報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「お侍さん」

2018-05-29 11:14:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月11日11:30.天候:晴 宮城県宮城郡松島町 観瀾亭→牛たん炭焼 利久]

 この時、稲生のツイッターにこんなことが書かれていたという。

『縁側でお茶とお菓子を頂く連れが、どう見てもお侍さんな件』

 画像には、縁台で茶を啜りながら茶菓子を手にする威吹がアップされていた。
 着物に袴、草履、そして脇に立て掛けている刀が……。

 稲生:「威吹、後で刀隠しておけよ」
 威吹:「スマン、すっかり忘れてた」
 外国人観光客A:「なあ、キミ。あのSAMURAIはキミの知り合いかい?
 マリア:「まあ、一応……
 外国人観光客B:「そりゃ凄い!是非、写真を撮らせてくれ!
 マリア:「どうぞご勝手に
 威吹:「何だ何だ?何だか、やたら南蛮人が増えて来たぞ!?」
 稲生:「キミがだいぶ目立ってるみたいだねぇ……」

 というわけで、威吹のティータイムはここで終了。

 マリア:「船であれだけゲーゲー吐いてたのに、よく食べれるなぁ……」
 威吹:「おかげで胃の中が空になった。妖狐にとって、胃が空のまま長時間放置しておくことは、イコール次は人喰いをするということだ。それを防止する為だ」
 稲生:「怖い怖い」
 マリア:「取って付けたような理由付けやがって……」

 因みに刀は再び扇子に変化させた。

 威吹:「ユタ。甘い物を食べたら、早速胃が元気になったでござる。早いとこ、例のあれを……」
 稲生:「はいはい」
 マリア:「普通、逆だろ?食事をたらふくしてから、『甘い物は別腹』だろ?」
 威吹:「一流の魔法使いは、小さなことに拘らないものでござるよ」
 マリア:「師匠と同じこと言うなァ……」
 威吹:「その師匠殿がオレにも言ったんだ」
 マリア:「あ、そう。あの師匠ならやりかねない」

 目当ての店は、すぐ近くにあった。

 稲生:「はい、牛タン専門店」
 威吹:「おおっ!」

 早速、店内に入る。

 稲生:「威吹は1番高いの頼んでいいよ。持ち合わせ、あったかな……
 威吹:「さようか!」

 威吹は1番牛タンの量が多い定食を注文し、稲生はぐるなびでオススメとなっているものをチョイスし、マリアは牛タンシチューにした。

 稲生:「これで威吹への御礼も済んだし、後は帰るだけだ」
 マリア:「最後に観光をすることになるとは、さすが勇太だね」
 威吹:「まあまあ。これも、前の女を忘れる為だ。オマエにとっても、けして悪い話ではないはずだ」
 マリア:「!」
 威吹:「ユタから聞いた話だが、今回の件は、あくまで河合有紗殿の亡霊がユタに襲い掛かって来たことが発端だろう?そして調べて行くうちに、有紗殿の遺骨が盗掘されたと。その遺骨は発見したし、その犯人と思しき者も、今は警察の手に掛かっている。有紗殿にあっては冥界側からの仕置きで、しばらく亜空間内にいることになった。これでもう2度と、有紗殿の悪霊がユタに襲い掛かることは無いはずだ。その後で少々物見遊山しても、罰は当たるまい?」
 稲生:「100パー、消化したわけじゃないけどね」
 威吹:「というと?」
 稲生:「マリアさんが警察に突き出した人って、本当に有紗のお姉さんだったのかなぁ……なんて」
 マリア:「私が指摘したら、特に否定はしていなかったぞ?」
 威吹:「うむ。『返答無きは認むるに同じ』と言うからな」
 稲生:「それにしても、100メートル先から狙撃してくるなんてねぇ……」
 威吹:「銃弾など、妖狐と魔女には効かぬということを知らなかった。その時点で、向こうの負けだ」

 もっとも、直接体に被弾したら大ダメージは避けられない。
 あくまで、鎧代わりの着物やローブを着ていたおかげだ。

[同日12:30〜12:42.天候:晴 JR松島海岸駅→JR仙石線先頭車内]

 昼食を終えた稲生達は、足早に松島海岸駅に向かった。
 もっとも、それとて徒歩圏内である。
 結構、徒歩圏内のみ移動したと言える。
 この松島海岸駅には、みどりの窓口がある。
 そこで稲生は帰りの乗車券だけでなく、新幹線の特急券も購入した。

 稲生:「良かった。指定席空いてた。仙台始発だからかな」
 威吹:「狙うねぇ……」

 威吹は笑みを浮かべた。
 これにはマリアも同意する。

 稲生:「乗車券だけ入れてね」
 威吹:「了解」

 こういう地方の駅でも、今や自動改札機導入の時代。
 改札口を通ると、すぐに階段を昇った。

 マリア:「あの海鳥、お土産に……」
 威吹:「まだ言うか」
 稲生:(ぬいぐるみだけでも買っておけば良かったかな……?)

〔ピンポーン♪ まもなく2番線に、上り電車が到着します。危ないですから、黄色い線の内側まで、お下がりください〕

 電車がやってくる。
 往路と同じ205系3100番台。
 しかし、この路線もやはり冥鉄電車の運行区域になっているという。
 もしかしたら、旧・宮城電鉄時代の車両も運行されているかもしれない。

 稲生:「山手線時代は、こんな海の見える所を走ることになろうとは思わなかったでしょうねぇ……」

 稲生はドアボタンを押しながら言った。
 1面2線の島式ホームで行き違い設備のある駅だが、特段対向電車の待ち合わせなどは無く、すぐに発車した。

〔「次は陸前浜田、陸前浜田です」〕

 緑色の座席に腰掛けながら、マリアは後ろを振り向いた。
 と、すぐにトンネルに入る。
 この辺りは短いながらも、断続的にトンネルの続く所なのである。

 稲生:「どうでした?海は……」
 マリア:「凄く新鮮だった。山ばかり見ていたから……。たまには、海もいい」

 マリアは笑みを浮かべて頷いた。
 そして、続けた。

 マリア:「さっき言ってた、あの……イブキと一緒に船に乗ったっていう話……」
 稲生:「東京湾フェリーですか?」
 マリア:「そう、それ。私も、そのルートで移動してみたい」
 稲生:「いいですよ。今度行きましょう」
 威吹:「いいのか?湾内が荒れてると、大変な目に遭うぞ?」
 マリア:「魔道師をナメるな。ちゃんと天気の良い日を選んで行くさ」
 稲生:「ハハハ……」

 電車は沿岸部の線路を突き進む。

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