報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「ついに善場の正体判明!」

2020-11-25 16:04:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日15:00.天候:曇 某県霧生市中心部]
(この話に限り、愛原不在の三人称とします)

 栗原蓮華:「う……」

 蓮華が意識を取り戻した。
 暴走トラックと装甲車の激突事故により、漏れ出した燃料が引火し、大爆発を起こした。
 栗原蓮華と妹の愛里は爆発する直前、善場に庇われ、ビルとビルの間の路地に飛び込んだのだ。
 おかげで爆風の直撃は避けられたわけだが……。

 蓮華:「愛里、愛里。しっかりして」
 栗原愛里:「う……ん……」

 幸い姉妹共に大きなケガは無く、意識レベルも通常値(概算)であった。

 愛里:「お姉ちゃ……」
 蓮華:「うん、怖かったね」

 愛里は必死に泣くのを堪える妹を抱き抱えた。
 が!

 愛里:「ひっ!?」

 姉の背後にいる人物を見て、愛里は息を呑んだ。

 蓮華:「え!?」

 蓮華が咄嗟に後ろを見ると、そこには姉妹を庇った善場が倒れていた。
 しかも、背中には鉄材のような物が背中に突き刺さっていた。

 蓮華:「そ、そんな……」

 蓮華は善場に駆け寄った。

 蓮華:「善場さん!善場さん!しっかりしてください!」

 蓮華が善場を揺り動かすと、善場はゆっくり目を開けた。

 蓮華:「だ、大丈夫ですか!?」
 善場:「大丈夫……だけど、これは……良くないわね……。背中に何か刺さってるでしょう?」
 蓮華:「て、鉄の棒みたいなのが突き刺さっています」
 善場:「近くに大人の男性はいる?」
 蓮華:「い、いません。愛原先生達も、軍人さん達もです」
 善場:「まあ……愛原所長達は大丈夫でしょう。しょうがないから、あなたがこれを抜いてくれる?」
 蓮華:「だ、ダメです!確か、これ、ヘタに抜いたりしたら、血が噴き出して、もっと大変なことになるんですよね!?」
 善場:「普通はね。でも、私は大丈夫なの。だから、抜いてくれる?」
 蓮華:「え……?」
 善場:「うん……。私は、大丈夫だから……。だから、お願い……。まだ高校生のあなたに……お願いするのはアレだけど……」
 蓮華:「ほ、本当に大丈夫なんですね?」
 善場:「ええ。だから、お願い」

 蓮華は善場の後ろに回り、鉄材を掴んだ。
 爆発で飛んで来た物だからか、それはまだ熱かった。
 火傷するほどの熱ではなかったが。

 蓮華:「くっ……!」
 善場:「ううっ!」
 蓮華:「や、やっぱりやめた方が……!」
 蓮華:「いいから続けて!」

 蓮華は何とかして鉄材を引き抜くことに成功した。
 勢い余って、後ろに倒れてしまったが。
 当然、善場の背中から血が噴水のように噴き出した。
 愛里は完全に顔を覆っている。
 だが、呆然と見つめる蓮華の前で、噴き出した血は、まるで水道の蛇口を締めるように止まっていった。
 そして完全に血が止まると、今度はズプズプと傷が塞がって行く。
 気が付くと、既に傷は跡形も無く消え失せていた。

 蓮華:「あ……あ……」

 さしもの蓮華も、しばらくは口をパクパクさせるだけだった。

 蓮華:「な……ど……どうなってるの?」

 そこで蓮華、ハッと気づく。
 同じような現象を見せたBOWがいたことに。
 その名をリサ・トレヴァーという。
 すぐに傷が回復するものだから、無闇に斬るだけでは埒が明かない。
 だから、首を一気に刎ね飛ばさないといけないのだ。

 蓮華:「ま、まさか!」

 蓮華は手持ちの日本刀をスラッと抜いた。

 蓮華:「愛里!そいつから離れて!!」
 愛里:「え?」
 善場:「心配しないで。確かに私は普通の人間と違うけど、別にあなた達を取って食べるつもりはないから」
 蓮華:「どういうことなんですか?ここまで来たら教えてもらいませんと。教えなかったら、あなたをBOWとして斬ります」
 善場:「分かったわ。周りに男性はいない?」
 蓮華:「いませんけど?」
 善場:「それじゃあ……」

 善場は黒いスーツの上着を脱ぎ、その下のブラウスも脱いだ。
 そして、上だけ下着姿になると、左腋の下を見せた。
 そこには……。

 蓮華:「0!?『0番』!?」
 善場:「そう。私はリサ・トレヴァーの『0番』なの。だけど、何でトップナンバーより前の0番なのか知ってる?」
 蓮華:「知りません」
 善場:「もっとこの数字をよく見てくれる?」
 蓮華:「……?何か、下に書いてありますね」

 元々あった入れ墨を消して、その上から改めて0という数字を入れ墨したようである。
 1と2という数字がうっすら見えるような……?

 善場:「12よ。元々私は『12番』だったの」
 蓮華:「はあ!?」
 善場:「だけど私が捕まっていた研究所が、今の私の政府組織に摘発されて、私はある実験を受けた。それが、『人間に戻す実験』だった。実験は今のところ成功。だけど、まだ実験段階」
 蓮華:「あの……『2番』をさっさと捕まえて、実験しないんですか?」
 善場:「私はまだ完全にリサ・トレヴァーになりきれていなかったの。だから、まだ人間に戻すことができた。私が助け出された時、まだ私はカプセルの中にいたからね。だから、私はまだ誰も人を食い殺していないよ。そうなる前に助け出されたから」
 蓮華:「だから?」
 善場:「だけど、『2番』は完全にリサ・トレヴァーになってしまってる。しかも、製造者側が完成品と謳うほどのもの。私と同じやり方ではダメなの。もちろん、私に使われた薬剤などは参考になるだろうけど、まだ足りない。それと、今すぐ彼女を人間に戻しても、人間らしい生活ができるかどうかわからない」
 蓮華:「?」
 善場:「まだ化け物になる寸前だった私ですら、後遺症で、『人間って何?』という所から始めなければならなかったからね。ましてや、今の『2番』もまだ感覚が普通の人間とズレている部分とかあったりするでしょう?愛原省所長達と一緒に暮らしているうちに、だいぶ良くなったみたいだけど……」
 蓮華:「それでもうちの妹を『捕食』しようとしました」
 善場:「そう。彼女の中から『化け物』を消さなければならない。科学的に人間に戻せたとしても、精神的に化け物ではダメだから。ちゃんとした方法が見つからない限り、『2番』を『治療』することはできないわけ」
 蓮華:「もう一度聞きますが、あなたはもう化け物ではないんですね?」
 善場:「ええ。私はあのコ達と違って触手を出したり、鬼に化けたりとかはもうできないから」
 蓮華:「分かりました」
 善場:「愛原所長達は爆発の向こう側に行ったようね。ちょうど鉄道の駅の中を通って行けるようだから、それで行きましょう」
 蓮華:「はい。愛里、付いてこれる?」
 愛里:「うん……」
 蓮華:「愛里はやっぱり来ない方が良かったかもね」
 善場:「今度BSAAと合流できたら、このコを保護してもらいましょう」

 善場は服を着直すと、まだ無事に口を開けている市役所前駅のB2出入口へ向かった。
 蓮華と愛里も付いていく。

 蓮華:「もしも『2番』が人間に戻れたら、番号はどうなるんですか?」
 善場:「そうねぇ……。『00番』とかにでもなるのかしら」
 蓮華:「野球の背番号みたいですねぇ……」
 善場:「ふふっ、そうね。でも、リサ・トレヴァー達を全滅させることができたら、もう番号で識別する必要も無くなるから、そもそもナンバリングそのものが廃止されるかもね。私も、この『0番』を消すことになるのかも」
 蓮華:「その『0番』さんでも、『1番』の居場所は分からないと?」
 善場:「だから直接来る他無かったのよ」

 地下駅への階段を下りる。
 途中でシャッターが3分の1だけ開いた状態で下りていた。
 善場と力を合わせてシャッターを引き上げ、先に愛里を中に入れる。
 それから2人同時に入って、手を放すと、ガッシャーンと勢い良く閉まった。
 これでもうここから地上に戻ることはできない。

 善場:「行きますよ」

 善場はマグライトを点灯させた。

 善場:「愛里さんは私から離れないで。蓮華さんは日本刀を抜いていても構いません」
 蓮華:「はい。(『7番』が言ってたこと、実は本当たったりして……)」

 町の入口の県道バイパスで戦ったリサ・トレヴァー『7番』。
 彼女は、『「1番」はいない』と言っていた。
 それはただ単なる言い逃れの為のウソだと思っていた。
 だが、これだけの騒ぎでも、他のリサ・トレヴァーが現れない所をみると……そんな気がしてきてしょうがないのだ。

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