報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「水面下の敵とは誰?」

2015-07-10 10:47:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月22日07:00.天候:晴 埼玉県秩父市・市街地のビジネスホテル 敷島孝夫]

 敷島の枕元にあるスマホが鳴る。
「……へい、敷島エージェンシーでござい……。あ?」
 着信じゃない!アラームだ!
「……仕事の電話かと思った」
 アラームを止めて起き上がる。
「さすがに今日はいい天気だな……」
 カーテンを開けると、朝日が差し込んで来た。
「裏を返せば、絶好のテロ日和ってことでもあるか」
 そう呟きながら、敷島はバスルームに入る。
「朝飯食って、研究所に行ってみるか」

[同日09:00.同市・デイライト・コーポレーション秩父営業所 敷島孝夫&シンディ]

 さすがに平日の朝ということもあって、正面入口も開いていた。
「普通に受付に行けば大丈夫かな?」
 昨日、通用口にいた女性型アンドロイドが受付に座っていた。
「おはようございます。私、こういう者ですが、実は昨日からここの研究施設にいるアリスの……」
 敷島が名刺を出して用件を伝えていると、
「社長!こっちこっち!」
 シンディが通路の奥から手を振っていた。
「勝手に入るワケにはいかんだろう?」
 敷島が眉を潜めると、
「ビジターカードちょうだい」
 シンディがやってきて、受付嬢ロイドにビジターカードを要求した。
 ここでもシンディの方が立場が上なのか。
 どこまで特権階級なのだろう。
「それは・できません」
 と、受付嬢ロイドはエミリーのような喋り方で答えた。
「あ!?なんだって!?」
 さすが、シンディが相手でも動じず、セキュリティを決して弱めない……と、思いきや、
「当館で・発行している・カードは、ゲストカードと・申しまして・ビジターカードと・称するカードは・ございません」
「だから、それを寄越せっつってんの!天然メイドロボ仕様が!
(何か、思考回路がリカルドに似てんなぁ……。もしかして設計者、達夫の爺さんじゃないのか?)
 と、敷島は思った。

[同日09:15.同・営業所内部 敷島、シンディ、アリス、アルエット]

 専用のエレベーターで地下に下りるらしい。
 普通に地下のボタンを押そうとしても、ランプは点灯しない。
 因みにゲストカードをスキャンさせてもダメだ。
 こういう時、特権階級のシンディが役に立つのだが、それとて万能というわけではない。

〔地下3階です。お手持ちのセキュリティカードを、30秒以内にスキャンしてください。30秒を過ぎますと、自動で1階に戻ります〕

『同行の人間に、作者の生年月日を入力して頂いてください』

 と、エレベーターのモニタに出る。
 タッチパネル式のテンキーが表示された。
「社長」
「おう。19810805だな」

〔ドアが開きます〕

 ガラガラとドアが開く。
 地上のオフィスとは違い、無機質な空間が広がっている。
 アリスが籠っていた研究室は、すぐ近くにあった。
「アリスー、おはよう。ご苦労さん」
 研究室に入ると、アリスが椅子に凭れかけて眠っていた。
 しかし、左手にはしっかり電動ドライバーを持ったままだ。
「……本当に、お疲れさん」
「はい、このコがアルエットよ」
「もう起動しているのか?」
 敷島は驚いた様子だった。
「ん?前と様子が違くないか?」
 ロングヘアーだったのが、肩の所で切られたショートになっている。
「ああ。何かね、崖からバージョン400ごと転落したでしょう?それで髪が焦げたもんだから、切ったんだって」
「なるほどな。……ああ、おはようさん。私はボーカロイド専門の芸能プロダクションを経営している敷島孝夫だ」
「アタシ達を修理してくれたアリス博士の旦那様だよ」
「8号機のアルエットです。よろしくお願いします」
「歌は……歌えないよな?」
「歌?ですか?」
「いや、何でもない」
「社長、このコはドクター達夫の物なんだから、勝手に事務所で使っちゃダメよ」
「冗談だって。で、どうするんだ?このまま引き取っていいのか?」
「ドクターは何にも言ってなかったね」
「しょうがねーな。じゃあ、俺がここの責任者と話つけてくるよ」
「アタシはここでドクターの護衛をしてるから」
「ああ。……って、コラ!お前が一緒じゃないと、エレベーター動かないだろ!」
「あっ……」
「お前も何気に天然だな」
「そんなことない。アタシもついさっき再起動したばかりで、まだ全部のソフトウェアが起動しきっていないだけだって。……というわけでアルエット。ここでいいコにして待っててね」
「は、はい!」

[同日10:00.埼玉県秩父市・市街地 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ、アルエット]

「やはり商売上手と言うべきか、何というか……。達夫の爺さんから、ライセンス契約を取れるよう口添えしておいてくれってか」
 敷島は苦笑しながら呟いた。
 彼らは今、近くのレンタカー・ショップにいる。
 藤野まで電車移動が大変なので、車で移動することにした次第。
 ワンウェイ・サービスを使えば、埼玉県秩父市で借りたレンタカーを、同じ埼玉県のさいたま市内の別の店に返しても特別料金は掛からない。
 ハイブリットカーを借りた敷島。
「よし、乗ってくれ」
 敷島はカーナビで、藤野にある十条達夫の家までのルートを入力した。
 住所は知っているので、それを打ち込めば……。
 狭山市辺りまでは国道299号線を行き、そこから圏央道に乗れというものだ。
 これが1番安全なルートらしい。
 因みに徹夜したアリスは、リアシートで寝ていた。

 こうして4人は秩父市を出発した。
「おっ、そうだ。達夫の爺さんに、今向かっていることを伝えてあげよう」
「ああ、じゃあアタシが連絡しておくわ」
 シンディが代わりに敷島のスマホを取る。
「……あれ?話し中かしら?繋がらないわ」
「マジか?あの孤独な爺さんに電話する人がいるとは……」
「え?まさか、KR団が?」
「マジか!……あ、いや。まだ決めつけは軽率だ。そういう時に限って、区役所の福祉課辺りから電話が来てるだけかもしれない。何しろ今日は月曜だからな。役所の窓口も開いてる」
「まあ……そうだけど」
「また後で電話してみよう」
「ええ」
「あ、あの……」
「ん?なぁに?」
 アリスの隣に座るアルエットが話し掛けて来た。
 シンディは下位のロボット達とはまるで違う態度で応える。
 何しろフルモデルチェンジの新型機とはいえ、アルエットはシンディ達は続きの番号を持つマルチタイプなのである。
「このコンセント、使っていいんですか?」
 ハイブリットカーならではの装備、車内コンセントだ。
「いいけど、何か充電するのか?」
「はい。わたしです」
「は?」
「残りのバッテリー、もうすぐ20パーセントになりそうなので……」
「はあ!?」
「アリスのヤツ、充電してなかったのかよ……」
「早く充電しなさい」
「は、はい!」
「……ハイブリットカーじゃなく、普通の乗用車だったらどうするんだよ、全く……」
 敷島は呆れて、アイマスクに耳栓をして仮眠モードに入るアリスをミラー越しに見た。

 ドライブはまだ始まったばかりである。

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