報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「意外な人物」

2023-03-30 20:34:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月5日07時58分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

 東京から仙台までは、“やまびこ”で2時間を切っている。
 昔は2時間以上掛かるのが常識だったが、最高速度が上がったからか。
 尤も、山形新幹線を併結している場合は例外だ。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪ まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。仙台の次は、古川に止まります〕

 列車は田園地帯から街中へと車窓を変えていく。
 また、カーブも多くなり、それに合わせて速度も落としている感じである。

〔「まもなく仙台、仙台です。11番線に入ります。お出口は、右側です。……」〕

 この後で、始発の“はやぶさ”と“こまち”が追い掛けてくるらしい。
 昔はこの駅で緩急接続をしていたが、今のダイヤでは“やまびこ”が待つことはなく、すぐに発車してしまう。
 ガクンとポイントの通過で列車が大きく揺れると、仙台駅の新幹線下り副線ホームに入線した。

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。11番線の列車は、8時ちょうど発の“やまびこ”51号、盛岡行きです。終点盛岡まで、各駅に止まります」〕

 私達は列車を降りた。
 ここから実家へは、地下鉄で向かうことができる。
 私の実家でも、地下に変な空間があったりと、色々あった。

 高橋「先生、一服して行っていいっスか?」
 リサ「トイレ行きたい」
 愛原「ああ、行ってこい」

 列車は全車両禁煙。
 ヘビースモーカーの高橋には、2時間近くの禁煙はキツいか。
 リサはリサで、3人席の窓側に座っていると、なかなかトイレに行きにくいのかもしれない。

[同日08時16分 天候:晴 同地区 仙台市地下鉄仙台駅→東西線電車内(列番不明)]

〔まもなく3番線に、荒井行き電車が到着します〕

 高橋の一服とリサのトイレが終わり、私達は地下鉄乗り場へと急いだ。

 愛原「よしっ、ちょうど来たところだ」

 往々にして地方の地下鉄は、本数が少ないことが多い。
 なので、タイミングを合わせる必要が出てくることもある。
 今回は上手くタイミングが合ったようだ。
 4両編成の電車がやってくる。
 1両当たりが15メートルほどしかない小型車両だが、東京メトロ銀座線よりも都営大江戸線のように見えるのは、車両の構造のせいだろうか。
 もっとも、銀座線は6両で、大江戸線は8両という違いはある。

〔せんだい、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 ワンマン運転であるが、仙台駅などのターミナル駅では、運転士が乗務員室窓から顔を出して、直接ホーム確認をしている。
 私達は先頭車に乗り込んだ。
 沿線には高校もあるせいか、車内にはチラホラ高校生達の姿も見受けられる。
 今のリサは制服ではなく、私服姿だが、仙台には『鬼』はいないようで……。

〔3番線から、荒井行き電車が、発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 短い発車サイン音がホームに鳴り響く。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 運転士が運転席のドアスイッチではなく、乗務員室扉横の車掌スイッチでドアを閉める。
 仙台市地下鉄では、始終点駅と仙台駅のみ直接ホーム確認をするようである。

〔次は宮城野通、宮城野通。ユアテック本社前です〕

 電車が走り出す。
 他の地下鉄と比べて走行音がやかましくないのは、窓が開かないからだろう。
 コロナ禍で電車やバスの窓開けがされているが、仙台市地下鉄東西線2000系電車の客室の窓は開かない構造になっている。

 愛原「家には連絡しておいた。朝飯用意して待ってるってさ」
 高橋「そうですか。大歓迎ですね。……って、ええっ!?俺達、駅弁食っちゃいましたよ?」
 リサ「はいはーい!わたし、食べまーす!」
 愛原「言うと思った……」
 高橋「ガチで食う気かよ……」

[同日08時30分 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家]

 最寄り駅の薬師堂駅は、聖和学園高校がある。
 昔は女子高だったが、今は共学化されたようだ。
 しかし私のイメージでは、未だに女子校である。
 実際、一緒に降りた高校生達は、ジャージを着たJKばかりであった。
 リサが目で注意をしてくる。
 もしくは……。

 リサ「先生。この電車、何ボルトで走ってるの?」

 と、暗に電撃の予告をしてきたり……。
 何とかリサの浮気センサーに引っ掛からず、電撃を食らうことなく、実家に辿り着いた。

 母親「お帰りなさい。仕事とはいえ、大変ねぇ」
 愛原学「いやいや、とんでもない」
 母親「朝ごはん、できてるわよ」
 学「それが、新幹線の中で駅弁食べてきちゃって……」
 母親「ええっ!?」
 リサ「わたしが代わりに頂きまーす!」

 リサは右手を大きく挙げて立候補した。

 学「リサ、お前は食べててくれ」
 母親「長旅だったんだし、少しは落ち着いたら?」
 学「時間が無いんだ。早速、卒アル見せてよ」
 母親「分かったわよ」

 もう60代半ばになろうとする母親。
 今から50年くらい前の中学校の卒アルに、本当に上野医師の妻が写っているのだろうか。
 顔は分からない。
 分かっているのは、名前だけ。

 学「いいか、高橋。名前と顔写真を照らし合わせるんだ」
 高橋「分かりました」

 母親達の世代の卒アルはクラスごとに集合写真を撮り、左のページに集合写真、右のページにそれぞれ名前が書かれているといった感じであった。

 学「名前は斉藤玲子」
 高橋「斉藤社長の親戚ですかね?」
 学「だったら、面白いもんだな」

 あいにくと斉藤という苗字は珍しい物ではないため、偶然であるかかもしれない。
 だが、私と高橋は、ここで斉藤社長というイメージを出してしまったが為に、別の人物を見落としてしまったのである。

 愛原「母さんの卒アルには無い!高橋の方はどうだ!?」

 高橋は高橋で、母親の後輩が持っていた卒アルを確認していた。
 母親が3年生だった時、1年生だったというから、2年後輩だ。

 高橋「いや、今確認中です。何しろ、人数が多くて……」
 愛原「戦後のベビーブーム世代だからな!しょうがない!……この頃のブルマって、提灯タイプしか無いんだな」
 高橋「……先生、どこを見てるんスか……。あった!ありました!いましたいました!」
 愛原「何っ!?」

 高橋がついに斉藤玲子を見つけた。
 その顔を見て、私と高橋は更に驚いたのである。

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