報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「敷島の立ち位置」

2014-09-18 16:16:37 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月16日00:15.仙台市泉区のぞみヶ丘 アリスの研究所 敷島孝夫、鏡音リン・レン、シンディ]

 泉中央駅前からタクシーに乗り、研究所に向かう。
 その間、雨は弱まって行き、のぞみヶ丘ニュータウンに入る頃には雨は止んだ。
 どうやら、やはりただのゲリラ豪雨だったらしい。
 バスなら研究所の下の折返し場で降りることとなり、そこから研究所裏手に上がる階段を登るのが大変なのだが、タクシーなら車道を直に上がって行ける。
「昔、ここに来たことがあるけど、若干変わってるかしらねぇ……」
 敷島が料金の支払いをしている間、シンディ達は先に降りた。
「来たことがあるの?」
 レンはタクシーのトランクから荷物を降ろしながら言った。
「ええ。ドクター南里が亡くなって、ドクター・ウィリーの名代で焼香にね。もっとも、姉さんや平賀坊ちゃんに追い出されちゃったけど……」
「坊ちゃん……」
 最後にタクシーを降りた敷島が、
「アリスのヤツ、多分寝てるだろうから静かに入ろう」
 と、3人を促した。
「ねぇ。この花壇って、前は無かったよね?」
 シンディがエントランス前に整備された花壇を指さした。
「ああ。エミリーが作ったんだ。いや、俺もアリスも財団の人も何も命令してないぞ。自分で考えてな。『お花・好きです』なんて言ってたけど……」
「ふーん……」
 するとシンディは右手を銃火器に変形させた。
 銃口の形状からして、火炎放射器だ。
「おい、何やってるんだ!?」
「趣味の悪い造りだね〜。私ならもっときれいに作れるわ」
「やめろ、こら!」
 敷島が慌てて、シンディの右手を掴んだ。
「! 冗談よ」
 シンディはそう言って、右手を元の手に戻した。
「こんなつまらないことで、姉さんとケンカしたくないもの」
「お前なぁ……」
 敷島は呆れた顔をした。
(私の銃火器を躊躇なく掴む人間、初めて会ったわ……)
 シンディは敷島を見て、(人間で言うなら)冷や汗をかいた。
「あー、やっぱり。アリスのヤツ、寝てやがんな……」
「兄ちゃん、カードキーは?」
「カードキーにプラスして、『クイズに答えないと、ドアが開かないので注意』って、どこのダンジョンの入口だよ!」
「ねぇ。その花壇は分かったけど、あれは何?」
 シンディは別の場所を指さした。
 丸太が何本も縦に整然と置かれて、そこからキノコがにょきにょき生えている。
「あれは、うちのバージョン5.0の兄弟が趣味でやってるキノコ栽培だ。世界中でここだけだぞ。ロボット研究と同時進行でキノコ栽培までやってる研究所って」
「まあ、そうだろうね」
 シンディはそのキノコをスキャンしたが、
「このキノコは研究用なのよね?」
「は?」
「それとも、これを材料に薬品でも作るのかしら?漢方薬?」
「何の話だ?マリオのヤツ、『ゴ近所ニお裾分ケシマス』って言ってたぞ?」
「……最近のバージョン・シリーズは、テロに銃火器を使うとは限らないのね」
「だから何の話だよ?」
「例を上げて言うとね、その手前にあるのはテングダケよ。で、その向こうにあるのがイッポンシメジ。あれがツキヨダケで、それがワライタケ……」
 全部毒キノコである。
「食用キノコくらいあるだろ!?」
「……無いね」
「燃やせ!」
「いいの?」

 敷島が回答にてこずったクイズの内容は、
『JR山手線と営業キロ数が同じ鉄道路線は? ア:鹿島臨海鉄道・大洗鹿島線 イ:樽見鉄道線 ウ:阪神電鉄・阪神本線 エ:井原鉄道・井原線』
『2014年9月現在、日本で唯一夜行列車を運行している私鉄は? ア:東武鉄道 イ:名古屋鉄道 ウ:近畿日本鉄道 エ:西日本鉄道』
『創価学会が日蓮正宗から破門された年は? ア:1979年 イ:1981年 ウ:1991年 エ:1999年』
『作者の日蓮正宗所属支部は? ア:正連講 イ:妙観講 ウ:蘇生講 エ:【お察しください】』
 だそうである。
 てか、全部で何問出題されたんだよ?

[同日07:30.アリスの研究所・居住区 敷島孝夫&アリス・シキシマ]

「昨夜は随分と帰って来るのが遅かったみたいね」
 アリスはトーストを齧りながら、テーブルを挟んで向かい側に座る夫の敷島に言った。
「しょうがないだろ。財団が指定した新幹線、夜遅かったんだから。てか、エントランスドアのロック解除に変なクイズ使うの、やめなさい」
「じゃあ、パズルにする?」
「フツーにカードキーにしろよ!」

[同日09:00.アリスの研究所・研究所 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ、エミリー]

「……というわけで、オーナー登録はアタシになるから。皆、よろしくね」
 アリスが手元のノートPCを操作すると、シンディはアリスの前に片膝をついた。
「どうか、よろしくお願いします」
 これを見て敷島は、
(エミリーの、平賀先生に対するオーナー登録と似てるな)
 と、思った。
 南里が死亡して、エミリーのオーナー登録を平賀太一に変更した際、エミリーも同じ動きをした。
 そこはマルチタイプ共通なのか。
 で、ここで疑問が起こる。
「オーナー登録はアリスでいいとして、ユーザー登録はどうするんだ?ユーザーもお前か?」
「何言ってるの。タカオに決まってるじゃない」
「何だ、そうか……って、おい!」
「何よ?何か文句あんの?」
「俺はエミリーのユーザーにも登録されてるんだぞ!?」
「だから?」
「ボーカロイド・プロデューサーの仕事が忙しいのに、マルチタイプ2体も抱える余裕は無いぞ!」
「別に、単なるユーザー登録なんだから、いいじゃない。常に一緒にいる必要は無いんだし。てかアンタ、ほとんどボカロと一緒にいること自体も少ないじゃない?」
「ギクッ。い、いや、今日は財団支部の事務所に行かないとな……」
「ちょうど良かった。顔合わせにエミリーとシンディも連れて行ってあげてね」
「事務レベルの会議で行くだけだっつーに……」

[同日10:00.仙台市青葉区 ㈶日本アンドロイド研究開発財団仙台支部 敷島、エミリー、シンディ]

 車で支部事務所に向かった3人。
「まずは森須支部長に挨拶だ」
「結局、会議以外にやることあるんじゃん」
 さらっとシンディが突っ込んでくる。
「うるさいな」
 職員用駐車場に車を止め、そこからエレベーターで向かった。
 財団の入居しているフロアに行くと、
「メイド長!おはようございます!」
 すれ違うメイドロボットに、ピシッとした挨拶をされるのだった。
「総隊長!オハヨウゴザイマス!」
 ついでにセキュリティ・ロボットからも。
「随分と恐れられてるのね、姉さん?」
「私は・特に・何も・していない」
(ウソだぁ〜)
 エミリーの返事に、敷島は口元を歪めた。

 支部長室に入ると、刑事コロンボの主人公に似た森須支部長が椅子に座っていた。
「おお、来たか」
「支部長、シンディの稼働実験、今現在は順調です」
「ご苦労さん。オーナー登録もユーザー登録も終了したな?」
「はい」
「ふむ。東京でのフィールドテストは、一先ず合格だ。シンディ、キミは姉とも言えるエミリーと協力し、共に過去の贖罪をしてくれ」
「分かりました」
「なぁに。もうキミに残虐な命令を下す者はこの世にいない。安心して、今日からは我々人類の為に力を尽くしてもらいたい。具体的には、まず件のテロ組織対策だな」
「その為の会議ですよね、支部長?」
「ああ。まずは支部レベルで警戒強化を行ってくれとの本部通達だ。キミ達、姉妹にも会議に参加してもらう」
「かしこまりました」
「了解です。支部長」

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