報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「異流儀の つはものどもが 夢の跡 身延線路に はえる草也」

2021-03-27 20:00:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月20日08:52.天候:晴 静岡県富士市 JR富士駅南口→富士駅・身延線ホーム]

〔「ご乗車ありがとうございました。富士駅南口です」〕

 私達を乗せた路線バスは住宅街の中を進んたり、県道を進んだりした。
 今日乗ったこの便は中型バスであったが、時間帯によってはコミュニティバスなどでよく見るタイプの小型バスで運転されることもあるという。
 富士駅南口のロータリーに入り、バスが停車した。
 前扉が開いて、乗客達が前の方に動き出す。

 運転手:「ありがとうございました」

 因みにこの辺りの路線バスでも、運転席や前扉のすぐ後ろの1人席はコロナ対策で封鎖されている。
 バス会社によっては、満席になった時には開放する所もあるようだし、或いは開放しなくとも、荷物置き場としての使用ならOKという所もあるようだ。
 尚、このバス会社の場合、高速バスにおいては最前列席でも着席可能である(貸切観光バスは不明)。
 私はPasmoで運賃を払うと、バスを降りた。
 富士駅南口は、富士駅から見て裏口に当たる。
 バス停の目の前に跨線橋を兼ねた駅の入口があるので、それを登る。
 富士駅は橋上駅舎なのである。
 バスでPasmoが使えるのなら、富士駅でもToikaが使える。
 もちろん、JR東海ではTokiaなだけで、JR東日本のSuicaももちろん使える。
 自動改札機を通ると、身延線ホームは1番線と2番線にあることが分かる。

 

 身延線ホームは頭端式になっていて、車止めが付いている。
 しかし、線路は東海道本線とも繋がっていて、朝には一本、身延線から熱海駅に向かう電車が運転されている。
 元々、線路は静岡の方を向いていた。
 それが創価学会の台頭により、東京方面からの学会専用列車が多数運転されるようになると、富士駅でのスイッチバックがネックになり、線路を東京方面に付け替えたそうである。
 向きを変えられた途中にあった駅は廃止されたが、代わりに新線部分に柚木駅が誕生している。
 そして旧線部分は、遊歩道になっているとのことだ。
 ホームに行くと、ちょうど折り返し列車が到着する所だった。
 2両編成のワンマン運転列車だったが、身延線の終点である甲府まで行くらしい。

 

 東海道本線を走っている同形式の車両がロングシートだったのに対し、こちらはボックスシートがあった。
 もちろん私達は、そちらに座った。

 

 世代的には、JR東日本で言うところのE231系とかE233系と同世代だろう。
 しかしそれらの車両と比べれば窓は大きく、眺望には優れている。

 栗原蓮華:「進行方向右側ですと、富士山が見えますよ」
 愛原:「そうなのか。じゃあ、そうしよう」

 私と高橋、リサと斉藤絵恋さんは進行方向右側のボックスシートに座った。
 栗原姉妹はドア横の2人席に座った。
 もう何回も乗っているのか、それともリサにトラウマを持つ妹の愛里がリサと目を合わせないようにする為か……。

〔「ご案内致します。この電車は9時12分発、身延線の普通電車、甲府行きです。富士宮、身延、鰍沢口方面、甲府行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 運転士が乗り込んで、マイクで肉声放送を行う。
 やはり、ワンマン運転のようだ。
 運転室との境の窓も、JR東日本のそれより大きい。
 また、ワンマン運転に対応している為、フルカラーLED式の運賃表や運賃箱もあった。

 愛原:「はい、2人とも撮るよー」

 私は仕事用のデジカメを取ると、窓側に向かい合って座るリサと絵恋さんを撮影した。
 これは新幹線の中でもそうした。
 後でクライアントの斉藤社長に報告書と一緒に提出する際、証拠の写真としてである。

 愛原:「あ、そうだ。2人も撮るかい?」

 私は2人席に座る栗原姉妹に言った。

 栗原蓮華:「じゃあ、お願いします」

 蓮華さんは私のデジカメではなく、自分のスマホを出した。

 愛原:「はいよ」

 私は蓮華さんからスマホを借りると、ロングシートに仲良く座る姉妹を撮影した。

 蓮華:「愛原先生、写真撮るの上手ですね」
 愛原:「証拠の写真は的確に撮らないといけないからな」
 高橋:「どうだ、恐れ入ったか?先生の撮影技術はプロ並みだ」

 高橋がまるで自分の事のように自慢した。

 愛原:「但し、カメラマンとしての凝り方は違うぞ。プロにとっては、被写体だけガッツリ写して、その周りはボかす撮影技術とかあるだろ?例えば走っている電車はガッツリ写すものの、その背景は流して撮るヤツとか……」
 蓮華:「流し撮りってヤツですね」
 愛原:「そうそう。場合によっては被写体までわざとボかして撮影する芸術まであるらしいが、それは探偵には求められていない技術だ。しっかり、はっきり写すのが肝心なんだよ」
 高橋:「メモっておきます!」

 高橋は急いで自分の手帳を取り出すと、いま私が言ったことをパパッとメモした。

[同日09:12.天候:晴 同市内 JR身延線3627G列車先頭車内]

〔「お待たせ致しました。9時12分発、身延線の普通電車、甲府行き、まもなく発車致します」〕

 運転士が肉声で放送すると、運転室の窓から顔を出してホームを見る。
 車外スピーカーからはオリジナルの乗降促進チャイムが鳴った。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 そして、ドアチャイムが鳴ってドアが閉まった。
 東海道新幹線の音色より甲高く、響くチャイムである。
 しかしこれはJR東海オリジナルではなく、東京の京王電車でも流れるチャイムである。
 閉扉を確認すると、運転士は運転席に座り、そして電車が走り出した。

〔お待たせ致しました。次は柚木、柚木です。柚木では、後ろの車両のドアは開きません。お降りのお客様は、前の車両にお移りください。……〕

 少し走り出すと、左側から東海道本線の線路が合流してくる。
 なるほど。
 かつての創価学会専用列車は、その線路を走って来たというわけか。
 当時は165系が使用されていたそうだが、今なら373系か。
 JR東日本の車両を使うなら185系かな。
 その185系も引退したから、373系一択だろうな。
 373系なら、かつて東京駅まで乗り入れていたくらいだから可能だ。
 そして、この身延線を走る特急“ふじかわ”も373系だから、どう考えても適役だ。
 電車は東海道本線と別れ、進路を北に向けて進んだ。

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