報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「学校帰り」

2024-06-25 20:51:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月13日15時00分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1階会議室]

 校長「それでは、そういうことで」
 愛原「来月、よろしくお願い致します」

 私はPTA会長として、校長先生達と来月の修学旅行について打ち合わせをしていた。
 因みに、基本的にPTA会長も修学旅行に同行することになっているのだが、全ての旅行というわけではない。
 特に高校ともなると、行き先がいくつかに分かれる為、その全てに行っていたのでは大変だ。
 今回はリサが行くからということで、私が沖縄に同行することになったというわけだ。
 校長先生や教頭先生は、別の行き先に同行するという。
 集合場所は羽田空港。
 離陸時間の1時間前が集合時間。
 PTA会長の私は、中等部代替修学旅行と同様、1番最初に来て集合場所を確保しなければならない。
 だいたい1時間前といったところ。
 そうなると……朝の6時台後半には、羽田空港に行かなくてはならないということか。
 これは……前泊しないとキツいかもな。

 愛原「校長先生、ちょっと相談が……」
 校長「はい?」

 私が事情を話したところ、校長先生は気づいたようだ。

 校長「なるほど。実はそれは、私も考えていたところです。私は台湾組の引率をする予定ですが、台湾組も集合時間が似たようなものなので。とはいうものの、引率者が高いホテルに泊まるわけには参りません」
 愛原「そうですよね」
 校長「そこで私が考えているのは……」

 私は校長先生から、名案を受けた。

 愛原「なるほど。それはいいアイディアですね」
 校長「はい。確か愛原さんは、助手の人をお一人連れて行かれるとのことですね?」
 愛原「そのつもりです」
 校長「一応、愛原さんとその助手の人の分の前泊費用が出るよう検討致しましょう」
 愛原「ありがとうございます」

 だが、ここで1つ問題が起きる。
 私も高橋も前泊してしまうと、リサはどうするのかという問題になる。
 当然、リサも一緒に連れて行くことになるだろう。
 そうなった場合、さすがに私の自腹となるか。
 まあ、仕方が無い。
 もしくは、デイライトに相談したら出してくれるかな?
 まあ、いいや。

 校長「中等部は新幹線または貸切バスでの旅行ですから、そんな前泊とか考えなくて良かったのですがね」
 愛原「ですよね」

 行先はだいぶ変わってしまったが、リサ達の中等部代替修学旅行も、スタートは東武浅草駅から夜行列車で。
 帰りは東北新幹線というパターンだった。
 これなら確かに、引率者が朝早くから……最悪前泊でということはない。

 愛原「それでは失礼します」

 私は会議室をあとにした。

 愛原「んっ、リサ?」
 リサ「エヘヘ……。先生、お疲れー」

 廊下に出ると、リサが待ち構えていた。

 愛原「何してるんだ?授業はどうした?」
 リサ「もう終わったよ。今日は1時間早いの」
 愛原「そうなのか。で?」
 リサ「先生を待ってた。お兄ちゃんと車で来てるんでしょ?一緒に帰ろうよ?」
 愛原「ちゃっかりしてるな……」

 とはいえ、断る理由は無いので、そうすることにした。

 愛原「因みに……レイチェルはどうした?」
 リサ「レイチェルならトイレだよ。どうしたの?」
 愛原「いや、ちょっとレイチェルにも話しておこうかと思うことがある。もし良かったら、レイチェルも家に一緒に来ないか?家というか、事務所だ。いいかな?」
 リサ「何の話?」
 愛原「修学旅行の話」
 リサ「なるほど。分かった」

 リサは自分のスマホを取り出すと、それでレイチェルに連絡した。

 リサ「……フム。わたしもトイレに行ってから行くから待ってて」
 愛原「ああ、分かった」

 リサはそう言って、1階奥のトイレに向かった。
 “学校の七不思議”では、『個室から無数の幽霊の手が伸びて来て、捕まると異世界に連れて行かれる。または、首を絞められて殺される』とか、『女の生首が落ちているのを見た者は死ぬ』とか、そういう噂があったトイレだ。
 もっとも、今はそれも特異菌の胞子による幻覚ということで片付いている。

[同日15時30分 天候:晴 同学園・駐車場→車内]

 レイチェルと合流すると、私達は駐車場に向かった。
 私の場合、途中、事務室で入構証を返却する。
 例えPTA会長と言えども、入退構の際にはパスの受け渡しをしなければならない。

 愛原「“学校の七不思議”に興味があるの?」
 レイチェル「はい。多くは特異菌の胞子による幻覚作用とのことですが、その影響について興味があります」
 愛原「今は滅菌作業が終わったから、胞子なんて無いだろう?」
 レイチェル「そうですね」

 そんなことを話しながら、来客用の駐車場に行く。
 そこには事務所でリースしているライトバンが止まっていた。
 運転席にいるのは高橋ではなく、パール。

 パール「先生、お疲れさまです」
 愛原「待たせたな。事務所に帰るぞ」
 リサ「あれ?パールさんが運転?」
 愛原「ほら、高橋、免停寸前だから」
 リサ「ああ!」

 リサはニヤッと笑った。
 口元からは牙が覗く。
 逆に、高橋には事務所で留守番してもらっている。

 パール「皆さん、御一緒ですか?」
 愛原「ああ。皆まとめて、事務所まで頼む」
 パール「かしこまりました」

 私は助手席に座り、リサとレイチェルにはリアシートに乗ってもらった。
 そして、車が出発し、学校をあとにする。

 リサ「あ、そうだ。先生、昼のテレビ、観た?」
 愛原「見たよ。沖縄中央学園で、デイライトの調査員が行方不明になったらしいな。絵恋さんは何か言ってたか?」
 リサ「それが、学校から、『事件の事は他言無用って言われた』らしいよ?」
 愛原「他言無用も何も、既にニュースになっているわけだが?」
 リサ「きっとエレン、何か知ってるんだよ。その情報を流すなって言われたんだよ」
 愛原「なるほどな」

 私は斉藤早苗が怪しいと思った。
 そもそも調査員は、斉藤早苗が白井伝三郎だというのを確認しに行ったわけである。
 それが、彼女らの通う学校で行方不明になったということは、斉藤早苗に接触した調査員にに何かあったと見て間違いない。
 つまり、斉藤早苗が調査員達に何かしたと。
 しかし、行方不明とはどういうことだろう?
 不謹慎ではあるが、逆に調査員達が殺されたという方が事件としては分かりやすいのだが……。
 因みに1度、私も善場係長にメールを送ったことがある。
 しかし、未だに返信は無い。
 無い以上、これ以上何かメールを送っても無駄だろうし、状況の把握などで忙しいだろうから、デイライトの事務所に押し掛けても迷惑なだけだろう。
 もし私達に何か手伝えることがあるなら、係長からアクションしてくれるはずだ。
 どうも、デイライトさんと契約している探偵業者は他にもあるようだが、最もお役に立っているのは私らだという自負はある。

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