報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家の地下、そして……」

2022-12-04 13:47:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日22:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 斉藤家地下室]

 斉藤家の地下には、プールとフィットネスルームがある。
 ここに斉藤家が住んでいた時、リサはそこのプールとフィットネスルームで、絵恋さんと一緒によく遊んだ。
 事件場所はこの辺りなのか?
 特に、怪しい所は無いが……。

 善場:「ここです」
 愛原:「ここ?」

 そこは地下室のトイレ。
 鉄扉になっている。
 それを開けると、あったのは何故か和式トイレ。

 

 リサ:「! 前に使った時、ここは洋式トイレだったよ!?」

 リサが驚いた様子で言った。

 善場:「ええ。覚えておいででしょうか?この家には、他にも似たような仕掛けのトイレがあったことを……」
 愛原:「! 1階のトイレ!」

 あれも何故か洋式と和式が入れ替わるトイレであった。
 それが、この地下室のトイレもか?

 善場:「そうですね。でも、このトイレはもっと違う仕掛けになっているようです」
 愛原:「と、仰いますと?」
 善場:「この鍵は先日手に入れたものです」
 愛原:「あ、はい。そうですね」
 善場:「この鍵は、ここのトイレの切り替えスイッチの鍵だということが分かりました」
 愛原:「そうなんですか」

 試しに主任がスイッチボックスの所に行った。
 そこには切り替えスイッチが3つあった。
 今は『和』の所になっている。
 それを鍵を差して『洋』の方に回すと、トイレの構造が変わって洋式になる。
 ところが、何も書かれていない方向へ鍵を回すと、再び和式トイレになるだけなのだ。
 もう1度回してみても、何も変化が起こらない。
 ……いや!

 愛原:「何か浮かび上がってます!」

 和式便器に跨って、しゃがんだ所の壁に何か文字が浮かび上がる。

 愛原:「『リサ・トレヴァーの排泄後、新たな扉が開かれる』?こんなこと書くから、他方から『パチンカス中二病』とか言われるんだよ!」
 善場:「何の話ですか?こんな時に、メタ発言はやめてください。というわけでリサ、実際にこのトイレを使ってください」
 リサ:「和式、ヤだなぁ……」

 リサは嫌な顔をした。

 善場:「本物の高橋助手を助ける為です。今、用を足せますか?」
 リサ:「オシッコくらいなら、出ると思うけど……」
 善場:「一応、大きい方もした方がいいかもしれませんね。下剤をどうぞ」
 リサ:「何で今、持ってるの!?」
 善場:「そういう台本だからです」
 リサ:「ワケわかんないよーっ!」
 愛原:「善場主任も、メタ発言されておられるような……」
 善場:「何ですか?」
 愛原:「い、いえ、何でもありません!リサ、高橋を助ける為だ!頑張ってくれ!」
 リサ:「うぅ……。先生の為なら……」

 リサは涙を呑んで、下剤を飲んだ。
 特級BOWリサ・トレヴァーたるリサに、普通の下剤が効くのかと思ったが……。

 リサ:「うぅ……。で、出そう……」

 効いたようだ。

 善場:「それでは外に出てますので、用が足し終わったら教えてください」
 リサ:「分かったから早くドア閉めて!」

 リサに強烈な便意が来たのか、ドアを閉める前に、もうスカートの下に手を突っ込んで、緑色のブルマとショーツを下ろそうとしていた。
 しばらくして、中から水を流す音がした。
 どうやら、無事に用を足し終えたようだ……と!
 中から、何か大きな音がした。

 リサ:「きゃああああっ!!」

 そして、リサの叫び声。

 愛原:「おい、リサ!大丈夫か!?何があった!?」

 私はドアを何度もノックしたが、リサからの応答は無い。

 愛原:「開けるぞ!?」

 鍵は掛けていないので、私がドアノブを回すと、すぐにドアが開いた。
 と!

 愛原:「な、何だこりゃ!?」

 トイレは無くなっていて、下に下りるコンクリート製の階段があった。
 リサはその途中に転がっていて、目を回していた。

 愛原:「リサ、大丈夫か?」

 人間だったらケガしていたかもしれないが、そこは特級BOW。
 どこにもケガは見受けられない。
 私が抱き起してやると、リサは目を覚ました。

 リサ:「うぅう……!ゼッタイ許さない……!!」

 リサは第1形態に戻り、瞳を赤く光らせ、牙を剥き出しにしていた。

 善場:「こんなことになるとは、思ってもみませんでした。後でお詫びします」

 リサの怒りの矛先は私や善場主任ではなく、この仕掛けを造った者達であるようだ。

 善場:「それより、行ってみましょう。この先に、恐らく高橋助手がいるはずです」
 愛原:「は、はい」

 コンクリート製の階段。
 そして、コンクリート製の壁。
 当然、自然にできた穴であるはずがなかった。
 ライトの明かりを頼りに階段を下りて行くと、突き当りに鉄扉があった。
 その扉をノックしてみる。

 善場:「NPO法人デイライト東京事務所の善場です。どなたかいらっしゃいますか?」

 しかし、中から応答は無い。
 私が激しくドアをノックした。

 愛原:「高橋!そこにいるんだろ!?返事をしてくれ!!」

 すると、向こう側から弱々しいノックの音がした。

 善場:「あなたは高橋正義さんですか?正解なら1回だけノックをしてください」

 すると、向こう側から1回だけノックをする音がした。
 先ほどよりも弱々しい。

 愛原:「善場主任、鍵が無いと開きませんよ!?」
 善場:「分かっています!すぐにレスキュー隊を!」

[同日23:30.天候:晴 斉藤家→さいたま市内のビジネスホテル]

 消防のレスキュー隊がやってきて、油圧カッター等の器具で、鉄扉をこじ開けた。
 すると、中にはほぼ全裸の状態で、衰弱しきった高橋が倒れていた。
 中はまるで、外国の独房のような感じであった。
 裸電球がぶら下がっており、簡易的なベッドとトイレがあるだけ。
 一体、食事はどこから入れていたのだろうと思うくらい。
 とにかく高橋は救出され、さいたま市内の病院に搬送された。
 搬送される際、同行するのは善場主任となった。
 私とリサは、善場主任の部下が運転する車で、市内のホテルに向かうことになった。

 リサ:「お兄ちゃん、大丈夫かな……」
 愛原:「分からん……」

 私達の呼び掛けには必死に応じていたが、救出される際には意識を失っていた。
 あくまで意識を失ったというだけで、心臓や呼吸も停止したというわけではない。
 だが、かなり衰弱しきっており、病院で治療を受けなければ危険な状態だという。

 愛原:「明日はリサ、学校に行くんだ。俺も学校まで、一緒に行ってやる」
 リサ:「分かった……」
 愛原:「学校が終わったら、また高橋の病院に行ってみよう。面会はコロナ禍で不可能かもしれないが、善場主任や医者から状況は聴けるだろう」
 リサ:「うん……」

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「夏休... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「一夜... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事