報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「北関東トンボ返り」 3

2024-06-21 16:02:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月12日17時00分 天候:曇 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園・大浴場]

 高橋「破~っ!この不肖の弟子~あ!高橋正義がぁ~あ!無二の師匠~お~おっ!?愛原先生のォ~……あ!?お背中ぅをををををっ!お流し奉り~候~也~っ!!」
 愛原「う、うん……。よろしく頼む」
 天長会信者「あ、あの……これも何かの儀式で?」
 愛原「え、ええ。ちょっと……日蓮正宗の儀式なんです(ウソ!)」
 天長会信者「ほお……。日蓮正宗さんでは、お風呂の時、そのような儀式を……」

 何故私達が呑気に温泉に浸かっているのかというと、帰りのバスまでの時間があるのと、せめて日帰り入浴代でも払っておこうと思ったからである。
 上野利恵のヤツ、お土産用の仮面などタダでやるなんて言ってきたものだから、本当にタダで帰るのも申し訳ないと思ったからだ。

 愛原「それにしても、マジでどうしよう……?」

 高橋に背中を流してもらい、それ以外の体は自分で洗った後、露天風呂に移動した。

 高橋「何がですか?」
 愛原「リサのことだよ。俺達がここに来たこと、かなり怒ってるんだろう?ラムちゃんなら、電撃モノだぞ?」
 高橋「あいつも、電撃使えるようになったんですよね?」

 手持ちの金属製品や電子機器が壊れるので、電撃はなるべく使わず、静電気攻撃や火炎の息を飛び道具にしている。

 愛原「……俺、ステーキにされる?」
 高橋「そ、そういや最近、あいつ、『肉は生より、レアに焼いた方が美味しいよね』とか言ってましたから、ウェルダンにされる心配は無いと思いますが……」
 愛原「やっぱ泊まって行くか、ここ?」
 高橋「火に油を注ぐ結果になると思うので、やめといた方がいいと思います」
 愛原「そ、そうか?」
 高橋「泊まるなら、どっか別のビジホとかにするしか無いですよ」
 愛原「そ、それもそうだな……」
 高橋「善場のねーちゃんからは何て?」
 愛原「いや、まだ連絡は来ていない」

 帰りは路線バスにするが、少し時間があるので、その間は天長園で情報取集を続けるという報告はしている。

[同日17時30分 天候:曇 同ホテル1階ロビー]

 風呂から上がると、私達はロビーに移動した。
 ラウンジはランチ営業しかしていないので閉まっているが、ロビーの延長でフリースペースとしては利用できる。
 また、自販機もあるので、そこで飲み物でも買い、あとは帰りのバスの時間まで待機していることにした。

 愛原「鬼の出没の方は心配無いのか?」

 私は何故かそこにいる上野利恵に聞いた。
 私に向ける視線が、リサが私に向ける視線にそっくりなんだよな……。
 うん、そりゃリサとしては気が気でないだろう。
 私は改めて、自分の迂闊さにウンザリした。

 利恵「はい。BSAAの皆様も出動して下さいましたし、栗原一派の鬼達は私共の方で掃討させて頂きましたわ」

 どちらも“半鬼”のはずなんだが……。

 利恵「愛原先生、今度の慰安旅行先には、是非ともまた当ホテルを宜しくお願い致します」
 愛原「あ、ああ……そうだな……」
 利恵「関連企業としてコンパニオン業も始めました。“半鬼”のかわいい女の子達が、先生方のお越しをお待ち申し上げております」
 愛原「……帰る頃には、血液が半分くらい無くなってそうだから遠慮しておくわ」

 他に得た情報といえば……。

 愛原「他に鬼の気配は無いのか?」
 利恵「私共、元は人間の、新興の鬼の勢力でございます。しかしながら、中には生粋の鬼の皆様もおられまして……」
 愛原「なにっ?」
 利恵「秋田のナマハゲの皆様ですとか……」
 愛原「はあ?」
 利恵「京都の大江山の皆様が視察に来られたこともございます」
 愛原「……もう、エイプリルフールから10日以上過ぎてるんだが?それとも何だ?鬼族は毎日がエイプリルフールなのか?」
 利恵「いえいえ、本当の事でございますよ。証拠がございます」
 愛原「証拠あんの?」

 すると利恵、パンパンと手を叩いた。

 ベルボーイ「お呼びでしょうか?」
 利恵「秋田の『なまはげ御一行様』の集合写真と、京都の『大江山御一行様』の集合写真を持ってきて」
 ベルボーイ「かしこまりました」

 あのベルボーイは半鬼なのだろうか?
 それとも、普通の人間か。
 ベルボーイらしく、ケピ帽を被っている為、角があるかどうかは分からない。
 半鬼は、長く角が伸びない為、伸ばした髪や帽子の中に隠すことが可能である。
 しばらくして、ベルボーイが額縁に入った写真を2枚持って来た。

 愛原「あっ!?」
 高橋「これがガチの鬼達っスか?」
 愛原「上手い事、人間に化けているようだな」
 利恵「ええ。私共、新興の半端者でございまして、こちらの皆様には到底かないません」

 写真だけ見ると、ナマハゲや大江山の鬼関係を観光にしている業者の慰安旅行って感じだ。

 愛原「この鬼達、人を食ったりはしていないんだろうな?」
 利恵「……申し訳ございませんが、そういった個人情報について守秘義務がございまして……」
 高橋「てことは、食ってるってことじゃねーかよ!先生、BSAAに通報を!」
 愛原「いやいや、何かのウィルスとかで鬼になったわけじゃないから、BSAAの出番じゃないよ」
 利恵「さようでございますね」
 愛原「強いて言うなら、栗原家のような、ガチモンの鬼狩り家の出番だろう」
 高橋「なるほど」

 その鬼狩りの家から鬼を出してしまったのだから、面子丸潰れだろう。
 しばらくは、鬼狩りの活動ができないものと思われる。

 愛原「鉢合わせにならなくて良かった」
 利恵「ホテル内では、当館の規則に従い、他のお客様の御迷惑になるような行為は慎んで頂くことになっておりますので、そうなったとしてもご安心ください」

 一応、私は彼らの集合写真をデジカメに収めた。
 バイオハサードに関する情報ではないから、あまり善場係長も興味は無いかな?

[同日18時05分 天候:曇 同市内 ホテル天長園前→関東自動車N3系統車内]

 ホテルをあとにした私達は、ホテル前の県道に出てバスを待った。
 この辺りはフリー乗降区間である為、バス停でなくても乗り降りできる。

 愛原「あのバスだな」

 もう日が傾いている上、曇っている為、だいぶ外は薄暗い。
 運転手から視認してもらえるよう、なるべく街灯の下など、明るい所でバスを待つ。
 行先表示も今はLED式が多いので、外からでも見やすい。
 私が大きく手を上げると、バスはハザードランプを点灯させて停車した。
 左ウィンカーではないのは、バス停に停まるわけではないからか。
 中扉から乗り込むと、車内には数えるほどの乗客しか乗っていない。
 今は、市街地から郊外に向かう便の方が賑わっていて、逆方向は空いているのだろう。
 バスに乗り込んで、後ろの席に座った。
 バスは私達を乗せると、引き戸を閉めて再び走り出した。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「北関... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「北関... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事