報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「24日の夜から25日に掛けて」

2020-08-16 22:49:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日21:00.天候:曇 東京都八丈町 リードパークリゾート八丈島B1F大浴場・湯上り処]

 夕食を取った私達は1度コインランドリーに戻り、洗濯物を今度は乾燥機に掛けた。
 その間、今度は大浴場に入ることにする。
 昼間あれだけ温泉巡りをしたのだが、このホテルの大浴場は温泉ではない。
 それでもまあ、部屋のバスルームに入る気にはなれなかった。

 斉藤:「リサさん、行っくよー!」
 リサ:「ん!」

 湯上り処にある卓球台で卓球に興じる少女達。
 見た目は人間同然の第0形態でも、身体能力は人外的なものがある。
 だが、リサはあえて斉藤さんに合わせているらしい。
 私はその様子をデジカメに収める。
 これも報告書への添付用……。

 愛原:「おっと?」

 そこへ私のスマホが震えた。
 手に取って画面を見ると、相手は何と高橋だった。

 愛原:「もしもし?」

 私はスマホ片手に、なるべく人のいない所に移動した。
 もちろん、彼女達の目の届く範囲内でだ。

 高橋:「せ、先生、サーセン……いや、すいませんっした!」
 愛原:「高橋ぃ~?オマエなぁ、今どこにいるんだよ?」
 高橋:「具体的な場所は言えませんが、都内某所です!」
 愛原:「都内だぁ?俺達が今いる八丈島も東京都内なんだがな?」

 その為、私が借りているレンタカーも品川ナンバーである。

 高橋:「伊豆諸島じゃなく、ガチの東京です!」
 愛原:「オマエ、その言い方は伊豆諸島の人達に失礼だぞ」
 高橋:「さ、サーセン!」
 愛原:「聞いたぞ?霧崎さんから逃げ回ってるんだってな?その霧崎さん、オマエを追って八丈島を出たよ」
 高橋:「し、知ってます!俺の仲間から聞きました!」
 愛原:「そのオマエの仲間を装ったヤツに、危うくエラい目に遭わされるところだったよ」
 高橋:「はい!『都狂走』のキムっスね!豚箱から出て来たら、俺がボコしときますんで!」
 愛原:「木村という名字も、在日朝鮮人が通名で使うことが多々あると聞いたがガチだったか」

 もっとも、『高橋』もそうなんだがな。

 愛原:「で、オマエ今何やってるんだ?霧崎さんから逃げ回ってるだけか?」
 高橋:「それは半分っす!もう半分は……。先生を罠にハメやがった組織の下に就いてた、『都狂走』を潰して来ました。まあ、俺1人だとさすがにキツいんで、仲間に手伝ってもらいましたが」
 愛原:「もしかして今、凱旋中か?何か、うるさい車のエンジン音が聞こえるぞ?」
 高橋:「まあ確かに車の中なんスけど、今どこを走ってるかは言えないっス」
 愛原:「都内のどこかか。まあ、いいや。で、その『ヨーイ、ドン!』の暴走族を使ってた組織の名前は?」
 高橋:「いや、どうもさすがに俺達じゃ手に負えなさそうです」
 愛原:「何だ?昔のアンブレラみたいな巨大な組織か?」
 高橋:「……かもしれないッス。取りあえず、奴らを使ってたのはヤーさんだって所までは分かりました」
 愛原:「ヤクザが俺に何の用だ?」
 高橋:「いや、どうも、そのヤーさん達も、別の組織から依頼されて動いたみたいっス。なもんで、そのヤーさんに頼んだ組織が怪しいんです」
 愛原:「話がややこしくなってきたな。まあとにかく、俺達個人のレベルじゃどうしようもないって話だな。分かった分かった。あとは国家に頼むさ。そのヤーさんの名前は?」

 私は高橋から暴力団の名前と、幹部数人の名前を聞いた。
 幹部の名前に聞き覚えは無かったが、暴力団の名前としては指定暴力団の傘下組織だということは分かった。

 高橋:「俺はヤーさんよりパールの方が怖いっス」
 愛原:「組の為なら命をも投げ出すヤクザの方が手ごわいと思うがな?」
 高橋:「そのヤーさんに代わって戦ったのが、『極道の妻達』っスよ!?女の方が怖いっス!そこにいるリサにも要注意ですよ!?」
 愛原:「映画の話だろ、それは。てか、何でそんな古い映画知ってんだ、オマエ……」

 リサの場合、女の子だからというより、BOW(生物兵器)として注意しなければならないのだが。
 ま、とにかく、高橋から近況が聞けて良かった。
 私はすぐに善場主任にメールした。
 しかし、その日のうちに返信が来ることは無かった。

[7月25日02:00.天候:雷 同ホテル2F 愛原達の客室]

 日付が変わったが、どうやらそれですぐに天候が回復するとは限らないらしい。
 雷の音と光で起こされてしまったようだ。
 私は一番窓側に設置されたエキストラベッドで寝ていた。
 窓に近い所だったから、尚更そういうので起こされやすい。
 気を取り直す為、私はトイレに行き、その後で水分補給しようと思い、ベッドから起き上がろうとした。

 斉藤:「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」
 愛原:「!!!」

 突然、入口に近いベッドで寝ていた斉藤さんが断末魔にも似た叫び声を上げた。
 私はびっくりして、手元に置いていたスマホを取り、懐中電灯を点けた。
 それで斉藤さんを照らす。

 愛原:「な、何やってるんだ!?」

 私は信じられないものを見た。
 そして、部屋の電気を点けた。
 斉藤さんのベッドにリサが潜り込み、斉藤さんの右肩に噛み付いていたのだった。
 しかもリサ、『鬼娘』の第一形態の姿になっている。

 愛原:「リサ!何をしてるんだ!!」

 私がリサの肩を掴むと、リサは目を閉じていた。

 リサ:「ふぁ……?」

 そして目を開け、斉藤さんから口を話す。
 斉藤さん右肩からは2つの穴が開き、そこから血が滴り落ちていた。

 愛原:「斉藤さん、しっかりしろ!」

 私は急いでバッグの中から絆創膏を持って来た。
 これで血が止まるといいが……。

 リサ:「……あれ?私……」

 リサは第一形態になった自分の姿を見て、何が何だか分からないという反応をしていた。
 取りあえず私は大きな絆創膏を2枚、斉藤さんの肩に貼った。

 愛原:「オマエ、斉藤さんを食おうとしたのか!?」
 リサ:「えっ?えっ?今の……夢だった……?」
 愛原:「夢じゃない!現実だ!」

 どうやらリサは、夢の中で斉藤さんを食べていたらしい。
 それが夢遊病のようになり、本当に斉藤さんに齧り付いてしまったようである。

 リサ:「サイトー、ゴメン。本当にゴメン」

 リサは事の真相を知って、斉藤さんに謝った。

 斉藤:「びっくりしたけど、今は痛くないからいいよ」
 愛原:「思ったより、血が滲んでないな?」

 いや、絆創膏のパット部分には血が滲んでいる。
 だが、それで済んでいた。
 私はついそれでも間に合わないほど大量に出血したらどうしようかと思っていたのだ。

 斉藤:「私もリサさんの仲間に成りかけました。もしかしたら、その名残なのかもしれません」
 愛原:「どういうこと?」
 斉藤:「何だか、傷の治りが早いんですよ、空手道場でも私だけ。例えば走り込みをした時、転んで擦りむいたことがあったんですけど、道場に帰って来たら治ってたんです。何もしてないのに、ですよ?」
 愛原:「そうなのか。とにかくリサは、今後気を付けること」
 リサ:「はーい……」
 斉藤:「リサさん、食べたくなったらちゃんと私に言ってね?」
 リサ:「分かった」
 愛原:「斉藤さんも自分を生け贄にしない!」

 リサが暴走し、故意に人を襲うようになったらどうしようかと考えたことはあったが、まさか眠りながら人を食いに行くとは……。
 そこは高橋の言う通りなのかもしれないな。

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