により、年末年始は身を隠すように関東脱出を図るらしい。
 一時期は連日、斉藤絵恋の実家にマスコミが押し寄せたことがあった為。
 それだと国家機密レベルのリサのことは?という疑問が湧いて出るが、そこは政府機関も強かなもの。
 ちゃんと、情報操作をしていた。
 しかも、ウソにならないように。
 『かつて日本アンブレラ製薬が保持していた生物兵器ウィルス(に感染した寄生虫)を独自ルートで入手し、無断で新薬開発に使用した』といった感じ。
 恐らく、次の役員人事で斉藤秀樹は代表取締役社長の座から下ろされることだろう。
 今後は何の権限も持たない名誉職の会長または顧問になるか、或いは関連企業の役員になるかといったところと思われる。
 あくまでも、『新薬開発に使用しようとした』未遂行為である為、逮捕はされず、あくまでも書類送検であるので、そこまで厳しい処置ではないようだ。

 リサ:「それで外国に高飛びするんだ?」
 絵恋:「高飛びじゃないわよ!それに、外国に行くわけじゃないから」
 リサ:「うん、分かった。お土産よろしく」
 絵恋:「分かったわ。リサさんこそ、どこかへ行くの?愛原先生の御実家の仙台?」
 リサ:「いや、まだ分かんない。先生の伯父さんが大変なことになったから、気軽に帰省できないかもだって」
 絵恋:「あー……。テロ組織に協力しようとしたことね」
 リサ:「伯父さんは、『協力したフリ作戦じゃ』と言い張ってるらしいけど……」
 絵恋:「どこまで本当か分からないんだって?」
 リサ:「そう」

 確かに取引内容を映像に記録して提出しようとしていた割には、しっかり報酬も受け取っていたりと、まるでネズミ男のような立ち回りをしていたので、善場達、政府関係者も判断が付かないらしい。

 絵恋:「でも、どこか行きたいよね」
 リサ:「また、天長園でも行くかな」
 絵恋:「ええっ?」
 リサ:「知ってる?上野凛。もしかしたら、私の妹の娘かもしれないコ。あのコ、中学校卒業したら、うちの高校に入りたいってよ」
 絵恋:「ええーっ!?じ、人外が2人になるの?」
 リサ:「そういうことになるな。でもまあ、凛は半分人間だから。いわゆる、半妖ってヤツ」

 リサには人間だった頃の記憶は一切無い。
 しかし、栃木県の那須塩原には、リサの血縁者かもしれない中年女性がいた。
 しかも、リサと同じBOWである。
 そして、その女性には人間の男性との間に生まれた娘がいる。
 なので、半妖ということになるわけだ。

 リサ:「学校の成績は優秀だから、推薦入試受けるみたいだよ。で、うちは私立だから、専願ができるじゃない?」
 絵恋:「そうね」

 東京中央学園は中高一貫校であるが、完全なそれではなく、別の中学校から高等部に入学したりする、中途入学の例も見受けられる。
 逆に中等部卒業後、別の高校に転入するという例もある。
 いわゆる、連携型中高一貫校である。
 上野凛はその制度に依らず、高等部の欠員を募集する枠で受験するようだ(元々、高等部の方が定員を多く設定している為、仮に中等部の生徒が全員高等部に上がっても、欠員補充の入試は行われる)。

 リサ:「それで受けるみたいだから、ほぼ合格なんじゃない?」
 絵恋:「それにしても、どうして?」
 リサ:「私から何かを学びたいらしい。それと、やっぱりデイライトの思惑。私みたいなBOWを、1ヶ所に固めて管理したいというのもあるみたい」
 絵恋:「ということは、リサさんみたいな人が他にも入って来るかもしれないってこと?」
 リサ:「可能性はある。だけど、まだそれは聞いてない。今のところ、凛だけ」
 絵恋:「うーん……」
 リサ:「まあ、今のところ私が一番強いから、学校で変なマネはさせない」
 絵恋:「うん、そうだよね」

 絵恋はリサのその言葉がブーメランのような気がしたが、そのツッコミを喉元で何とか抑えた。
 そんなことを話しながら歩くと、上野駅に到着する。

 リサ:「今からもう実家に帰るの?」
 絵恋:「そう。それから準備して、明日出発よ」
 リサ:「そうか……。マスコミとかは?」
 絵恋:「さすがにもういないわ」
 リサ:「なるほど」

 リサはそのまま山手線や京浜東北線のホームに行こうした。
 しかし、何故か絵恋が付いてくる。

 リサ:「? どうした?大宮だから、宇都宮線とか高崎線でしょ?」
 絵恋:「リサさぁん……せめて送らせて……」
 リサ:「えぇ?」
 絵恋:「来年まで会えなくて寂しいからぁ……」
 リサ:「LINEはできるだろ?ていうか……」

 リサはどうしても、絵恋とは冬休み終了前に、どこかで会うような気がして仕方が無かった。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の4番線の電車は、11時48分発、快速、大船行きです。次は、秋葉原に止まります。京浜東北線の快速電車は、御徒町には停車致しません。山手線の電車を、ご利用ください〕

 絵恋:「快速に乗るなんて、さすがリサさんね」
 リサ:「何がだよ。私は早く帰って、愛原先生とクリスマスの準備をしたいの」
 絵恋:「家でクリスマスパーティーかぁ……」
 リサ:「いや、外で食べるみたいだよ?」
 絵恋:「え?じゃあ、クリスマスケーキは……」
 リサ:「帰り際に買ってくれるみたい」
 絵恋:「そうなんだ」
 リサ:「今から楽しみだよ」
 絵恋:「そうねぇ」

〔まもなく4番線に、快速、大船行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。次は、秋葉原に止まります〕

 リサは最後尾の車両が来る辺りで電車を待っている。
 電車が高速度で進入してくると、2人の少女の髪が風に靡いた。

〔うえの、上野。ご乗車、ありがとうございます。次は、秋葉原に止まります〕

 リサ:「それじゃ」
 絵恋:「リサさん……必ず……LINEしてね……」
 リサ:「分かってる。サイトーこそ、お土産よろしくね」
 絵恋:「リサさんも」
 リサ:「分かった」

 ホームに発車ベルが鳴り響く。
 上野駅の通勤電車ホームと、新幹線ホームはメロディではなく、ベルが流れる。
 いわゆる、電子電鈴という物だ。

〔4番線の、京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車のドアとホームドアが同時に閉まる。
 上野駅では、通勤電車のホームだけホームドアが設置されている(車両規格や編成が終日固定されている為)。

 リサ:「全く……」

 電車が走り出すと、絵恋はブンブンと手を振った。
 それに対し、リサは軽く手を振るだけで答えた。

〔この電車は京浜東北線、快速、大船行きです。停車駅は秋葉原、神田、東京、浜松町、浜松町からの各駅です。次は秋葉原、秋葉原。お出口は、右側です。中央・総武線各駅停車、地下鉄日比谷線と、つくばエクスプレス線はお乗り換えです〕

 で、リサのスマホに早速絵恋からのLINEが来た。

 リサ:(全然、お別れになってない)

 しばらく、既読スルーにしておくリサだった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “大魔道師の弟子” 「マリア... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「愛原... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事