報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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“新アンドロイドマスター” 「いま、再びの仙台へ」

2015-08-26 10:22:04 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月29日05:50.天候:曇 JR東京駅・東北新幹線ホーム 井辺翔太、3号機のシンディ、MEGAbyte]

〔21番線の電車は、6時4分発、“やまびこ”41号、盛岡行きです。この電車は……〕
〔「21番線、お待たせしました。まもなくドアが開きます。乗車口まで、お進みください。業務連絡、41Bカレチ、準備できましたらドア操作願います」〕

 大きなエアーの音と共にドアが開く。

〔「お待たせしました。どうぞご乗車ください」〕

 井辺達は車内に入った。
 “はやぶさ”に使用されるE5系ではなく、“はやて”デビューの際に登場して中国高速鉄道には勝手にパクられたE2系であり、中国高速鉄道で脱線事故が起きた際には「日本のせいアルよ!責任取るよろし!」と騒いだ車両である。オマエらのスピードの出し過ぎと運行管理体制の不備じゃんかよ。
「MEGAbyteの皆さんは3人席にどうぞ」
「はーい」(未夢)
「……あれ?充電コンセントが無い」(結月ゆかり)
「古い車両だし、それに私達、まだバッテリー沢山残ってるでしょ?」(Lily)

〔「皆様、おはようございます。この電車は6時4分発、東北新幹線“やまびこ”41号、盛岡行きでございます。停車駅は上野、大宮、宇都宮、郡山、福島、仙台、古川、くりこま高原、一ノ関、水沢江刺、北上、新花巻、終点盛岡の順に止まります。……」〕

「あとは大宮から社長とアルエットさんが乗ってきますので……」
「社長とプロデューサーはそっちの2人席に座っておきなよ」
 と、シンディ。
「え?」
「今回のイベントのことで、社長に色々聞きたいこととかあるんでしょ?」
「た、確かに……」
「アタシとアルが後ろにいるから、何かあったらすぐに動くよ」
「よろしくお願いします。では、私はお弁当を買ってきます」
「いいよ。弁当ならアタシが買ってくるよ。何がいい?」
「えー……それでは東京弁当とお茶を」
「了解」
 シンディがSuicaを手に列車から降りる。
「プロデューサーさん」
 そこへ、ゆかりが声を掛ける。
「わたし達のライブ、夕方からみたいですけど、その間は何をしていればいいんですか?」
「基本的にはイベントコンパニオンをやって頂きます。科学館におけるイベントは、あくまでマルチタイプの皆さんの展示がメインです。従いまして、あなた達はお客様をご案内する役をやって頂きます」
「なるほどー」
「私も展示される側だったのかなぁ……」
 と、未夢が複雑そうな顔をした。
 未夢は国産初のマルチタイプとして、つくばの大学の研究所で製造されたが、国際基準(といってもエミリーとシンディしかいないが)を満たせなかったため、廃棄処分になるところを、ガイノイドとしては高性能だということで、平賀のつてで敷島が引き取り、ボーカロイドに用途変更したという経緯がある。
「マルチタイプは、一大学の研究所では造れるものではないと平賀教授が仰っていたそうです」
 その平賀が一大学の研究所で造ったのは、専らメイドロボット(ロイド)である。
 それでさえ凄いことなのだが。
「厭らしい話ですが、お金の話をしますと、マルチタイプ……アルエットさんはまだ値段が付いていませんが……」
「アタシ達の約10倍の値が付いてるんでしょ?」
 Lilyが腕組みをして答えた。
「そうです。世界ではもう国際基準を満たしているマルチタイプを造れる人間が、本当に数えるほどしかいないので」
「でも、数えるくらいはいるんだ」
「まあ……」
 アルエットに値段が付いていないのは、そもそもアルエット自身、国際基準を満たしているかどうかさえ怪しいからだ。
 肝心の製造者が死亡してしまったため、その検査すら難しいのが実情である。

[同日06:04.東北新幹線“やまびこ”41号8号車内 上記メンバー]

 東北新幹線の始発列車は定刻通りに発車した。
 すぐに朝日が差し込んで来るかと思われたが、関東地方は今日1日曇であるため、それは無かった。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北新幹線“やまびこ”号、盛岡行きです。次は、上野に止まります。……〕

「ちょっと社長に連絡してくるよ。『新幹線乗った』ってね」 
 シンディが席を立った。
「ああ、どうも」
「プロデューサーは食べてて」
 そう言って、シンディはデッキに出た。
 デッキには荷物置き場があって、井辺達の大きな荷物がそこにあった。
 シンディがイベントで使用するフルートはそんなに大きくないし、エミリーは向こうで用意されたピアノを使うので、荷物にはならない。
 アルエットが持ち込むトランペットは大きいかもしれない。

[同日06:30.JR大宮駅・東北新幹線ホーム 敷島孝夫&8号機のアルエット]

「シンディ姉さんが来ます。あと……MEGAbyteの皆さんの反応も接近しています」
「おー、そうか。基本的な性能はエミリー達と同じだな」
 東京方面から眩いヘッドライトが近づいて来る。
「それにしても、指定席車が10号車じゃなくて8号車というのは、さすが平賀先生も考えたな」
「えっ?」
 列車がホームに止まって、ドアが開く。
「おー、皆、おはよう」
「おはようございます!」
 電車に乗り込んで、敷島は東京駅から乗って来た事務所のメンバーに手を振った。
「着いたらすぐに調整を始めるからな。それまでは寛いでて」
「はい!」
 大宮駅はすぐに発車する。
「社長、こちらへ」
 井辺が2人席の窓側に案内する。
「ああ。井辺君は朝、食べたの?」
「はい。先ほど、東京駅の駅弁を」
「奇遇だな。俺もさっき買ってきた」
「そうですか」
「俺がミクを連れて歩いていた時は、よくミクが弁当買ってきてくれたものだ。今は、トップアイドルにそんなことさせるわけにもいかないからな」
 そう言って、敷島は大宮駅の“大宮弁当”の蓋を開けた。
 その後ろに座っているアルエットが、隣に座る従姉のシンディに話し掛ける。
「……えっ、社長がそんなこと言ったの?」
「どういう意味なの?」
「さすが社長ね。それは、狙撃するなら先頭車が狙いやすいから。それを知ってて、中間車の指定席寄越した平賀博士もさすがだけどね。あの2人、アタシの攻撃を何度も掻い潜っただけのことはあるよ」
「お姉ちゃんの?」
「ああ、前のボディを使っていた頃ね」
 シンディは片目を瞑った。

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