報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「魔界からの手紙」

2019-10-12 10:20:33 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月29日21:00.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 マリア宛に届いた手紙は、魔界共和党理事・横田が差出人となっていた。

 マリア:「読みたくない。燃やす」

 マリアは明らかに不快そうな顔で言った。

 稲生勇太:「まあまあ。横田理事は魔界では総務担当ですから、魔界共和党から何かあるのかもしれません。何でしたら、僕が開けますよ」
 マリア:「勇太がそう言うのなら……」

 勇太とマリアはリビングに移動すると、早速封筒を開けた。
 因みに封筒は白色で、親展と書いてあった。

 勇太:「やっぱり日本語で書いてある」
 マリア:「日本語はまだよく読めないんだ」
 勇太:「マリアさん宛なんだから、英語で書けばいいものを……。じゃあ、僕が読み上げます」
 マリア:「頼む」
 勇太:「『先般の総幹部会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります』……って、あれ!?理事って、魔界共和党じゃなく、顕正会の理事!?」
 マリア:「メェ・ラ!

 マリアは顔に怒筋を浮かべると、火球魔法を唱えた。
 たちまち手紙は火に包まれ、それはクリスタル製の大きな灰皿の上で燃え上がった。

 勇太:「だったら僕宛でも良かっただろうに、どうしてマリアさんなんだ?」
 マリア:「あのエロクソ理事がっ……!」
 勇太:(まあ一瞬、終盤の文を見たら、『下着』という文字が見えたから、おおかた『マリアさんの使用済み下着を譲ってください』とでも書いてあったんだろうなぁ……)

 もちろんそんなことは口にしない。
 勇太は悪くないのだが、今機嫌を大きく損ねているマリアを更に不快にさせたら、その矛先が向けられるからだ。
 ……と!

 勇太:「あれ!?」

 手紙が燃え尽き、あとは灰燼に帰すだけであったはずなのだが、その灰の下から新しい手紙が現れた。

 勇太:「これは……!?」
 マリア:「! これはダブル・レター!?」
 勇太:「ダブル・レター?」
 マリア:「手紙型の魔法具の1つで、秘密の信書を送る場合、どうでもいい内容の手紙でカムフラージュしたものだ。つまり、エロクソ理事の手紙の下に、本当の手紙が隠されていたんだ」
 勇太:「へえ!スパイ映画もびっくりですね!」

 どうでもいい横田理事の手紙が燃え尽きるのを待って、それから本当の手紙を灰皿の中から取り出した。
 するとそれは信書というより、親書であった。
 差出人は魔界王国アルカディアの初代女王、ルーシー・ブラッドプール1世からであった。

 勇太:「魔王様から直々の手紙、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
 マリア:「これは凄い!ま、まさか、勇太を宮廷魔導師に任命!?……いや、それは無いか」

 勇太はまだ見習の身分である。
 それを日本でいうところの内閣官房長官とか宮内庁長官的な身分にいきなり抜擢するはずがない。

 マリア:「早速読んでみて!」
 勇太:「そしたら、今度はこっちが英文です。マリアさん、読んでもらえませんか?」
 マリア:「勇太も一応、英文は読めるだろう?」
 勇太:「ネイティブの英文の意味と、後からそれを勉強した側とでは、同じ文でも解釈が異なることがあると言いますから……。マリアさん、ネイティブじゃないですか」

 マリアはイギリス人。

 マリア:「あの女王様、この世界ではアメリカ国籍だろう?向こうの表現で書かれてちゃ、私も間違うかもしれないよ」

 ルーシー女王は最初から魔界の女王だったわけではない。
 元々はアメリカのニューヨーク生まれであり、彼女の母親は今でもニューヨークに本社を構える大企業の役員である。
 経営側として経営手腕だけでなく、王国では政治的にも辣腕を振るい、安倍春明の仕事を奪ったこともある。

 勇太:「いいからお願いしますよ」
 マリア:「分かった。一応、私なりに日本語に訳してみる」
 勇太:「お願いします」

 アメリカ人の書いた英文をイギリス人が和訳するという、何とも不思議な話だ。

 マリア:「……意訳すると、まあ、その……何だ。勇太はいつも魔界に来る度に女王様に献血してくれているので、その御礼をしたいとのことだ。今まで多くの人間の血を飲んで来たが、勇太のが1番美味しいので、今後ともよろしくという意味で……みたいなことが書いてある」

 ルーシー女王の出自は吸血鬼。
 アメリカ人の白人の先祖はヨーロッパからの移民であるが、ブラッドプール家もその1つ。
 迫害を逃れてアメリカに渡ったという経緯がある。

 勇太:「そうですか。名誉なことなんでしょうね」
 マリア:「そりゃ名誉なことだ。一国の元首が勲章くれるっていうんだから」
 勇太:「でも、明日には屋敷に帰らないといけないんですよ?」
 マリア:「分かってる。この辺、師匠に相談してみるさ」

 マリアは水晶球を取り出すと、それでイリーナとの交信を試みた。

 マリア:「師匠、師匠。こちら、マリアンナです。応答願います」

 マリアの水晶球の呼び掛けは無線交信同様だと、他の魔女からも有名である。

 マリア:「師匠!師匠!」
 イリーナ:「
 マリア:「寝るなぁっ!起きろぉーっ!!
 勇太:Σ(゚Д゚)
 イリーナ:「 さすがにそれは食べれないよ……へへ……
 マリア:「作戦第2!Telephone!」

 マリアは席を立つと、ダイニングにいた勇太の両親に話し掛けた。

 マリア:「すいませン、お電話借りテもよろしいでスカ?」
 稲生佳子:「どうぞどうぞ」
 稲生宗一郎:「今さっき大きな声が聞こえたような気がしましたが?」
 マリア:「ゴメンナサイ、チょっとエキサイティング……でス」

 勇太の両親の前では素の日本語を話す。
 それはマリアなりのアピール。
 マリアはまたリビングに戻ると、電話を取った。

 マリア:「あー、ダニエラか。私だ。師匠に代わってくれ。……寝てる?いや、分かってるよ。起こすんだよ。……起きない?永眠してるわけじゃないし、叩き起こせよ。……あ、ムリ?オマエ、私を誰だと思ってんだよ?」
 勇太:(人形に凄むマリアさん、こあいよぉぉ……)(゚Д゚;)

 その夜、勇太はマリアの機嫌を損ねて屋敷の中を追い回されるという夢にうなされたという。

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4 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2019-10-12 15:33:00
 埼玉県さいたま市中央区は、もうすぐ夜を迎えるかのような薄暗さ。
 雨はもちろん大粒のものが降っているのだが、それが少し強めに降っているかといったところ。
 風はそんなに強くないが、それでも段々強くなってくるのが分かる。

 報恩坊の支部総登山は明日なのだが、今のところ中止または延期のお知らせは来ていない。
 前泊しようにも、そもそも台風到来の時期が今日であることから、それは不可能だ。
 そもそも静岡県の方が被害が大きいのだから、逆に危険である。
 で、当日入りしようにも明日の交通機関が無事であるとは思えない。
 ……てか、埼玉県に特別警報出たで、おい!?

 このブログが最後の更新にならなきゃいいがな!
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つぶやき 2 (雲羽百三)
2019-10-12 17:00:49
 エリアメール、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 初めて聞いたチャイムだ。
 何でも熊谷市の荒川が危険水位に達したらしい。
 ということは、その下にあるさいたま市は……。
 しかし、中央区は荒川から少し離れてるぞ?
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つぶやき 3 (雲羽百三)
2019-10-12 19:02:24
 千葉県で震度4の地震が発生したらしい。
 2度の台風に中地震(大地震でもなく小地震というわけでもないという意味で)に見舞われるとは、泣きっ面に鉢どころではないな。
 これはきっと、誕生寺と清澄寺を速やかに日蓮正宗に引き渡せという諸天善神の警告ではあるまいか!
 ……などと書くとアンチから、「雲羽の野郎、傍観勢とか抜かしといて、結局言ってることはガチ勢と一緒じゃねーか!」などと言われるだろうし、マイケルさんからは、「やっぱりあなたはそういう人だったんですね!!」となるだろうし、んっ?さんからは、「何言ってるんですか。まずは被災地にお見舞いの言葉を述べるのが先でしょう?それじゃ河童君以下ですよ」と言われるのがオチだからやめておこう。
 ……今のところ、まだこういうことが書ける余裕のあるさいたま市中央区からのつぶやきでした。
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つぶやき 4 (雲羽百三)
2019-10-12 19:05:56
 おっと、失礼!
 「泣きっ面に蜂」だったね。
 泣きっ面の上から蜂に刺されるのと、頭上から落ちて来た鉢に当たるのとでは、一瞬どちらがマシだろうと思った。
 ま、流血の惨という意味では後者かな。
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