報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「七つの大罪の悪魔たち」

2014-07-08 02:26:39 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[現地時間7月8日05:00.アルカディア王国・魔王城地下“封印の間” マリアンナ・スカーレット&イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 魔王城の地下には色々なものがある。
 共和党の横田理事がよく収監されている政治犯留置場や“大水晶”が保管されている部屋、前魔王のバァル大帝が突如、「魔界の最深部に眠る“邪悪なる者”を退治するから」とて、ルーシーに“魔王代行”を命じ、最深部に向かったのも魔王城の地下からだった。
 このように、到底一般人など近づけないエリアに、2人の魔道師が歩いていた。
 今挙げたものの他に立ち入り禁止になっている箇所があり、そこへ向かう為であった。

「師匠、私は謹慎中なのに、本当にいいんですか?」
 マリアは薄暗い廊下を進む師匠を見上げて言った。
 自分より15センチは身長の高い師匠、イリーナは不安そうな弟子に微笑を浮かべながら答えた。
「大丈夫。ここへは『あなたの屋敷の中から来た』からね。あなたは屋敷の敷地外へ一歩も外へ出ていない。だから、謹慎を破ったことにはならないわ」
 最後には更ににっこり笑った。
「はあ……。で、これからどこに?」
悪魔の所よ」
「え?」
 イリーナがさらりと言った悪魔のいる場所までは、色々な仕掛けが施されていた。
 さすがはRPGで言うラスト・ダンジョンに相当する場所である。
 しかし、そこは元・宮廷魔導師イリーナ。
 彼女の手に掛かれば、全てのトラップが無効化した。

「ここよ、ここ」
 そして、とある部屋に到着する。
「?」
 まず、入口の観音扉からして、高さ3メートルはある大きなものだった。
 イリーナは自分の魔道師の杖でドアをノックするように2回叩くと、“解錠”の魔法を使った。
 魔法で閉じられたドアを開ける魔法で、マリアの屋敷の地下、魔界へ行く穴へ通じるドアもこれで堅くロックされていた。
 大きくて重厚なドアは、両側とも同じ速度でゆっくりと自動で大きく開いた。
 中に入ると、青白い照明が人感センサーの如く、自動で点灯する。
 まるでLEDライトのようだが、そこまでは明るくなく、松明の明かりを青白くした程度である。
 入口のドアも、マリアの身長の2倍はある大きくて重厚なものだったが、中はもっと広かった。
 部屋というよりホールに近いと思ったのは、その天井の高さ。10メートルはあろうかと思う。
 その天井すれすれに立っているのは、7体の石造だった。
 人の形をしてはいるが、明らかに人間では無い。
 ある石像は頭から羊のような角を生やしていたし、別の石造はコウモリの翼を生やしている。
 共通点は皆、それぞれ額に赤い宝石のようなものを埋め込んでいるということだ。
「師匠、この石像は?」
「大魔王バァルに封印され、そして今もルーシー女王に使役権が引き継がれている“七つの大罪”の悪魔達の本体よ」
「これが……!」
 石造だから動くはずもないのだが、マリアが驚いたような顔をすると、下卑た笑みを浮かべたように見えた。
 まるで新人の刑務官をナメる受刑者のようだ。
 よく見ると、額の赤い石が光っている者とそうでない者とがいる。
 イリーナは弟子の心を読んだかのように、口を開いた。
「あそこにいる犬の頭をしたヤツは“嫉妬”の悪魔、レヴィアタン。その向かいにいるのは“傲慢”の悪魔、ルシファーよ。真ん中にいるのは、“憤怒”の悪魔でサタンね。……何かに気づかない?」
「師匠方と契約している悪魔達ですね」
「そう。だからほんのちょっと前まであなたと契約していた悪魔の額、光が消えているでしょう?」
「そうですね。……何か、あの細面のヤツ、少しだけ光っているように見えます」
「よく気づいたわね。あれは“強欲”の悪魔マモン。ポーリンがエレーナと契約させる方向で話を進めているから、今からアイツも張り切っているんでしょう」
「張り切っている……?」
「魔道師と契約すれば、少なくとも化身を通して、外に出られるようなものだからね。ましてやあなたもだけど、人間界を拠点としていれば、人間とも接触できるし……」
 イリーナがそんな説明をしていると、光の消えている悪魔達が“騒ぎ出した”。
 光が鈍くゆっくりと点滅を始めた。
「来た来た。『営業』」
「営業?」
「人間は自分から悪魔と契約したがるけど、魔道師は違うからね。……あいにくと、まだ決めてないのよ。今日のところは“内見”に来ただけ。また今度ね」
 イリーナは『営業』を掛けてきている悪魔達に言った。
(内見って、不動産じゃないんだから……)
 と、マリアは師匠の言動に呆れた。
(あれ?私に憑いていた悪魔って、確か“怠惰”の……)
「じゃあマリア、『社会科見学』はこのくらいにしておきましょうか」
「私が免許皆伝を受ける時、またここに来るんですか?」
「そこまではしなくて大丈夫よ。ちゃんと召喚の儀式をやるから」
「そうですか」
 悪魔達が眠るホールをあとにした後、マリアはふと思った。
「決めてないって……。前に契約していた“怠惰”の悪魔なんじゃ?」
「あくまで、第一候補としてエントリーしてるだけよ。マモンのように内々定ってわけじゃないの」
「はあ……」
「まあ、もう少しでユウタ君達も来るし、それまでに少しでも修行を進めておきなさい。ちゃんと私からも、『夏休みの宿題』は出させてもらうからね」
「は、はい……」

[日本時間07:00.長野県内某所にあるマリアの屋敷 マリア&イリーナ]

「徹夜の『社会科見学』だったわねぇ……」
 イリーナは大きく欠伸をした。
「昼の修行は休みにして、少し『仮眠』しようか」
「はい」
 マリアは頷いたが、ここでいう昼とは、本当に日が出ているうちだろうと予測した。
 マリアも経験があるが、悪魔と契約した人間は契約した悪魔を使役しているように見えて、実は悪魔にいいように使われているのだ。
 何故なら契約した人間には、安全保障の担保が無いから。
 だから稲生ユウタが妖狐と“契約”しているのを見た時、物凄い警戒心が湧いたものだ。
「シャワー使わせてね。あと寝室も」
「すぐご用意します」
 マリアは使役しているミク人形やフランス人形達を巧みに操った。
 人形達が慌ただしく客室の準備に取り掛かる。
 これも本来“怠惰”の悪魔と契約して完璧に仕上げた魔術であるが、契約解除になっても完全に身に付いたおかげか、使用に何の影響も無い。
(やっぱり私は、これが向いているのかな……)
 自分を移民だからといって虐げたスクールメイト達。
 その復讐の為に契約した(本当は神に救いを求めたつもりだったが、救済に来たのは)“怠惰”の悪魔。
 自分の手は殆ど汚さず、他人を巧みに操って復讐劇を繰り広げた。
 “怠惰”の悪魔は、何もかも面倒臭がって何もしないのではないということが分かった。
 その悪魔に人間として騙されたのだから、今度は魔道師として扱き使ってやってもいいだろうと思った。

 後々に話はあらぬ方向へ進んで行くことも知らずに……。

 爆睡しているイリーナ。
「……奥手で草食系のユウタ君には、“色欲”の悪魔を……」
 夢の中で既にユタを弟子にしているらしい。
 もし実現すれば、マリアの弟弟子になるわけだが……。
 ん?もしかして予知夢?見習のマリアと違い、免許皆伝を受けたプロの魔道師が見る予知夢は【お察しください】。

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