報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「市役所へ」

2020-11-23 22:56:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日15:00.天候:曇 某県霧生市中心部 霧生電鉄南北線 市役所前駅構内]

 私は高橋とリサ(引き続き、『2番』とする)を連れ、改札口の中に入った。
 ライフラインが全て止まっている市内において、地下駅構内は真っ暗であったが、手持ちのマグライトで照らしながら進んだ。
 ライトは私と高橋が1つずつ持っている。
 当然、無札であっても、自動改札機がゲートを閉めることは無かった。
 まるで地下鉄のような駅であり、ホームは更に下の階にあった。
 停電でエスカレーターは止まっており、階段でホームに向かう。
 バイオハザード最中の霧生電鉄東西線、霞台団地駅を探索した時とは少し違った。
 向こうは山岳トンネル内に設置された駅(但し、駅舎は外部にある)であり、ホームだけがトンネル内にあるといった感じだった。
 そして霞台団地駅が2面2線の対向式ホームだったのに対し、市役所前駅は1面2線の島式ホームだった。
 これは大山寺駅も同じである。
 ホームに下りると、東京の地下鉄よりも小ぢんまりとしていた。
 そりゃそうだろう。
 普段は2両で1編成の電車が走っているだけなのだ。
 ラッシュ時に、それをもう1編成増結して4両編成で走っているだけに過ぎない。
 霧生市の人口はおよそ10万人と、世界で最初にバイオハザードで壊滅したアメリカのラクーン市と同じ規模の町である。
 あそこにも地下鉄は走っていたが、本線が1本に支線が1本の小規模なものであったという。
 そして、このホームにも電車が立ち往生した状態で止まっていた。
 2番線の北行、紫雲山行きの電車である。
 バイオハザードが本格化したのは夕方くらいだったから、ちょうど夕方のラッシュが始まる頃だった。
 その為か、立ち往生している電車は4両編成になっていた。
 ホームに停車中にバイオハザードに巻き込まれたか、ドアは全て開いている。
 しかし、惨劇があったであろうことは、車体の損傷の仕方や死屍累々の白骨死体を見れば分かる。
 窓ガラスの殆どが割れ、乗客の荷物が未だに散乱したまま放置されている。
 安全宣言が出れば、生き残った住民達の帰還が叶うと政府は発表しているらしいが、まずは復興の前に、この犠牲者達の遺体回収が先だろう。
 尚、当時市内にいた10万人のうち、7万人が死亡、残りの3万人が脱出に成功している。
 その3万人の中に、私達も入っているわけだ。
 運良く救助隊に助け出されたり、県道・霧生バイパスと旧・県道を上手く辿れて市外に脱出できた者が殆どだという。
 私達も最後に探索した日本アンブレラの秘密研究所が、その霧生バイパスと繋がっていたから助かったようなものだ。

 愛原:「あっちだな?A3出口は」
 高橋:「そのようです」

 この駅の構造は多少変わっていて、出入口が南北に5ヶ所ある。
 北部にあるのがA1とA2とA3、南部にあるのがB1とB2である。
 この南北の出入口、コンコースでは繋がっていない。
 もしもAとBを行き来したければ、ホームを通らないといけないのである。
 もっとも、東京の地下鉄にも、一部そういった駅は存在するが。

 愛原:「A3出口というのは、市役所に直接出入りできる出口のようだ」

 他の出入口は通りに面しているのに対し、A3出口だけはそのような案内が掲示されていた。
 よって、A3出入口を利用できるのは、市役所の開庁時に限られるわけだ。
 あの『8番』と『9番』、市役所に来いと言っているようなものだ。
 JR東日本E127系からワンマン機器を取り去り、トイレを取り去ったような感じの電車の横を通り、北側の出入口への階段を登る。
 2両編成の時はワンマン運転をしていたらしいが、車内で運賃の収受は行わない、いわゆる都市型ワンマンであったらしい。
 階段を登って改札口を出ると、もう目の前が市役所の地下1階出入口になっていた。

 愛原:「ん!?」

 シャッターが3分の1しか開いていなかった。
 閉めようとして閉め切れなかったのか、或いは何かの拍子に閉まりかけただけなのか……。
 下から見る限り、シャッターの向こうの自動ドアは開いているようだ。
 私はシャッターの下にしゃがみ込み、市役所の中を懐中電灯で照らした。
 どうやらロビーとか何かの案内所のようなものが見えるが、敵はいなさそうだった。

 愛原:「よし。大丈夫っぽい」
 『2番』:「わたし、先に行くね」

 リサが四つん這いになってシャッターの下を潜り抜ける。
 リサもまた制服のスカートを短くしているので、中が見えそうになる。
 まさか、学校にいる時までそんな短くしているわけではあるまい。
 高等部はそういった規制は少し緩やからしいが、中等部でそれは無いぞ。
 他のリサ・トレヴァー達はセーラー服のスカート、そんなに短くしていないというのに、こっちのリサときたら……。
 多分、それも『アンブレラからの解放感』でやっているのだろう。
 何せ、『もしも東京中央学園の制服がセーラー服だったら、通いたくなかった』と言うくらいだからな。

 愛原:「次は高橋だ」
 高橋:「うっス!」

 高橋は少しシャッターを持ち上げた。

 高橋:「先生、お先にどうぞ」
 愛原:「そういうことかよw」

 私は先に入った。
 そして内側からシャッターを更に持ち上げる。
 なかなか重いシャッターだったが、リサが手伝ってくれると軽々と開いた。
 リサ・トレヴァーの自慢は怪力。
 この小さな体のどこにそんな怪力が備わっているのか疑問だが、あえて追及しないことにした。

 愛原:「高橋、入れ」
 高橋:「はい!」

 高橋も中に入り、私達が手を放すと、シャッターが勢い良くガッシャーンと閉まった。

 愛原:「あ、ヤベッ!閉じ込められた!?」
 高橋:「多分、上から出れるんじゃないスか?」

 高橋は上を指さした。

 愛原:「そうかもな」

 ここはホールになっているらしく、上の1階とは吹き抜けになっていた。
 ここにも至る所に白骨死体が転がっているが、今向かってくる敵らしき者はいない。

 愛原:「リサ、敵の気配はするか?」
 『2番』:「うーん……」

 リサは首を傾げた。
 すると……。

〔上に参ります〕

 愛原:「!?」

 突然、奥のエレベーターが開いた。
 中は非常灯の薄暗いランプしか点いていない。
 どうやら非常予備電源で動くエレベーターのようだ。
 このタイミングで開いたということは……。

 愛原:「やっぱり……」

 中を覗くと、鏡の上に『8階へ来い』と赤い文字で書かれていた。

 高橋:「上等ですよ。行きましょうか」
 愛原:「いや、ちょっと待て」
 高橋:「何ですか?」
 愛原:「準備をしてから行こう」
 高橋:「ええっ?」
 愛原:「このホール、何か色々落ちてる」

 よく見ると警察官の死体もあり、そこからハンドガンの弾や、ショットガンの弾なんかも落ちていた。
 どうやら日本アンブレラ直営の警備会社JUSSが持っていたと思われる壊れたショットガンが落ちていたので、その弾だろう。
 他にも観葉植物に交じってグリーンハーブが落ちていたり、救急スプレーなどの回復アイテムが落ちていたりした。

 高橋:「先生、マシンガンの弾もありましたよ」
 愛原:「よし。これも頂いて行こう」

 何気に、ゾンビ化したBSAA隊員から奪ったマシンガンを高橋は持っているからな。

 愛原:「準備ができたら行くぞ」
 高橋:「はい」

 私達はエレベーターに乗り込み、8階のボタンを押した。

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