報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「静岡県富士市」

2021-03-27 16:05:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月20日08:31.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅]

〔♪♪(車内チャイム。“いい日旅立ち・西へ”サビ)♪♪。まもなく、新富士です。新富士を出ますと、次は静岡に止まります〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ようやく富士山の見える町まで来たのだが、あいにくと天候はそこまで良好というわけではなかった。
 恐らく気象庁的には晴れに分類する空模様なのだろうが、肝心の富士山の上層部分が雲に隠れてしまっていた。

〔「まもなく新富士、新富士です。お出口は、左側です。駅に停車する際、ポイント通過の為、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様、お気を付けください。当駅で6分停車致します。発車は8時37分です。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 網棚から荷物を降ろしていると、確かに列車がカクンと揺れた。
 しかし、思っていたほど大きな揺れではない。
 速度制限に余裕を持たせたポイントになっているのだろう。
 確かこの駅は、ポイントが結構手前にあるのだと聞いた。

 愛原:「よし。じゃあ、降りようか」
 リサ:「はーい」

 リサはリュックを背負い、斉藤絵恋さんはキャリーバッグの取っ手を掴んだ。
 制服姿の栗原姉妹を見て、リサは言った。

 リサ:「私達も制服で来た方が、修学旅行感あったかな」
 愛原:「あー、なるほど。言われてみれば、そんな気もするな。だけどまあ、今日はもうしょうがないさ」

 だいたい、私服の学校だってあるわけだから……。
 デッキに出ると、列車がホームに停車した。
 そして、ピンポーンピンポーンとドアチャイムが鳴って、ドアが開いた。

〔「ご乗車ありがとうございました。新富士、新富士です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。8時37分発、“こだま”705号、名古屋行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 

 ホームに降りた私達はホーム中央にある階段に向かって歩き出した。
 その間、ゴォッ!という轟音を立てて、通過線を通過列車が猛スピードで通過していった。

 リサ:「おお~!」
 愛原:「相変わらず、新幹線が高速で通過していく様はなかなかスリリングだね。帰り際は通過する所が直接見れるんじゃない?」
 リサ:「そうなの?」

 “こだま”より本数の多い“のぞみ”と“ひかり”だ。
 待避線に“こだま”がおらず、単独で新富士駅を通過する列車もいるだろう。
 新幹線の駅は例え地方にあっても、一部の在来線ローカル駅と違い、列車毎に改札するタイプ(例、会津鉄道会津田島駅やJR鳴子温泉駅など)ではない。
 つまり、キップさえ持っていれば、いつでもホームに上がれるのである。
 で、あるなら、30分おきにしか停車列車の無い駅だ。
 早めに上がって、通過列車がスリリングに通過する様を観るのもオツなものだろう。
 私はそんなことを考えていた。
 ようやく階段を下り、自動改札口を出る。
 改札口の横には喫煙ルームがあるが、高橋はそこに入ろうとはしなかった。
 恐らく熱海駅を出てから、3号車の喫煙ルームでタバコを吸い溜めしていたからだろう。

 

 改札口を出てから右に曲がると、富士山口に出る。
 その名の通り、富士山のある方の出入口なわけだが、要は北口だ。
 その途中に、ASTY新富士という名の商業施設がある。
 観光案内所や飲食店などがあるらしいのだが、ここで私はセブン銀行のATMを利用しに行く。
 手持ちは用意してきたつもりだが、少々不安になったので、追加することにした。

〔カードと明細書をお取りください〕
〔紙幣をお取りください。ありがとうございました〕

 愛原:「お待たせ」

 お金を下ろしてくると、私は再び合流し、駅の外に出た。

 

 愛原:「本数と時刻表的に、ここに到着する“こだま”に合わせたダイヤになっているのかもな」

 私はバス停の時刻表を見て言った。

 栗原蓮華:「因みに、向こうの5番乗り場が大石寺行きです」
 愛原:「そうなのか。じゃあ、ここからそれに乗って行くのか?」
 蓮華:「いえ。バスが出るのはもっと後なので、今日は電車で行きます」
 愛原:「そうか」

[同日08:45.天候:晴 同市内 富士急静岡バス“ゆりかご”車内]

 バスが来たが、普通の中型ノンステップバスだった。
 このバス会社でもSuicaやPasmoが使えるのは便利である。
 バスに乗り込むと、私は1番後ろの席に座った。
 他にも、地元民と思しき乗客が3人ほど乗り込んで来る。

〔「富士駅南口行き、発車致します」〕

 バスは定刻通りに発車した。
 尚、このバスの後ろには、同時発車の富士山世界遺産センター行きのバスもいる。
 これは富士宮駅経由なので、富士駅での乗り換えが無くて済む私達にとっては後ろのバスの方が便利かもしれない。
 もしもここに栗原姉妹がいなかったら、後ろのバスに乗っていたかもしれない。
 もっとも、今日は鉄道旅行の気分なので、やっぱり富士駅経由を選択するだろうな。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ ご乗車ありがとうございます。このバスは、富士駅南口行きです。次は下横割、下横割でございます。冨士大石寺顕正会自宅拠点へおいでの方は、こちらが御便利です。お降りの際は、押釦でお知らせください〕

 バスがロータリーを出て大通りに出ると、一瞬だけ雲の隙間から富士山の頂上部分が見えた。
 当たり前だが、雪を被っている。

 愛原:「向こうに着く頃には、富士山ももっとよく見えるようになっているといいんだがな」
 高橋:「先生は良い行いをされていますから、きっと大丈夫ですよ」
 愛原:「あ、そんなことを言われたら、却って不安になってくるわ」
 高橋:「ええっ!?」

 まあ、雨に当たらなかっただけでもマシだと思わないとな。

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