報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「北関東トンボ返り」 5

2024-06-22 21:15:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月12日20時20分 天候:晴 JR東北新幹線282B列車1号車内→(JR東日本)東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と、地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 列車は定刻通りに都内を走行している。
 地下深い上野駅を出て、秋葉原付近で地上に出る。
 進行方向左手にあるヨドバシAkibaの眩い広告を眺めながら、並行する通勤電車よりやや速いスピードで走行する。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京、終点です。22番線の到着、お出口は左側です。お降りの際、お忘れ物、落とし物の無いよう、よくお確かめの上、お降りください。……」〕

 愛原「もうすぐ着くな」
 高橋「はい。荷物を下ろしますね」
 愛原「頼む」

 東京駅に近づくに連れて、私の緊張感は高まって行った。
 いくら善場係長がリサを宥めてくれたとはいえ、ずっと付きっ切りでいてくれるわけではない。
 帰宅する頃には怒りが再燃して、襲い掛かって来ることもある。

 高橋「先生。今のところ、パールからは何も連絡はありませんし、イザとなったら俺が、俺のデザートイーグルで頭吹っ飛ばしてやりますから」
 愛原「それで倒せれば、今頃リサ・トレヴァーはラスボスなんてやってないよ」
 高橋「かといって、明日はクライアントが来訪することになってますから、事務所を開けないわけにはいきませんし」
 愛原「わ、分かってるよ」

 そんなことを話しているうちに列車はホームに滑り込み、そして、ガクンガクンと揺れながら停車した。

〔ドアが開きます〕

 他の乗客達は、デッキに向かっている。
 私達もその列の後ろに並んだ。
 そしてドアが開き、乗客達はぞろぞろとホームへ降りて行く。

 

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください。22番線に到着の電車は、折り返し20時32分発、“はやぶさ”117号、仙台行きとなります。……」〕

 愛原「一服して行くんだったな?」
 高橋「お願いします」
 愛原「那須塩原で吸えなかったんだ。思いっ切り吸ってきていいぞ」
 高橋「サーセン。ちょっと行ってきます」

 高橋はそう言うと、タバコを片手に喫煙所へと向かって行った。
 あいにくと22番線と23番線のホームでは、1号車付近に喫煙所が無い。
 あるのは20番線と21番線のホームのみ。
 あとは、後ろの方に行くしか無い。
 だがまあ私は、途中の自販機で缶コーヒーを買い求めると、待合室のベンチに座って待つことにした。
 スマホを取り出して、リサのLINEを見てみる。
 相変わらず、既読スルーされているだけである。
 『愛原学探偵事務所グループLINE』を通し、パールにリサの状況を聞いてみた。
 すると、その答えは意外なものだった。

 パール「ご安心ください。今は眠っておられます」

 とのこと。
 まだ20時台だというのに、もう寝てるのか。
 それとも、不貞寝だろうか。

 愛原「俺に対しての怒りと、善場係長に何か色々言われたから、不貞寝してるのか?」
 パール「……か、どうかは存じません。ただ、“鬼ころし”を沢山飲まれて、あとは寝室に籠もられました」
 愛原「“鬼ころし”沢山飲んだの!?」

 私がそう返信すると……。

 リサ
 

 どこかネットから拾って来たと思われるイラストを投稿してきた。
 リサとは違う容姿の女の鬼が、樽に入った“鬼ころし”をがぶ飲みしているイラストだった。
 いやいや!こんなに飲んだらリサ、逆に暴走するだろう!

 愛原「おい、リサ!こんなに飲んだのか!?」

 しかし、私の問いには答えず……。

 リサ
 
「今日の下着」

 リサ
 
 「今日はこのブルマはいて寝る。おやすみなさい」

 などと、自分の下着画像やブルマ画像を投稿して、あとは何も投稿しなくなった。
 これは……少なくとも、暴走はしていないということだよな。
 ある意味、機嫌も直ったのかも。

[同日21時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 タクシー車内→愛原家]

 喫煙を終えた高橋と合流すると、私達は東京駅のタクシー乗り場からタクシーに乗り、自宅を目指した。

 高橋「リサのヤツ、フザけた返信してやがりましたね」
 愛原「別にいいよ。逆に、機嫌が直った証拠かもしれない」
 高橋「あいつ、見た目に反して、中身はオッサンじゃないっスか。まあ、オバハンと言った方がいいかもしれないっスけど」
 愛原「しょうがないよ。パールが来るまで、実質的にむさ苦しい男2人との共同生活だったんだから」

 この事実については、基本的に内緒である。
 本当に何も無かったのだが、あらぬ誤解を招く恐れがあるからだ。

 愛原「で、それがどうした?」
 高橋「機嫌が悪いと、酒かっ食らって不貞寝する所はオッサンだなと思いました」
 愛原「ああ、そういうことか。それで機嫌が直るなら、安いモンだ」
 高橋「ですがヤツの場合、飲み過ぎても暴走の危険があるんですよね?」
 愛原「まあ、あいつ自身がというよりは、中身のGウィルスが、だな……」

 Gウィルスも酔っ払って暴走する恐れがあるからだ。
 宿主たるリサがほろ酔い程度であれば、逆にGウィルスには寝酒状態になるようで、眠ってしまう。
 だから、リサの暴走が抑えられるというわけだ。
 だが、泥酔状態になると、Gウィルスもまた泥酔してしまい、酒乱を起こすようなのだ。

 愛原「あっ、運転手さん、この辺りで止めてください」
 運転手「こちらで宜しいですか?お支払いは如何なさいますか?」
 愛原「タクシーチケットでお願いします」
 運転手「はい」

 私が料金を払っている間、高橋が先にタクシーを降りた。
 そして、曇りガラスの玄関ドアの前に立つ。
 曇りガラス越しに、向こう側は明かりが点いている。
 高橋はインターホンは押さず、スマホを弄っていた。
 恐らく、パールに直接LINEしているのだろう。

 運転手「ありがとうございました」
 愛原「どうも」

 私はチケットの控えと領収書を受け取って、タクシーを降りた。

 愛原「中に入っても大丈夫か?」
 高橋「リサのヤツ、今はガチ寝してるらしいっスよ」
 愛原「そうなのか」

 それなら安心とばかりに中に入る。
 確かにリサが襲い掛かってくることは無かったのだが、後でリサの部屋を見に行ったら、別の意味で驚かされたのである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「北関... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「リサ... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事