報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「東北探索紀行」

2023-03-30 16:22:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月5日05時42分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 東京メトロ東京駅→JR東京駅]

 私達を乗せた丸ノ内線電車が、東京駅に到着する。

〔とうきょう、東京です。JR線は、お乗り換えです。1番線の電車は、荻窪行きです〕

 愛原「やっと着いた」
 高橋「今回はタクシーじゃないんスね?」
 愛原「なーんかね。もしかしたら、予算削減されたのかもよ?」
 高橋「マジっスか!?」
 愛原「オマエの免停が痛かったのかもな?」
 高橋「さ、サーセン……」
 リサ「眠い……」
 愛原「新幹線の中では寝ていいから」
 リサ「お腹も空いた」
 愛原「駅弁買ってやるから」
 リサ「おー!」

 改札口を出て、JR東京駅へと向かう。

 愛原「さすがにもう、始発に合わせて駅弁売るようになったな」

 在来線コンコースでも駅弁は売っているし、新幹線ホームでも売っている。

 愛原「リサは……肉系統か」
 リサ「うん」

 新幹線ホームに向かう前、在来線の発車標を見てみた。
 当然ながら、宇都宮線は宇都宮から先へ向かう列車はもう無い。
 かつては黒磯行きなんかもあったが、今はそれすら無い。
 愛称の『宇都宮線』の通り、宇都宮までしか行かない路線となってしまった。

 愛原「上野医師には、どうやら元の奥さんはいたらしい」
 高橋「死んだわけじゃないんですね?」
 愛原「ヤーさんに寝取られたらしいがな」
 リサ「NTR」
 愛原「ヤーさんのぶっとい【ぴー】で、目の前でヒィヒィ言ってる奥さんを見て絶望し、それで逃亡を図ったらしい」
 高橋「東北の方ですか……」
 愛原「今から50年前ということは、まだ東北新幹線は無かったはずだ。国鉄のストライキやら順法闘争の最中、長距離旅行は大変だっただろうけど、上野医師は東北に向かう列車に乗り込んだという」

 東北新幹線開通前、東北に向かう列車は夜行・昼行はもちろん、特急から普通に至るまで、様々な列車が運転されていた。
 今は全く見る影も無いが。
 だから上野医師が何時のどの列車に乗ったのかは分からない。
 ただ、東京駅から列車に乗ったのは確かなようだ。
 上野駅ではないか?という疑問もあるだろうが、東北新幹線開通前は東京駅からも東北方面への列車が出ていた。
 東北新幹線開通の際に用地を取られ、また、日暮里駅もトンネルの用地の為にホームが撤去されている(宇都宮線・高崎線が日暮里駅を通過するのはこの為)。
 また、東北本線だけでなく、常磐線でも東北へ向かう列車が運転されていた。
 今でもそれは、仙台行きの特急“ひたち”で名残を見ることができる。

 愛原「俺達もその軌跡を辿りたいところだが、上野医師がどの列車に乗ったのかは知らないし、そもそも今はそんな列車、1本も運転されていないんでね」
 高橋「はい」

 駅弁も購入したのかどうかは分からない。
 医師として致命的な医療ミスをヤクザ患者にやらかし、しかもその報復として、妻を目の前でレイプされ、逃げるようにして列車に飛び乗ったのだから、のんきに駅弁食べてる余裕は無いか。
 私達は駅弁を購入した。

[同日06時4分 天候:曇 JR東京駅→東北新幹線51B列車1号車内]

〔23番線に停車中の列車は、6時4分発、“やまびこ”51号、盛岡行きです。この列車は上野、大宮、宇都宮、郡山、福島、仙台と、仙台から先の各駅に停車します。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から6号車です。尚、全車両禁煙です。……〕

 駅弁や飲み物を購入してホームに行くと、既に10両編成の列車が発車を待っていた。
 確か、昨夜の最終列車が東京駅到着後、車両基地に引き上げず、そのままこのホームで夜明かしして、今日の始発として運転されるのだった。
 これを『夜間滞泊』という。
 私達は定員の少ない最後尾に乗り込んだが、もちろんリサがいる為。
 自由席にしたのは、東京駅始発だし、朝一の始発からそんなに混まないだろうと思ったからだ。
 案の定、東京駅からは余裕で座れた。
 3人席に並んで座る。
 高橋だけ喫煙所で、タバコを吸い溜めしに行ったが。

 愛原「もう駅弁食べるのか?」
 リサ「うん。お腹空いた」
 愛原「さすがだな」

 リサは牛肉弁当の蓋を開けた。
 そして、マスクを取ると、牙を剥き出しにしてガツガツと食べ始めた。

〔「6時4分発、東北新幹線“やまびこ”51号、盛岡行きです。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 ホームから発車ベルが聞こえてくる頃、高橋が戻って来た。

 高橋「戻りましたー」
 愛原「ギリギリだったな」
 高橋「あざっす」

 高橋は通路側の席に座った。
 そして、甲高い客扱い終了合図のブザーの音が聞こえてくると、エアーの音がしてドアが閉まる。
 それから数秒間のブランクがあって、列車が走り出した。
 尚、東海道新幹線のホームの隣なので、窓の外には東海道新幹線も見える。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は、“やまびこ”号、盛岡行きです。次は、上野に止まります。……〕

 私も駅弁に箸を付けた。
 私は幕の内弁当である。
 こういうのでいいんだよ、ここういうので。

 高橋「仙台に着いたら、先生の御実家に?」
 愛原「ああ。母親が後輩にも頼んで、卒業アルバムを確保してくれたらしい。70年代前半でヒットしなかったら、振り出しに戻ることになるな」
 高橋「そ、それはマズいっスね」
 愛原「そうなんだよ」

 まあ、デイライト側の調査だから、間違ってはいないと思うけどな。

 愛原「当時の卒アルには住所録もあったから、それで実家を突き止め、凸するという計画だ」
 高橋「お任せください!」
 愛原「殴り込みに行くわけじゃ、ないからな?」

 上野医師が東北のどこへ行こうとしていたのかは分からない。
 だが、最終的には桧枝岐村に落ち着いていたわけだから、北東北ということはないだろう。
 東北方面の列車といったって、よほどのことが無い限り、途中下車しようとは思わないかもしれない。
 少なくとも、宛ての無い旅だったら、私は終点まで乗るかな。
 あー、いや、でもなぁ……。

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