報恩坊の怪しい偽作家!

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“アンドロイドマスター” 「夢オチ」

2014-09-18 00:09:09 | アンドロイドマスターシリーズ
[時期不明 場所不明 敷島孝夫、南里志郎、平賀太一、エミリー、シンディ]

 どこかの港湾と思しき場所。
 解体作業中の大型船の上で、鋼鉄の姉妹が睨み合っていた。
 そこへタイミング良く、付近に落雷がある。
 それがゴングのように、エミリーとシンディは激しい肉弾戦を繰り広げる。
 顔もそっくりなら体型もそっくり。そして、基本スペックはほぼ同じ。違うのは髪の色とその長さ、そして性格である。
 最初はシンディが優勢だった。
 エミリーは動力破損による自己修復を余儀なくされ、ついには再起動を行わなければならないほどにやられた。
 その間シンディは、固唾を飲んで見守っていた人間達を抹殺せんと、超小型ジェットエンジンを起動させ、敷島達の所へ向かおうとした。
 飛び立った直後、シンディの両足を掴むエミリー。
「なにっ!?」
 エミリーもまた自らのジェットエンジンを起動させ、シンディを抱えて飛んだ。
 そして、大型船の船橋甲板から一気に海へ飛び込もうとした。
 南里が叫ぶ。
「やめんか、エミリー!マルチタイプ奇数号機には、海水に対する耐性が無いのじゃ!海に飛び込んだら、約30秒で完全に壊れるぞ!!」
「ええーっ!?」
 敷島は目を見開いた。
「あのターミネーチャン達に、そんな弱点が!?」
 シンディも姉機の捨て身の攻撃に驚愕した。
「わ、私と心中する気!?たかだか、あんな人間どもなんかの為に……!?」
 シンディは左手から有線ロケットアームを起動させ、かろうじて甲板のへりを掴むことができた。
 だが、エミリーが更に力を出せば、チェーン式の腕は引きちぎられ、海中に落とされることだろう。
「わ、分かったわ。作戦は中止にするわ。休戦しましょう?」
 シンディは慌てた様子で、エミリーに言った。
「もう・誰も・傷つけない?」
「傷つけないわ。約束よ」
「エミリー、騙されるな!とっととシンディを壊せ!」
 平賀がエミリーに呼び掛けた。
「先生も何か言ってください!」
 平賀は学生の頃から師事している南里に言った。
「う、うむ……。じゃが、それはつまり、エミリーも壊れるということじゃぞ?何としても、それは避けたい……」
「先生!そんなこと言ってる場合ですか!人類がピンチなんですよ!」
 で、敷島は、
(この際だ。もしシンディが壊れて稼働停止になったら、大日本電機で頂いちゃおうか……)
 スパイ心が働いた。
 人間達がそれぞれの思いを交錯させている中、エミリーは……。
「お前を……信じる」
 エミリーはシンディの足元付近に穴を開け、足掛かりを作ってやった。
 だが!
「バカね!1人で泳ぎなさい!」
 姉の情けを踏みにじり、シンディは右手をショットガンに変形させた。
 しかし、シンディは武運に恵まれなかった。
 左手で掴んでいた甲板のへりが老朽化していたのと、2体のマルチタイプの重さに耐えられず、破損してしまった。
「きゃーっ!!」
 真っ逆さまに落ちるシンディ。
「シンディ!」
 エミリーは自らの左手を飛ばし、シンディを掴んだ。
 そして、腕のワイヤーを巻き上げる。
「ね、姉さ……。どうして……?」
「私は・お前と……」

 ブチィッ!!

「ん!?」
 エミリーの腕のワイヤーが切れた。
 シンディとの肉弾戦の最中に損傷を受けていて、彼女の重みに耐えられなかったのだ。
 結局、海に落ちてしまったシンディだった。

[9月15日23:02.宮城県仙台市青葉区 東北新幹線“はやぶさ”37号9号車内 敷島、鏡音リン・レン、シンディ]

「うっ!?」
 ビクッと体を震わせて目を覚ます敷島。
「よく眠れた?」
 一瞬、自分がどこで何をしているのか分からなかったが、そんな彼を覗き込む者がいた。
「うわっ、シンディ!」
「何よ?今まで、人型兵器の横で寝てた癖に……」
 シンディは呆れた顔をした。
「なーに、兄ちゃん?メモリー異常?」
 すぐ後ろの席に座っていたリンが覗き込んで来た。
「俺は人間だ!……変な夢見てただけだよ。ま、人間ならではだな」
 一部の動物も夢は見るそうである。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線はお乗り換えです。……〕

「ちょうど、そろそろ着く頃か……」
 車窓には見慣れた町の夜景が広がっている。

 放送が鳴ってから、だいたい5分くらいで列車は仙台駅のホームに滑り込んだ。
 ホームへ降りて改札口へ向かう途中、シンディが敷島の耳元で囁いた。
「おおかた、私に殺される夢でも見た?」
「!? い、いや、そういうわけじゃない」
 敷島は否定した。
「でも、私に怖い目に遭わされる夢かしら?」
「お前に、じゃないよ」
「?」
 敷島の反応に、シンディも訝しげな顔をした。
(大日本電機からのスパイだったってこと、財団にバレないようにしないと……。てか、南里所長の死の真相、バレたらエミリーに殺される……)

[同日23:45.仙台市地下鉄南北線、地上区間 敷島、鏡音リン・レン、シンディ]

 電車が地上区間に出ると、外は暗いにも関わらず、時折フラッシュのような光が発生した。
「ゲリラ豪雨だ……」
 閉め切った窓硝子に、バケツの水をぶっ掛けたような水しぶきが勢い良く当たる。
 それほどまでに激しい雨が降っているのだ。
「雷雨か……。姉さんとケンカするのに、ちょうどいい天候かもね」
 シンディはドアの前に立ち、楕円形の窓越しに外を見ながら呟いた。
「おい!」
 敷島はすぐに突っ込んだ。
「冗談よ。姉さんからケンカを売ってこなかったら、何もしないから」
「それよりプロデューサーは、傘をお持ちですか?」
 レンが聞いてきた。
「僕達は濡れても平気ですけど、プロデューサーは人間ですから、雨に濡れたらまずいんでしょ?」
「そうだなぁ……。確かに傘は持ってない。だけど、電車を降りて、タクシー乗り場までは屋根があって、濡れることはない……はずだ」
「じゃあ、これ使って」
 シンディは左すねに仕掛けた折畳の傘を出した。
 前の体の時は、刺殺用ジャックナイフを仕掛けていた場所である。
「お前はエミリーか!……ありがとう。必要があったら、使わせてもらうよ」
 敷島は突っ込んだ後で、傘を受け取った。

 もうしばらく、ゲリラ豪雨は続きそうである。
 

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